中学校社会 地理/宗教と人々
宗教は世界の人々に影響を与えている
[編集]世界の多くの国では、なんらかの宗教が信仰されている。行事(ぎょうじ)や、衣食住の習慣などにも、宗教の影響はある。
私たちの国の日本でも、神道(しんとう)や仏教(ぶっきょう)が信仰されている。なお、神道とは、神社などで日本の神をまつっている古くからの宗教であり、いっぽう、仏教は外国から伝わってきた別の宗教であるので、間違えないように。
仏教の日本への影響は、寺院や仏像などに影響を与えた。
ときどき「日本人は無宗教である。」という主張をする日本人がいるが、実際には、日本でも、伝統行事や風習などに宗教の影響は強く、単に「日本人が信仰に無自覚なだけ。」であろう。
世界宗教と民族宗教
[編集]世界には、さまざまな宗教がある。その中でも、信じている信者の数が多い宗教は、キリスト教とイスラム教と仏教(ぶっきょう)の3つの宗教である。このキリスト教とイスラム教と仏教は、発祥の地や民族をこえて、他の地域や民族でも多く信仰されているので、世界宗教とも言われる。
この世界宗教に対して、ヒンドゥー教やユダヤ教などは、信仰の地域や民族が、ほぼ発祥の民族などに限られているので、民族宗教と言う。ヒンドゥー教はインドの民族宗教である。ユダヤ教はユダヤ人の民族宗教である。日本の神道(しんとう)も、民族宗教である。
仏教
[編集]世界宗教の一つである仏教は、東南アジアから東アジアで、さかんに信じられている。日本も、寺院などがあるように、仏教の影響を受けている。現在では、タイで、仏教が さかんである。
仏教の初めは、紀元前の6世紀ごろに、インドで、シャカという人物がひらいた。
イスラム教
[編集]世界宗教の一つであるイスラム教は、アジア州のアラビア半島のあたりの地域で、さかんに、信じられている。 アラビア半島のほかに、アフリカ北部や中央アジアなどで、さかんな宗教である。東南アジアでも、インドネシアで信じられている。
経典である『コーラン』(あるいは『クルアーン』)に書かれた、唯一の神である「アッラー」という名の神の教えを守り、イスラム教の決まりにしたがった生活をおくる宗教。(※ コーランのことを高校・大学では「クルアーン」と言う。)
イスラム教をひらいたのは、7世紀の初めごろ、ムハンマド(あるいは マホメット とも言う。)という人物がひらいた。
お祈りをするとき、祈る先の方角は、西アジアにあるメッカという都市にある カーバ神殿 に向けて、お祈りする。信仰(しんこう)のあつい人は、1日に5回、お祈りをメッカの方角に向かって、いのる。礼拝所の向きは、最初からメッカの方向に向けて建てられる。
イスラム教の決まりには、お祈りの仕方のほかにも、さまざまな事が決まっている。
- 【女性の肌の露出の禁止】 女性は、屋外では肌や髪を見せてはいけないことになっている。なので、服は、頭をふくめて全身をおおう服を着て、肌のほとんどを隠して外出する。
- 【断食】 年に約1ヶ月ほど、昼間に物を食べない 断食(だんじき) をする(※ 範囲外: 「ラマダン」のこと)。ただし、病人などを除く。この断食のことや、その期間をラマダーンと言う。日の出から日没までの間が、断食をする日の、断食中の時間となっている。
- 【豚肉とアルコールの禁止】 豚肉とアルコールは、口にしない。豚肉だけでなく、豚肉から取ったスープなども口にしない。
(なお、ヒンドゥー教では牛肉を口にしない。イスラム教と、ヒンドゥー教とは、ちがう宗教なので、混同しないように。ヒンドゥー教は、インドで、さかんな宗教。)
- 【偶像崇拝(ぐうぞう すうはい)の禁止】 像や人物画などの偶像(ぐうぞう)を崇拝(すうはい)するのを禁止している。なので、イスラム教の礼拝所に言っても、神や教祖などの銅像などは無いし、肖像画も無い。
- ・ 年月の暦(こよみ)が、イスラム教の歴。(いっぽう、日本で用いられている西暦は、キリスト教の暦である。)
- ・ 礼拝所(モスクと言う)で、お祈りする日は、毎週の金曜日。学校なども金曜日が休日。(なお、キリスト教では、毎週、日曜日。)
- ・食事で食べ物を口に運ぶときには右手だけを使う。左手では食品を触らない。左手は食器などを運ぶときには用いることもある。
- ・学校は、男女が別々に学ぶ。男の子は男だけの部屋で勉強して、女の子は女だけの部屋で勉強する。
なお、イスラム教徒のことを ムスリム という。
キリスト教
[編集]ヨーロッパ州で広がっている宗教である。南北アメリカ大陸にも広がっている。東南アジアのフィリピンや、オセアニア州にも広がっている。
キリスト教の聖典は「聖書」(せいしょ)である。それによれば、人はみな、神の子イエス・キリストをすくいぬしとすることで、すくわれる。
イエスとは、1世紀の初めごろ生まれた、じっさいの人物であり、クリスマスは、その生まれたことを記念する行事である。この「クリス」の部分はキリストからきている。
聖書では、イエスは十字架にかけられたのち、足かけ三日目の日曜日の朝によみがえっている。
ヨーロッパやアメリカで4月〜5月ごろにある復活祭(イースター)という行事は、これを記念するものである。
キリスト教会で日曜日の朝におこなわれてきた礼拝も同じで、聖書にもそのように日曜日に集まっていたという記録がある。学校や店などの休日が日曜日なのもここからきている。
日本では、アメリカやヨーロッパに広まった暦(こよみ)の制度を明治時代の政府が取り入れて広まったが、キリスト教そのものを取り入れたとはいえない。
日本での仏教と神道
[編集]日本国内だけの信仰だったら、過去には江戸時代や室町時代などには神道と仏教が混ざったような信仰をしていた歴史もある。
仏教は、日本の他にも、中国や韓国などの東アジアや、東南アジアのタイなどに広まっている。仏教は、もともとインドで発祥した宗教であった。しかし今のインドでは、ヒンドゥー教という、仏教とは別の宗教がさかんである。
正確に言うと、日本の仏教は、インドで発祥した仏教のそのままの形ではなく、中国の民族的な宗教など、日本とインドのあいだにある他の国の民族的な宗教の影響も混ざっている。
エルサレムとパレスチナ問題
[編集]中東のパレスチナという地方にある エルサレム という場所に、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の聖地がある。
このエルサレムと周辺の地域で、第二次大戦後にイスラエルが建国を強行した。このことにより、以前にこれらの地に住んでいたパレスチナ人たちが住む場所をうしない、パレスチナ人が難民になった。 パレスチナ人はイスラム教の多い民族であり、イスラエル人はユダヤ教の民族である。
このことが、アラブ諸国のあいだで、イスラエルに対しての反発の理由の一つになっている。 イスラエルがユダヤ教の国なので、アラブ諸国ではユダヤ教への反発が強い。
また、アメリカがイスラエルと同盟を結んでおり、アメリカはキリスト教の多い国なので、そのようなことがアラブ諸国でのキリスト教への反発につながっている。
このようなパレスチナ周辺の政治問題をパレスチナ問題と言う。
宗教と戦争
[編集]イスラエルの紛争は、ユダヤ教とイスラム教の宗教対立と言うよりも、イスラエルと周辺国の対立であろう。
たとえばアメリカはイスラエルの同盟国だが、サウジアラビアやエジプトなどアラブ諸国のいくつかはアメリカの友好国でもある。アメリカはキリスト教の多い国だし、サウジアラビアはイスラム教の国である。宗教が異なっていても、友好国という例は世界中で多い。
2001年には、アメリカ合衆国で 同時多発テロ事件 が起きた。このテロの首謀者が、イスラム教徒を名乗っていた。
そして、首謀者がイスラムの原理主義者だと、欧米日の評論家などから言われた。
これをきっかけに、各国の評論家などが、キリスト教とイスラム教原理主義との宗教どうしの対立が起きている、という評論がなされるようになった。 また、アメリカで、強硬派の有力な政治家らが、キリスト教の支持を強めた。このことも、宗教どうしの対立という見方を助長した面もあるだろう。
しかし、イスラム教の原理主義思想が、テロを引き起こしていると考えるのは、おそらく誤りである。
なぜなら、キリスト教に、原理主義はある。ここで言う原理主義とは、経典の教えを絶対とするという意味である。そもそも宗教は、経典を尊重するのが通常である。
それに、同じ宗教どうしの国々でも、戦争などの対立は起こる。 たとえば仏教の多い東アジア地域でも同様である。たとえば中国は、歴史上では、中国の国内どうしですら、多くの戦争を起こした。韓国や日本も同様に多くの国内戦争を起こしている。日本の戦国時代などの戦争を考えれば分かるだろう。
キリスト教の国どうしでも、たとえばヨーロッパでは何度も戦争が起きている。 イスラム教の国どうしでも、たとえばアラブ諸国では何度も戦争が起きている。
さらに言うなら、「テロは悪いが、戦争は正義だ。」というのは、一部の国の身勝手な考えに過ぎないかもしれない。
テロでは民間人などの非戦闘員が犠牲になることがある。しかし戦争でも、たとえば空襲による住宅街への爆撃などのように、非戦闘員の民間人を標的にした軍事作戦は、近現代の戦争には、ある。
宗教がちがえば、たしかに価値観は大きくことなり、結果的に対立もあるだろう。おそらく歴史上では、ことなる宗教どうしの国の戦争も多くあったのだろう。
しかし近年(2014年に記述)のイランなどイスラム教国と、キリスト教国であるアメリカの外交での対立の原因は、宗教対立と言うよりも、おそらくはパレスチナ問題のような領土問題などが背景になっている。