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有機化学/シクロアルカン

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

有機化学>シクロアルカン

シクロアルカンの定義

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シクロアルカン(cycloalkanes)は一般式CnH2nで表される環式不飽和炭化水素の総称である。シクロアルカンはC-C結合がすべて単結合であることから、一般にアルカンに似た性質を示す。一般式が同じアルケンとは異なり、シクロアルカンは付加反応しない。命名には同じ炭素数のアルカンの前に「シクロ(cyclo-)」をつける。シクロアルカンが有するようなn個の原子で構成される環は一般にn員環(三員環、四員環、…)と呼ばれる。例えば、シクロプロパン(n=3)は三員環である。

     CH2         CH2-CH2
    /   \        |     |
   CH2-CH2       CH2-CH2
シクロプロパン シクロブタン
     CH2          CH2-CH2
  /       \      /       \
 CH2     CH2    CH2     CH2
   \     /      \       /
   CH2-CH2        CH2-CH2
シクロペンタン シクロヘキサン

安定性と立体配座

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原子軌道の混成理論によると、炭素原子に4個の原子(群)が結合する有機化合物において、炭素原子上の4個の結合はsp3混成軌道と呼ばれる4つの混成軌道として表現される。それにより、メタン(CH4)などにみられる最も対称性が高いsp3混成軌道では、炭素原子を重心として正四面体の各頂点へ伸びた「正四面体形」の原子価状態が現れる。このときの理想的なsp3混成軌道の結合角はcos−1(1/3)≒109.5°と計算される。シクロアルカン上の炭素原子はすべてsp3混成であり、109.5°を大きく離れる結合角を有するシクロアルカンは大きな環ひずみにより不安定になる。

シクロプロパン以外のシクロアルカンは同一平面上に全ての炭素原子が存在する構造をとらないため、立体配座が考慮されることが多い。シクロペンタン(n=5)とシクロヘキサン(n=6)を比較すると、正五角形の内角は108°、正六角形の内角は120°であり、平面分子であるならばシクロペンタンがより安定であると予想される。しかし、実際にはシクロヘキサンがほぼ理想的な形状のsp3混成軌道を有しており、シクロペンタンよりも安定となる。n=3–10程度のシクロアルカンを比較するとn=6に近いものほど安定である。