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以上の議論によって, の定常線形微分方程式,
(3.27)
には, 個の 1 次独立な解が存在することが分かった.またその 1 組を具体的に求める方法も全章で学んだ.それをいま,
としよう.重ね合わせの原理により,その 1 次結合
(3.28)
もまた式 (3.27) の解であることを知っている.
ここでは 式 (3.28) が
式 (3.27) の一般解であること,
すなわち任意の初期値,
を与えたとき,
が任意の と に対して常に解けることを示そう.それは次の定理によって保証される.
定理 3.5
の 1 次独立な 個の解を,
とすると,次の行列式,
は決して になることはない.この行列式を Wronsky の行列式といい,
または
などで表す.
証明
いまある に対して Wronsky の行列式が となったとする.このとき 1 次方程式,
には,すべては でない解が存在する.それを,
としよう.この値を用いて
を作れば,これは の解であって,しかも,
を満たす.よって解の一意性から, でなければならない.
このとき の 1 次独立性から,
でなければならない.これは矛盾である.
例81
が 1 次独立で, となる例を作れ.
解答例
階の線形定常常微分方程式の任意の解は, 個の独立な解を見出せばその 1 次結合で表されることが分かった.
この 個の独立な解のことを,解の基本系または基本解系という.この事実は次の定理にまとめられる.
定理 3.6[1]
階の線形定常常微分方程式の解の全体は, 次元ベクトル空間を作る.その基底は解の基本形である.
- ^ 定常という仮定は実は不要である.