民事訴訟法/略式手続
略式手続
[編集]少額訴訟
[編集]たとえば請求金額が十数万円程度のトラブルを解決するのにあたり、弁護士などに依頼して請求金額を大幅に上回る費用を投じることは、コストが割に合わない。
このような少額のトラブルを訴訟制度で解決するために、少額訴訟という制度がある。
当初は30万円以下の金銭請求を扱っていたが、制度の好評につき、平成15(2003)年より訴額の上限が60万円に引き上げられた。金融業者などの利用を抑えるため、少額訴訟手続きを利用出きる回数は年10回以下に利用が制限されている(368条1項、規233条)。
- ※ 制度の詳細は時代によって変更する可能性はあるだろうが、上記のような背景事情があるので、それを念頭に置けば理解しやすいだろう。
ともかく、少額訴訟は上述のような目的のための制度なので、簡易にして迅速である必要がある。
現状、少額訴訟は簡易裁判所で扱われる。
訴額60万円以下の金銭請求であれば、少額訴訟の制度を利用できる。
原告は、少額の訴訟をする際、少額訴訟の制度を利用するか、それとも通常の制度を利用するかを、選ぶ亊ができる。
少額訴訟による審理を求める際、その旨を自分の訴えを扱っている簡裁に申述しなければならない(368条2項)。
また、被告は、原告の少額訴訟の要望に従う必要は無い。つまり被告は、口頭弁論前なら、少額訴訟手続を通常の訴訟に戻すように申述する亊ができる(373条1項)。少額訴訟の制度は後述するように上訴が禁止されるなどの制約があるので、被告の防御権を充分に保障するためには、被告に通常訴訟に戻すための選択肢が与えられるのは当然であろう[1]
少額訴訟は原則として、審理は1回の口頭弁論で済まされる。また、このような事情を考えれば当然だが、口頭弁論を終えたあとに被告が少額訴訟から通常訴訟に戻すように申述する亊はできないとされている(373条2項)。
手続の円滑な進行のため、民事訴訟規則では裁判所書記官および裁判官から、原告・被告の当事者にそれぞれ少額訴訟手続の説明がなされる(規222条)。実務的には書面を用いて説明することもある[2]。
少額訴訟の要件を欠く場合、裁判所が職権で通常の訴訟手続に戻す(373条3項)。
少額訴訟の審理は、原則として1日で行われる亊となっているので(370条)、最初に開かれた口頭弁論期日において審理が完了する。
また、このためもあって、反訴も許されない(369条)。終局判決に対する控訴も許されない(377条)[3]。
証拠調べも即日で取り調べられる証拠に限られるが(371条)、疎明ではなく証明が必要とされている[4]。
証人尋問および当事者尋問の順序は、裁判官が適切だと認める順序で行う。
督促手続
[編集]督促手続は、金銭あるいは有価証券などの金銭的な債務に限り、債務名義を簡易・迅速に債権者に取得させる手続である。督促に仮執行宣言というものが記載されていれば、仮差押ができる。少額訴訟手続とは違い督促手続には回数制限も無く[5]、そのためもあり実務的にはクレジット業者や消費者金融業者[6]などの金融業者にも督促手続はよく使われている。
強力であるが、しかし債務者が2週間以内に異議申立をすれば通常の訴訟に移行する。
仮執行宣言付き支払督促の送達を受けた債務者が2週間以内に督促異議の申し立てをしないなら、支払督促じゃ確定判決と同一の効力を持つに至り、したがって債務名義となる(396条、民執22条7号)。
さて、強力であるので、もし仮に請求権のない不当な要求であっても、金銭債務のように回復が比較的容易な債務でなければならず、よって条文でもそのような配慮がなされている。 条文では「金銭その他の代替物又は有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求」に限られる(382条本文)とある。
具体的には、督促手続とは、債権者が督促の申立をすれば、簡裁の裁判所書記官は債務者を交えずに、「支払え」という内容の督促をいきなり債務者に発する手続である。
この督促に対し、債務者から異議(督促意義)の申立があれば、通常の訴訟に移行する。また、督促手続に異議を申し立てる機会を債務者に保障する必要もあるので、督促手続は公示送達の方法によらずに債務者に送達できなければ、効力が生じない(382条但書、388条)。
督促手続のオンライン化対応がなされており、既に2020年の時点でもある程度はオンラインで督促の申立をする亊ができる(397条〜402条)。東京簡裁がオンライン化対応の管理をしている。督促する側がオンライン督促を利用の仕組みについては、あらかじめ電子証明書などの事前準備が必要であり、インターネットを利用し、督促オンラインシステムのフォームに従って申立てができるという仕組みになっている[9][10]。