制御と振動の数学/第一類/Laplace 変換による解の吟味/解の構造と一般解/非同次の場合

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まず次の例から始める.

Laplace 変換すると,

ここに, は高々 3 次式の多項式である.

であるから,

となる.ここに は未知の定数である. を適当に選ぶことによって,任意の初期条件を満たす解が得られる. よってこれが一般解である.この解をみると,

非同次式の一般解 = 同次式の一般解 + 非同次式の特解

という形をとっている.この特解は,その解法からわかるように,初期値がすべて の解[1]である. 一般に特解というのは,初期値を指定した特定の解という意味で,初期値が の解という意味ではない.一般には次の定理が成立する.


定理 3.6

非同次線形微分方程式の任意の解は,非同次式の特定の解と同次式の解の和で表される.

証明

非同次式を

(3.29)

と書く.いま,

式 (3.29) の任意の解
式 (3.29) の特定の解

とすると,

が成立する.これにより,

となり,

同次式の解

すなわち,

同次式の解

を得る.


例82

以下は大学入試問題に出た. のとき,

となるように を定めよ.

容易に分かるように,

は微分方程式,

(3.30)

の解の基本系である.したがってそれらの 1 次結合 も解である. それは重ね合わせの原理と定常性の原理からの帰結である. よってまた

も解であり,これが基底の一つ に等しくなるようにせよという問題である. これは三角関数の加法定理を用いて

と求まるが,実はこれには物理的背景がある. 式 (3.30) は単振動の方程式,

と同じである. のときの解である. また のときの解である. 振動の周期は であるから,(半周期)ととると の項は相殺する. の奇数倍でもよい.


この種の現象は実際目で見ることができる.(図:「有限時間整定応答」)

有限時間整定応答

最初 の位置に静止している振子の支点を で瞬間的に に移す. すると を中心として左右に振動し始める. の直下に錘がきた瞬間( の奇数倍)に支点を から に移すと, で静止する. 厳密には,この振子系は線形の微分方程式では表せないが,それでも実際にやってみると,うまく で静止するから面白い. このような現象は,線形定常常微分方程式で表される系ではいつでも実現できる. 一般的に考えると,微分方程式で表される系では,初期値が与えられると解の一意性から,特定のパターンを持った運動が持続する. そのとき,外からの操作によって,異なった初期値をもつ別のパターンの運動を実現させることができる. ある位置で静止させようと思えば,その位置にきたとき,初期条件が となるようにうまく操作すればよい. 線形定常な系では,そのような操作は常に可能であり,自動制御の分野では,一部実用に供されている.



  1. ^ ただしある初期値は である.