戦術学入門

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地形図と部隊符号から構成されるアウステルリッツ会戦の状況図である。戦闘で生じている全ての事象が戦術的に重要であるわけではない。戦術学では状況図のように現実の複雑な戦況を概念化し直し、戦場の空間的、時間的そして戦力的要素の三つを視覚的に把握することで、何が重要な情報であるかを取捨選択する。

序論[編集]

戦術(Tactics)とは戦闘において部隊などを効果的に運用する技術・科学である。軍事学において戦術学は戦闘を認識し、解釈し、そして判断するために必要な理論的枠組みを備え、また戦闘において勝利を獲得するために戦力を配置し、戦闘力を最大化し、戦闘行動を指揮する上で不可欠な実践的役割を担っている。ただし戦術は戦略の下位において実践される領域として区別されている。つまり戦略とは作戦部隊を有利な条件で戦闘が実施できるように全体的な視点から部隊を指導する技術・科学であり、戦術はその戦略に沿って戦闘で勝利する技術・科学である。したがって、戦術学の固有の問題とは戦争の指導とは別個に、戦闘において戦力を活用することにある。

戦闘において部隊を戦術的に運用することの意義は過去の戦史で示されている。ナポレオン戦争においてアウステルリッツ会戦を概観すると、戦力で劣勢なナポレオンが敵の攻撃に対して防御戦闘と遅滞行動を組み合わせたことが勝利をもたらしたことが分かる。戦術学において戦力の優劣は必ずしも戦闘の勝敗に直結するわけではない。戦力だけではなく、任務、地形、敵情などから戦闘状況に適した戦術を選択することが不可欠である。例えば戦術学では学習者を部隊指揮官と想定して次のような事柄を問題とする。「与えられた任務をどのように理解するのか」、「どの地域が戦闘において緊要であるのか」、「敵は次にどのような戦闘行動に出るのか」、「現状で我の戦力をどのように配置するべきか」、「敵をどのような要領で攻撃するべきか」、「圧倒的劣勢において退却と防御のどちらを選択するべきか」、「歩兵部隊と戦車部隊の連携はどのように指導するのか」、「自分の作戦計画をどの部下に何をどのように伝えるべきか」これらの問題は全て戦術学の重大な問題であり、理論的に導き出すことが求められる。

戦術学はいくつかの部門に細分化することができる。まず理論的に単純化された基礎的問題を扱う初等戦術とより現実的かつ複雑な戦況に対処する応用的問題を扱う高等戦術の二つがある。また単一兵科の小部隊を指揮する小戦術から複合兵科の大部隊を指揮する大戦術に分けることもありうる。さらには戦闘空間の特性の相違から陸上戦力を運用する戦術、海上戦力を運用する戦術、航空戦力を運用する戦術などに分類することも可能である。事前の準備の程度から計画戦術と応急戦術の研究に分けることもなされる。これらの細分化に踏み込むことは『戦術学入門』である本項目では重要視しない。以下では戦術学の基礎的な理論について概説することに力点を置いた上で、次のような章立てで進んでいく。まず戦術の原理、攻勢作戦、防勢作戦の三つに内容を大別して説明していく。これらの概説を通じて本項目では学習者の戦術学の基礎的な理解に貢献することを狙っている。

戦術の原理[編集]

戦術とは戦闘に戦力を適用することである。その具体的な適用の方法は実践的な訓練や経験によってのみ獲得される技術的側面を含んでいるものの、体系的な教育や思考によって習得される科学的側面も備えている。したがって、戦術問題は原則としていくつかの原則と戦術学の概念に基づけば論理的思考によって解答を導き出すことが可能である。ここでは戦術学の原理、基本概念、そして戦術的思考のモデルについて概説する。

戦いの原理[編集]

あらゆる戦闘に勝利するために一般的に適用することが可能な戦術の原理とはどのようなものであるのか。例えばそれは「我の戦力の主力を以って、敵の個々の戦力と戦闘するように機動すること」のように要約された、いくつかの戦いの原理(Principles of war)から明らかにすることができる。これは戦闘を計画または指導する際に常に準拠するべき原則であり、次のような諸原則が知られている。

  • 目標の原則
  • 統一の原則
  • 主導の原則
  • 集中の原則
  • 奇襲の原則
  • 機動の原則
  • 節約の原則
  • 簡明の原則
  • 警戒の原則

行動の目的を明確にする目標の原則、指揮系統を統一する統一の原則、先制して状況の支配権を獲得する主導の原則、敵の弱点に対して味方の戦力を集中する集中の原則、敵の意外性を突いて戦う奇襲の原則、移動によって我の優位な位置関係を維持する機動の原則、無駄な戦力を有効活用する経済の原則、目的や行動方針が大胆かつ単純である簡明の原則、敵の奇襲を防ぐために注意する警戒の原則、以上が各原則の要旨である。[1]

サラミス沖海戦の状況図

戦術研究においてこれら諸原則の重要性が実証されている。ここでは一例としてサラミスの海戦を取り上げながら、諸原則の意義を確認する。紀元前486年9月20日にテミストクレスが指揮するギリシア軍とクルセルクスが指揮するペルシア軍による、ギリシア半島のサラミス島沖でサラミスの海戦が発生した。劣勢な戦力しか持たないテミストクレスはサラミス島を防衛するために防勢サラミス島沖の狭隘な海峡という地理的環境を活用することを考案した。つまり、ペルシア軍の大規模な戦力を狭隘な海峡に誘致することでペルシア軍を脆弱な状態に追い込み、風浪の状況が時間の経過でギリシア軍に有利に変化するのに乗じて、攻撃に転換する戦術を実践したのである。結果としてペルシア軍は地形や海象に起因する隊列の混乱、そしてギリシア軍の反転攻勢の中央突破に対処することができず、敗北することとなった。サラミス島を防衛するという目標の明確化、部隊の意思疎通の統一化、主導権の計画的な回復、戦力の一点集中、奇襲的な反撃、敵を分断する機動的な攻撃、戦機が到来するまでの戦力の温存、作戦方針の簡潔さ、そして敵の行動に対する警戒、このような適切な原則の適用によってテミストクレスは勝利を確実なものとすることができたと戦術的には考えられる。

戦術の基礎概念[編集]

戦術の基礎概念の最も初歩的な範疇は戦力が発揮する戦闘の機能、戦力が備えている戦闘力、戦力の展開に関連する戦闘陣の三つに大別に分けることができる。

戦闘[編集]

戦闘とは戦争における本来的な軍事行動であり、我に対抗して行動する敵を撃滅することを目的とした闘争の状態である。そのため戦闘において彼我の戦力はそれぞれの戦闘力を最大限に敵に対して発揮できるよう行動する。しかし、敵を撃滅するという一般的な戦闘の目的は個々の状況に応じて敵の部分的な撃退や一地点の占領として解釈される場合もある。そのため戦闘の勝敗は理論的には彼我の損害比で表現されるが、彼我の戦闘部隊の任務が達成されたかどうかによっても表現される。この戦闘を遂行するための戦力の機能は五つの項目に整理することができる。

  • 発見の機能
  • 拘束の機能
  • 制圧もしくは攪乱の機能
  • 機動の機能
  • 占領の機能

偵察や警戒によって敵情を明らかにする発見の機能、接敵機動と接触を維持することによって敵の行動の自由を制限する拘束の機能、砲兵火力などによって敵の組織的行動を妨げる制圧もしくは攪乱の機能、戦場において敵の弱点を圧迫するように戦力を選択的に再配置する機動の機能、そして敵に対して決定的な攻撃を加える打撃もしくは占領の機能、以上の五つである。これら機能を発揮するための戦力の能力を戦闘力と言う。

戦闘力[編集]

ランチェスターの法則[編集]

戦闘力(Capacity of battle)とは各部隊が戦闘を遂行する能力を指す概念である。戦闘力の優劣によって戦闘を実施する部隊の戦果の原因が説明され、また戦果の予測も左右される。戦闘力を具体的にどのような要素から判断するのかについては古典的な分析として、まず物的な局面に注目するものがある。

兵員と装備の物量が大きければ大きいほど戦闘力は向上するものであり、例えば100名の兵員から組織される部隊は50名から組織される部隊に対して2倍の戦闘力を有しているとする分析である。

このような基本的モデルとしてランチェスターの数式モデルなどが提案されており、兵棋演習の戦果や損害の計算法のひとつとして採用されている。


「ランチェスターの法則」の数式モデルは、幾つかの種類があるが、そのうち有名なモデルの内容は、下記の2つの式の連立微分方位定式として表される。

ランチェスターの法則
     (1)
 
      (2)

という連立方程式である。

なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは計算上の都合により定数係数であるとしてモデルを立てる(そう仮定しないと、解析的に手計算で式を解けない。または、もし変数係数だと人間による式計算では解析が著しく困難になるので、非入門的であり、非実用的になる)。

このように微分方程式で表現されるので、大学の微分方程式などの教科書でも紹介されることもある。高校参考書『モノグラフ』の『微分方程式』に書いてある計算問題も、この式の場合である。

式を見れば、たしかに兵員が多いほど、相手軍の損傷が大きくなるような立式になっている事が分かるであろう。


上式を式変形で解いて解析解を得るのは数学的には可能である事が知られているが、しかし解析解から実用的な結果を得るための計算に手間が掛かるので、本wikiではまず、解析をしないで、類似の簡易モデルを考えよう(解析例は後の章で後述する)。

その類似の簡易モデルは、現代ではゲームのRPG(ドラクエやファイナルファンタジーのようなジャンル)における戦闘のダメージ計算に例えればよい。

たとえばドラクエ3のようなパーティ戦闘システムのあるゲームの場合、パーティの人数が増えると、単に敵の攻撃に人数分だけ耐えられるようになるだけでなく、さらに1ターンあたりに敵に与えるダメージ量も増えるので、より短時間でザコ敵(スライムの集団など)を倒せるので、1戦あたりの戦闘が早く終わるので、戦闘終了までに自パーティの受けるダメージ被害も少なくなる。

たとえば、ドラクエ3に例えよう。

勇者の1人旅と、勇者・武道家・武道家・武道家の4人パーティを比較しよう。

プレイヤーキャラが草原フィールド上を歩いていたら、ガイコツが1体出現したとする。(計算の単純化のため、戦闘で出現するモンスターは毎回、必ずガイコツ1体だけだとする。なお、実際のドラクエ3のモンスターには「ガイコツ」はいない。)

計算の単純化のため、ガイコツはHPが10だとしよう。計算の単純化のため、勇者も武道家も、攻撃力は同じで1人あたり2だとする。よって、1回の攻撃でダメージ2を敵に与えるとしよう。

また、勇者と武道家のHPは両方とも10だとしよう。計算の単純化のため、つねに勇者たちの攻撃が先手で、敵の攻撃は後攻だとしよう。

ガイコツの攻撃を受けたら、必ず勇者または武道家の1人がダメージ1を受けるとしよう。

勇者1人旅の場合、ガイコツ1体を倒すのに合計5ターン要する。なので、勇者は戦闘終了までに4ダメージを受ける。(最後の5ターン目はガイコツからの攻撃を受けないので、合計4ダメージになる。)


一方、勇・武・武・武の4人パーティなら、1ターンあたり8ダメージ(=2×4)なので、2ターンでガイコツ1体を倒せる。なので、一戦あたりの被害ダメージは合計1ダメージである(2ターン目はダメージを受けない)。


さて、勇・武・武・武の4人パーティは、HPの合計値が40である(40=4×10)。一方、勇者1人旅は、HPの合計値が10である。

なので、単純計算で勇・武・武・武の4人パーティなら、ガイコツ1体を倒すことを 40÷2=20で、20回可能である。(実際には、最後のほうで勇者か武道かの誰かがHPゼロになって戦闘不能になるので、こなせる戦闘回数は20よりかは減る。)

一方、勇者1人旅では、計算 10÷4=2あまり2 により、たったの2~3回しか、ガイコツを倒せない。

仮に2~3をパーティ人数分で4倍しても、8~12回にしかならず、到底20回には及ばない。

なお、2~3を7倍すると、14~21になり、ようやく20に到達する。


つまり、パーティを4倍する事により、4倍の効果どころか少なくとも7倍の効果が現れている。

4と7を対数関数で計算すれば、

なので、約1.4乗で人数の効果が指数的に効いてきたことになる。

このようにランチェスターの法則により、人数の効果は、けっして1次関数的な1乗の比例ではなく、1次関数を超えた乗数の効果が出てくる。

まさに、上述のドラクエ的なシミュレーション例が、ランチェスターの法則そのものである。

毎回対数計算をするのは面倒なので、やや不正確だが簡易的に「1.5乗で効いてくる」と近似すれば計算しやすいだろう。なお、平方根が0.5乗である。 つまり、ある代数値 aについて、

である。


もちろん上記のドラクエ3例はあくまでゲームの話であり、実際の戦争には、けっして、そのまま単純に適用してはならない。

だが、軍事は置いておくとして「ランチェスターの法則」の数理的な性質だけを調べるための例としては、上記のドラクエ例でも正しい。


もちろん、実際の戦闘や戦争は、そもそも数理モデルだけでは決して済まない。現実の戦争は、そんなに単純ではない。上記のランチェスターの法則は、あくまで参考程度のものである。

しかし、そもそも社会科学におけるモデルとは、そのように参考程度のものに過ぎない。これは軍事学に限らず、経済学などにおける数式でも同様である。


さて、ランチェスターの法則から導ける結果として、もし兵員数が2倍になると、その効果は、けっして単に敵の2連戦に耐えられるような長期戦の対応だけでなく、さらに攻撃力アップによる、次に述べる副次的な別の効果がある。

具体的には、兵員が増えれば仮定により戦闘力(ゲームで言う「攻撃力」)もアップするので、いままで倒せなかった強い敵国の軍が倒せるようになる可能性が増える。また、攻撃力がアップすることにより、敵軍の殲滅(ゲームに例えるなら戦闘中の敵全員のHPを0にする事)に要する時間が減少するので、殲滅までに受けた自軍の損耗も減らせる。つまり自軍の被害は、戦闘終了までに受けた時間に応じて、比例的に増加する事がランチェスターの法則から導かれる(なお、ドラクエなどのRPGゲームでも同様の現象がある事が知られている)。

ともかく、兵員数の増加には、上述のように副次的な効果がある。

このため、よく言われる事として、兵員数の2倍への倍増は、その効果はけっして2倍ではなく、上述の副次効果により乗数的に効果が出るので、たとえば4倍~8倍くらいの効果になる場合もある(実際にどの程度の効果が出るかは、モデルの係数などによって変わる)。

こういった数学的な事が、近代ヨーロッパでは既に言われていたので、なので現実の世界史の戦争での用兵もそれに従い、その結果、なるべく兵力は分散させずに、兵力を拠点や作戦目標などに集中させる戦術が実際に好まれ、多くの戦場で採用された。

近代世界史におけるシベリア鉄道など鉄道による兵員輸送や軍需物資輸送などによって軍事力が向上するという理屈も、なぜ向上するのかという理由を根本的に考えれば、ランチェスターの法則のような考え方が前提になっているだろう。


解析例(微分積分)[編集]

では、実際にランチェスターの法則を微分積分的に解析してみよう。

ランチェスターの法則
     (1)
 
      (2)


なお、自軍の兵数がx、敵軍の兵数がy、αとβは武器の性能を表す定数である。また、αとβは定数係数である。


数学的な注意として、まず、x、yはともに「関数」であり、「変数」は t (ティー)の1つだけである。xとyは、変数にtをもつ(「変数」ではなく)「関数」である。

※ tの代わりにxまたはyのいずれか1つを「変数」とする事もできるが、その場合、変数にならなかった残り2つの文字は関数になる。たとえばもしxを変数として扱う場合、tとyは xの関数である 事になる。
つまり、もしtを変数として扱うなら、けっしてxはyの変数ではない。なぜなら、時間tが与えられれば、yの値は t から一意的に決定するからである。だから、関数 yはこの場合、変数にはtだけをもつ。
変数をtとした場合でも、答えの曲線をグラフ化してx-y平面上に描けば、x軸とy軸の平面グラフ上の曲線が描かれるので、あたかも「xがyの変数である」(誤解)かのように誤解しがちであるが(実際、変数変換によりxを変数とする事も可能であるが)、しかし、計算中の仮定により、この場合は t だけが変数である。

では、実際に式を解こう。まず、式(1)をもう一回、微分すると、

になる。2項目の dy/dt に式(2)を代入すれば、

    (2-1)

となり、式中からyが消えて上式はxとtだけの式になる。

この事から、xは関数であり、xの変数はtだけである事が分かる。(実は数学的には証明をややインチキしており、そもそも、こういう仮定が無いと、常微分を出来ない。変数が2個以上の場合は「偏微分」という別の演算が必要になる。)


同様に式(2)についても、同様の演算操作により、式(2)を変形して関数yと変数tだけの式に置き換える事が出来る。

さて、

    (2-1)

の右辺を移項して、

    (2-2)

となる。

これは左辺の微分作用素を因数分解すると、

    (3-1)

と書ける。

微分作用素を

    (3-2)

として作用素Dを定義すれば、式(3-1)を変形して、

    (3-3)

と書ける。

ここで、中学校で習った因数分解の公式により

    (3-4)

であるので、この公式を式(3-4)に適用すれば、

    (3-5)

のように式変形できる。


この事から、この方程式の解(一般解)は、

   (3-6)

の解(特殊解の一つ)と、

   (3-7)

の解(特殊解)を組み合わせたものになる事が分かる(本来なら証明が必要だろうが、省略する。興味があれば、大学2年の応用解析学の本を読め)。

(3-7)の解は、指数関数

となる。(ただしC0は積分定数とする。)

なお、eは自然対数の底(てい)である。高校3年の数学3で習うので、もし知らなければ教科書を買って調べよ。

指数関数 et は見やすくするために、大学入学以降では exp(t) と書く場合もあり、その場合、上式は

と書かれる。

同様に式(3-6)も解けて

となる。

この2つを足したモノが一般解なので、

    (4-1)

が一般解である。

しかし、読者には、これだけだと、なぜこれによって、兵数が倍増すると攻撃力が倍増するか等の諸性質や、そもそも解が増加するのか減少するのかさえも、分からない。

だが、微分方程式の初期値として、ある時点での兵数と、数時間後の(減少した)兵数を代入する事をして積分定数C0およびC1を決定してから、数値計算を行うと、ここから、「兵数が倍増した場合の勝率の指数的な増加」など前の節で述べたような性質が数値計算的にかつ経験的に導かれる場合が多い(初期値による)。

答えの式(4-1)だけを見ると、あたかも値が増加しそうに錯覚するが(指数関数の部分はマイナスにならないので)、しかし係数C0やC1の符号はプラスとは限らず、マイナスの数である場合もあるので、解全体としては値が減少してくのである。


このように、連立微分方程式は、解を解いただけでは、その性質が分かりづらい場合が多く、そのため、パソコンなどで数値計算によってグラフなどを書いて、その性質を予想する事が、研究では必要である。(そして、その予想を参考に、その予想を証明するのが数学者の仕事である。なお、さすがにランチェスターの式の性質はすでに数学者によって研究済みである。)

なお、もしプログラミングが出来なくても、代替の方法として手間は掛かるが、表計算ソフトのエクセルで、実際に数値計算をしてグラフを何パターンか書いてみてシミュレーションする方法もある。


ともかく、このような連立微分方程式を、数値計算などでシミュレーションして性質を研究していく分野は、数学的には「力学系」といわれる分野である。物理の「力学」の分野でこういう計算例が多かったので、そういう名前がついているが、物理学の知識が無くても計算できる分野である。

軍事学に限らず、生物学の分野にも「力学系」の式はある。生物学で、動物などの個体数などをシミュレーションするのに連立微分方程式で「ロトカ=ヴォルテラの方程式」というのものが使われる場合があり、このロトカ=ヴォルトラ方程式とその派生も、「力学系」の分野のひとつとして有名である。(高校の生物でも、式計算はしないが、高校3年の生物2における生態分野で、類似の理論を習う。)


なお、上記の一般解は、双曲線関数 sinh および cosh というものを使っても置き換える事が出来る。これは日本では大学の理科系の学部の1年で習う。 三角関数のsinやcosとは、双曲線関数は異なるので、混同しないように注意のこと。


余談だが、2020年のコロナ問題で話題・有名になったSIR方程式という感染症モデルの常微分方程式も、力学系に分類されるような式であろう。当然、上述のように力学系の微分方程式の数値計算シミュレーションにはコンピュータが必要である。(なお、評論家の中には困ったことに、「SIR方程式はパソコンが無くても研究できる時代遅れの式」(そして彼らは「だから予想値と実測値の誤差が大きい」と主張している)と言っている、頭の悪い有名評論家がいる(力学系の研究ではパソコンによる数値計算が必須なので、前提が事実に反する)。しかも更に困った事に、本来ならツッコミを入れるべき医学者やら生物学者が数学オンチなので、そういう批判者たちの前提の間違いにツッコミを入れない。残念ながら日本のマスメディアや論壇では、こういう馬鹿評論家でも、学歴で東大とか京大とか卒業していると、困った事に世間では彼らが「知識人」として通用してしまうのである。きっと「痴識人」の間違いであろう。医学者や生物学者も、知識不足で頼りない。)大学などの数学者や物理学者も、まったく評論家の数学的な間違いにツッコミを入れないので、残念ながら日本の数理科学の研究水準は低いといわざるを得ない。東大などの提唱する分離融合や異分野融合などが口先だけである証拠でもある。


またなお、微分積分に限らず、軍事学や経営学などの分野に数学や統計学などを応用する分野の事を「オペレーションズ・リサーチ」(略称は「OR」(オー・アール))という。第二次世界大戦中にアメリカ軍がこういった数理的な研究手法を始めた。統計学や確率論、線形計画法などがよく、オペレーションズ・リサーチの手法として用いられる。

一方、「力学系」と言った場合、「力学系」は微分方程式(または差分方程式)で立てられたモデルの分析のことを言うので、「オペレーションズ・リサーチ」とはニュアンスがやや異なる。


吟味の必要性

軍事学の数理モデルに限らず、経済学などを含む何らかの社会科学の数理モデルを現実の問題に適用する場合には、注意しなければならない事として、そのモデルが、これから適応しようとしている事例の性質を果たして本当によく反映できているか、自己批判的かつ内省的に注意深く観察しながら、限定的に適用しなければならない。このように、観察しながら注意深く限定的にデモル適用をすることを、俗に社会科学などの分野では「吟味」(ぎんみ)という。数理モデルの実用の際には、吟味が必要である。

しかし残念ながら、社会科学やその応用では、しばしば吟味は省略されることが、実業界やマスメディアなどで まかり通っている場合が往々にある。

たとえば2001年~2005年ころのアメリカ金融界は金融工学のブラック・ジョ-ルズ方程式に基づく仕組みなどを喧伝していたが、しかし米国金融がモデルの吟味を怠ったせいで杜撰な貸付をしたせいで、貸し金の回収不足になりサブプライム問題を起こすなど、杜撰な吟味不足によって世界経済に迷惑を及ぼす例もあった。

実際の戦闘力[編集]

上述のランチェスター法則は、あくまで参考程度の簡略的なモデルであり、実際の戦闘では適用の不可能・困難な場合も多いだろう。

なので、もし戦闘力をさらに詳細に分析するならば、兵員の規律や士気などの無形的要素を組み合わせなければならない。つまり、火力部隊の戦闘力は火砲とそれを操作する射撃要員の物量という有形的要素と、砲兵火力を発揮するための射撃の速度、精度、士気から判断される無形的要素から導き出すことができる。したがって100名の統制がとれていない武装した群衆と50名の規律ある戦闘部隊の間には戦闘員としての錬度、団結、そして士気という無形的要素に由来する戦闘力の格差が存在していると指摘できる。

また、戦闘は戦力の戦闘力の合計によってのみ左右されるのではなく、戦闘力を戦場に配置する戦闘陣によって規定される。

戦闘陣形[編集]

戦闘陣(Battle formation)は戦力が戦闘において連携を保つために形成する複数の部隊の一定の態勢である。戦力は彼我との位置関係から与えられる損害や得られる戦果が変化しうる。そもそも部隊は敵の方向に対して最大の戦闘力を発揮できるように部隊の正面を方向付ける。その基本となる戦闘陣形として第一に横陣がある。横陣は敵に対して正面を広く縦深を浅くなるように選択した隊形であり、特に火力を発揮するのに適した陣形である。この陣形の戦術的な特徴は部隊の脆弱な左右両側面と背面に敵が回りにくくすることを防ぐことにある。古代ギリシアのマケドニア軍で採用されていた戦闘陣は歩兵部隊の横陣の両翼に騎兵部隊を配置することで、中央の歩兵部隊の両翼の弱点を補っていた。また基本となる戦闘陣形には縦陣もある。これは正面に対して狭く縦深が深くなるようにした陣形であり、機動力を発揮するのに適した陣形である。この陣形には部隊の迅速な行軍や機動を容易にする特徴がある。速やかな戦場機動や中央突破を狙った突撃で有効であり、トラファルガーの海戦でイギリス軍がフランス軍の戦列に対する攻撃の際に選択されている。さらに斜行陣、鈎形陣、円陣、弾丸陣などの陣形があり、斜行陣は右翼または左翼の片方に兵力を集中的に配置した戦闘陣であり、また鈎形陣は片方の翼を横方向に配置した戦闘陣であり、両方ともに劣勢である場合に用いる戦闘陣である。円陣は全方向に対して部隊を配置する円形の戦闘陣であり、部隊の宿営や集結などに用いられる。弾丸陣は矢印のような形状の戦闘陣であり、先端に機甲部隊を配置して突撃などに用いられる。このような多様な戦闘陣は地形や敵情、彼我の戦闘力の格差などを考慮した上で選択されなければならない。

戦術の基本作業[編集]

戦術的知能の中核とは問題解決能力であり、これは自らが置かれている状況がどのようなものであるかという状況を判断する問題、我が選択することが可能な選択肢の中でどれが最善であるか意志を決定する問題、そして下された決定を実行するために作戦方針を作成する問題の三つに問題を区分することができる。

状況判断[編集]

状況判断の問題とは任務分析、地形判断、敵情判断を起点とし、敵の可能行動の列挙、味方の行動方針の列挙、各行動の戦術的分析、そして各々の分析の総合という思考過程に基づいて解決される。任務分析とは自分に与えられた任務の背景や本質を分析して達成すべき目標事項を明確化し、複数ある場合にはそれぞれの目標の優先順位を定める問題である。地形判断とは自分が置かれている地理的環境がどのようなものかを分析することである。この際に軍事地理学の知識を援用して戦闘地域を構成する地理的特性を解釈し、重要な地形やそこに至るための接近経路を明らかにする。敵情判断とは敵部隊の配置、装備や補給の状況、後方連絡線の方向などを分析し、敵がどのような戦闘行動を将来実施するかを検討することである。敵情判断では敵が行いうる全ての戦闘行動の全てを列挙し、蓋然性の観点からそれら行動の我にとっての効果や危険を明らかにする。

意思決定[編集]

意思決定とは状況判断に基づいて我の行動方針を決定することであり、可能的な状況について個々に分析し、それら分析を総合し、決心を下すという過程から成り立つ。実際に発生する可能性がある状況は彼我にとって実施可能な戦闘行動の組合せの数だけ存在する。これらの状況について個々に分析を加えることで個々の戦闘行動によって生じうる結果がどのようなものであるかを検討する。そして総合の過程でそれら分析によって得られた個々の戦闘行動を相互に比較しながら我にとって最も危険性の高い事態がどのような事態であるかを明らかにすることが可能となる。そして任務を達成するためにどのような戦闘行動を選択しなければならないかを限定することができる。最後の決心とは少数に限定したいくつかの作戦方針の中から一つを、その選択肢の危険性と不確実性を鑑みた上で決定することである。このようにして決心が確立されれば、作戦計画の策定作業に移ることができる。

作戦計画[編集]

作戦計画(Operations Plan, OPLAN)とは決心によって定められた作戦方針に基づいて策定される戦力運用の計画である。作戦計画とは作戦の目標、目標を達成するために採用される行動の方針、そしてその方針に従って作戦に参加する各部隊の任務と個々の行動計画から成立しており、指揮官には戦術的思考に基づいて作戦計画の骨子を作成する技能が求められる。作戦は計画、実行、評価の三つの段階を繰り返しながら進め、常に目的と手段が結合するように配慮しなければならない。作戦計画の立案の際に把握するべき個別の戦況を構成する要素は任務、敵、地形と気象、使用可能な部隊と支援、そして民事的考慮の頭文字を取ったMETT-TC(Mission, Enemy, Terrain and weather, Troop and support available, and Civil considerations)で端的に要約される。これら諸要素を踏まえた上で作戦の立案には次のような事柄が含まれなければならない。第一に作戦目標を具体的な軍事的状況として定義することである。攻勢作戦で敵の拠点を攻略する方針が示された場合、その具体的な達成条件は何を意味するかが定義されなければならず、例えば攻略目標の拠点やそれを守備する敵がどのような状態になれば攻略と見なすかを明確化する。その作戦目標によって作戦は攻勢作戦と防勢作戦、また偵察作戦、行軍作戦、治安作戦などの作戦の形態に分類することができる。

攻勢作戦[編集]

攻勢作戦とは敵を積極的に求めながらこれを撃滅しようとする作戦の形式であり、遭遇や複数に渡る攻撃から成り立っている作戦である。攻勢作戦では敵に対して決定的打撃を加えることを可能とする作戦であり、これは戦術の原則のひとつである主導の原則に基づけば常に実施を模索するべき作戦である。しかし攻勢作戦はしばしば戦力の経済的な使用を指示する節約の原則に反するほどに戦闘力を減耗させる危険性がある。攻勢作戦を実施するべき状況の例としては、戦力投射作戦を実施する状況、敵に対する我の戦闘力の圧倒的な優勢を確保している状況、戦略的な守勢において局地的な反撃を実施する必要がある状況などがある。ここでは攻勢作戦の基本的な形態とその指導の要領、そして作戦計画を立案する上での考慮事項について述べる。

攻勢作戦の形態[編集]

攻勢作戦で中心となる戦術的な行動は接敵機動、攻撃、戦果拡張、追撃の四つの段階がある。接敵機動とは戦闘を行うために敵との接触を試みる機動であり、彼我の接敵機動で生じる戦闘は遭遇戦と言う。攻撃とは攻勢作戦において敵を撃破または撃滅、地形の攻略または確保、もしくはそれら両方を行う攻勢作戦の戦闘行動である。攻撃はさらに戦闘行動の方式としては奇襲的な攻撃である伏撃、防御の態勢から攻撃に転換する逆襲、準備された防御に対する強襲、敵を有利な地点におびき出す誘致、敵に誤った状況を認識させる欺瞞がある。そして機動の方式から一翼もしくは両翼を駆使して敵の二正面以上を同時に攻撃する包囲、敵の正面を突破して分断する突撃、そして敵と接触せずに敵の後方や側面に回りこむことで敵に退却を強制する迂回に分けることができる。戦果拡張とは組織的な戦闘力を失った敵に対して攻撃の段階から継続的に行われる攻撃であり、攻撃によって得られた戦果を最大化する戦闘行動である。追撃とは退却する敵をさらに追尾して打撃を加える行動であり、戦場に敵を捕捉して追撃を加える方式と、戦場外に退却した敵に対する追撃の方式がある。

攻撃[編集]

追撃[編集]

攻勢作戦の指導[編集]

攻勢作戦を指導する際に攻撃発起点、前進軸、攻撃目標、前進限界、集結地点を調整することで行われる。攻撃発起点とは各部隊が攻撃のための前進を開始する際に出発する地点である。理想として敵に対して位置や行動が隠匿し、また戦力を防護することができることが望ましい。自然地形で攻撃発起のための適切な地形を望むことができないならば、攻撃陣地を準備することも手段に含まれる。前進軸は各攻撃部隊が前進の際に依拠する一般的な方向あり、戦場における計画的な機動を調整するものであり、状況図では矢印によって表示される。攻撃目標とは我の戦闘力を集中させる目標であり、敵の部隊または特定の地形がその対象となる。ただし地形が攻撃目標であるのに対して敵部隊を攻撃目標とする場合には攻撃目標を捕捉することが難しくなる。そして攻撃前進の終点は前進限界によって定められる。前進限界は攻撃部隊が攻撃前進を停止する段階を計画的に決定するものである。前進限界に到達した部隊は識別が容易な集結地点もしくは予備的に設定された代替集結地点に再集結させる。

攻勢作戦の計画[編集]

攻勢作戦を計画する上での着眼としては奇襲と集中、そして節度(Tempo)と大胆(Audacity)が重要となる。つまり、敵が予測した事態を回避し、戦力を集中させ、迅速な節度を以って大胆に前進させることが効果的な攻勢作戦を立案する上での基礎となる。そして攻勢作戦を状況に適合させるためにはまず情報作戦に基づいて戦場の状況を把握することが求められる。敵情については配置、装備、戦闘力、弱点、攻撃すべき目標、集結点、敵の後方連絡線、離隔した支援戦力、対空部隊、電子戦部隊、敵の情報網などであり、地形については地形の形状、気象の影響、攻撃に使用可能な経路の配置と数、攻撃の障害となる森林や河川などの地形について把握する必要がある。これらの状況を踏まえた上で与えられた任務とそれに対応する作戦目標、指揮官の意図、敵の配置や戦闘力などの敵情、攻撃目標、作戦開始時刻、各部隊の機動の方向性、攻撃のための戦闘陣、作戦の危険性、そして代替的な作戦計画を準備する。作戦が開始されれば、指揮官は我の戦闘力の消耗を確認しながら攻勢極限点を見極め、彼我の戦闘力の優劣が逆転しないよう注意する。一度攻勢極限点に到達したと判断されれば、指揮官は防御へ転換することを決断し、攻撃によって得られた戦果を保存するよう努めなければならない。

防勢作戦[編集]

防勢作戦とは時間的猶予の確保、戦力の経済的使用、または別の攻勢作戦を支援するために、敵の攻勢作戦を待ち受けてこれを破砕する作戦である。防勢作戦は戦力の劣勢を補うことを可能とする作戦であり、節約の原則に立脚した作戦方針である。しかし防勢作戦のみによって目標を達成することが困難であり、また戦闘の主導権を失う危険を伴う。防勢作戦を実施する状況の例としては、決定的に重要な地形の確保を維持しなければならない状況、敵による奇襲への対処、敵に対して我の戦闘力が総体的に劣勢である状況などがある。ここでは防勢作戦の形態、指導、そして作戦計画の立案について概説する。

防勢作戦の形態[編集]

防勢作戦で中心となる戦術的な行動には防御と後退行動がある。さらに防御は陣地防御と機動防御に分けられる。陣地防御とは逆襲を加えることを主眼に置いたものではなく、構築した陣地や要塞によって敵の攻撃を阻止する形式の防御である。防御では敵の攻撃を阻止し、また緊要地形を保全することを狙った横陣や円陣の防御陣地が準備され、して防御陣地の機能を強化することに主たる努力が集中されるために、後方に拘置される予備の戦力は逆襲ではなく防御戦闘で減耗した損害を補填するために使用される。また機動防御とは陣地に頼るのではなく、敵の攻撃に対して決定的な逆襲を加える防御の形式である。機動防御では敵の後方連絡線を捕捉することを可能とするように陣地の構築や打撃部隊の配備を準備することに労力を費やす。そして後退行動とは敵との距離を持つように機動する防御戦闘の方法である。後退行動では敵との接触を断つ離脱、敵の前進速度を低下させる遅滞、そして敵との距離を拡大させる離隔の三段階を組織的な連携の下で背面を敵に暴露する危険を最小限に抑える。

防御[編集]

退却[編集]

防勢作戦の指導[編集]

防勢作戦の指導では戦闘移行線、主戦場の設定、防御陣地、火力支援の調整、直接射撃の統制、退路を調整することで行われる。戦闘移行線とは戦力を戦闘態勢に移行させる判断を下す地理的な基準となる線である。戦闘移行線は主たる防御拠点の前方において設定される。戦闘移行線と防御拠点の間は主戦場であり、敵の攻撃を排除するために戦闘力を発揮する領域である。防御陣地とは敵の侵入と前進を阻む機能を持った構築物である。防勢作戦における火力支援の調整と直接射撃の統制とは火力の最適な配分を意味する。これはそれぞれの主戦場に対する射撃のために各種装備を配置する地点を決めることであり、またそれぞれの射撃がどの地域に責任を負うのかを明確に示すことである。そして退路を調整する際には戦闘を離脱した後に収容を実施する機能も備えた二次的な防御陣地との間の連絡線を指定しておく。

防勢作戦の計画[編集]

防勢作戦は通常において防御戦闘の計画的準備によって遂行される。しかし作戦行動は主導の原則に従って静態的な行動ばかりでなく動態的な行動が必要であり、防勢作戦の作戦方針を採用していたとしても敵の攻撃を排除した後に逆襲に転換することが検討されなければならない。その原則を踏まえた上で防勢作戦の計画にはいくつかの情報が必要である。敵の戦闘力や集結地点などの配置だけでなく、どの攻撃目標を選択するのか、そしてそれに対応する接近経路、攻撃方法がどのような状態であるのかを研究しなければならない。そのためには敵が慣習的にどのような作戦行動を選択しているかを分析する必要もある。例えば空挺部隊を使用した攻勢作戦に対する防勢作戦の場合では、陣地防御ではなく機動防御を準備しなければならない。なぜならば陣地防御とは固定された攻撃目標に対して接近する際に必ず地上において進路を妨げることができなければ有効ではない。空挺部隊による攻撃に対しては防空戦闘と敵部隊が戦闘展開してから迅速で組織的な逆襲を加えることが求められるのである。また幅広い正面に渡る正面攻撃に対する防御では複数の防御陣地によって組織化された陣地防御による攻撃の阻止と予備戦力による逆襲を準備することが必要である。

戦術用語[編集]

  • 圧迫 - 武力や権威で押さえつけること。
  • 隠蔽 - 物事、特に機密事項となる軍事基地や新兵器などを隠すこと。
  • 迂回 - ある場所を避けて、遠回りすること。
  • 運動 -
  • 掩蔽(えんぺい) -
  • 会戦 - 大規模な戦力を互いに準備し、行う戦闘のこと。
  • 内戦作戦 - 敵軍に包囲される位置で作戦を展開すること。
  • 外線作戦 - 敵軍を包囲する位置で作戦を展開すること。
  • 監視 -
  • 機動 -
  • 逆襲 -
  • 持久戦 - 自軍を持ち堪えさせることを目的とした戦闘のこと。
  • 警戒 -
  • 撃破 -
  • 決心 -
  • 決戦 -
  • 牽制 - 敵軍を武力や兵数などで圧倒し、敵軍の行動の自由を奪うこと。
  • 後衛 -
  • 行軍 -
  • 攻撃極限点 - 攻撃によって得られる優位の限界のこと。攻撃の限界点とも。
  • 攻勢 -
  • 後方支援 -
  • 作戦 -
  • 作戦目標 -
  • 指揮 -
  • 支隊 -
  • 遮蔽 -
  • 集結 -
  • 集中 -
  • 重心 -
  • 状況判断 -
  • 助攻 -
  • 陣地
  • 前衛
  • 戦果
  • 戦術
  • 戦場
  • 前哨
  • 戦線
  • 戦闘
  • 戦闘力
  • 遭遇戦
  • 側衛
  • 退却
  • 地形
  • 諜報
  • 追撃
  • 偵察 - 敵軍、特に野営地などの状況を把握し、敵軍の兵数などを事前に知る為の行動のこと。
  • 展開
  • 突破
  • 背後連絡線
  • 兵站
  • 編制
  • 包囲
  • 防御
  • 防勢
  • 本攻
  • 摩擦
  • 命令
  • 陽動
  • 抑止
  • 連絡

脚注[編集]

  1. ^ 米陸軍では物量的な戦力の優位性を保持する物量の原則、旧ソ連陸軍では敵を完全に撃滅する殲滅の原則などが原則として加えられる場合もある。

参考文献[編集]

戦術学の文献はそれほど流通していないために入手することは非常に難しい。一般に海外の戦術学の文献が入手しやすく、特に米陸軍省が一般公開している野戦教範(Field Manual)が研究を行う上では参考となる。また国内においては戦前に流通していた軍学校の教育や試験で使用する戦術学の教範、参考書、または問題集があり、それらを入手して参照することもできる。しかしながら、これらの教範類も一般的に入手することが難しい場合が多い。戦後に自衛隊で使用されている教範類は一般公開されていないものの、自衛隊関係者により発表された閲覧可能な論文を収録した論文集がある。例えば陸上自衛隊の幹部で構成された陸戦学会から出されている『陸戦研究』は国立国会図書館等で閲覧することが可能な戦術研究である。以下では主に書籍に限定した上で戦術研究の上で参考となる研究について解題を加えたものである。

  • 防衛大学校・防衛学研究会編『軍事学入門』(かや書房、2000年)
軍事学を概説した入門書であり、第3章の現代軍事力の態様は戦術研究の上で参考となる。
  • 松村劭『バトル・シミュレーション 戦術と指揮 命令の与え方・集団の動かし方』(文藝春秋、2005年)
戦術理論の基礎的事項を要約し、また答案を付与した練習問題が含まれている。
  • 高山信武『陸軍大学校の戦略・戦術教育』(芙蓉書房出版)
陸軍大学校での講義と戦術学の口頭試問の記録が含まれている。
  • Field Manual No. 3-90, Tactics, Headquarters Department of the Army, 2001.
米陸軍で使用されている戦術学の教範類であり、理論的解説だけでなく戦史に基づいた解説も含まれている。本項目の執筆で最も参照した参考文献。
  • Field Manual No. 100-5, Operations, Department of the Army, 1993.
作戦の基礎、攻勢作戦、防勢作戦について網羅的に概説した米陸軍の教範であり、理論的説明が豊富である。
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