出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
まず次の例から始める.

を Laplace 変換すると,
![{\displaystyle {\mathcal {L}}[x]={\frac {q(s)}{(s-1)(s^{2}+1)}}+{\frac {{\mathcal {L}}[f]}{(s-1)(s^{2}+1)}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6e8db55fe1e4d93f6850b8294356d71a42494313)
ここに,
は高々 3 次式の多項式である.

であるから,

となる.ここに
は未知の定数である.
を適当に選ぶことによって,任意の初期条件を満たす解が得られる.
よってこれが一般解である.この解をみると,
非同次式の一般解 = 同次式の一般解 + 非同次式の特解
という形をとっている.この特解は,その解法からわかるように,初期値がすべて
の解[1]である.
一般に特解というのは,初期値を指定した特定の解という意味で,初期値が
の解という意味ではない.一般には次の定理が成立する.
定理 3.6
非同次線形微分方程式の任意の解は,非同次式の特定の解と同次式の解の和で表される.
証明
非同次式を
(3.29)

と書く.いま,
式 (3.29) の任意の解
式 (3.29) の特定の解
とすると,


が成立する.これにより,

となり,

同次式の解
すなわち,

同次式の解
を得る.
例82
以下は大学入試問題に出た.
のとき,

となるように
を定めよ.
容易に分かるように,

は微分方程式,
(3.30)

の解の基本系である.したがってそれらの 1 次結合
も
も解である.
それは重ね合わせの原理と定常性の原理からの帰結である.
よってまた

も解であり,これが基底の一つ
に等しくなるようにせよという問題である.
これは三角関数の加法定理を用いて

と求まるが,実はこれには物理的背景がある.
式 (3.30) は単振動の方程式,

と同じである.
は
のときの解である.
また
,
は
のときの解である.
振動の周期は
であるから,
(半周期)ととると
の項は相殺する.
は
の奇数倍でもよい.
この種の現象は実際目で見ることができる.(図:「有限時間整定応答」)
有限時間整定応答
最初
の位置に静止している振子の支点を
で瞬間的に
に移す.
すると
を中心として左右に振動し始める.
の直下に錘がきた瞬間(
の奇数倍)に支点を
から
に移すと,
で静止する.
厳密には,この振子系は線形の微分方程式では表せないが,それでも実際にやってみると,うまく
で静止するから面白い.
このような現象は,線形定常常微分方程式で表される系ではいつでも実現できる.
一般的に考えると,微分方程式で表される系では,初期値が与えられると解の一意性から,特定のパターンを持った運動が持続する.
そのとき,外からの操作によって,異なった初期値をもつ別のパターンの運動を実現させることができる.
ある位置で静止させようと思えば,その位置にきたとき,初期条件が
となるようにうまく操作すればよい.
線形定常な系では,そのような操作は常に可能であり,自動制御の分野では,一部実用に供されている.
- ^ ただしある初期値は
である.