制御と振動の数学/第一類/連立微分方程式の解法/例題による考察/(sI-A)^-1の計算

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

の計算は逆行列を求める普通の計算に従えばよいのであるが、次のように計算することができる. 以下,行列 の行列式を または などで表すことにする.

式 (5.8) に見られる通り, の各要素は共通の分母として,

を持つので,各要素は の形をしている.そこで,

は行列)

とおいて を求めることを考えよう. まず とを両辺にかけると,

となる.この両辺の係数を比較すると,

の係数:
の係数:

これより を得る.よって,

を得る.この原像は,

となって,式 (5.8) と一致する.

例112

例 105 に対して を計算せよ.

解答例

であるから,


とおいて両辺に左から をかけると,

…①
の項:
の項:

より


なお,①の の項を等置すると,


より,

…②

②は に関する Cayley–Hamilton の定理を示している.



例113

例 106 に対して を計算せよ.

解答例

であるから,


とおいて両辺に左から をかけると,

…①
の項:
の項:

より

なお①の の係数を比較して,


…②

②は に関する Cayley–Hamilton の定理を示している.