出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
- 自然数(Natural (numbers 以下略す); 集合論的な記号)
- から、ずつ足しあげていった数(一般に初等数学ではを含まない)。物を数え上げる数。
- 例:
- 素数
- より大きい自然数で、正の約数(因数)がと自分自身のみであるもの。
- 例:
- 合成数
- 素数ではない自然数。
- 例:
- 整数(Integers 記号)
- 自然数、および自然数にをかけた数。
- 例:
- 有理数(Rational 記号)
- 整数である(ただし、)について、で表す数。の時、整数となるので、整数は有理数の部分集合である。
- 例:
- 実数(Real 記号)
- 数直線上に表される数
- 例:
- 無理数(Irrational 記号)
- 有理数ではない実数をいう。
- →無理数はさらに代数的数と超越数に分けられる。
- 複素数(Complex 記号)
- 実数であるについて、という性質を持つ虚数単位を用いて、という形で表される数。を実部、を虚部といい、虚部の時、実数となるので、実数は複素数の部分集合である。また、虚部の時、をを虚数(imaginary)といい、特にの時のを純虚数という。
- →虚数単位を含む複素数も代数的数と超越数に分けることができる。
-
- ※(参考)代数的数と超越数
- 方程式:( は正の整数、各 は有理数)の解となる数を代数的数と言い、そうでない数を超越数という。
- 代数的数の例
- 有理数: は、の解。
- 根号を含む無理数:
- 例
- は、の解のひとつ。
- は、の解のひとつ。
- は、の解のひとつ。
- 実部・虚部が共に有理数である複素数:
- 有理数であるについて、という形で複素数が表されているとき、は、方程式の解のひとつである。
- 超越数の例 - 多くは証明されているが、未証明のものも多い。
- 円周率:、自然対数の底(ネイピア数):
- などを有理数、を無理数とした時の、。
- などを代数的数とした時の、。また、など。
- を代数的数とした時の、,(弧度法)。
- なお、度数法の場合、をなど、度数付きの有理数とした時、,は代数的数となる。
- とを含むずつ足しあげていった個の数で表記し、最大の数にが足されると、次の桁のとして表記する記数法をn進法といい、この時のnを基数という。数字の列がn進法による表記(n進数)であることを表すのに、と表記することもある。
- 5進法(0,1,2,3,4 を使った記数法)の計算例
- 一般に使用されるのは10進法であり、「ダース」などの単位に12進法、時計などに60進法の名残が見られるが一般知識として知っておけばよく、計算などを熟知しておく必要はない。ただし、2進法、8進法、16進法はコンピュータの計算等で利用されているので後述する。
- n進法で、と記された数の大きさは、である。
- n進法への変換
- をで割った商を、余りをとする。さらに、をで割った商を、余りと順々に除算を繰り返し、となった段階でこの操作を止めて、と並べた数の列が、のn進法の表記となる。
- 例1:430 (10進法表記)を、8進法で表示する。
- :, : であるから、をさらにで割る。
- →:, : であるから、
- 例2:430 (10進法表記)を、12進法(10をa、11をbで表す)で表示する。
- :,→ : であるから、をさらにで割る。
- →:,→ : であるから、
- n進法において、の量を表すのに、1より小さい数であることを意味する点「小数点」をおいて、基数であるnで割った数に応じて、小数点の右に並べる記数法。
- n進法で、と記された数の大きさは、である。
- 有限小数と無限小数
- 有限桁の数字で表せる小数を有限小数と呼び、有限桁で表せない小数を無限小数と呼ぶ。
- 有限小数
- 分数(ただし、(は整数))において、n進法で表示する時、の素因数が、基数の素因数である時、は有限小数となる。これは逆も成立するので必要十分条件である。
- 例)10進法で表示する時、有限小数となるのは、分母が、の時である。
- 無限小数
- 無限小数には、ある数字列が無限に繰り返される循環小数と、そうではない非循環小数に分類される。無限連続は、表示最終桁に続けや等を付して表示される。循環小数で繰り返される部分を循環節といい、記法の一つとして、循環節の始点と終点(1個の数字の場合、その数字のみ)をドットで示す方法がある。
- 例)10進法表記で
- 循環小数は、循環節の桁数分、を掛けて左にシフトし、それから元の数を引くことにより、分数として表記される。
- 例)上記例示式
- (式1),(式2)→式2-式1 :
- (式1),(式2)
- →式2-式1 :
- (式1),(式2)
- →式2-式1 :
- n進法の小数の変換
- n進法から10進法へ
-
- 有限小数の場合
- と記された数の大きさは、であるので、これを計算する。
-
- 例1.
-
- 例2.
-
- 例3.、 3進法は、分母が、ではないので、循環小数となる。
-
- 循環小数の場合
- について、循環節の桁数分、左にシフトし(基数の時、を掛ける)、それから元の数を引いて計算する。
- 例4. を10進法の小数で表す。
- -① とおいて、3桁ずらすために両辺にをかけ、-②を得る。
- ②-①:
- であるから、
-
- 10進法からn進法へ
-
- に関し、n倍し小数点を超過部分を小数点の右におき、それを除いた数を再びn倍し小数点超過部分をその数の右におくという手順を繰り返す。
-
- 例5.を2進数にする。(上記例1.の逆の操作)
- ①→②→③
- ①②③の下線の数を小数点以下順に並べる。→
-
- 例6.を5進数にする。(上記例2.の逆の操作)
- ①→②→③
- ①②③の下線の数を小数点以下順に並べる。→
-
- 例7.を3進数にする。(上記例3.の逆の操作)
- ①→②→③
- ①②③の下線の数を小数点以下順に並べる。→
-
- 例8.を2進数にする。(上記例4.の逆の操作)
- ①→②→③→④:①と同じ
- ①②③の下線の数を小数点以下順に並べる。→
- 自然数を構成する素数を素因数といい、素数の積の形で表すことを素因数分解という。
- の素因数は、なのでのみの1個、の素因数は、なのでとの2個、の素因数は、なのでとの2個。
- 自然数が相異なる素数を用いてと素因数分解されるとき、
- の約数の個数は
- また、その約数の総和は=
- 複数の数について、共通する約数を公約数という。複数ある公約数のうち最も大きいものを最大公約数という。これら複数の数について、素因数を有さない状態を(最大公約数がである状態)、互いに素という。
- 自然数,に対し、1以上以下のの倍数の個数。:
- ただし、は以下最大の整数を表す。
- 自然数,,に対し、以上以下のの倍数の個数
- 自然数,について、それらの最大公約数をg、最小公倍数をlとすると、以下の関係が成り立つ。:
- 奇数の和:
- 整数解をもつ整数係数の代数方程式を不定方程式(変数の次数により次不定方程式)といい、その整数の求めることを不定方程式を解くという。未知数よりも条件式が少ないなどの場合、整数解が無限に存在して定まらないことがあるので,不定ということばが用いられている。初等数学においては、基本的に1次不定方程式をさす。
- 以下、を整数とする。
- を互いに素とするとき、1次不定方程式を満たす整数解:
- (は整数)
- が整数解を持つ。は互いに素。
- 以下、必要十分条件であることを証明する。
- 命題「が整数解を持つ。は互いに素。」が真である証明
- 対偶である命題「が1ではない公約数を有する。の解は整数とならない。」は真であるので、元の命題も真である。
- が1ではない公約数を有するならば、とおけば、は、となり、となる。
- 方程式において、はともに整数であるので、はともに整数となることはない。
- 命題「は互いに素。が整数解を持つ。」が真である証明
- にからまでかけた積()をで割った余りは全て異なっている(※)。とある整数の積をで割った余りがとなる、ある整数をとすると、はの倍数であるのでという等式が成立する。これを変形するととなり、方程式について、という整数解を得られる。
- ※の証明 - 背理法を用いる。
- にからまでかけた積()をで割った余りに重複するものが存在すると仮定する。
- 重複する積をとすると、となり、差をとるとが成立する。
- は、が互いに素、という条件を満たすことはないため、仮定と矛盾する。
- したがって、にからまでかけた積をで割った余りは全て異なる。
- が整数解を持つ。はの整数倍数。
- 以下、必要十分条件であることを証明する。
- 命題「が整数解を持つ。はの整数倍数。」が真である証明
- は、の倍数であるので、が共に整数ならばもの倍数となる。
- 命題「はの整数倍数。が整数解を持つ。」が真である証明
- とおくことができ、このとき、は互いに素である。
- は互いに素であれば、となる整数の組が存在する。
- にをかけて、(左辺)、(右辺)であって、は、整数解を持つ。
が 以上の整数として、を で割った剰余が を で割った剰余と等しいときに、「二つの整数が法 に関して合同である」といい、以下の記号で示す。
-
- 代数的性質
- ならば任意の整数 に対して
-
- したがって、 ならば、
-
- 逆の命題※「 ならば、」は、常に成立するものではない。
- ならば、
- は、以下の3式のいずれかが成り立つ時に成立しており、一意に命題※は真とはならない。
- ①
- ②
- ③かつかつ
- したがって、かつとが互いに素ならば、
- (ただし、)
-
- 二項定理より、
-
- 特に、
-
- フェルマーの小定理(詳細は、初等整数論/フェルマーの小定理参照)
- を素数とし、をの倍数でない整数( とは互いに素)とするときに、
-
- 加比の理
- ならば、 (は、である任意の実数)
- ならば、 (は、である任意の実数)
- 複素数の基本
- 以下においては実数。
- 複素数の相当条件
- ならば、
- 特に、 ならば、
- 複素数の絶対値
- 複素数 の絶対値の定義;
- 複素数の四則計算
- 複素数として、
- 加減算
- 乗算
- 除算
- 共役複素数
- 複素数 の共役複素数の定義;
- (実数)
- (実数)
- 複素数の逆数
- 複素数 の逆数;
- 特に、である時、
- 1の立方根
- を解くと、、虚数解のいずれかをとおくと、以下の関係が成立している。
- (複号同順)、従って、は、でない方の虚数解で、1の立方根は( 1, , (=) ) となる。
- ,
- ,
- 複素数のべき乗:(ド・モアブルの定理)
- 1の乗根
- の解を、とすると、
- 複素数 の累乗
-
- ただし、
- (オイラーの公式)
- 集合と要素
- ある条件を満たすものの集まりを集合、集合をつくっている各々を、その集合の要素または元という。
- あるが集合の要素である時、と表す。
- あるが集合の要素でない時、と表す。
- 集合を表現するには、集合を構成する要素を列挙する方法(外延的表記・名簿式表記)と、要素の性質を記述する方法(内包的表記)がある。
- [表記例]偶数である、10以下の自然数の集合
- 集合を構成する要素を列挙する方法(外延的表記・名簿式表記)
- 要素の性質を記述する方法(内包的表記)- 表記法が一意に決められているものではない。
- は、10以下の偶数である自然数
- 集合でよく使われる記号
- : 自然数全体の集合
- : 整数全体の集合
- : 有理数全体の集合
- : 実数全体の集合
- : 複素数全体の集合
- 部分集合
-
- 集合に関して、である全ての要素(これを、しばしばと表す)について、が成立する時、はに含まれる(はを含む)といい、と表記する。集合がこの関係にある時、はの部分集合であるという。
- 集合に関して、である全ての要素についてが成立し、である全ての要素についてが成立する時、とは等しい、または相等であるといい、と表記する。
- 集合に関して、である全ての要素についてが成立しているが、である要素の一部(これを、しばしばと表す)についてである時、はの真部分集合であるといい、(または) と表記する。
- 全体集合と補集合
-
- 集合を考察するにあたって、各々の集合が真部分集合となり大枠の集合を全体集合という。全体集合は、しばしば、と表記される。
- 例.「偶数」を取り扱う時、「偶数」の前提である「整数」が全体集合となる。
- ある全体集合にあって、その部分集合に関して、の要素であって、の要素でないものの全体の集まりをの補集合といい、(または、など)で表す。
- 例.「整数」において、「奇数」は「偶数」の補集合である。
- 交わり(共通部分)、結び(和集合)、空集合
-
- 交わり(共通部分)
- 集合に関して、かつをみたすの集合を交わり(共通部分)といい、と表記する。
-
- 結び(和集合)
- 集合に関して、またはをみたすの集合を結び(和集合)といい、と表記する。
-
- 空集合
- 要素が1つもない集合を空集合といい、またはで表す([ファイ]ではない)。
- 集合に関して、共通部分となる要素が存在しない時、の集合は、となる(右図参照)。
- 演算規則
- 交換法則
- 結合法則
- 分配法則
- 二重否定
- ド・モルガンの法則
- 集合の要素の個数
- 正しいか正しくないかを明確に判定できる文章や数式を命題という。
- 命題が正しい場合、その命題は真であり、正しくない場合、その命題は偽である、という。
- 命題を成立させない具体的な例を反例といい、反例が1個でも存在する命題は偽である。
- 単純命題と複合命題
- 単純命題
- これ以上命題として分割できない記述
- 厳密な定義は初等数学としては難しいので、以下に記述する付加要素のない命題と理解することで足りる[1]。
- 複合命題
- 命題[2]やに操作を加えた記述。上記の集合論と関係が深い。また、これらの操作を意味する記号(,,,など)で表した式を論理式という。
- 論理式の演算は、を、,を、をとした集合の演算に相等しい。
- 否定
- 命題「ではない」ことをいい、またはで表す。補集合を参照。
- 例)命題:に対し、否定命題:
- 「否定」によって、命題の真偽は逆転する。すなわち、命題が真であれば、は偽となり、偽であれば真となる。
- 例)命題「彼は日本人である」が真であれば、否定命題「彼は日本人ではない」は偽となる。
- 連言・論理積[3]
- 命題「かつ」であることをいい、で表す。共通部分を参照。
- 例)命題:が2の倍数、命題:が3の倍数である時、命題:は2と3の公倍数(6の倍数)
- 命題「かつ」命題がともに真であるときのみ、連言命題は真となり、その他は偽となる。
- 例)「命題:が2の倍数」が真であり、かつ「命題:が3の倍数」が真である時のみ、「命題:は6の倍数」は真となる。
- 選言・論理和[3]
- 命題「または」であることをいい、で表す。和集合を参照。
- 例)命題:が2の倍数、命題:が3の倍数である時、命題:は2の倍数または3の倍数のいずれか
- 命題「または」命題のいずれかが真であるとき、連言命題は真となり、その他(命題・命題のいずれも偽であるとき)は偽となる。
- 例)「命題:」が真である、または「命題:」が真である時、「命題:」は真となる。
- 仮定と結論(条件文、含意[3]、論理包含[→wikipedia参照][3])
- 「もし」命題「ならば」である関係をいい、で表す。初等数学で命題という場合、ほとんどはこの形態(条件命題)のものを指す。
- 初等数学ではの命題を「仮定(前件[3])」、命題を「結論(後件[3])」などという。
- の真偽
- 「ならばである」関係は、即ち、「(であってかつでない)ことはない」と言い換えることができる。
- これを、論理式で表すと、
- となる。
- 全称命題と存在命題(特称命題、単称命題)
- ある集合に属する要素が、すべて命題を満たすことを、全称命題といい、などと表記する。
- ある集合に属する要素のうち、命題を満たすものがあることを、存在命題(特称命題、単称命題)といい、などと表記する。
- が真である時、「である」ことを「である」ことの必要条件、「である」ことを「である」ことの十分条件という。
- が真であり、かつ、が真である時、命題、は互いに必要条件・十分条件の関係となり、これを必要十分条件または必同値の関係にあるという。
- の関係に対して、
- を逆、
- を裏、
- を対偶
- という。逆と裏は、対偶の関係にある。
- 例)条件命題を(は式:を満たす。) (はを満たす。)とした時、
- 逆:(は式:を満たす。) (はを満たす。)
- 裏:(は式:を満たす。) (はを満たす。)
- 対偶:(は式:を満たす。) (はを満たす。)
- となる。
- 例に示されるように、ある命題が真の時であっても、逆と裏が真であるとは限らない(所与の命題に真偽を一致させない)。
- 上記の例において、逆の命題は必要条件に、裏の命題は十分条件に、を欠いている。
- 一方、ある命題が真の時、対偶は常に真である(所与の命題に真偽を一致させる)。
- 以上の性質は、論理式の演算で証明される。
- (※)
- 逆
- :※と不一致
- 裏
- :※と不一致
- 対偶
- :※と一致
- 命題において、既知の定理,すなわち正しいことがすでに証明されている命題を基礎にして,仮定の真偽を論理的に導くことを証明という。
- 証明の方法には、直接証明法と間接証明法がある。
- 直接証明法 命題そのものが真であることを証明する方法
- 間接証明法
- 背理法
- 命題を証明するのに代えて、ではないと矛盾することを導き、が真であることを証明する方法。
- 対偶法
- 命題が真であることを証明するのに代えて、対偶命題が真であることを証明する方法。
- 転換法
- 命題が重複のない個の命題で構成されており、命題が重複のない個の命題によって構成される時、条件命題が全て真であるならば、が真であると言え、逆の命題も真となる。
- ^ 単純には「1つの主語に対して 1つの平常文である(否定や疑問ではない)述語が帰属する」ことがらと理解して良い。「彼は(主語)、日本人です(述語)」は命題の典型であるし、「」という命題では、「」が主語であり、「(1に等しい)」が述語となる
- ^ 単純命題には限らない。複合命題をさらに複合させる場合もある。
- ^ 3.0 3.1 3.2 3.3 3.4 3.5 論理学等における用語。