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宇宙の膨張とビッグバン

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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宇宙の膨張とビッグバンでは、宇宙論における基礎的な分野である宇宙の膨張とビッグバン理論について解説する。

宇宙の膨張とその始まり

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天体の距離の測定では、ハッブル-ルメートルの法則を紹介した。エドウィン・ハッブルは、遠方の銀河ほど後退速度が大きいことを発見し、これにより宇宙が膨張していることが示された。しかし、これは地球が宇宙の中心であることを意味しない。宇宙は一様で等方的であり、どこから見ても膨張が観測されるという宇宙原理によって、特定の中心は存在しない。

現在の宇宙が膨張していることから、かつては非常に小さく高密度な点から膨張が始まったと考えられる。この初期の膨張がビッグバンと呼ばれ、この理論はビッグバン宇宙論として知られる。ビッグバン理論を提唱したのはジョージ・ガモフであり、「ビッグバン」という名称はこれに反対したフレッド・ホイルによる揶揄的な表現が定着したものである。

ビッグバンの初期には高温・高密度状態が続き、約3分後にビッグバン元素合成が進行してヘリウムやリチウムなどの軽元素が形成された。この元素合成は現在のヘリウムの重量比約24%(原子数比8%)とほぼ一致している。炭素や酸素などの重元素は後に恒星内での核融合によって形成された。

宇宙背景放射

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ビッグバンから約38万年後、宇宙の温度は約3000Kに低下した。この時期には、電離していた陽子(主に水素イオン)やヘリウム原子核が電子と結合し、光子が電子に散乱されることなく自由に進むことができるようになった。これを宇宙の晴れ上がりと呼ぶ。

当時の宇宙の温度は3000Kだったが、現在までの膨張に伴い、宇宙の温度は約2.7Kまで低下している。この2.7Kの放射は、マイクロ波の波長領域にあり、これを宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と呼ぶ。この放射はビッグバン理論の重要な証拠の一つとされている。

宇宙マイクロ波背景放射の図(WMAPによる観測)。

宇宙マイクロ波背景放射には温度のわずかなゆらぎ(約10万分の1)が存在しており、このゆらぎは宇宙の初期構造形成に関与していると考えられている。COBEやWMAP、Planckといったミッションにより、CMBの詳細なマップが作成され、宇宙の初期条件に関する重要な情報が得られている。

宇宙と無限

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ビッグバン理論に基づけば、宇宙は膨張しているため、宇宙が無限であるという考えは否定される。かつては宇宙が無限であると信じられていたが、オルバースは、もし宇宙が無限ならば、夜空は星々の光で満たされて明るいはずだと主張した。これが有名なオルバースのパラドックスである。

最新の観測結果と理論の見直し

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ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測結果や大規模探査プロジェクト「REBELS」による成果は、ビッグバンから非常に短期間で成熟した銀河が存在していたことを示しており、従来の宇宙論モデルの再評価が必要であることが示唆されている。これらの観測は、初期宇宙の銀河形成や進化に関する理解を大きく変えるものであり、これまでの理論では説明が難しい現象が数多く明らかにされた。

特に、初期宇宙における急速な銀河形成と進化の速度は、従来のモデルでは説明が困難であり、新しい理論的枠組みが求められている。JWSTは、宇宙の「晴れ上がり」やその後の進化についても再評価を促しており、ビッグバンからの宇宙の進化過程に関する理解がさらに深まっている。