幾何学基礎論/公理

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数学のどんな分野のどんな定理も、まず最初に仮定があって、そこから証明が展開され、最終的には定理が導かれる。そこで定理から仮定をさかのぼってゆくことができる。しかし、無限にさかのぼり続けることは出来ないので、どこかで「これは無条件に正しい」ということを認めなければならない。

これを、「公理」と呼ぶ。ユークリッド原論では様々な公理や公準を定めており、本書もそれに従う。ただしユークリッド原論の公理や公準は現代数学的に見て不備のある部分もあるのでそれを修正したヒルベルトによる公理、w:en:Hilbert's axiomsに従う。

公理を述べる前に[編集]

公理は初等幾何の上では扱いづらいことが多く、学校教育でも公理を公理として教えることはないことが多い。これらから導き出される基本的な定理を使うことがほとんどであるので、公理を飛ばして定理をほとんど公理とみなして話を進めたほうがスッキリするだろう。

ほとんどの公理や基本的な定理や定義といったものは感覚的につかんでも全く問題はないと思われる。そのためここに書いてあることが理解できなくても何ら差し支えない。

また本書では、「¬」「∧」や「∨」といった記号を積極的に使う。どちらも数学の命題を結びつける働きである。1つ目は「〜でない」、2つ目は「かつ」を意味し、3つ目は「または」を意味する。最初は難しいかも知れないが、慣れたらこちらのほうが断然容量の節約になり理解しやすいと思われるためこれらの記号を使っていく。

公理[編集]

I 結合の公理[編集]

  1. 任意の2点 A, B に対して、それらを通る直線 l が少なくともひとつ存在する。
  2. 異なる2点 A, B に対して、それらを通る直線 l はただひとつ存在する。
  3. 一直線上にある異なる点が少なくとも2つ存在する。一直線上にない少なくとも3つの点が存在する。
  4. 同一直線上にない3点 A, B, C を含む平面 α が存在する。平面上には少なくとも1点が存在する。
  5. 同一直線上にない3点 A, B, C を含む平面はただひとつ存在する。
  6. 直線 l 上の異なる2点 A, B が平面 α 上にあるならば、直線 l は平面 α 上にある。
  7. 点 A が平面 α, β 上に存在するならば、点 A とは異なり、平面 α, β 上にある 点 B が少なくとも一つは存在する。
  8. 同一平面上にない少なくとも4点が存在する。

1, 2, 3 は平面公理、平面上での話である。 4 〜 8 は立体の公理である。特に 7 は我々の考えている幾何学を3次元に縛っている。

II 順序の公理[編集]

  1. 点 B が A, C の間にあれば、A, B, C は一直線上の相違なる3点であり、かつ点 B は点 C と A の間にある。
  2. 任意の点 A, C に対し、 点 A と B の間に点 C があるような点 B が存在する。
  3. 一直線の上にある任意の3点のうち、他の2点の間にありうるものは1点より多くはない。
    定義 :
    異なる2点 A, B を線分と呼び、AB または BA で表す。点 A, B を通る直線に対し、A, B の間にある点を、線分 AB の内点、点 A, B を線分 AB の端点、それ以外の点を外点という。
  4. (パシェの公理)A, B, C を同一直線上にない3点とし、結合の公理5 から、平面 ABC があり、その平面上にあり、点 A, B, C をどれも通らない直線 l を定める。このとき、直線 l が 線分 AB の内点を通るならば、直線 l は 線分 BC の内点を通るか、または線分 AC の内点を通る。

III 合同の公理[編集]

定義:
直線 l 上に 点 O と、点 O と異なる点 A, B をとり、点 A, B が同一点、または点 O が線分 AB の外点のとき、点 A, B を点 O に関して直線 l の「同じ側にある」といい、点 O が線分 AB の内点のとき、点 A, B を点 O に関して直線 l の「異なる側にある」、「反対側にある」という。直線 l 上の点で、点 O に関して 点 A と同じ側にある点の全体を「直線 l に属し、点 O を端点とする(点 O から出る)、点 A と同じ側の半直線」という。(表現は異なる場合もある。)
  1. 直線 l 上にある異なる点 A, B があり、直線 l' 上にある点を A' とする。直線 l' 上に、点 A' に関して一方の側に点 B' が存在して、AB ≡ A'B' (線分AB と 線分A' B' は合同)とすることができる。
  2. AB≡A'B' ∧ AB≡A''B'' ⇒ A'B'≡A''B''
  3. 直線 l 上に 点 A, B, C があり、点 B が 点 A, C の間にある、かつ直線 l' 上に 点 A', B', C' があり、点 B' が 点 A', C' の間にある、かつ AB ≡ A'B', BC ≡ B'C' ならば AC ≡ A'C'
    定義:
    lh, mh を、それぞれ異なる直線 l と直線 m に属し一点 O を端点として点 O を含む平面 α 上にある半直線とする。このような2つ半直線の組をといい、∠(lh, mh) または ∠(mh, lh) と表す。半直線 lh, mh 上にある点をそれぞれ A, B とすれば、∠(lh, mh) を ∠AOB とすることもできる。またこのとき、lh, mh をこの角の、点 O をこの角の頂点という。また、直線 l を境界とし半直線 mh 上の任意の点と同じ側にある半平面と、直線 m を境界とし半直線 lh 上の任意の点と同じ側にある半平面との共通部分を、この角の内部といい、内部にも両半直線上にもない点の全体をこの角の外部という。
  4. 半直線 lh, mh を平面 α 上にあるとし、∠(lh, mh) を平面 α 上の角とする。また、直線 l' を平面 α' 上にあるとし、点 O を直線 l' 上の一点とする。このとき、点 O を端点とする 直線 l' に属する半直線のひとつを l'h とおき、直線 l を境界とする平面 α' に属する半平面を α'h と定める。すると平面 α'h 上にあり、点 O を端点とする半直線 m'hがあり、∠(lh, mh) ≡ ∠(l'h, m'h) とすることができ、かつそのような m'h はただひとつに決まる。また、任意の角はそれ自身に合同である。記号で、∠(h, k) ≡ ∠(h, k).
  5. 点 A, B, C が同一直線上にない3点で、かつ 点 A', B', C', が同一直線上にない3点であるとし、AB ≡ A'B', AC ≡ A'C', ∠BAC ≡ ∠B'A'C' ならば ∠ABC ≡ ∠A'B'C'

線分や角の合同の推移性は示されていないが、容易に証明することができる。3は線分の加法の可能を言い表す公理である。

IV 平行線公理[編集]

  1. (プレイフェアの公理)任意の直線 l と、直線 l 上にない任意の点 A に対して、直線 l と 点 A によって決まる平面 α 上にあり、点 A を通り直線 l と交わらない直線は高々ひとつ存在する。

l と m が交点を持たないとき、これを l は m と平行、記号で l // m と表す。ただしこの記号表現は日本独特のものであることに注意。なおこの公理の同値表現が他にも存在する。これは後々に挙げる。

V 連続性の公理[編集]

  1. アルキメデスの公理)任意の線分 AB, CD について、AB 上に有限個の点 A1, A2, A3, ... , An-1, An, が存在して、線分 AA1, A1A2, A2A3, ... An-1An のそれぞれが線分 CD に合同かつ B が A と An の間にあるようにすることができる。
  2. (一次元の完全性公理)一直線上にある点は、順序の公理1, 2、また合同の公理1、アルキメデスの公理を保存する限り、それ以上拡大不能である。すなわち、直線に幾つかの点を加えて上記全ての公理を満たすことはできない。なおここでいう「保存」は、公理が元通り成立することである。

公理について[編集]

公理では、点、線、面とは何かについて一切の言及はない。これは、点、線、面についての関係が全てである。また、この公理系からは、ある命題とその否定命題が同時に証明されない、すなわち無矛盾であり、他の公理からある公理が導かれることはなく、知られる限りの定理がこれらの公理系から証明または反証可能である。

また集合論的に公理を定めることもできる。実例

結合の公理は私たちが平面の幾何に対して持っている感覚を数学的に厳密に言い表しただけであり、特に疑問もないだろう。

順序の公理は何のために存在するのかよく分からないしそもそも「間にある」とは何かを定義しておらず、一見すると奇妙な公理に見える。しかしこれは数学として厳密に順序を捉えるために必要なのである。幾何学は「図形」との結びつきが強いため、ユークリッドの原論などでは順序は図形にきれいに書けば自明であるという立場を取っていた。しかし順序も数学的に厳密に定めてやらないといけない。これが順序の公理設定の理由である。

合同の公理であるが、一般的には角度が等しいことを∠A = ∠B、線分の長さが等しいことを AB = CD とする。それは、角の合同も線分の合同も、「=」の満たすべき性質、反射律、推移律、対称律を満たすからだ。記号で書くと、A = A ∧ ( A = B ⇒ B = A ) ∧ ( A = B ∧ B = C ⇒ A = C ) 。線分の合同を移す一意性は証明できるが角の場合は公理である。三角形の合同定理という非常に重要な定理の一つでは角と線分が条件であり、線分の合同と角の合同は複雑に絡み合っている。合同の定理があるからこそ、「長さ」という概念が生まれる。また角も初等幾何学において重要な概念の一つである。

次に平行線公理についてだが、ユークリッド原論では「1つの線分が2つの直線に交わり、同じ側の内角の和が2直角より小さいならば、この2つの直線は限りなく延長されると、2直角より小さい角のある側において交わる。」という長い命題であった。その他の公準が短い文なのに対しこれだけは長く、本当に自明か、ということが問われたり、他の公理から平行線公理を演繹しようとする試みが行われていた。なお平行線公理は他の公理からは独立であり、平行線公理を他の公理から論理的に導くことは不可能である。その証拠に、平行線公理を仮定しない「非ユークリッド幾何学」なるものが存在する。ここの辺りはw:平行線公準に詳しい。

そして最後は連続性の公理である。アルキメデスの公理を仮定しない「非アルキメデス幾何学」、またの名を「リジッド幾何学」なる幾何学が存在する。この幾何学では、円盤(円のようなもの)について言えば、円盤内の領域の任意の点が円盤の中心になり、直径は半径以下になり、重なる部分を持たないか完全に中に包含するかのどちらかだけで一部だけ重なることはあり得ない、などなど、直感には反した幾何学が得られる。一次元の完全性公理であるが、これは初等幾何学とデカルトの解析幾何学との整合性を保つために存在する。

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