京大対策/英語

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英文解釈[編集]

概説[編集]

文体の硬い文章と、柔らかい文章が出題される。

素材文のテーマは科学論、哲学論、歴史論などが多く、抽象度は高い。

近年は2題とも論文が多い。

以前は、柔らかい文章として随筆、小説なども出題されたことがある。

また論説文にしても1題はかなり硬質、もう1題は硬さが他方よりも多少抑えられたものが出題されることが多い。

問題(分量/設問形式など)[編集]

基本的には本文の3箇所(年度によって2箇所や4箇所のときもある)に下線部が施され、それを和訳しなさい、という設問が与えられる。

大問2つで小問は6問前後ということになる。

2015年度以降は説明問題の割合が増えつつあった。

2021年度は再び下線部和訳中心の出題に戻った。

下線部は文章の要点であったり訳す際に文脈が重視される部分に施されることが多く、また一文がかなり長く、カンマやダッシュ、等位接続詞が多く含まれ、同格や省略、倒置、挿入など文構造が複雑な部分が特に好まれる。

構文把握とともに文脈を意識してごく自然な日本語に直すことが求められる。

単語帳の訳出表現を丸暗記して、それ以外の表現を認めたがらない頭の固い受験生が一部にみられる。

大抵の場合、そういう傾向の受験生ほど英文解釈の答案の完成度が極めて低い傾向がある。

2004年度は大問Ⅱで短めの二つの文章が出題され、それぞれ2箇所に下線部が施され訳す問題になった。

文章が二つになったが、文章の長さも短かかったので実質的な訳出量は前年度以前とそれほど差は無かった。

2005年度以降は従来通り長文が1つだけの形式に戻った。

2005年度には本文に下線が施されず、設問の内容に適する箇所を発見し訳せという問題が出題された。

訳出箇所の発見は文脈を考えればそれほど困難ではない。

ただ実際は訳出箇所の選定を誤った受験者も多くいたようである。

2006年度以降は従来通りの形式に戻った。

2012年度は大問Ⅱで選択式の問題が2題出題された。

難易度[編集]

まず第一に素材文がかなり硬く抽象的である。

英文のテーマもありきたりな内容では無い。

また、柔らかめの随筆、小説などの場合は独特な言い回しや比喩など多用される文章が出題される。

さらに下線部和訳であるが、直訳したのではほとんど意味が通らない日本語になる。

本文全体の理解の上で、下線部の構文をとり文脈上どう訳すのが適当なのかを考えながら訳を作る必要がある。

正確な構造分析をしてそれを日本語上不自然にならない表現として反映させる日本語運用力との両立が求められる。

近年の傾向[編集]

2007年度はそれ以前に比べて訳出語数が大幅に増加した。

2008年度でもこの傾向が踏襲された。

さらに語数が増加し、受験生に大きな負担を強いた。

2008年度は2007年度に比べて、構文や抽象性といった点では易化した。

難単語が例年よりも多く含まれ、分量もかなり多いという点で2007年度と同様、京大の英文解釈としてはやや難度が高かった。

2009年度の語数は、これまでと一転した。

2008年度の語数の約半分近くにまで激減した。

これはここ10年の京大英語の中で最も少ない語数である。

大問Ⅰは比較的抽象的な英文であり、大問Ⅱは、柔らかみがあり、訳出の表現に苦労しそうな英文であった。

前年に比べて時間的な余裕はかなり生まれた。

京大の英語としては比較的平易な英文を短時間で大量に読解する、という傾向から、抽象度の高い英文・情緒豊かな英文を時間をかけて咀嚼し、じっくり思考する京大本来の傾向に戻った。

対策[編集]

まずは授業、教科書、テキスト、参考書などで英文法、英語の主要な構文、重要英単語などをマスターすべきである。

受験生は京大の傾向として和訳することにばかり目がいってしまう。

文法事項の学習が疎かになってしまいがちだが文法の学習で手を抜くのは本末転倒である。

というのも基礎文法の徹底的な理解があってこそ初めて的確な和訳・解釈が可能となる。

文法をしっかり固めて、穴のないようにしておきたい。

その上で英文解釈の練習として、教科書、テキスト、参考書で取り扱われている文章を和訳する練習をするとよい。

あるいは和訳練習用の参考書や問題集をこなしてもよい。

その際には不自然な日本語になっていないか、文脈に沿った訳になっているかを注意すべきである。

場合によっては全文和訳するのもよい対策になる。

和訳の際には、分からない単語や箇所がいくつかあるはずだから、文意や文脈から判断して適切な意味に訳すことができるようになるために、まずは辞書を引かずに推測して訳してみると良い。

また、英文解釈・和訳の練習と並行して英文の全体を俯瞰し筆者の主張や文章のテーマを掴む練習も積んでおくべきである。

京大の和訳問題は周囲の文脈と関係を持つ部分である場合が多く、文章の構成やテーマを理解できていれば理解できていない場合に比べてスムーズに和訳できる。

長文1題平均40分が与えられた時間である。

最初は時間を気にせずに本文をじっくり読み、自分の最大限のレベルの和訳を完成させることを目標にしたい。

その後、解答解説で本文の内容を理解し、構文がとれているかはもちろんのこと、適切な訳語を用いているかや文脈に沿った訳になっているかという視点から自分の書いた和訳の検討をじっくり行いたい。

京大の問題に慣れてきたら今度は制限時間内で解く事を目標にしてさらに過去問をこなすとよい。

また、解き終わった京大の過去問はそれで終わりではなく繰り返し何度も読むようにしたい。

京大の和訳は文脈や本文理解が重視される。

まず本文を一読し(できればこの段階で本文全体のテーマや内容はおおよそ理解できるのが望ましい)、その後、下線部の吟味にとりかかるべきである。

本文理解と下線部和訳の際にはテーマに関する自分の知識と教養をフル活用して臨みたい。

英作文[編集]

概説[編集]

和文英訳問題と自由英作文問題であり、前者では、非常にこなれた日本語表現が用いられる。

これは逐語訳が非常に難しい。各予備校の京大模試の解答を見ればわかるように、日本語の本意に沿った英訳をすると、かなり高度な単語や表現を駆使しなければならず、とても受験生には成し得ないような解答になる。そのため、高得点を得るためには“いかに簡単な表現に言い換えられるか”の力が必要となる。

2015年度までは出題歴のなかった自由英作文の出題が2016年度より開始され、毎年25点分の配点を占めている。

問題[編集]

まとまった量の文章が与えられ、全文英訳せよ、という問題が出題される。さらに2016年以降は自由英作文も約25点分の配点で出題が始まった。

すなわち従来の和文英訳25点と、新形式の自由英作25点の配点で定着した。

適切な表現を吟味する必要がある。

英作分野の大問IIIと大問IVは、1つの大問につき、20分を費やすのが理想である。

難易度[編集]

和文英訳はこなれた日本語文を訳さなければならない。

近年の傾向(和文英訳)[編集]

2005年度以降、素材文の分量がかなり増加している。

ここ5年間程度で考えると難易差はあまり無い。長いスパンで見ると、問題自体のレベルは高い状態で推移している。

2007年度は分量が多かった。

(1)、(2)ともにこなれた文体で英語に直すのが難しい。英文和訳とともに和文英訳の(1)でも教育に関する問題が出題された。

2008年度は情報量はかなり多い。

(1)は京大らしさが現れている。(2)は息の長い、直訳不可能な文章であり分量も多い。

対策[編集]

まずは英文法や頻出単語、重要構文で英語の基礎を磐石なものにしたい。それとともに例文集などを使用して、頻出のフレーズを数十個暗記しておくことも重要である。日々の授業や参考書などで英文の組み立て方をしっかり習得し、その後、基礎レベルから標準レベルの英作文の問題集やテキストで演習を積み英文を書き慣れておきたい。実際に自分の手で多くの英文を書いてみることが英作文向上の鍵である。

これらの学習を通して英作文の基礎が固まったら京大の英作文にとりかかろう。京大の英作文は、「いかにも入試問題」といった頻出フレーズで表せるような文章が出題されることは無く、実際に日本語で書かれた小説や随筆の一部を切り取ったごく一般的でかつ非常に日本語らしいこなれた文章が出題される。

また、「~だから」という接続詞を含む文があれば理由だ、などと即断してはならないし、「~だから」といった理由を表す接続詞が無くても前文の理由を表しているということもある。

京大英作文においては、ただ単に機械的に訳すのではなく、難解でこなれた部分を前後の文脈から把握し、「結局これらの言葉の意味するところはなにか」を把握することが重要である。すなわち、日本語で情報を理解したあといったんその日本語を忘れ、同様の意味を別の平易な日本語で表すことから取り掛かかり、そしてその平易な日本語を自分の持つ語彙・構文の範囲内で客観的・叙述的に組み立てることがコツである。

また、単に接続詞の有無などで文をとらえるのではなく、各文を全体の文脈の中で位置づけ、その文が文章全体の中で比喩・譲歩・理由・累加など、どのような要素として働いているのかを理解することもポイントである。主客を転換する、2文に分ける、句ではなく節で表す、といったことも京大英作文における重要なテクニックである。

実は知識それ自体はそれほどなくても良い。

とはいえ、合格点を取れる答案を作る学力を一朝一夕で養成するのはまず不可能であるし、日本語を別の日本語で置き換えるという作業もなかなか容易に出来るものではない。やはり日ごろから積極的に英文を書く練習を続けることが重要であり、また、京大英作文の対策として、英語の学習のみならず、難解でこなれた日本語を簡潔な表現に直すという練習も積んでおきたい。問題の別解を考えてみるのも、柔軟な思考力を養成するのに効果的であろう。

やはり和文英訳同様、最初は1問20分の制約を無視して時間を気にせず最高の答案を作り上げるようにしたい。

その後、赤本・青本や、教学社の「京大の英語25カ年」などを使用して、数をこなし、徐々に制限時間内に問題の趣旨に合う答案が書けるようトレーニングを積んでいきたい。

その他留意点[編集]

過去にはごく稀ながら、英文和訳の代わりに要旨要約問題や文中の空欄を選択肢から選んで補充する問題、和文英訳の代わりに自由英作文問題の出題がなされたことがあった。

また、2005年度には、英文和訳大問2つのうち、1つは「~について書かれた文を見つけて、その文を和訳せよ」という指示に変わった。

2006年度以降、年々増加傾向にある。

2008年度では和訳部分の総語数は、数年前までの約2倍近くまで増加している。

構文や訳をじっくり吟味する時間や見直しの時間がほとんどとれない。

制限時間内に全問題を解き終えることさえ困難である。

精読力のみならずかなりの速読力をつけないと対応できないので普段から京大レベルの難解で抽象的な文章を速読する練習を積んでおく必要がある。

また時間配分等もしっかり考えておくべきである。

2009年度は一転して語数が大幅に減少した。

来年度以降、再び2007・2008年度の語数に戻るともわからない。

油断は禁物である。