制御システム/システム同定

システム

システムについての学習から始めましょう。簡単に言うとシステムは入力を受けて出力を生成する装置です。出力はシステム応答により入力に関連付けられています。システム応答は通常システムへの入力から出力までの数学的な関係としてモデル化されます。

様々な種類のシステムがあり、これらを分類するプロセスがシステム同定と呼ばれています。システムには種類ごとに分析に役立つ特定の属性があります。システムを正しく同定することにより、システムにどの分析ツールを使えばよいか判別することができ、そこから分析を行い、最終的にシステムをどう制御するかを決めることができます。言い換えるとシステム同定が最初のステップなのです。

システム同定

物理系はシステムの示す特性により、いくつかの異なるクラスに分類することができます。これらのシステム分類のうちいくつかは理論が整い分析も容易です。しかし中にはとても複雑でいまだ分析が進まない分野もあります。

この本の最初の節ではまず線型時不変システム(LTIシステム)に焦点を当てます。LTIシステムは非常に簡単なクラスのシステムで学習のために理想的な状態を作りやすいシステムです。この章では、システムの特性にいくつか触れ、LTIシステムとは何なのかを定義します。

後半の章では時変システムや非線形システムについて述べます。時変システムと非線形システムはどちらも現在研究がすすめられている難解な領域で、特性を分析することが困難なシステムです。残念ながら現実の物理システムは、時変もしくは非線形システムの特性を少なくともどちらか一方は持っている場合がほとんどです。

初期時刻

システムの初期時刻とは入力が行われる前の時刻です。通常システムの初期時刻は、分析を簡単にするために0と定義します。ラプラス変換のようないくつかの技法では初期時刻が0である必要があります。システムの初期時刻は通常t₀で表します。

初期時刻t₀における各変数の値は下付き文字の0を付けて表します。例えばt₀におけるxの値は

$x(t_{0})=x_{0}$

のように表します。

同様に、tに正の数字を付けくわえた下付き文字はt₀以降の時刻を示します。

$t_{0}\leq t_{1}\leq t_{2}\leq \cdots \leq t_{n}$

t₁はt₀以降、t₂はさらにそのあとの時刻を示します。同様に変数に正の数字を下付き文字で付けたものは対応する時刻での変数の値です。

$x(t_{1})=x_{1}$

$x(t_{2})=x_{2}$

加法性

システムが加法的というのは、複数の入力値を足し合わせて$x_{3}(t)=x_{1}(t)+x_{2}(t)$入力したとき、出力もそれぞれの出力の合計$y_{3}(t)=y_{1}(t)+y_{2}(t)$になることを表します。系が加法性を持つかどうかは以下のようにして確認できます:

xを入力として取りyを出力する系 f を考えます。ここで2つの出力を得るために x₁とx₂の2つの入力を使います:

$y_{1}=f(x_{1})$

$y_{2}=f(x_{2})$

上で用いた入力を足し合わせた入力$x_{3}$を考えます:

$x_{3}=x_{1}+x_{2}$

このとき以下の等式を満足するならシステムは加法性があります:

$y_{3}=f(x_{3})=f(x_{1}+x_{2})=f(x_{1})+f(x_{2})=y_{1}+y_{2}$

こういった特性を持つ系を加法系といい、加法系では複雑な入力に対するシステムの応答を単純な入力による応答として分析することができます。

例：正弦関数の場合

以下の等式を考えます:

$y(t)=\sin(3x(t))$

入力として次を考えると:

$x(t)=x_{1}(t)+x_{2}(t)$

得られる出力は次のようになるはずです:

$y(t)=y_{1}(t)+y_{2}(t)$

元の数式に代入すると以下のようになり:

$y_{1}(t)+y_{2}(t)=\sin(3[x_{1}(t)+x_{2}(t)])$

これは成立しないため、等式は加法的でなかったことがわかります。

斉次性

入力をある値でスケーリングしたとき出力も同じだけスケーリングされるときシステムは斉次性を満たしているといいます。定義によると$ax_{1}$という入力に対し$ay_{1}$という出力が得られるシステムとなります。関数f()が斉次かどうかを知るには、次のことを確認します。：

fに任意の入力 x を与えたときの出力を y とします:

$y=f(x)$

ここで2つ目の入力として x に任意の定数Cを掛けた x₁ を考えます:

$x_{1}=Cx$

ここで以下の式が成り立つときシステムは斉次であるといいます:

$y_{1}=f(x_{1})=f(Cx)=Cf(x)=Cy$

斉次性のあるシステムは、いろいろな用途に利用でき、特に増幅器などの用途に利用できます。

例：直線

直線の式で考えます:

$y=f(x)=2x+3$

$y_{1}=f(Cx_{1})=2(Cx_{1})+3=C2X_{1}+3$

$x_{1}=x$

二つの結果を比較すると等しくないことがわかります:

$y_{1}=C2x+3\neq Cy=C(2x+3)=C2x+C3$

よって、この式は斉次ではないことになります。

線型性

加法性と斉次性を満たしている場合、システムは線型であるといいます。具体的には次のようになります。

$y_{1}=f(x_{1})$

$y_{2}=f(x_{2})$

とします。

ここで、$x_{3}=Ax_{1}+Bx_{2}$としたとき 以下の式が成り立つならシステムは線形であるといいます:

$y_{3}=f(x_{3})=f(Ax+By)=f(Ax)+f(By)=Af(x)+Bf(y)$

線型性と斉次性をまとめて重ね合わせと呼ばれます。重ね合わせが成り立つシステムは線型です。

例：線型微分方程式

次の方程式は線型でしょうか？

${\frac {dy(t)}{dt}}+y(t)=x(t)$