地学II
単元
地球と環境
[編集]南極の春にオゾンが減少することをオゾンホールという。酸性が強まった雨のことを酸性雨という。 気象の観測データからその状態の変化をスーパーコンピュータで計算して行う天気予報を数値予報という。
高層天気図には等圧面天気図が用いられ、ある気圧面が等高線で表される。偏西風帯の特に強い部分はジェット気流と呼ばれている。極高気圧は放射冷却で低層だけ密度が低いので背の低い高気圧である。亜熱帯高気圧は下降流によるものなので背の高い高気圧である。偏西風の蛇行は偏西風波動と呼ばれ、等高線が南に波打っている部分は気圧の谷で、北に張り出している部分は気圧の尾根である。熱帯収束帯と亜熱帯高圧帯の対流をハドレー循環といい、偏西風波動による熱の輸送をロスビー循環という。冬はシベリア高気圧が発達する西高東低の気圧配置で寒波が気圧の谷に向かって入ってくる。梅雨になるとオホーツク海高気圧と北太平洋高気圧の間で収束が起きる。
氷河は山地にある山岳氷河と、大陸を覆うような大陸氷河(氷床)に分類することができる。波には風浪とうねりがあり、風浪はその場の風で起きる波で、うねりは遠くの風浪が伝わってくる波である。波しぶきが大気中で蒸発して残った小さな塩類の粒を海塩粒子といい、凝結核の元になる。
ペルー沖の海面水温が通常の年より高くなることをエルニーニョ現象といい、逆に平年より下がればラニーニャ現象と呼ばれる。偏西風と貿易風により環流が流れる。転向力が北半球では流れの向きに対して直角右に働くことで中央部の海面が高くなり圧力傾度力が生じる。両者のつり合いにより地衡流が流れる。コリオリの力が弱い分、北太平洋海流よりも北赤道海流の方が強くなるので西岸強化が生ずる。周期的に海水面が上下することを潮汐といい、最も高くなると満潮、最も低くなる時を干潮と呼ぶ。潮汐は起潮力で起こり、干満の差が大きいと大潮、それが小さいと小潮とよばれる。
プレートと日本列島の成り立ち
[編集]シュテファン=ボルツマンの法則
[編集]数千℃にねっした鉄が赤く発光したりするように、物体は、温度がとても高くなると、発光する。 その発光の色は、温度が高くなるほど、発光のなかの光で波長が短い成分が多くなるので、赤から黄色をへて、しだいに青くなる。 (赤い光は、黄色い光よりも波長が長い。黄色い光は、青い光よりも波長が長い。)
光は電磁波であるので、つまり、熱した物体は、電磁波を放出するのである。
より詳しくいうと、熱していない物体からも電磁波は放出されているのだが、その電磁波の波長のほとんどが赤外線の領域なので、人間の目では見えないのである。
このような現象での温度と波長ごとのエネルギー量の関係をあらわした法則が、ウィーンの変位法則である。ウィーンの変位則は、黒体の温度が高いほど、放射エネルギーが最大になる波長が短くなっていることを表し、その波長をλ(μm)・温度をT (K)としたとき以下の式で示せる。
- λT = 2900
ウィーンは、ウィーンの法則を確かめる測定実験をする際、熱エネルギーの測定器にはボロメーターという装置を用いた。 [1] (※ ボロメーターについて、くわしくは、発展の節で説明する。)
シュテファン=ボルツマンの法則は、恒星の放射するエネルギーE は絶対温度T の4乗に比例するというもので、次の式で表される。
- E = σT 4
発展:光のエネルギーと波長の測定方法
[編集]- (※ 高校の範囲外)
光のエネルギーの測定方法
[編集]1900年ごろ、すでに天文学者のラングレーによって、熱エネルギーの測定器としてボロメータという測定器が実用化していた。ボロメータとは、金属が温度変化した際の電気抵抗の変化を利用して、電気抵抗の変化から温度変化を読みとり、その温度変化から熱エネルギーなどのエネルギーを測定する装置である。
このボロメータを用いて、光の放射エネルギーも測定できた。
ウィーンは、ウィーンの法則を確かめる測定実験をする際、光のエネルギー測定のために、ボロメーターを用いた。この当時のボロメーターの精度の例として、温度が10-5上昇すると、抵抗値の変化率の3×10-8を読み取れるという高精度であったと言う。
ラングレーやヴィーンが用いていた頃のボロメーターでの測温用の金属には、白金が用いられていた。 そして、ボロメーターの精度の向上のため、ホイートストン・ブリッジ回路の中に、この電気抵抗を組み込むことで、精度を得ていた。
なお、21世紀の現在でも、白金は、電気抵抗式の測温素子として、よく用いられている。また、ホイートストン・ブリッジも、アナログ電気式の測定器で精度を得るための手法として、よく用いられている。さらに、ホイットストーン・ブリッジと測温素子の組み合わせによる温度測定器や放射エネルギー測定器などすらも、現在でもよく用いられている。
光の波長の測定方法
[編集]この1900年ごろのウィーンの時代、光の波長測定の方法では、回折格子が用いられた。すでにローランドなどによって光の波長測定の手段として実用化していたローランド式などの回折格子が、よく用いられた。
そもそも、光の波長は、どうやって測定されたのだろうか。
1800年代のはじめごろ、ヤングの実験によって、ヤングらが、可視光の波長はおおむね数100nmのていどであろう、という予想を立てていた。
回折格子を用いて、より正確な測定が、のちの1821年にドイツのレンズの研磨工だったフラウンホーファーによって行われた。フラウンホーファーは回折格子を作るために細い針金を用いた加工装置を製作し、その加工機で製作された回折格子を用いて、光の波長の測定をし始めたのが、研究の始まりである。フラウンホーファーは、1cmあたり格子を130本も並べた回折格子を製作した。[2]
また、1870年にはアメリカのラザフォードがスペキュラムという合金を用いた反射型の回折格子を製作し(このスペキュラム合金は光の反射性が高い)、これによって1mmあたり700本もの格子のある回折格子を製作した。
より高精度な波長測定が、のちの時代の物理学者マイケルソンによって、干渉計(かんしょうけい)というものを用いて(相対性理論の入門書によく出てくる装置である。高校生は、まだ相対性理論を習ってないので、気にしなくてよい。)、干渉計の反射鏡を精密ネジで細かく動かすことにより、高精度な波長測定器をつくり、この測定器によってカドミウムの赤色スペクトル線を測定し、結果の波長は643.84696nmだった。マイケルソンの測定方法は、赤色スペクトル光の波長を、当時のメートル原器と比較することで測定した。[3]
なお、現代でも、研究用として干渉計を用いた波長測定器が用いられている。メートル原器は、マイケルソンの実験の当時は長さのおおもとの標準だったが、1983年以降はメートル原器は長さの標準には用いられていない。現在のメートル定義は以下の通り。
原子とスペクトル
[編集]原子の種類によって、吸収される光の波長が違う。
プリズムなどをもちいて宇宙から来る光を波長ごとに分けると、虹のような帯にわかれる。この、虹のような光の帯をスペクトルという。そして、スペクトルのところどころ、暗くなってる線がある。このような暗い線を暗線(あんせん)という。
暗線は、なんらかの物質が光を吸収したため、生じている。
この暗線は、その宇宙からの光が、地球に来るまでの経路に多く存在していた物質の種類が分かる。
太陽光のスペクトルにある暗線の波長を分析することによって、太陽の暗線の波長が、水素による暗線と一致することから、太陽を構成する物質はおもに水素であることが分かった。
また、太陽光が、ウィーンの法則の6000Kの光と、ほぼ一致することから、太陽の表面温度は約6000Kであることが分かっている。
なお、太陽光のスペクトルにある暗線のことをフラウンホーファー線という。
宇宙背景放射
[編集]1965年、宇宙のどの方向からも温度3K(3ケルビン)に相当する電磁波が来ていることが、ベンジアスとウィルソンによって発見された。
この宇宙のどこにもある約3K相当の電磁波を、宇宙背景放射(うちゅう はいけいほうしゃ)という。
宇宙の膨張
[編集]現在の世界各国の科学の学会では「宇宙は膨張している」とする学説が有力である。
(※ 範囲外:) 一般に、「ビッグバン宇宙論」とか「膨張宇宙論」、あるいは(定説になっているので)単に「宇宙論」という。
赤方偏移
[編集]宇宙から来た光の波長を測定すると、地球から遠い天体から発された光であるほど、その波長が長いほうにずれている(つまり、赤色や赤外線の側に、ズレていく)。これを赤方偏移(せきほう へんい)という。
(膨張宇宙論では、)赤方偏移の原因は、宇宙が膨張しているため、地球から遠いほど、より大きな相対速度によって遠ざかっているので、ドップラー効果の影響が強くなるためである(としている)。
(※ 範囲外: ) 膨張宇宙論に反する、「つかれた光」仮説というのもあって、「ドップラー効果とは別に、未知の物理法則があて、その未知の法則によって、光は航行距離が長くなるほど、赤色にズレていく」という仮説にもとづいて、「宇宙は膨張していない」とする仮説(定常宇宙論)もあるが、しかし定常宇宙論は現在の世界主要国の科学の学会では支持されていない。日本の学校教育でも、定常宇宙論は支持されてないので、大学入試や大学理系の授業では、定常宇宙論を用いないように。定常宇宙論では「宇宙背景放射」という実験事実が、説明できないとされており、その理由のため定常宇宙論が支持されてない。
ハッブルの法則
[編集]ハッブルは、赤方偏移について、その光の発信元となった天体の、地球から遠ざかる後退速度 v を計算したところ、地球からの距離 r と比例関係にある事を発見した。
つまり、Hを比例係数として、vを後退速度、rを距離とすれば、
- v = H・r
である。この法則をハッブルの法則という。この式の比例定数 H をハッブル定数という。
ケプラーの法則
[編集]地球は太陽のまわりを公転しており、公転の軌道は、ほぼ円の軌道であることが、中世には天文学者ケプラーなどの観測によって既に分かっていた。
しかし、中世の天文学者ケプラーがよく調べたところ、太陽の周囲を公転する地球の公転軌道は、わずかに楕円である事が分かった。
そして、さらに重要な事として、公転軌道上のどこに地球があっても、公転の面積速度は一定である事が分かった。惑星の公転の軌道に関する、これらの法則をまとめてケプラーの法則という。
- ※ なお、大学の理系学部などで習う物理学の力学により、ケプラーの法則を物理学でも理論的に裏付けることができる。歴史的には、近世の物理学者ニュートンの構築したニュートン力学により、裏付けされた。
地球だけでなく、火星などの太陽を中心に公転する他の惑星もまたケプラーの法則を満たしている事が観測されている。
歴史的には、ケプラーは地球と火星の軌道を細かく分析することにより、地球も火星も公転の軌道がそれぞれ楕円軌道である事を発見し、また、面積速度の一定の法則も発見した。
なお、地球の公転軌道上で、地球が太陽から最も近い点を近日点(きんじつてん)という。いっぽう、地球の公転軌道上で、地球が太陽から最も遠い点を遠日点(えんじつてん)という。
惑星
[編集]オーロラと磁場
[編集]観測事実として、木星や土星にはオーロラが発生する。土星のオーロラはハッブル望遠鏡により確認されている(※ 参考文献: 啓林館の専門「地学」の検定教科書)。
オーロラが発生するには磁場が必要であると考えられている事から、木星や土星には磁場が存在すると考えられている。
他の木星型惑星にも磁場が存在すると考えらている。
いっぽう、地球型惑星については、磁場について、次のような事が分かっている。
(※ 根拠は範囲外: 検定教科書が惑星の性質の結果だけを羅列しており、解明の根拠が書かれておらず、理解の役に立たない。)
- 1973年の宇宙探査船マリナー10号による観測の結果、水星には磁場がある事が分かっており、地球の磁場の強さの1%ほどの強さである。
- しかし、水星ではオーロラは観測されていない。これは、水星には大気がほぼ存在しない事が原因であると考えられている。
色
[編集]天王星と海王星はともに色が青い。これは、天王星や海王星にあるメタンが赤い色を吸収している結果であると考えられている。
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1986年にボイジャー2号が撮影した天王星
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ボイジャー2号が撮影した海王星
リングなど
[編集]土星のリングは、地球から見ると数本の輪にしか見えないが、探査船などの観測により数千個の輪から成り立っていることが分かっている。
いっぽう木星については、宇宙探査船ボイジャー1号により、木星にもリングがある事が発見された。
天王星のリングが1977年に発見された。これは、地球から見て天王星が恒星の前を通過する少し前に、恒星の明るさが減光したことにより、リングの存在が1977年に明らかになった。
その後、1980年代の探査船ボイジャー2号により、直接的に天王星のリングが観測された。
また、さまざまな観測により、天王星は自転軸が横倒しになっている事が分かっている。
ボイジャー2号の観測により、天王星には磁場がある事が分かっているが、磁場の中心は自転軸からは大きくずれている。
海王星についてはボイジャー2号の調査により、1989年にも海王星にもリングが発見されている。
結局、木星型惑星(木星、土星、天王星、海王星)すべてにリングが発見されている。
渦の ある/なし
[編集]木星には、大気の渦が観測され、この渦は大赤斑(だいせきはん)という。
また、木星には、赤色と白色の縞(しま)模様がみられる。
木星のこの渦(大赤斑)は、大気の流れによって出来た雲の模様だと考えられている。(※ 範囲外: )なお、木星の渦は地球からでも望遠鏡により観測でき、中世の後半には既に木星の渦が発見されていた。
いっぽう、天王星は大気があるのに、渦が見られない。
海王星は、大気の組成は天王星と同じでメタンが主成分なのに、海王星には渦のようなものが見られ、海王星のこの渦は黒っぽいので、この渦は黒斑(こくはん)または暗斑(あんはん)などという(※ 検定教科書の出版社により用語が違う)。
各論
[編集]水星
[編集]水星は探査船などによる観測の結果、表面に多くのクレーターや大きな崖(がけ)が見られる。
この事から、水星には大気と水が無いと考えられている(もし水や大気があったら、クレーターが流されて平坦になってしまったり、風化して平坦になってしまうので)。なお、オーロラの発生しない事実とも、水星に大気の無いことは合致する。
水星は大気が無いため、昼と夜との温度差が激しく、水星の昼の気温は約400℃、夜は約 −180℃ にも達する。(水星は自転の速度もとても遅く、そのことも昼夜の温度差に関係していると考えられている。 ※ 啓林館の見解)
金星
[編集]金星は、1970年代からのソ連のベネラ探査機やアメリカのパイオニアビーナス探査機などの調査により、磁場や気圧などが解明されている。金星の大気の気圧は地球の90倍くらいであり、また金星の大気の主成分は二酸化炭素である。
そして、これら二酸化炭素の温室効果により、金星の気温はとても高く、数百℃に達する。
金星の雲は硫酸でできている。
金星については、探査船などの写真の結果、火山活動のあとによるものと見られる地形が見られるので、金星には火山活動があると考えられている。
木星
[編集]木星は、太陽系で最大の惑星であり、その大気は主に水素とヘリウムから成っている。木星には多くの興味深い特徴があり、その一つが大赤斑である。大赤斑は、地球の数倍の直径を持つ巨大な嵐で、数世代にわたって観測されてきた。最近の観測によると、大赤斑は縮小傾向にあり、またその色も変化している。これらの変化の原因は完全には解明されていないが、気象条件や大気の変化が影響していると考えられている。
木星にはまた、いくつかの大きな衛星があり、ガリレオ衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)が特に有名である。これらの衛星には、それぞれ独自の特徴があり、例えばイオには非常に活発な火山活動が見られ、エウロパには氷の下に液体の海が存在する可能性があるとされている。これらの衛星の研究は、木星系の理解を深める上で重要である。
火星
[編集]火星については、1970年代にバイキング探査機が火星に降り立っている。
火星には、二酸化炭素を主成分とする大気があるが、気圧は地球の100分の1以下である。
(大気があるためか)火星では、砂嵐や雲などの気象現象が確認されている。
火星の気温は寒めであり、20℃くらいになる場合もあるが、−100℃になる場合もある。これらの気温の事実もあり、二酸化炭素の温室効果については、火星には大気の量が少ないので温室効果が弱いと考えられている。
現在の火星の表面には海は見えないが、しかし、あたかも過去に水が流れていたような地形があり、そのため、大昔の火星には海や湖のような水が存在していたとする説も有力である。
なお、火星の表面の赤く見える地面は、酸化鉄の赤鉄鉱(せきてっこう)であるとされる。このことから、火星には大昔には酸素があったとする説もある(※ 数研出版の『地学基礎』で紹介)。
太陽系外縁天体
[編集]冥王星は、かつて大きな星だと考えられていたので惑星として扱われていたが、冥王星が月よりも小さいことが近年分かり、また冥王星と同程度の大きさの非惑星がいくつも発見されたことなどから、2006年頃から冥王星は惑星でないとして扱われるようになった。
こうしたことなどから現在では、海王星の外側の、冥王星などの天体をまとめて太陽系外縁天体(たいようけい がいえんてんたい)と呼ぶようになった。
珍しい性質の衛星
[編集]- イオ
木星の衛星イオについては、探査船など(ボイジャー)の撮影によって火山のような地形があることが分かっており、各種の探査機による撮影の結果、火山の噴火のような光の写真も撮影されているので、イオには活火山があると考えられている。
- タイタン
土星の衛星タイタンは、太陽系の衛星のなかで唯一、大気を持つ。 タイタンについては探査機カッシーニによって性質が観測された。