学習方法/大学受験5教科全般

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傾向と対策[編集]

傾向[編集]

大学入試の出題について、文部科学省の通知文である「大学入学者選抜実施要項」には次のように記載されています。[1]

以下の三つの要素のそれぞれを適切に把握するよう十分留意する。
(中略)
① 基礎的・基本的な知識・技能(以下「知識・技能」という。)
② 知識・技能を活用して,自ら課題を発見し,その解決に向けて探究し,成果等を表現するために必要な思考力・判断力・表現力等の能力(以下「思考力・判断力・表現力等」という。)
③ 主体性を持ち,多様な人々と協働しつつ学習する態度

「知識・技能」の部分はいわゆる教科書通りの問題、「思考力・判断力・表現力等」の部分が教科書よりもやや難しく感じられる出題を指すと解することができます。実態としては、知識ではなく思考力・判断力を問おうとして出題した問題が、しばしば意図に反して検定教科書の範囲よりもやや広い範囲の知識があれば解けてしまうために、そのような知識を問う問題として機能してしまうこともあります。

このような大学入試の現状から逆算して、以下のような対策が必要になるでしょう。

対策[編集]

定期テストだけで受験対策するのは大学入試ではほぼ無理ですが、かといって、平均的な高校の定期テストの問題すらも解けないような学力では、大学受験には対応できません。

低学年のうちから受験の過去問ばかりをするのは非効率です。なぜなら、大学入試問題は難しく、学力が足りない低学年のうちから読みこんでも意味不明であり、そのような段階では過去問が学力の習得に役立たない可能性が高いからです。まずは、定期テスト程度なら8割ほどは楽に解ける、という状態を作るべきです。そのために、まずは定期テスト対策の学習をきちんとする必要があります。

定期テストだけに特化した、その場しのぎの学習は非効率です。最終的な目標は、けっして定期テストの問題を解けるようになることではありません。当面の中間目標として、定期テスト程度の易しい問題なら楽に解けるという状態を作ることを目指しているのです。日頃からの学習の積み重ねが物を言います。

定期テストを活用する[編集]

高校にもよりますが、平均以上のレベルの高校の1年生や2年生の定期テストの出題範囲は、授業で習った範囲を基準にしつつも、参考書などで紹介されている基礎事項も少しだけ出題するという場合が多いでしょう。ほとんどの高校の場合、定期テストはその単元の理解を確認するテストであり、易しい問題が中心でしょう。定期テスト対策の勉強法は、数学・理科・地歴公民については、教科書を理解をするために読み込みつつも、参考書もその単元について1冊は読んで、そしてワークブックなどで問題練習する事です。

以下で教科ごとの学習法について詳しく述べます。

国語[編集]

教科書以外に必要なもの - 参考書、ワークブック、漢字ドリルなど.

古文・漢文については、まずは単語と文法事項の理解を深めます。英語と比べれば覚えるべき事項はとても少ないですので、完璧にすることです。なまじっか日本語だからと言ってこのような学習を軽視する人がいますが、それは後々になって大きなビハインドになります。そのうえで、教科書の作品を丁寧に口語訳しながら読解することで、当時の人が持っていた常識的感覚を体得します。このような基本に忠実な学習を繰り返していかないと、初見の文章を読めるようにはなりません。古典は作品数が有限ではありますが、かなり大きな有限ですので、入試において初見の文章を読む覚悟はしておかなくてはいけません。初見の作品であっても、当時の人に好まれたよくある作品のパターンには収まっているものが多いです。文法に加えてそのパターンを体得していれば、読解は難しくありません。

現代文についても、評論については典型的な論の運び方のパターンを、小説においては典型的な作家の表現のパターンを、それぞれ読解の数をこなす中で体得することが重要です。なんとなく、ではなく、根拠をもってその論・表現の意図を説明できるようにしておきましょう。ある程度以上の大学の記述試験では、まとまった論述も求められます。読解するだけでなく、その内容を要約して表現する作文力も求められるということです。自分の感想はさておいて、筆者は何を言っているのか、作者はどのような意図で表現しているのか、冷静な筆致で表現できなければなりません。これには、相応の練習が必要です。もちろん、それ以前に正確な読解が必要なのは言うまでもありません。

漢字は、覚えるしかないので、漢字ドリルなどで出題されてる漢字を、きちんと練習しましょう。

英語[編集]

教科書以外に必要なもの - 参考書および単語帳.

英語の場合、単語力の欠如が文法や読解の学習を妨げるので、とにかく単語力が大切です。 英語の教科書だけでは文法などの解説・問題例がやや足りないこともあり、参考書などで補ってください。 長文読解や解釈に関しても、一般の検定教科書や学校で配布される問題集では不足があるので、必要に応じて問題集を利用しましょう。

数学[編集]

教科書以外に必要なもの - 参考書(ただし問題集付きおよび解説付きの物).

数学の場合、教科書レベルの練習問題〜発展問題を解ければ定期テスト対策としては充分なのですが、その教科書レベルを理解するのが手間取ります。

数学の教科書レベルを理解するためには、教科書の練習問題や応用問題・発展問題などをきちんと練習したうえで、さらに参考書でその単元の基本問題や練習問題を補えば、たいてい定期テスト対策としては充分でしょう。数学の参考書の場合、基礎レベルの参考書自体がワークブック的な問題集の機能も兼ているので、ワークブックは別途は必要ありません。数学の場合、問題練習に時間が掛かるため、参考書は当面は1冊で充分です。数学の参考書を買う際は、問題に答えと解説が付いているものを選んでください。数学の高校参考書では、普通の厚めの参考書なら、問題の答えと解説が付いていますので、買う際はそれを買います。参考書の発展レベルは、定期テスト対策では不要です。低学年では、数学参考書の発展レベルに深入りするよりも、他教科の勉強に時間を掛けるべきでしょう。

地歴公民[編集]

教科書以外に必要なもの - 平易な参考書(実質的にはセンター対策本)または別の教科書出版社の教科書、ワークブック.

地歴公民の理解を深める手っ取り早い方法は、教科書の他に、もう1冊、参考書か別の教科書出版社の教科書を読む方法です。重要事項や基礎事項はどの教材でも触れられているので、複数冊を読むことで繰り返し学習することになり、記憶が定着します。一方、発展的な事項や、著者や出版社によって視点や意見が分かれるような題材については、複数冊を読むことによって、さまざまな視点で読めることになるので、理解が深まります。参考書を買う場合は、とりあえず、短かめの参考書を買うのが良いでしょう。「センター試験対策」などと銘打った参考書が、わりと短めなので、まずは、それを買うと良いかもしれません。片っ端から全てを覚えるのは非効率なので、まずは基礎的な事項を重点的に説明した、入門的な参考書があると便利です。加えて地歴公民では、内容の理解はもちろん必要なのですが、しかし実際のテストでは定期テストでも入試でも、用語の漢字などでの書き取りを問う出題も多いので、書き取り練習なども必要です。

ニュース、一般の歴史評論書や経済評論書などは、学習に取り入れる必要は原則としてありません。受験向けにまとめられた教科書や参考書を複数買って読んで読み比べるほうが、受験勉強としてより効率的です。 時事問題の関連知識が必要な場合、書店で市販されている『現代社会』資料集などが時事問題を解説していたりします。また、中学入試や高校入試対策の教材で、時事問題の解説をした教材が市販されていますので、それらを参考にすれば十分でしょう。

理科[編集]

教科書以外に必要なもの - 参考書および、ワークブックまたは簡単な問題集.

理科の学習法は、手短かに言うと、数学と地歴公民の中間です。問題練習をしつつも、用語などは暗記しなければなりません。物理については、数学に勉強法が近いです。生物については、やや地歴公民に勉強法が近くなります。化学の勉強法は、物理と生物の中間、といったところでしょう。

なお、もし理系の大学を進学志望する場合、大学では生物の勉強法が化学に近付いていき、化学の勉強法が物理に近付きますので、高校では物理・化学・生物の学習は、どれもサボらずに、高校必修の範囲は、ひととおり勉強しておきましょう。

さて、テレビのニュースなどでノーベル賞など科学的な話題を見ることがあると思いますが、それらの報道を追いかける必要は基本的にありません。いわゆる時事問題のように、そういった事柄が直接問題になるということはまずないからです。ただし、そういった時事ネタを元に入試問題が作成されることもあります[2]し、理科への意欲も深まるでしょうから、知ってて損をすることもないでしょう。

参考書・問題集を使った学習[編集]

学校ですでに習い終わった単元については、定期テスト程度なら楽に解ける、という状態になったら、プラスアルファの学習をしましょう。そのためには、教科書以外の参考書・問題集を用意する必要があります。

参考書は、あまりたくさん用意する必要はありません。1冊では心もとないというなら2冊程度はあってもいいですが、参考書を読む以外にも問題練習などもしなければならないので、あまり多くの参考書を読めません。細かな理解は、問題練習などを通して、これから深めていきます。

また、英語では参考書の他にも単語集・熟語集、社会科では用語集や日本史の史料解説集、などのように、各科目ごとに、その教科のメインの参考書以外にも補助教材がいずれ必要になるので、それを忘れないようにしましょう。入学当初は参考書だけでも構いませんが、いずれ単語集や史料集などの補助教材を利用する必要が出てきます。

参考書を読むだけでなく、問題演習も必要です。"定期テスト対策"の問題集・ワークブックしか入手してない場合、それとは別に、"入試対策"用の問題集を入手してください。入試対策用の問題集の選択には、まずは平均的な難度の大学向けの問題集でよいので、問題集を入手して、問題練習してください。この「標準的」とされる「入試」対策用の問題集ですら、現役の高校生には、かなり難しいです。なので、まだ「難関校むけ」の問題集には取り掛からないほうが良いでしょう。たとえ難関校を志望する場合ですら、入試問題には標準難度の大学の入試問題を解く能力も、要求されます。なので、志望校が難関校か中堅校かの、どちらにせよ、平均的な難度の入試対策問題集を楽々解ける能力が、受験生のころまでに必要になります。難関校向けの問題集よりも、まず先に "標準レベル" の入試対策問題集を使用してください。

予習については、先取り学習もしたほうが色々な理由で効果的な部分はあります[3]ので、余力がある人は参考書を使い概要の把握程度の予習をするのもよいでしょう。教科書の後ろのほうの単元などは問題練習不足などにもなりやすく、概要程度を一通り早めに全体像を把握することができればそのような事態を防ぐことができます[4]。ただし一方で、積み上げによる学習が必要とされる教科において、前の単元の理解が不十分なままに先の単元の「予習ごっこ」をするのは非効率です。そのような事態に陥らないよう、先生などの指導者のアドバイスを受けながら進めるのがよいでしょう。

ノートづくりを目的にしてはならない[編集]

記憶の定着を図るために、授業の内容などをノートにとっても良いでしょう。あるいは、参考書の語句および、その語句などの手短な解説などを、ノートなどに取っても良いでしょう。でも、ノートづくりを目的にしてはいけません。色鮮やかな自己満足ノートを作るのは時間の無駄です。その結果、学習者は知識が片寄ってしまいます。そのようなノートづくりをするよりも、語句の書き取り練習とか、あるいは問題練習などに時間を割いたほうが良いでしょう。

模試の使いかた[編集]

予備校などが、受験生の試験なれのため、入試などを真似た模擬試験(略して「模試」)を有料で行っています。

模擬試験の使い道とは、受験科目のなかで自分のまだ習得できてない単元をみつけて、その苦手分野をこれから復習すること、日本全国の受験生のなかで、自分がどれくらいの学力にあるかを調べることです。

模擬試験を受けるだけ受けても復習をしなければ、せっかく受けた模擬試験は、ほぼ無意味になります。学力をあげる方法とは、あくまで参考書などを読んだり、計算練習するなどの予習・復習であり、けっして模擬試験そのものは学力向上の手段ではありません。参考書を一度も読まずに「模試だけを何度も受けて、答えのパターンごと覚えよう」などという学習法では、学習すべき全範囲を網羅することができません。

大学入学共通テスト対策[編集]

大学入学共通テストは、国公立大学の受験をするなら避けては通れません。

ほぼすべての国立大学で、共通テストは5教科(国語・数学、英語、地歴公民、理科)が要求されます。このため国立志望では、共通テスト対策として、5教科をまんべんなく勉強する必要があります。

共通テストと二次試験の比率は大学により異なりますが、共通テストの比率の高い大学ではほぼ共通テストだけで決まると言えるところもあります(ただし難関大は二次試験重視が一般的)。また、一部の大学では共通テストの得点がある基準点に達していることを要求したり、共通テストの得点である一定の倍率まで絞ってしまう、いわゆる「足きり」と呼ばれる制度があります。また、近年 拡大傾向にある私大の共通テスト利用入試に活用することもできるため、ますます重要性が上がっています。

共通テストは、かつて行われていた大学入試センター試験にあたるものです。センター試験は、出題範囲こそ形式的には教科書レベルを逸脱しない範囲でしたが、しかし近年のセンター試験の出題では、検定教科書では説明の短いような細かな知識すらも出題してくる事があり、教科書の知識にプラスアルファ的な対策を取らないと点数がとりづらい試験でした。大学入学共通テストは、それに加えて思考力を問う問題を課すことになっており、目標平均点もセンター試験より低い点数が設定されており、センター試験よりもやや難しい問題になると想定されています。それゆえに受験産業が危機感を煽って低学年次からの共通テスト対策特化講座を開きますが、しかし、これを鵜呑みにするのは得策ではありません。共通テストばかりに気を取られると、共通テスト以外の他の大学受験問題に対応できなくなるリスクが高くなります。もし共通テストだけに専念してしまい、二次試験対策を怠る(おこたる)と、志望できる大学や志望学部がごくわずかに限られてしまいます。同様に、少数の科目に絞って学習してしまうのも、出願できる大学の幅を減らすことになり危険です。

なので、1,2年生にとっての共通テスト対策は、一般的な普通科高校の2年の終わりまでに習う科目で、いわゆる「教科書レベル」に(検定教科書にある問題 や 教科書会社などの出版する基礎ドリル・ワークブックの問題集レベル)、まずは対応できるという状態を作っておくことが先決です。もし、その状態を作っていない状態で3年生を迎えてしまうと、残り1年では共通テストの問題には対応できません。ただし、センター試験にはなかったような独特の形態の問題が出題されることが予定されていますので、受験産業の低学年からの共通テスト対策を利用し、入試傾向を確認するのは有効でしょう。

  • 「センター試験レベル」とは

かつてのセンター試験は大学受験の登竜門として多くの受験生にかかわるために、しばしば易しい入試問題の代名詞として「センター試験レベル」ということばだけが独り歩きしがちでした。しかし、この代名詞の使いかたは、ほぼ間違っています。なぜなら、センター試験はマークシート式なので用語の暗記の負担が少ないので一見すると簡単そうに思われますが、そのぶん細かい知識を問う出題も多いので(実際のセンターの出題で、いちぶの教科書会社の検定教科書の章末コラムにしか書いてない知識を問うような出題すら、2010年以降の近年のセンター試験にも散見されました)、なので一般的な普通科高校の定期試験レベルのものを想像するのは誤りです。その上、高校で学習する全範囲から出題されることも相俟って(あいまって)、しかるべき対策を取らなければ高得点は望めない試験でした。さらに、30年にわたって行われてきた中で、受験生が対策を取るのとイタチごっこをする形で難易度も大きく変化していますので、過去の認識で話をしている大人の言うことを鵜呑みにはできない難易度でした。過去、センター試験よりさらに以前に実施されていた共通一次試験の難易度が比較的に低めだったため、その頃のままの認識でいる大人も多かったのですが、しかしその認識はマチガイであり、難易度の傾向としてセンター試験は共通一次試験よりも難しくなっていました[5]

センター試験の問題の難易度は、年ごとにもかなりのばらつきがありました。大学入試センターは毎年の平均点を公開していますので、センター試験の問題で過去問演習をする際は平均点を参考に、自分が解いている問題は難易度が高かったのか低かったのかも見ることで、実力を過信したり過剰に不安になったりすることを防ぐことができます。なお、共通テストはセンター試験よりもさらに難しい出題となることが予定されています。

共通テストを終え、自己採点後に出願校を検討する際にも、自分の取った点数をどう評価するかを考えるためには、受験生全体の傾向を知ることが必要になります。ただし、予備校による「センターリサーチ」や、それをもとにした「バンザイシステム」などの合否判定システムは非常に多くの受験生が参考にするため、額面通りに受け止めて出願する受験生が多ければその受験生たちは失敗しやすくなります。データを参考にすることは必要ですが、データに振り回されないようにすることも必要です。

  • センター試験の過去問集について

大学入試の過去問といえば二次試験対策では(教学社の)「赤本」が有名です。センター試験の「赤本」ももちろん出版されています。しかし、センター試験の過去問集は他社からも刊行されていますので、解説の質や掲載年数をよく比較してから購入するのがよいでしょう。また、過去問以外にも、出版社独自に作成したマーク型問題を集めた問題集や、予備校が出版するマーク型模擬試験の過去問集も発売されています。現行カリキュラムで有効な過去問は数が限られていますので、過去問だけでなくこれらの問題集も必要に応じて活用するとよいでしょう。ただし、共通テストはセンター試験にはなかった形態の問題も出題される予定ですので、注意が必要です。

  • 理科の科目について

かつては物化生地それぞれの科目の前半部に当たる「○○I」(たとえば「生物I」)という名前の科目しかセンター試験では出題されませんでしたが、現在では後半部も含めたその科目のすべての範囲が出題範囲となる科目も設定されており、たとえば「生物」のように科目名の語尾に何もつかない「○○」という科目がそれです。理系学部を受験する場合はこちらを受験することが必須であり、以前よりも負担が増えています。大人のなかには、最近の受験の変化についていけていない、よくわかっていないことを言う人がいるので、高校生・受験生は、わかってない大人に惑わされぬよう注意が必要です。また理系の場合、大学によっては「共通テストでは物理受験が必須。加えて、もう生物・化学・地学のうち1つ」のように、学科に関係の深い科目が共通テスト必須になっていることもよくありますのでこちらも要注意です。文系の場合は「○○基礎」を受験すればよく、これはかつての「○○I」よりも狭い範囲ですが、その代わり「○○基礎」を1科目単独で受験することは不可能で、2科目セットでの受験となりますので、これもやはりかつての受験生よりは負担増になっています。

  • 地歴公民の科目について

地歴公民は文系の場合は2科目、理系の場合は1科目受験することが必要なことがほとんどです。その際、地歴のA科目(2単位科目)はいちおう共通テストで設定されてはいますがこちらを使用可能な大学はほとんどありませんので、地歴を使用する場合は必ず4単位のB科目を受験する必要があります。

公民の場合は、2単位科目の「現代社会」「倫理」「政治経済」を使用可能な大学と、4単位科目の「倫理、政治経済」しか認めないという大学に分かれており、難関大は後者が多くなっています。したがって、そのような大学の文系を受験する場合は「倫理、政治経済」の受験がほぼ必須と言えます。理系であれば「倫理、政治経済」にするか地歴のBにするかを選ぶことができますので、地歴Bを受験するのが一般的ですが、「倫理、政治経済」を受験しても構いません。

出題傾向は、センター試験では長らくいわゆる「知識問題」「暗記問題」が多くを占めていました。しかし、共通テストでは思考力を問う問題を増やすことが予定されており、既にセンター試験末期にもその傾向は見られます。ただし、科目の特性として、いわゆる「暗記問題」がまったくなくなることもないだろうと思われます。

  • まとめ

以上を踏まえたうえで最も重要なことは、けっして受験校が絞られる前から早々に科目を絞らないことです。受験校の最終決定は共通テスト後にしかできませんが、このとき受験した科目が少なかったために不本意な出願をせざるを得なくなることが少なくありません。特に高校1・2年次に科目を絞るなどは論外ですので、塾などのそのような指導を鵜呑みにしないように気をつける必要があります。

  • その他、英語外部試験の導入などについて

共通テストの導入と併せて、当該年度内に受験した英語の民間試験の成績を大学入試に用いることが予定されていました。おおむね英検準2級から2級に対応するCEFR A2相当は取得しておくことが、国公立大学を受験するうえでの必要条件となりそうな状況でしたが、そのようなことを全受験生に課すことは受験生の負担が大きすぎることへの批判などから、この計画の初年度からの導入は見送られています。一部大学でさらに上のCEFR B2程度以上で英語の試験を満点扱いにするなどと言った措置は見られますが、限定的です。このような非常に高いレベルを目指すよりは他教科の学習をする方が多くの人にとっては効率的ですので、英語外部試験は闇雲に受験するのでなく、戦略的に行う必要がありそうです。

二次試験の科目選択[編集]

国公立大学二次試験で用いることになる科目は、もちろん個別の大学ごとに千差万別ですが、文系理系ごとの大まかな傾向についてここで述べます。

  • 文系

文系では、国英が主要教科です。特に英語を用いずに済むことはまずありませんので、英語が弱点の場合はこれを克服することが最重要課題です。それに加え、難関大や経済学部の場合は数学が加わります。地歴を用いる大学もありますが、教員養成大学の社会科課程を中心とする少数の大学のみです。

他に、近年は小論文を使うことが少なくありません。教科の名前がついていても実態としては数百字の文章を書かせるという大学もあり、国語での論述も含め、作文能力は受験生の思っているよりも多くの大学で問われていると言えます。

  • 理系

理系では、英数が主要教科です。数IIBまでか数IIIまでかは大学・学部によりますが、ほとんどの大学では数学IIIまでです。また、進学後のことも考えれば数IIIまでをきちんと学習しておくに越したことはありません。加えて理科も非常に多くの大学で課されますが、2科目要求されるセンター試験とは異なり、その学科で特に必要となる1科目のみというのが主流です(難関大では2科目を要求されます)。二次試験の理科では、物理や化学、生物のように、『〇〇』科目を要求するのが一般的です。

加えて国語を課す大学もありますが、これは少数派です。医療系では面接が課されることがしばしばあり、これも対策が必要です。

過去問の使い方[編集]

志望校の過去問よりも、まずは市販の問題集で、解説付きの問題集を重視して使用したほうがよいです。なぜなら過去問とは、まず出題傾向や難度のレベルを調べるためのものであり、当然ですが使用者の学力向上を第一目的としたものではありません。

過去問集にも解説などはありますが、参考書と比べたら解説も少ないし、また出題範囲も志望校のものに片寄っています。しかも、たいてい入試問題が難しめなので、初心者には学習の効率が悪いです。基本的には、あまり難関校の問題に挑戦するよりも、むしろ入試平均レベルの問題で良いから多くの問題を確実に解けるようにしたほうが、多くの大学の入試では有利な場合が多いです。

もちろん、大学ごとの出題傾向は固定化されている場合がかなりありますので、過去問練習は、けっして、まったくの無駄にはなりません。要は、使い方だということです。

なお、センター試験の過去問などは、試験馴れの目的も含めて、少なくとも過去数年分のセンター過去問ぐらいは練習したほうが良いでしょう。ただし、センター過去問を使う場合であっても、あくまで過去問は、まず出題傾向などを確認したり、苦手分野を確認して復習するべき分野を探すためのものであり、過去問を解くだけでは、あまり学力は上がりません。

もし、センター対策の問題練習をするなら、実際のセンター過去問ばかりをするよりも、「センター対策」などと書かれた参考書を読んだりした上で、「センター対策」などと銘打った予想問題集に掲載された問題を解くほうが、より効率的かもしれません。

検定教科書の難易度[編集]

検定教科書には、難易度に差をつけた、いくつかの種類の教科書があります。教科書会社ごとの違いだけでなく、同じ教科書会社が複数種類の難易度の教科書を出版している場合もあります。たとえば山川出版の世界史Bの検定教科書には、同じ「世界史B」科目でも、難度別の3種類の検定教科書があります。これらの中から、学校ごとに、その学校の教員が適切と考える教科書を選定し、採用しています。

このことは、生徒はそこまで気にする必要はありません。あくまで高校で与えられた教科書に従って学習するのが基本です。いずれにせよ、検定教科書だけでなく、参考書や問題集なども、受験合格のためには勉強する必要が生じます。

ただし、センター試験の出題範囲が、多くの科目で基本的に検定教科書の内容にもとづいているので、受験生側もある程度は、自分の出身高校以外で使われてる検定教科書での記述の傾向を知っておく必要があります。とはいえ、それらの傾向は市販のセンター対策と銘打ってる参考書でおおむね把握できますので、わざわざ検定教科書を実際に買い足す必要も、あまりありません。

受験生の入試傾向の情報収集としては、基本的に参考書で傾向を情報収集しつつ、出版状況がどうしても市販の参考書では不十分な状況にあると思われる科目の場合にだけ、自分の高校以外で使われている検定教科書も1〜2冊ほど購入して通読すれば、傾向の把握としての教科書の読み込むとしては充分でしょう。検定教科書ばかりでなく、実際にセンター試験の過去問や志望大学などの過去問から、情報収集する必要があります。

なお、もし高校卒業後に浪人や再受験をしていて、検定教科書を買いたい場合などで、しかし高校現役時代と受験科目が変わるなどして、どの検定教科書を買えばいいのかが、よく分からなければ、とりあえず地元の進学校で採用している教科書を買うなどすれば、良いでしょう。

なお、受験勉強法の書籍などで、難関大学の合格者インタビュー結果として「受験勉強なんて、検定教科書の予習復習だけで完璧」などと言われている場合、これは比較的難易度の高い検定教科書を想定しているでしょうから、この点には注意が必要です。

塾・予備校の注意点[編集]

塾や予備校の中には、不適切な指導をするところもあるので、注意が必要です。生徒にはまず学校での学習があり、他科目の学習があるということを無視して、いたずらに自分の担当科目の、自分の塾オリジナルの、不必要な難問を含んでいたりする教材を勉強させたり、大量の宿題を要求したりする指導などが代表的でしょう。志望校や受験校の選択についても、過度に現役合格にこだわるあまり不適切な指導をする事例がよく聞かれます。こういった指導をする塾や予備校は、市場原理で淘汰されてはいるものの、根絶されてはいません。その塾・予備校に相談しても改善が見られない場合、保護者に相談して、他の塾・予備校に変えるなどの対策が必要です。

入試範囲外の学習について[編集]

入試範囲外の知識があることで解きやすくなる問題が、しばしばみられます。

よくあるのが、高校の範囲内だが他科目の範囲である知識があると解きやすくなる入試問題です。具体的には、現代文や英語の文章でありながら様々な分野の基本的な知識があると読みやすくなるもの、物理基礎・化学基礎・生物基礎の問題でありながら物理・化学・生物の知識があると解きやすくなるもの、数学IIの問題でありながら数学IIIの知識があると解きやすくなるなるもの、などなど。こういった入試問題でも、原理的には出題範囲の科目の高校参考書の知識だけで解けるように作られていますので、対応するための特別な学習は必要ありません。あえて言うならば、入試科目ではなくても、高校教育で履修する科目の学習はすべて大切にすることが、こういった問題への最も有効な対策と言えるでしょう。

また、大学で習う知識をあつかった入試問題もありますが、そのような入試問題は、高校の教科書・参考書の範囲内で解けるよう、適切な誘導がされています。さらに、高校生用の受験参考書や平均レベルの問題集でも、入試に出題されやすい大学レベルの背景知識には触れている場合が多いので、わざわざ難解な大学生向けの教科書を購入する必要は全くありません。

そもそも、大学レベルの話題をあつかった入試問題といっても、大学で習う用語や公式などを丸暗記しただけで解けるというものではありません。たとえば、大学で学ぶ公式の導出が問題になることがあります。あるいは、そのような公式をあらかじめ問題文中に提示して、代入して使わせることでより難しい問題へのヒントとするような出題もあります。高校で学ぶ知識のみでは計算が大変だが、問題文中に書かれていない大学で学ぶ公式を使うと計算がショートカットできるという問題もないわけではありませんが、そのような公式を使用した答案は、適用可能な条件を満たしているかをきちんと確認しているかも含め、厳しい採点基準で採点されると言われています。

参考文献・脚注など[編集]

  1. ^ 令和3年度大学入学者選抜実施要項について(通知)
  2. ^ 2019年度 早稲田大学基幹/先進理工学部 生物 第3問(2017年ノーベル生理学・医学賞に関する問題)など
  3. ^ 船登惟希『改訂版 高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、48ページ
  4. ^ 船登惟希『改訂版 高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、48ページ
  5. ^ 『「共通一次より現在のセンター試験の方が遥かに難しい」という意外な事実』物江 潤 2020年01月15日 06:00 の記事。2020年4月26日に確認。