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物理数学II/特殊関数

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

球函数

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Legendre 函数

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Legendre の微分方程式

は、 と変換すると、

となる。これは、Gauss の超幾何微分方程式で、 とした場合だから、微分方程式の解は超幾何函数を使って、

とかける。これを 次 Legendre 函数 という。

次に、 に線型独立なもう一つの解を定数変化法で求める。

とおいて、Legendre の微分方程式に代入すると、

これは、 に対する微分方程式として

即ち、

と変形できる。

これを積分して、

を得る。もう一度積分すると、

となるから、

である。今求めているのは、 に独立な解であるから としていい。 とし、積分範囲を と取るときの を第二種 Legendre 函数 と定義する。

すなわち、

である。

Legendre 多項式

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ならば、となるから、Legendre 函数 が非負整数 のとき多項式になる。

Pochhammer 記号について、

(ただし、 のとき)

となる性質を用いると、

を得る。Legendre 多項式は Rodrigues の公式

によっても定義される。

実際、

となる。

次に、Legendre 多項式の の冪での表示を求める。Rodrigues の公式を展開して、

ここで、いくつかの項は微分で落ちる。項が残る条件は で、 が整数だから、 である。

さらに、

として Legendre 多項式の表示が得られる。ここで、 となることを使った。

Rodrigues の公式に Goursat の公式を使うと、

となる。ここで、 と変換をすると、 となるから、 について解いて、 となる。ここで、 と置いた。 となるから、 の微分は となる。 であったから、

これは、

ということを意味する。すなわち、これが Legendre 多項式の母函数である。

Legendre の陪函数

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Legendre の陪微分方程式

の解を求めたい。

Legendre の微分方程式

とおいて、Legendre の陪微分方程式に代入すると、

となるから、 で割って、 に注意して計算すると、

を得る。

次に、Legendre の微分方程式を の代わりに とおいて、一回微分すると、

もう一回微分すると、

すなわち、Legendre の微分方程式を 階微分すると、 となるから、

である。

よって、

の関係があることがわかる。ここで、 は Legendre の微分方程式の解だから、

を代入して、

Legendre の陪微分方程式の解として、

を得る。この解をLengendre 陪函数として、

と定義する。

球面調和函数

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Laplace 方程式

を球座標で表すと、

となる。だたし、

である。 級函数で、

の形であるとき、 次の球面調和函数という。これを Laplace 方程式に代入すると、 の方程式として

すなわち、

を得る。

と変数分離を仮定して、

あるいは、

となる。両辺は のいずれにも依存しないから、定数であるからこれを と置くと、

この解は、

となる。 は一価函数であるから、 より、 は整数である。また、 は同じ函数を与えるから、 とする。

次に、 に関する微分方程式

は、 と変換すると、

となる。これは、Legendre の陪微分方程式だから、

あるいは、

を得る。ここで、 も陪微分方程式の解であるが、 で連続ではない。

結局、 次球面調和函数として、

()

個の解を得る。

円柱函数

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Bessel 函数

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電磁気学や量子力学などで、微分方程式

を解く必要が発生する。この微分方程式の解を Bessel 函数という。

の形の級数展開を仮定する。

このとき、

であるから、微分方程式は、

となる。

の項は、 であるから、.

の項は、 であるから、.

について、 を得る。これより、 がわかる。

のときは、

であるから、

である。すなわち、

ここで、 に選んだものを 次 Bessel 函数 とする。

すなわち、

である。 のときも同様に計算することで、同じ式になる。

性質

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負の整数 次の Bessel 函数について、

Bessel 函数の母函数は、

ここで、第一の総和で、 、第二の総和で、 と置くと、

となる。


また、母函数を で割ると、

となるから、 について原点反時計回りに積分すると、

が得られる。 とすると、

ここで、 は奇函数だから積分は0。 は偶函数だから、

を得る。Bessel はこの積分により Bessel 函数を定義した。

また、

で、 と変換すると、積分範囲は被積分函数の周期性より変更する必要はないから、

となる。前のように奇函数と偶函数の性質を利用すると、

Hansen の積分表示

を得る。

母函数に を代入すると、

あるいは、

を得る。


であるから、Bessel 函数の加法定理

を得る。

上昇演算子と 下降演算子 を次のように定義する。

ここで、右辺は、 から成り立つ。下降演算子についても同様である。

これを Bessel 函数に作用させると、

となる。また、

である。すなわち、

二式を辺々加えて、

または、辺々引いて、

を得る。

ところで、明らかに

となる。この式は二階の微分方程式であるから、Bessel の微分方程式に帰着するはずである。実際、左辺を展開すると、

となる。逆に考えると、昇降演算子とは微分方程式を因数分解したものだとも考えられる。

第二種 Bessel 函数

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が非整数のときは、 が独立な2解を与えるが、整数のときは、 という関係があるから、独立ではない。そこで、位数 のときの Bessel の微分方程式の独立なもうひとつの解が存在する。Bessel の微分方程式を で偏微分すれば、

となるから、 は微分方程式の解である。 も同じ微分方程式を満たすから、その線形結合として、

を定義すると、 に独立な解を与える。非整数の に対しては、

と定義すると、 の極限として、 を得ることができる。

第一種、第二種 Hankel 函数をそれぞれ

で定義する。

楕円積分と楕円函数

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第一種完全楕円積分 と第二種完全楕円積分

で定義される。

Taylor 展開して、

となる。あるいは、超幾何函数を使うと、

となる。この変形に、

を使う。

Theta函数

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と定義する。 とする。

さらに、

また、



楕円函数

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Jacobi の楕円函数を

で定義する。ただし、 , である。


第一種不完全楕円積分を用いると、

と定義することもできる。


定義より

は直ちに成り立つ。


また、以下の加法定理が成り立つ。


それぞれの函数の微分は以下のようになる。


先ほどの第一種不完全楕円積分の式において、を代入するととなる。このとき、が恒等的に成り立つ。

今度はを代入すると、となる。このとき、が恒等的に成り立つ。

すなわち、三角関数と双曲線関数は楕円函数の一種である。

参考文献

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  • 寺沢寛一『自然科学者のための数学概論(増訂版)』岩波書店、1983年。
  • 高木貞治『定本 解析概論』岩波書店、2010年。
  • 犬井鉄郎『特殊函数』岩波書店、1962年。
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