公認会計士試験/平成30年第I回短答式/財務会計論/問題9

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
←前の問題
次の問題→

問題[編集]

 付随費用の処理に関する次の記述のうち,正しいものの組合せとして最も適切な番号を一つ選びなさい。(8点)

ア.上場株式を売買目的有価証券として取得した場合,その取得に要した手数料などの付随費用は,取得時の費用として計上し,売買目的有価証券の取得原価に算入してはならない。これは,売買目的有価証券は時価評価されて,一期間中における時価の変動差額を投資の成果とみなすためであり,その投資の成果を正確に測定するためには,付随費用を除外しなければならないからである。

イ.委託販売を行っている場合,商品を受託者(販売代理人)に移送することに伴う輸送費と,受託者が当該商品を受領するときに生じる検収費用は,ともに委託商品(積送品)に係る不可避的な付随費用であるから,委託商品の取得原価に算入する。なお,受託者側の付随費用が販売後に連絡されてくる場合であって,当該付随費用が受託者による第三者への販売分と在庫分(保有分)とに分けられるときには,後者のみを棚卸資産の取得原価に算入する。

ウ.大型で高額な製造設備を海外から購入した場合,海外からの輸送費,輸送中の保険料,設備の設置費用などは,不可避的な付随費用としての性格をもつ限り,当該設備の取得原価に算入する。一方,新設備を導入したことにより保守点検組織を改編した場合,その改編に伴う従業員研修および訓練のための費用は,当該設備の取得原価には算入できない。

エ.連結財務諸表上,他企業を買収することに要した支払対価が,取得した資産と負債の公正価値の差(取得した正味の価値)よりも大きい場合,無形資産である「のれん」が生じる。買収に当たって必要となったコンサルタント料は,支払対価に含めることが認められており,当該コンサルタント料だけ「のれん」の額も大きくなる。これは,支払コンサルタント料を付随費用として「のれん」の取得原価に算入したものとみなすからである。

1. アイ
2. アウ
3. アエ
4. イウ
5. イエ
6. ウエ

正解[編集]

4

解説[編集]

ア.上場株式を売買目的有価証券として取得した場合,その取得に要した手数料などの付随費用は,取得時の費用として計上し,売買目的有価証券の取得原価に算入してはならない。これは,売買目的有価証券は時価評価されて,一期間中における時価の変動差額を投資の成果とみなすためであり,その投資の成果を正確に測定するためには,付随費用を除外しなければならないからである。売買目的有価証券の取得原価に算入する。「金融商品会計に関する実務指針」56項

イ.委託販売を行っている場合,商品を受託者(販売代理人)に移送することに伴う輸送費と,受託者が当該商品を受領するときに生じる検収費用は,ともに委託商品(積送品)に係る不可避的な付随費用であるから,委託商品の取得原価に算入する。なお,受託者側の付随費用が販売後に連絡されてくる場合であって,当該付随費用が受託者による第三者への販売分と在庫分(保有分)とに分けられるときには,後者のみを棚卸資産の取得原価に算入する。「棚卸資産の評価に関する会計基準」6-2項

ウ.大型で高額な製造設備を海外から購入した場合,海外からの輸送費,輸送中の保険料,設備の設置費用などは,不可避的な付随費用としての性格をもつ限り,当該設備の取得原価に算入する。一方,新設備を導入したことにより保守点検組織を改編した場合,その改編に伴う従業員研修および訓練のための費用は,当該設備の取得原価には算入できない。「連続意見書第三」四1

エ.連結財務諸表上,他企業を買収することに要した支払対価が,取得した資産と負債の公正価値の差(取得した正味の価値)よりも大きい場合,無形資産である「のれん」が生じる。買収に当たって必要となったコンサルタント料は,支払対価に含めることが認められており,当該コンサルタント料だけ「のれん」の額も大きくなる。これは,支払コンサルタント料を付随費用として「のれん」の取得原価に算入したものとみなすからである。含めて「のれん」の取得原価に算入することはできず,発生した事業年度の費用として処理する。「企業結合に関する会計基準」26項

参照法令等[編集]

←前の問題
次の問題→