統計学基礎/序文

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統計学というものは、実験によって得られるデータを処理したり、実験結果と考えられる要因との相関を明らかにしたりして、理論分野、或いは、次の実験計画への橋渡しをする手法を与えるための学問です。古典的な物理学のように僅かなパラメータにより結果が得られる場合よりも、経済学や生物学のように非常に多くの要因に左右され、厳密な数式で書き下すことが不可能で、一意的な結果が予測できない現象を扱う分野で特に強力な道具になります。

数学の一分野である確率論と混同される事が多いですが、現代の確率論は公理系を土台とした純粋数学の一分野として構築され、「確率」という言葉の実際的な意味は特に考える必要はなく、精緻な理論で組み上げられた言葉の一つでしかありません。一般の方々が思い描く「確率」のイメージは、統計学の事であることが多いのです。例えば、ある賭事の結果の確率を知りたい場合、現代の確率論のテキストに手を出そうものなら純粋数学の素養のない人にとってそれは非常に大きな冒険になり、危険を伴います。

確率論と統計学は相補う部分も少なくありませんが、統計学の問題意識は実際の問題解決方法の近くにあり、実際的な手法を与えます。確率論は偶然の積み重ねが引き起こす結果を理論的に説明します。乱暴な言い方ではありますが、確率論が原因からの出発であることに対し、統計学は結果からの出発とも言えます。そのために、統計学ではよく現れる典型的な実験結果(確率分布)の形を、初期の頃にいくつか示す事があります。生真面目な学生は、その意味のわからない実験結果(確率分布)の羅列に戸惑い、統計学嫌いになることもあります。しかしながら、それらの重要性を述べる事が統計学の教科書の役割の一つでもあるので、理解を急がず、そういう関数や積分がよく使われるんだな程度に留め、勉強を進めて頂きたいと思います。