このあたりで,2階の線形微分方程式の解き方をまとめておこう.
(2.24)

ここに,
は実定数とする.
この式を Laplace 変換すると,
![{\displaystyle \{s^{2}{\mathcal {L}}[x]-x(0)s-x'(0)\}+a\{s{\mathcal {L}}[x]-x(0)\}+b{\mathcal {L}}[x]={\mathcal {L}}[f]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/d43cc95cfb70ce5a8eb2ccc38f61cb960e2df634)
となる.これを
について解くと,
![{\displaystyle {\mathcal {L}}[x]={\frac {cs+d}{s^{2}+as+b}}+{\frac {{\mathcal {L}}[f]}{s^{2}+as+b}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0e7a2c090f398a54e0d4d58d0e7ab9943723f918)
ここに,

いま,

とすれば,式(2.24) の解は,

となる.したがってあとは,2次の分数式

の原像[1]を求めることだけが残っている.そこで分母の多項式を,

とおき,次の三つの場合に分けて考える.
(i)
が異なる 2 実根
を持つとき,

(ii)
が重根
を持つとき,

(iii)
が虚根
を持つとき,

となる.
初期値が定まれば
は決まる[2].しかしこのまま未定のまま放置しておいても,与えられた微分方程式の解である.
例48
の原像は,同次微分方程式[3],
(2.25)

の解であることを,直接,式(2.25) に代入して確かめよ.
解答例
(i) 上記
が二実根を持つ場合.
の二根を
とすると,解と係数の関係より
.
よって対応する微分方程式は,

この解が
であることを、この方程式に直接代入して確かめる.



.
(i) 上記
が重根を持つ場合.
重根を
とするとき,
対応する微分方程式は,

この解が
であることを直接代入して確認する.






(i) 上記
が虚根を持つ場合.
二虚根を
とするとき,これを根とする方程式は,

対応する微分方程式は

がこの方程式の解であることを実際に代入して確認する.



![{\displaystyle =e^{\alpha t}[\{(\alpha ^{2}-\beta ^{2})B-2\alpha \beta A\}\sin \beta t+\{(\alpha ^{2}-\beta ^{2})A+2\alpha \beta B\}\cos \beta t]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9fc5fca99f0710386c3e819c2eef4d66c14fe8e5)
![{\displaystyle x''-2\alpha x'+(\alpha ^{2}+\beta ^{2})x=e^{\alpha t}[\{(\alpha ^{2}-\beta ^{2})B-2\alpha \beta A+2\alpha \beta A-2\alpha ^{2}B+(\alpha ^{2}+\beta ^{2})B\}\sin \beta t+\{(\alpha ^{2}-\beta ^{2})A+2\alpha \beta B-2\alpha \beta B-2\alpha ^{2}A+(\alpha ^{2}+\beta ^{2})A\}\cos \beta t]}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/dc5448359c4e44c6310fe4718cf8b0fdfb69619c)

を未定のまま,放置しておいた解を一般解という.
一般解は,
の分母,すなわち,

だけによって決まる.この式は式 (2.25) から直ちに書き下すことができる.
これを,微分方程式 (2.25) の特性多項式という[4].
非同次の方程式[5],
(2.26)

の解の一つ,

ここに,

[6]が,確かに式 (2.26) を満たすことを確認しておこう.
その前に次の補題を準備する.
補題 2.2

証明

とすると,
![{\displaystyle sG(s)F(s)=[sG(s)-g(0)]F(s)+g(0)F(s)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/16b2a2d14715c99a411593fe3f5cdb3fb957d969)
となる.この原像が求める公式である.というのは,

だから[7]である.
このように Laplace 変換を使えば簡単に証明できるが,これを使わない別証を与えておく.
その理由は,「Laplace 変換によって求めた解が正しい解であること」を確認するという目的であるのに,
そのために Laplace 変換を使うのはまずいからである.
別証

に
[8]
を代入した式,


において,右辺の第 1 項の積分順序を変更する.
合成積 の Laplace 変換を計算したときと同様に考えればよい.積分範囲は三角領域,

であるから,

すなわち

となる.これを
で微分すればよい.
さて,この合成積の微分をもう一度実行すると,

となる.以下帰納的に,公式
(2.28)

を得る[9].ただし
とする.もちろん
は必要なだけ微分可能としている.
さて,これだけ準備しておいて,本題に入ろう.
は


の解である[10]から,


となる.よって,

となって証明が完了する.
例49
例にならって

が

の解であることを証明してみよ.
解答例






例50
例にならって

が

の解であることを証明してみよ.
解答例


加法定理)







- ^ 過渡解と呼ぶ.
- ^
実際、式(2.24) の初期値として
のとき,
が二実根を持つなら
が重根を持つなら,
が虚根を持つなら
.
- ^ または斉次微分方程式.
- ^ 隣接三項間の線形漸化式にも特性方程式が登場するが,単にそれにとどまらず隣接三項間の漸化式全体がこの二階微分方程式と相似する.
- ^ または非斉次微分方程式.
- ^ 定常解と呼ぶ.
- ^
すなわち,
で
.
- ^



.
- ^


ここで
より



ここで
より

例によって数学的帰納法による記述は回避する.
- ^

とおくと


すなわち
![{\displaystyle s^{2}{\mathcal {L}}[g]+as{\mathcal {L}}[g]+b{\mathcal {L}}[g]=1}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/dda675bbd28472e0adb55db8b98752d69565f103)
ここで
![{\displaystyle s^{2}{\mathcal {L}}[g]={\mathcal {L}}[g'']+sg(0)+g'(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/90217e3b42ed0a9395c2f67c655944993c7918e8)
![{\displaystyle s{\mathcal {L}}[g]={\mathcal {L}}[g']+g(0)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/eb84a6e924dc257ffb40bc06f481f61c371e5650)
より
![{\displaystyle {\mathcal {L}}[g'']+a{\mathcal {L}}[g']+b{\mathcal {L}}[g]+s\cdot g(0)+ag(0)+g'(0)=1}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/0595b6053f3b31f59096f7cdc8b38c9e5f13b845)
よって
