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制御と振動の数学/第一類/複素数値関数の Laplace 変換/複素数値関数の微分積分学/複素数値関数の微分

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

に関する微分を,

(4.3)

と定義する.したがって が微分可能とはその実部も虚部もともに微分可能であることを意味する. その他の性質もこれに準じて考えるものとする. この定義から直ちに,次の基本的性質が従う.


複素数値関数の微分の基本的性質

が複素数値関数ならば,

(1)

(2)

を複素数値関数, を実数値関数とすれば,


例84

これらの事実を,微分の定義 式 (4.3) に従って証明せよ

解答例

とする

Ⅰ(1)

Ⅰ(2)

II



例85

を微分せよ.

解説

であるから,

ここで

であるから,

よって最初に戻って

すなわち が複素数のときも,実数のときと同じ公式,

が成立する.

この例題から,複素係数の微分方程式,

(4.4)

の解が,

であることが分かる.式 (4.4) において

とおいて,実部と虚部に分けると,実係数の連立方程式,

(4.4b)

となる[1]. この解は の実部と虚部であって,

となる.ここに である[2][3]. あるいは と極形式で表すと,

を得る[4][5]

さて 式 (4.4) を微分記号 を用いて表すと,

と書ける.この式に を代入すると,

となることは,複素数値関数の微分の基本的性質Ⅰの (2) から容易に分かる[6].よって,

(定数)

であるから,上述の解 が得られる.この技法を一般化して,微分方程式,

(4.5)

の解を求めてみよう.

とおいて,上式に代入すると,

となる.これより,

高々 次の の多項式

を得る.この多項式の係数は複素数でよい.また式 (4.5) の解の基本系は,

である.

次にもっと一般の複素係数の微分方程式,

(4.6)

を考えよう.ここに係数 はすべて複素数とする.この場合も実係数の微分方程式の場合と同様に,重ね合わせの原理定常性の原理などが成立することは明らかであろう.複素関数の微分に関する基本的性質Ⅰ・Ⅱがあるので,前章での証明をなんら変更する必要はない.

また,微分方程式(4.6)に付随する特性多項式が,

と因数に分解できるとき,

も成立することも同様である.前章では述べなかったが,係数が実数であっても複素数であっても,次の補題が成立する.

補題 4.1

ここに, は互いに素ならば,

かつ

が成り立つ.

証明

が互いに素であるから,

となる多項式 が存在する.[7] よって,

が成り立つが,仮定を満たすとき左辺は となるから, を得る.


同じ条件の下に,

ならば, は 1 次独立である.

証明は演習問題とする.[8] 以上は同次方程式の場合だけを述べたが,非同次方程式の場合も前章と同じ結果が成立する.



  1. ^

  2. ^ 連立微分方程式式 (4.4b) を実際に解いてみる.
    …①
    …②
    にて,①の両辺を微分すると,
    …①'
    ①'に②を代入して, …③
    ①より だからこれを③に代入して,


    これが連立方程式から導かれた,解くべき 2 階の微分方程式で,初期条件は
    として微分方程式をラプラス変換すると,


    でラプラス変換公式を当てはめられるようにさらに変形して,

    この原像は,

    これで が再現できた.①より を計算すると,




  3. ^ の実部と虚部を実際に取り出してみる.

    と先の連立微分方程式の解と一致する.
  4. ^ にて の加法定理に持ち込む.,したがって だから,


    も同様に,


  5. ^ を極形式に変形するとどうなるか?


  6. ^


    これは 補題 3.3 の (ii) を再現している.
  7. ^ 多項式における互いに素をこのように定義してもよい.ベズーの等式によれば整数 が互いに素であるとき, なる整数 が存在し,これは多項式であっても同じ.
  8. ^ を導く.
    …① の両辺に を働かせる.

    …②
    ここで,,一方 補題4.1より, はありえない,すなわち
    ②が成立するためには が必要. 同様にして①の両辺に を働かせれば, の結論を得る.よって .以上により は 1 次独立である.