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実変数 の複素数値関数 が与えられているとき,
となる関数 を の原始関数という.
例87
は の原始関数.
を任意の定数とするとき, も の原始関数となる.これを,
と表す.時には を省略することがある.
さてこのように定義すると を実関数とし,
なるとき,
すなわち,
が成立する.
事実, の原始関数の一つを,
とすると,微分の定義[1]から,
であるが,これが,
に等しいのであるから,相等の定義[2]から,
となる.これは が実関数 の原始関数であることを意味するから,
と書ける.ここに は任意の実定数である.ここで とおくと,
すなわち,
を得る.
例88
の実部と虚部を等置することにより,
を得る[3].
複素数値関数 の定積分を,
と定義する.このとき微分積分学の基本公式が成立する.
微分積分学の基本公式
証明
実関数に対する基本公式,
は既知であるから,第 2 式に を掛けて加えればよい.
また定積分に関して次の性質が成立する.
複素数値関数の積分の基本的性質
[Ⅰ] を複素数値関数, とすれば
[Ⅱ] を複素数値関数とするとき,
[Ⅲ] を複素数値関数, は実数値関数とする.このとき,
ここに,.
[Ⅳ]
ここに は複素数値関数
[Ⅴ] を任意の有限区間で積分可能な複素数値関数とする.
ならば
は存在する.
以下に Ⅳ の証明だけ与えておく.
ほかは,実関数に関する同様な公式を既知とすれば,複素数値関数の積分の定義から簡単に得られる.
公式Ⅳの証明
は複素数であるから,その偏角を とおいて,極形式で表すと,
よって,
公式Ⅰを用いて
定積分の定義により,
となる.左辺は実数であるから,右辺の第 2 項は である.また,
[4]
であるから,実関数に関する公式Ⅳを用いると,
を得る[5].
- ^ 式 (4.3)
- ^ 複素数の相等の定義
- ^
また,
- ^
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