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制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

さて,これまでの議論は前座であり,ここからが本論となる.

前章で述べた Laplace 変換による解法を顧みて,果たして正しい解が得られているのか否かを吟味しよう. 取り扱う対象は定数係数の線形微分方程式,

(3.1)

および,

(3.2)

であり,いずれも初期値,

(3.3)

を満たす解を求めることが問題であるとする.解法の手順は次の通りであった.


(3.1) を初期値,式(3.3)の下に Laplace 変換すれば,

である.これを について解けば,

(3.4)

ここに,

(3.5)

となる.同様に式(3.2)(3.3)を Laplace 変換し を求めると,

(3.6)

となる.そこで,

とすると,式(3.1)(3.3)の解は,

(3.7)

(3.2)(3.3)の解は,

(3.8)
[1]

となる,ということであった.ここに 合成積を表す.

これだけの議論で果たして式(3.7)(3.8)(3.1)(3.3)(3.2)(3.3)の解であると結論することができるであろうか. それを吟味することが,この章の目的である.

吟味の詳細に入る前に,これまでで得られた結果をまとめておこう.

定理3.1(3.1)(3.3) あるいは 式(3.3)(3.3) の解の Laplace 変換 に対して次の事実が成り立つ.

(Ⅰ) 分母は初期値に無関係に,微分方程式の形だけで決まる.

(Ⅱ) 分子は初期値によって決まる.しかも の分子多項式

は初期値 と 1:1 に対応する.

以上より,異なる初期値には異なる が対応する.


さらに吟味を続ける.上の解法の手順を要約すると,

  • 《作業 1》 解 が存在すると仮定して, を計算する.
  • 《作業 2》 求まった に対して となる を見つける.
  • 《作業 3》 が解である.

となる.この推論は正しいのであろうか.このようにまとめられると,誰しも不安を感ぜざるを得ないであろう.この不安を取り除く方法は,

  • (1) が解であることを直接確かめる

のが一番の良策である.さらに,

  • (2) 以外に解がない

ことが確かめられたらさらによい.その上,

  • (3) で初期値が与えられたときの解の見つけ方

を知っておくことも必要である.

この章では,線形定常常微分方程式論からの若干の話題を準備しながら,これらの問題の解決を与えることにしよう.


  1. ^ を過渡解, を定常解と呼ぶこともある.