学習方法/高校5教科全般

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高校生の勉強量[編集]

高校は予習・復習しないと教科書が終わらない量になる[編集]

中学と違い高校では、予習・復習をしないと実質的に、教科書の内容が高校在学中には終わりません。なので大学進学を志望する場合は、この点に注意して、高校2年までの家庭での勉強スケジュールを立てましょう。

べつに当wikiでは、「高校生はそう勉強すべきだ」とかは言っていません。単に、「現状の仕組みはこうなっているので、なのでこうなりたい人は、こうしなければならないだろう」という事実とそれに対する対応の例示をしているだけです。

では、予習復習が必要とはどういう事なのかを下記に説明します。


たとえばテレビのNHK教育の放映スケジュールなどを見ると、あたかも1年間に全部終わりそうに見えてしまい、たとえば数学Aなら、NHKは1年間にむりやり詰め込んでテレビ上では終わらせてます。

しかし(テレビ上ではなく)現実の高校では、定期試験とその返却の週には単元が進まないので(返却の週の前半で解説を終わらせて後半は単元を進められるだろうが、解説が面倒なので省略)最低でも4週間は遅れます(定期試験が多くの高校で年5回(1学期の中間・期末、2学期の中間・期末、3学期は期末のみ)あるので、うまく詰め込んでも定期テスト関連のせいで年あたり3~4週は遅れる)、ほか学校行事(文化祭などで最低1週間は遅れます)などもあるので、けっしてテレビ通りのハイペースでは進みません。加えて、理系科目では計算問題などの演習の時間も必要なので、教科書の単元のうち 4分の1 ~ 3分の1 くらいは授業時間をオーバーして、教科書を完了できないと思われます。

中学では学校行事などあっても教科書が終わりましたが、しかし高校では教科書で習う知識の量が多いので、決して授業だけでは終わりません(普通の高校ではそうです。例外として、私学などで、全寮制で寮内で授業があるとか、もしくは夜中にまで校舎で授業するような私立高校でもないかぎりは(実在するかどうかは知りません))。


このため、多くの高校では、多くの科目で、高校1年までには高校1年でもらった教科書の範囲が終わりませんし、高校2年でも同様に高校2年の教科書が終わりません(特に理系科目は計算練習の時間不足で、後半が終わらないでしょう)。

もしくは、もし高校でハイペースで終わらせた場合、授業での「練習問題を解く」などの演習がかなり少なくなりますので、家庭での自発的な勉強にて演習を補う必要が生じます。

予習と復習の量をどうするかは個人によって異なるし、また高校や科目によっても異なるので本ページでは明言しませんが、ともかく普通科高校はそういうものだと事前に知っておきましょう。

高1から趣味を減らさないと受験勉強と両立できなくなる[編集]

これはつまり、家庭での5教科の勉強以外の趣味につかう時間を、減らす必要があるという事です。それが良い事かどうかは知りませんが、その家庭での5教科の予習・復習を前提にして、文部科学省の指導要領および大学受験の出題範囲が組まれてしまっています。

定期テストの2週間前の勉強だけしか家庭で勉強しないペースでは、それで可能なのはあくまで「定期テスト対策」だけであり、もはや各学年の教科書の内容を終わらせるのは2週間だけ(×5回。 定期テストが年5回あるので)の家庭学習では無理です。


なお、高校の「探求学習」および大学受験の総合型選抜(かつての「AO入試」)で評価されるのは、あくまで学術的な未知への「探究」なので、どんなにスポーツや芸術が上手だろうが評価の対象にはなりません(少なくとも、ネット公表されている東大や慶応大などの総合型選抜の合格テーマを見る限りはそう)。

高校2年レベルのいくつかの科目は省略されやすい[編集]

偏差値の高い進学校の高校では、たとえば、いくつかの中間的な科目が省略され、いつの間にか習得した事を前提にカリキュラムが組まれます。たとえば国語の古文漢文では、多くの進学校では「文学国語」という選択科目が省略されている事例が、私立進学校の公開カリキュラムで確認できます。私立高校だけでなく公立高校でも省略されます。

代わりに「古典探究」という高校国語の古典系の最上級の科目があるので、授業科目が「古典探究」に置き換わります。

進学校では、「文学国語」の内容は自然と身に付いた事にされるでしょう(こういう事は高校以降では、よくあります)。なので、参考書などで国語も予習しておきましょう。

大学入試では、省略された科目でも出題範囲になります。個別の高校のカリキュラムには合わせてくれません。


理系科目でも、数学Aや数学Bなどの全単元は授業では紹介しきれない高校が多いと思われますが、しかし高校3年になると、多くの進学校の理系クラスでは、家庭学習などで自然と身に付いた事にされます。

大まかな道筋[編集]

教科書・参考書を読む[編集]

※ この段階は、高校1年生から3年生まで、全学年を対象にしています。

いきなり受験用の問題集を解こうにも、高校1年 - 2年では、まったく解けません。高校の授業レベルをきちんと理解することが基本ですが、それと並行して、教科書や参考書を自分で読むことが重要です。

まずは、教科書(ただし国語科目を除く)や参考書を読みすすめてください。文系科目は、参考書などで重要語句とか単語・熟語などを覚えてください。理系科目も、とりあえず参考書を読み進めて、参考書の問題練習を解いてください。参考書に問題が無い場合、学校でもらった問題集か、または同レベルの入門的な問題集などの問題を解いてください。


昭和や平成初期の参考書が残っているので注意

参考書の購入のさいの注意事項として、新しい版の参考書を買うことです。なぜなら、出題範囲などが当然ですが新しい版の本のほうが現代の高校生に合っているからです。

高校レベルの参考書の場合、90年代やそれ以前に出版されたままの古い版の参考書が、大型書店だと今でも印刷されて販売されていることもあります。たとえば大手の予備校の出版した本だと、平成初期の1990年代にユニークな企画の参考書が多く出版されたので、そのような本も現代では改訂が無いのでいまだに出版されています。ほか、古文漢文の現代語訳集では、もっと古い昭和の1980年代の版の時代の本すらもあります。

そのほか、古い名著の参考書でも、著者が死んでしまって改訂できないままになっている参考書もあります。

数学の参考書にある「モノグラフ」シリーズは、監修者の矢野健太郎(やのけんたろう)が1993年に死没しているので、現代では基本的に改訂が不可能です。にもかかわらず、他に比較的に平易に高校範囲外の内容を解説した参考書が普及していないので、この参考書はよく、ちょっと参考書の充実した書店には令和の今も残っています。

ほか、チャート式の日本史の著者の門脇禎二(かどわきていじ)も2007年に死没しています。

ほか、チャート式の世界史の前川貞次郎(まえかわていじろう)も2004年に死没しています。

(なお、チャート式の倫理の共著者の佐藤正英は2023年に亡くなられました。もう一人の共著者の片山洋之介も2014年に亡くなられています。)

そういった古い内容の参考書もそれはそれで必要とする人もいるし高学年で使うようになる可能性もあるので書店にはおいてあるのですが、とりあえず入学はじめのころ~高校2年の段階では新しい版の参考書を買うのが無難です。

ほか、駿台の英語の参考書の伊藤和夫(いとうかずお)も1997年に死没しており、改訂不可能です。駿台の化学の三國均(みくにひとし)も2005年に死没。なお、物理の山本義隆(やまもとよしたか)は2023年現在まだ生きています。

それでもどうしても古い参考書を使うなら、普段の学習では、歴史科目なら他社の時事的な資料集で補うか、あるいは他の教科なら別の新しい参考書を使用すると良いでしょう。


問題練習

(問題集ではなく)標準的な参考書にあるていどの問題は、すべてやりましょう。数学以外では、そんなに参考書の問題は時間が掛からないと思います。数学については、その科目の学習方法のページを参照してください。

大学受験をして日東駒専(日大・東洋・駒沢・専修)とかに一般入試で行きたいなら、最終的に高校2年後半~3年くらいから問題練習を中心とした勉強に移る必要があります。3年次にそれを実践できるペースを意識して日々の予習復習などの勉強をしてください。

入門的な参考書なら、そんなに問題をやりぬくのに時間が掛からないと思うので(ただし数学を除く)、2冊目の参考書を読むに行きましょう。この際、前の参考書で練習したことは、新しい参考書では、いちいち再練習する必要ありません。まだ練習してないタイプの問題を練習してください。


問題集はよく吟味し、少ない冊数に絞りこんでやりこむのが適切です。

参考書によって、伝統的な教育内容を中心的にあつかった参考書もあれば、近年の入試動向を反映した参考書、さらには近年の検定教科書のあつかう話題を組み込んだ参考書もあり、多種多様です。たとえば、文英堂シグマベストと数研出版チャート式と学研の高校参考書では、明らかに編集方針が違っています。

ですので、複数冊所持することは一向にかまいませんが、科目や参考書のタイプによっては、記述が膨大だったりしてやたら沢山買っても読むのに時間をとられてしまい問題練習をできなくなってしまいます(もし問題練習を無視すれば、読むだけなら時間はある)。問題練習できなくなるぐらいなら、そういう科目では、これと決めた参考書を1冊やりこむ方が適切でしょう。

定期テストのレベルの問題集に取り組む[編集]

※ この段階は、高校1年生と2年生を対象にしています。

ある程度教科書・参考書を読んだら、次は高校の定期テスト対策レベルの簡単な問題集に取り掛かり、読み終えたぶんの問題を練習します。 (このような定期テストレベルの問題集は、「ワークブック」などと呼ばれる。書店では、参考書コーナーに置いてあるのが普通。)

教科書・参考書を読むだけだと、書き取り練習や計算練習などができません。そこで、高校1年 - 2年2学期くらいの段階では、高校生用の市販のワークブック(高校から配布される場合もある)を活用してください。書店の高校参考書コーナーの付近にあります。もし高校から教科書会社などの出版しているワークブックを配布されていたら、その配布されたワークブックを利用しても構いません。

教科書や参考書を読みつつ、必要に応じて、ワークブックの問題を解いてください。

参考書にも練習問題がある場合もありますが、問題量が不足してたり、問題レベルが初心者に合ってなかったりして、いきなり参考書の問題集に取りかかるのは非効率です。まずは「ワークブック」から練習するのが効率的です。

ただし、ワークブックは出題が基礎的な内容に限られているため、高校2年生の2学期くらいからは将来的に入試問題慣れをするため、受験を意識した問題集に切り替えましょう。

参考書を読み進めることと並行して、問題集での問題練習に取り掛かってください。

このさい、問題集には書き込みしないように。教科書にも、書き込みしない。今後の復習のためです。そして、なるべく早めに教科書や参考書の未読部分を通読し、教科書や参考書を読み終え、なるべく早めに簡単な問題集を終えてください。

国立志望などのように受験教科数が多い場合や、部活や委員会などに時間を取られる場合、高校2年終わりまでにワークブックが終わらないかもしれません。その場合、偏差値50以上の高校で普段から真面目に勉強してるなら、わざわざ3年生でワークブックを勉強する必要がありません。高校3年になったら、より実践的な問題集に時間を割くべきです。

さて、基本的なレベルの問題集だけだと入試を突破するのは難しいが、基本的なレベルの問題集も確実に解けないようでは入試を突破できるはずがない。まずは基本的なレベルの問題集もきちんと問題練習するべきです。

定期テストの後に、復習を忘れずに[編集]

定期テストの前には言われなくても試験勉強をするでしょう。それはそれで、試験前の勉強も必要なのですが、しかし、定期テストをこなすだけで満足してはいけません。定期テスト後に、最低限、未修得の分野を復習する事が必要です。全国模試の場合も同様です。

入試平均レベルの問題集に取り組む[編集]

※ この段階は、高校2年生と3年生を対象にしています。

次に、入試対策用の問題集に取り組みます。まずは平均的な難度の大学向けの問題集でよいので、問題集を入手して、問題練習してください。この「標準的」とされる「入試」対策用の問題集ですら、現役の高校生には、解くのがかなり難しいです。なので、まだ「難関校むけ」の問題集には取り掛からないほうが良いでしょう。解けない問題集の解答冊子を読む作業ほど無駄な勉強はありません。たとえ難関校を志望する場合ですら、標準難度の入試問題を解く能力も要求されます。なので、志望校が難関校か中堅校かのどちらにせよ、平均的な難度の入試対策問題集を解きまくれる能力が、受験生のころまでに必要になります。難関校向けの問題集よりも、まず先に標準レベルの入試対策問題集を使用してください。

  • 高校1年の読者の場合

高校1年生でも、授業で習うだろう数学IAや生物基礎などの入試問題は解けるかもしれませんが、入試問題集に深入りするのは2年以降で構いません。どうしても高1で入試問題集をしたい場合、センター試験対策の問題集にしておきましょう。

なお、たとえどんなに数学IAの入試難問が解けたところで、数学IIIの平均的な入試問題が解けなければ、理系のまともな大学には不合格です。どんなに生物基礎の難問が解けたところで、高2高3で習う生物(旧・生物II)科目の平均的な入試問題が解けなければ、理工学部の生物学科には不合格です。

大学受験に向けて[編集]

入試と教科書とのズレが大きくなっている[編集]

2024年の現在、探求学習が増えたりして座学的な知識の授業時間が減ったにもかかわらず、実際の大学入試問題では、座学的な知識の要求量はあまり減っていません。

科目によっては私大どころか国の新共通試験ですら、過去のセンター試験時代とあまり量が変わってないように見えるような実態があります。

対策としては、(検定教科書だけでなく)参考書・問題集による予習が必要になっています(もちろん復習もそのあとに必要ですが、まずは予習です)。いつから予習をするかやその程度については志望校や科目にも寄るので個々人に任せますが、ともかく検定教科書と一般入試の出題とのギャップが大きくなっている事は把握してください。

もちろん一般入試以外の経路(指定校推薦や総合型選抜(AO入試)など)で進学するのも人によっては手段ですが、ともかく検定教科書と一般入試がズレています。

日本史で、探究学習で日本史の教科書が薄くなったにもかかわらず、市販の教材を見てみると入試に要求される知識量が変わっていない、という報告があります[1]

過去問に取り組む時期について[編集]

※ この段階は、高校2年生と3年生を対象にしています。

大学入試対策の最後の仕上げとして、志望校の過去問に取り組みます。注意すべきなのは、過去問とは出題傾向や難度のレベルを調べるためのものであり、使用者の学力向上を第一目的としてはいないということです。眺めるのは早いに越したことはないですが、やりこむのは入試直前期だけで十分です。ただし、入試直前期には必ずやりこむべきです。特にセンター試験の過去問などは、試験馴れの目的も含めて、少なくとも過去数年分のセンター過去問ぐらいは練習したほうが良いでしょう。

高校3年になったばかりの時期では、過去問の得点が悪いのが通常[2]だと市販の学習ノウハウ本にも言われてますので、あまり過去問対策を急ぎすぎないようにしましょう。

教科ごとの学習のバランス[編集]

英数国が基本[編集]

特に受験直前ではない低学年の学習において、基本的な教科として重要なのは英語・数学・国語の3教科です。これは、これら3教科の学力をつけるには付け焼刃ではなく時間をかけたじっくりとした学習が必要なこと、これら3教科の学力をつけることが他教科の学習効率にもつながってくること、これら3教科は大学入試において大きな配点で課されることが多いこと、などによります。中でも大学入試においては、国語は文系、数学は理系において特に重視されがちですが、英語は文理ともに最重要な教科であり、1年生のときから英語の学習を重点的に行うことが推奨されます[3][4]。大学入学後の学習にも英語力は文理とも必要なことを考えれば、当然と言えるかもしれません。数学に関しては、英語についで文理ともに重要であり時間のかかる教科ですので、英語についで早くから重点的に学習することが必要になります[5]

文理選択との兼ね合い[編集]

普通科の高校の多くでは、高校2年生から文系と理系に分かれたカリキュラムで学習するために[6]、その選択は実際には1年生の間に迫られることになります。大昔は3年生で初めて文理を選択することが主流の時代もありましたが、昨今の学習内容の増加により、それでは各教科の学習が十分できなくなっているためです。高校1年生で進路を真剣に考えなければならないというのはそれだけでとても高いハードルですが、厳しい言い方をすればもう高校生なのですから、自分のことは自分の頭で真剣に考え、適切な選択をしなければなりません。

2年生以降の学習では、文理選択によりカリキュラムが決まってくることで、学習する教科のバランスは自ずと希望する進路に最適化された形で調整されます。逆に言えば、そこから進路志望を変更すること(いわゆる文転など)は極めて厳しい道になりますので、文理選択の前に十分に進路について考えておく必要があります。

ノートの使い方[編集]

記憶の定着を図るために、授業の内容などをノートにとるという学習は有用かもしれません。

ノートづくりを目的にしてはならない[編集]

ノートを作る際に注意すべきなのは、ノートはあくまで手段であって、ノートづくりが目的ではないということです。複数の色のボールペンやマーカーを駆使して鮮やかなノートを作り上げる人がときどきいますが、その作業自体はあまり学習には役立たず、無駄な時間になることがほとんどです。

ノートは、書き取り練習だと割り切って、使ったほうが良いでしょう。手を動かして練習したいなら、ノートづくりをするよりも、語句の書き取り練習とか、あるいは問題練習などに時間を割いたほうが良いでしょう。「必要に応じて、ノートを作れる」という能力は、学習の結果・成果であって、けっして学習の手法ではありません。

カラフルなノートを作る必要は無い[編集]

たとえノートで色ペン・色マーカーを使うにして、せいぜい赤ボールペンまたは青ボールペンか、あるいは色マーカーの一本でもあれば、高校生のノートでは十分でしょう。べつに予備として青ペンとか5色マーカーとかを持っていても構いませんが、あまり色の使い分けを気にする必要はありません。教師が色チョークを使うたびにその色のペンでノートをとる人が多くみられますが、実は教師自身も使い分けを意識せずなんとなく別の色を使っている場合もあります。ですので、わざわざマーカーの色を語句によって使い分けることを、いちいち気にするぐらいなら、いっそのこと、ぜんぶ同じ色のペンで使ってしまったほうが良いでしょう。複数の色ペンを使い分ける労力があるなら、授業中ならば教師の説明を聞いて理解することに集中してください。家庭学習なら、複数の色ペンを使いわける労力があるんだったら、その時間を使って参考書を読み込むとか、問題練習とかをしたほうが良いでしょう。

書き取り練習[編集]

英語や社会科や古文漢文などの文系科目において、ある程度の書き取り練習は必要ですが、すべてを丸暗記しようとして1度に10回や20回もの書き取りをするような学習はやめましょう。高校では中学のように易しい内容ばかりを問うてはくれませんので、丸暗記ではとても乗り切れないのです。

高校生の文系科目の勉強法は、まずは、ひととおり教科書・参考書の各章・各節を読みおえたら、重要語句を覚えたり、その周辺の知識を覚えるなどしましょう。このとき、細部の丸暗記は後回しで、全体の流れを理解するように努めましょう。

しかし、社会科の場合、何十回と書き取るヒマがあるなら、市販の用語集などを読み込んだほうがマシでしょう。

なお、共通テストはマークシート方式のため、社会科の用語の漢字を問う問題などの書き取りは出題されないので、注意のこと。

また、書き取りの他にも、教科書・参考書を声に出して読んだりと自分で勉強方法を工夫しましょう。

ノートと雑紙[編集]

高校の5教科の家庭学習では、ノートの復習・整理よりも、書き取り練習用の用紙や、あるいは計算練習用の用紙などの「雑紙」が、必要になります。なので紙の枚数のことを気にせずに好きなだけ書き取り練習などに使えるような「紙」はたくさん用意しておくべきです。不要になったプリントの裏紙など、なるべく遠慮なく使い捨てられる紙を、たくさんストックしておくとよいでしょう。そのような紙を用いて、書き取り練習をしたり、計算練習をしたり、問題練習をしたりと、どんどん手を動かして記憶や理解を定着させる練習作業のほうが、はるかに学習として役に立ちます。

もしノートに知識をまとめるなら、雑紙で練習したあとの自分の知識をまとめたものをノートにきれいに記すとよいでしょう。むろん「きれいに」というのは日本語の「てにをは」をしっかり補って答案を作成するということで、けっして色鮮やかにすることではありません。

ノートの提出・チェックなど[編集]

そうして、もし、そこそこ整理されたノートがあれば、機会があれば、学校教員または塾講師などに確認してもらえるように、彼ら教員・講師などに頼んでください。ここで、採点者に通用する答案を作成する練習をすることができます。単にノートで知識を整理するだけでは、あまり論述の練習にはなりません。だれかにノートの質を確認してもらう必要があります。質の確認の取れてないノートは、その時点では、まだ単なる鉛筆で書き込みされた紙の集まりに過ぎません。

ただし、教員にも仕事があるでしょうし、あなた以外の生徒も相手にしないといけませんので、無理にはノート確認をお願いしてはいけません。塾講師などを利用する必要があるかもしれません。もし、教員や塾講師が忙しくて、あなたのノート確認まで時間を取れないなら、自分でワークブックや問題集などで問題練習して、知識の質を確認します。簡単なワークブックとか、簡単な問題集などでも良いので、それらの教材を利用して問題練習することで、知識の質を検証してください。

さて、学校によっては、ノート提出を学生に要求する場合もあります。もし、そういう機会があれば、せっかくの機会を利用して、ノートを提出して教員に確認してもらいましょう。また、レポート課題などを出す学校もあります。ノートに整理した内容がレポートに利用できそうであれば、せっかくノートにまとめたのですから、その内容をレポートにも利用しましょう。

ただし何度も注意していますが、ノート作りはあくまで補助であって、けっしてノートづくりが目的ではありません。無理にノート作りに時間を割く必要はありません。また、無理にノートを教員・塾講師などに提出・確認依頼する必要もありません。「もし、そこそこ整理されたノートがあれば、」というふうに「もし」という条件つきです。ノートの整理のために、書き取り練習などの時間を減らしてしまうのは、本末転倒です。

ノート作りは、自然に授業中の内容とかをノートにメモしていく程度で良いのです。自然にそこそこのノートが出来上がれば、せっかくノートがあるのでしょうから、利用するのも一手というだけです。

ノートを書かない[編集]

思い切ってノートを全く書かないというのも一つの手です。せっかく苦労してノートを書いても、専門家の書いた教科書・参考書には遠く及びません。それならば、最初から既に完成された教科書・参考書を使って勉強したほうが良いでしょう。

教科書ガイドについて[編集]

教科書ガイドの使い方について、次の2通りの意見が提出され、議論になっています。読者は、自己責任で判断してください。

説1[編集]

書店には、「教科書ガイド」があふれています。特に古典や英語なら、これがあれば予習のためにわざわざ自分で訳を考える必要はない、という代物です。教科書ガイドは、次のような目的には大いに役に立ちます。

  • 目前の授業でとりあえず教員に怒られないで済ませるため
  • 目前の定期テストでとりあえず赤点をとらないため

一方、次のような目的には全く役に立ちません。

  • 大学受験に対応できる学力をつけるため

そもそもなぜ授業の予習で訳をさせるのでしょう。それは、訳を覚えるためではありません。なにしろ、教科書に載っているのとまったく同じ文章は、(稀に不注意な大学がうっかり「やらかす」ことを除けば)受験には絶対に出ないのです。授業の予習で訳をするのは、訳をするという経験を積むことによって、次に見る文章は自分で訳せるようにそのノウハウを身につけるためです。出来上がった訳などはどうでもよく、訳を作るという経験が重要なのです。その経験をすっ飛ばしてしまう教科書ガイドは、百害あって一利なしです。赤点をとらなければそれでいい、というのであれば構いませんが、学力をつけたいと思うのであれば、次の古紙回収の日にまとめて捨ててしまいましょう。

説2[編集]

古典や英語なら、教科書ガイドがあれば、自分で訳を調べる手間が、かなり省けます。古典の場合、訳を考える必要が英語よりも少ないため、古典の教科書ガイドに現代語訳がすでに書かれており、古典の教科書ガイドは大いに役に立ちます。(とはいえ、古文単語集なども勉強しておきましょう。)

また、古典の市販の和訳集は、たとえ高校生向けのものでも、巻号(「第○○巻」などのこと)ごとに特定の作品にばかり深入りしているものが多く(たとえば第1巻は1冊まるごと「枕草子」とか)、入試動向とはズレているので、リスク分散のためにも、古典の教科書ガイドを何冊か購入して読んでおくのが安全でしょう。

また、国語では現代文の場合でも、著作権の理由などか、国語の市販の参考書では解説の書かれていない作品についても、教科書ガイドで解説が書かれており、参考になる場合があります。

ただし、古典を除けば、英語や現代文では、教科書とまったく同じ文章は、普通は入試には出ないので、入試対策としては、あまり教科書ガイドは役立ちません。

なので、その教科の入試動向が分からないうちは、なるべく普段の学習では、教科書ガイドでなく、まずは参考書で勉強しましょう。例外的に、教科書ガイドも深く読んだほうが入試対策もふくめて勉強しやすい科目や事柄(古典の訳、定期テスト対策など)だけ、教科書ガイドで勉強するのが効率的でしょう。

なお、英語の教科書ガイドには、そもそも、教科書の英文そのままの翻訳は教科書ガイドには書いておらず、かわりに教科書で使用されている熟語や構文などの解説が書いてあるだけです。結局、教科書ガイドを読んでも、自分で和文翻訳を考える必要が残ります。英語の教科書ガイドは、単に辞書や単語集を調べる手間を減らすためのものです。

教科書ガイドだけで勉強していると、本来は理解できていない構文でも、教科書の構文まるごと訳を覚えてしまったりして、それでも定期試験では高得点がとれてしまう場合もあり、ついつい「理解したつもり」になってしまいがちです。なので、英語の教科書ガイドにある(構文や熟語などの)翻訳は、あくまでも定期テスト前などの確認の用途にしておきましょう。

もし、自分のこれから勉強しようとする教科が、教科書ガイドを使用せずとも充分に勉強できる教科であれば(例えば数学や理科では、教科書ガイドを使う機会がない場合がほとんど)、むしろ、わざわざ教科書ガイドを購入しないほうが、「理解したつもり」に陥る(おちいる)ことを防げるので、安全かもしれません。

同様に、国語や英語などの定期試験対策をする場合でも、なるべく、教科書ガイドに頼る時間を減らすように努力しましょう。そのため、教科書ガイドだけを購入するのではなく、5教科の参考書も購入しましょう。

また、国語の古典でも、平均レベルを越えた大学の場合、検定教科書でも扱ってない作品を出題する事があるので、教科書ガイド以外に古文単語集などの勉強も必要です。

なお、どの教科でも、授業ではその教科書すべてを扱いきれず、いくつかの単元が未習になる場合もあります。そのような場合に、独学したい場合に、教科書ガイドは活用できます。センター試験の出題範囲は、その科目の検定教科書の範囲を参考にしていますので、時間に余裕があれば、検定教科書の未集でやり残した範囲も勉強しておくと、入試対策としても安全です。

教科書ガイドがなくても、参考書などを頼りにして、ある程度は独学する事はできますが、しかし教科によっては(国語など)、教科書の問題の答え合わせが、参考書だけではできない場合があります。そのような場合の、教科書の答え合わせに、教科書ガイドが役立ちます。 特に国語の場合、参考書でも扱っていない作品があり、すべての作品の解説を購入するのは無理なので(金銭的にも難しいし、そもそも現代文では高校生向けの解説書が販売されてない作品がほとんど)、独学の際にも役立ちます。

教員の中には、不適切な量の予習を要求する教師もいて、そのような教師への対策としても教科書ガイドが有効な場合があります。生徒にはまず全教科の学習があるということを無視して、いたずらに自分の担当科目ばかり、大量の予習を要求したりする指導などがありますが、しかし教科書ガイドがあれば予習がしやすくなり、そのような不適切指導による負担が軽減されます。

学校教員のなかには、教科書ガイドの内容をよく知らずに、憶測だけで「教科書ガイドを使うべきではない。教科書ガイドは役に立たない。」という主旨の指導をする人も、ときどき居ます。ですが、教科書ガイドの出版社も、それほど馬鹿ではないので、マジメな高校生が読んでも役立つように内容を工夫しています。

もし、教科書ガイドによって、教員の授業の価値が成り立たなくなるとしたら、役に立たないのは教科書ガイドではなく、教科書本体に何らかの欠陥があるのでしょう。裏をかえせば、数学や理科などのように、教科書ガイドがなくても、教科書と参考書だけで充分に勉強できる教科では、当然ながら、教科書ガイドは、あまり役立ちません。

なので、その教科・科目の特徴や入試傾向によって、教科書ガイドを購入するかどうか、使い分けましょう。


バランスよく学習する[編集]

教科ごとの学習量のバランスにも注意しましょう。特定の科目に偏るのではなく、全教科をしっかり学習することが、進路実現のためにも役に立つのです。このように言うのは簡単ですが、各教科の担当教員ごとに予習復習や課題の要求量が違いますので、ついつい課題の多い教科の学習に偏りがちです。ですので、バランスよく学習するためには、そのような意識を常に持っていることが不可欠なのです。

※ 次の2通りの意見が提出され、議論になっています。

意見A: 2年生前半までは英数国の3教科の力をしっかりまんべんなく伸ばしましょう。
意見B: 2年生前半までは英数国の3教科の力を中心に、高校で習う全ての教科を伸ばしましょう。

これらの教科はどのような進路を選ぶにしろ学習を避けられませんし、力をつけるのに時間のかかる教科です。2年生後半からは理社にも力を入れ、5教科のバランスを整えていくことになります。このときまだ英数国の基礎力が不十分だと、理社まで手が回らず、どっちつかずでどうしようもなくなります。1年生から2年生前半までで英数国に穴をつくらないことが必要不可欠です。


塾・予備校の注意点[編集]

塾や予備校の中には、不適切な指導をするところもあるので、注意が必要です。生徒にはまず学校での学習があり、他科目の学習があるということを無視して、いたずらに自分の担当科目の、自分の塾オリジナルの、不必要な難問を含んでいたりする教材を勉強させたり、大量の宿題を要求したりする指導などが代表的でしょう。

志望校や受験校の選択についても、過度に現役合格にこだわるあまりの不適切な指導をされることもしばしばあります。こういった指導をする塾や予備校は、市場原理で淘汰されてはいるものの、根絶されてはいません。その塾・予備校に相談しても改善が見られない場合、保護者に相談して、他の塾・予備校に変えるなどの対策が必要です。


大学進学に要求される「理解」の水準[編集]

勉強には「理解」が大事と言いますが、では大学受験で要求される「理解」とは具体的にどのような知的水準でしょうか。目安として、答えは、書籍『高校の勉強のトリセツ』によると、何とか年下に教えられるレベルです[7]

もっとも、若干は比喩であって、実際には高校生が年下に教える必要はありませんし、じっさいに高校時代に教えるのは時間の無駄でしょう。なぜなら素人の高校生が教育しても非効率なので。教員免許をもった専門家である学校の教師や、塾などの大卒の講師がいますので、彼らに任せたほうが効率的です。


とりあえず勉強のさいの脳内シミュレーションとして、架空の弟や妹などで、性格が少し生意気だけど根がマジメで勉強家で理屈屋のイマジナリー弟みたいなのを脳内で想定して、ときどき、彼に教育するシミュレーションというかメンタルトレーニング的な何かをする感じで脳内で授業を論理構成して自分に教育すると良いでしょう。過去の自分に教育するように、自分が悩んだところを、彼に分かりやすく教えることを目指すと良いでしょう。ときどき、で良いです。毎日やると面倒ですので。


じっさい、一昔前の2001年あたりの学習塾の大学生アルバイトも、たとえば大学進学して文系の学部に入学した学生なら、塾講師のバイト内容は、中学生の塾生への文系科目の講義がバイト内容です。同様、理系の学部に進学したら、塾講師バイトの内容は中学生に理系科目を教えられるレベルが水準です。

また、大学の教職課程(きょうしょくかてい)について、どんな大学でも教職課程を修了して大学卒業すれば、少なくともその学部学科の専門分野についての教員免許は取れます(実際には、公立教師の場合、加えて都道府県の採用試験などがある)。大学進学とはそういうレベルですので、そこから逆算すると、つまり本来の高校教育で大学進学コースの生徒に要求されている知的レベルが分かります。

もっとも、現実の高校は中学の延長上のようになっており、その水準まで到達していませんが。


もちろん、教科書・参考書などの助けもあって何とか教育できる、という話です。少なくとも、進学校の高校1~2年の基礎レベルでも、脳内弟(理屈屋)の教育は、そこそこ有効な勉強法でしょう。

なぜなら、そもそも進学校の高校1~2年に選ばれる科目の内容は、使用頻度が比較的に高く、加えて論理的思考力を養いやすい内容が選ばれているので、なので比較的に実用的で理路整然とした内容が選ばれているはずだから、です。

高校前半の教育内容が、そういった思考力のようなものを涵養できる教育内容になるように、文科省が定期的に指導要領を変えているし、大学入試センターなどにも行政命令をしているから、です。


また、教える職業なら、実用的にはスピードが要求されますので、そのためには自分が問題練習することも必要です。

第二次世界大戦の日本の海軍の提督(ていとく)である山本五十六(やまもと いそろく)という人物が、次のように格言を言っています、

「やってみせ 言って聞かせて させてみて 誉めてやらねば 人は動かじ」

という川柳のような格言を山本は言っています。

大学進学者は、学問をやってみせる事ができるように、だから問題練習も必要なのです。


仮に自分が教師だとして授業中に予習不足で1分なやんだら、もし40人学級の担当なら、40倍の40分間の時間の無駄になってしまうのです。だから架空の授業で扱うレベルの練習問題は、スムーズに授業ができるように、きちんと練習をしないといけません。

だから大学進学コースの高校生には問題練習が必要であり、受験基礎レベル~標準レベルの簡単な問題集でもいいので、問題練習が必要なのです。


仮に中学卒業生に高校1年の内容を教えるなら、教育側としては評判の良い参考書などにも目を通して検定教科書以外にも周辺知識を増やさないといけません。一般に教育学などでは「人にものを教えるには、教える内容の3倍の知識が必要」と言われており、大学教育での授業時間の計算も本来はそういう理念に基づいています(大学教育の実態とは違いますが)。

ただし、高校3年で習うレベルの選択科目(世界史探究など探究科目や、専門『化学』など理系専門科目、数学III・C など)は、なんだかんだで問題練習などを多くして覚えるしかないでしょう。探究科目などの上級の分野は、なんだかんだで、思考力うんぬんを抜きにして網羅的に繰り返し反復練習などで覚えるしかないので、だから後回しの3年生の科目にされているわけです。

脚注・参考文献[編集]

  1. ^ コバショー 著『大学受験はさらに先取りの時代へ!』、2024年02月24日
  2. ^ 『高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、136ページ
  3. ^ 『高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、132ページ
  4. ^ 船登惟希 『改訂版 高校一冊目の参考書』、KADOKAWA、2019年3月18日、136ページ
  5. ^ 船登惟希『改訂版 高校の勉強のトリセツ』、GAKKEM、2020年3月31日 改訂版 第1刷、132ページ
  6. ^ 『高校の勉強のトリセツ』、GAKKEN、126ページ
  7. ^ 船登惟希・山下佳祐 共著 『高校の勉強のトリセツ 改訂版』 、学研プラス、2020年3月19日 、