公認会計士試験/平成30年第I回短答式/財務会計論/問題8
問題
[編集]次の〔資料〕に基づき,貸借対照表に計上すべき引当金の合計額として最も適切なものの番号を一つ選びなさい。(8点)
〔資料〕
1.役員賞与
当社は,目標利益を上回る経営成績になることが判明したため,定時株主総会で役員賞与に関する議案を提出する取締役会決議を行った。代表取締役に2,500 千円,取締役3 名に各1,000 千円,監査役3 名には各200 千円を支給する予定である。なお,「役員賞与に関する会計基準」に従うこと。
2.工事損失
A工事の請負金額は32,500 千円であり,B工事の請負金額は19,200 千円である。期末の未成工事支出金には,A工事代として27,000 千円,B工事代として17,500 千円が計上されている。A工事の実行予算残工事予定額は,15,000 千円である。B工事の実行予算残工事予定額は,1,250 千円である。両工事とも既に計上された損益はない。ただし,A工事とB工事とは別契約であり,当社の規程により両工事とも工事完成基準により会計処理をしている。なお,「工事契約に関する会計基準」に従い,棚卸資産と工事損失引当金を相殺表示せず,両建てで表示するものとする。
3.損害補償損失
当社は,完成し引き渡した工事について,完成時期が大幅に遅れたことにより,発注元から,機会利益を逸したことによる損失の賠償請求訴訟を提起されている。期末後の時点では,裁判所から当社に21,200 千円の和解金の支払案を提示されたが,当社は,上級審を含め裁判を継続する予定である。当社の顧問弁護士も,相手方の主張は事実誤認が著しいため,当社の主張が認められる可能性が高いと判断している。なお,企業会計における偶発債務および引当金に関する原則的な処理に従うこと。
4.退職給付
当社は小規模企業等であるため,退職給付引当金を,比較指数を求めて計算する簡便法で算定し計上している。当社の退職金制度は,非積立型の一時金制度である。基準年度の比較指数は,0.8 であり,計算基礎等に重要な変動はない。前期末の自己都合期末要支給額の合計は,8,900 千円である。当期の自己都合要支給額について,増加は1,100 千円で,退職による減少は3,000 千円である。なお,「退職給付に関する会計基準」に従うこと。
- 1. 15,370千円
- 2. 15,750千円
- 3. 20,820千円
- 4. 21,200千円
- 5. 36,950千円
- 6. 42,400千円
正解
[編集]4
解説
[編集]※以下,単位は千円
- 役員賞与引当金
- 代表取締役2,500+取締役1,000×3人+監査役200×3人=6,100
- A工事損失引当金
- 請負金額32,500-(未成工事支出金27,000+残工事予定額15,000)=△9,500
- ∴9,500
- B工事損失引当金
- 請負金額19,200-(未成工事支出金+残工事予定額1,250)=見積利益450
- ∴0
- 損害補償損失引当金
- 将来の特定の費用又は損失の発生可能性が高くなく,引当金要件を満たさないためゼロ
- 退職給付引当金
- 当期末自己都合要支給額:前期末8,900+当期増加1,100-当期減少3,000=7,000
- ∴自己都合要支給額7,000×比較指数0.8=5,600
参考
[編集]- 役員賞与に関する会計基準
- 工事契約に関する会計基準20項21項
- 企業会計原則注解#注18_引当金について
- 退職給付に関する会計基準の適用指針48項(1)50項(2)①