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線型代数学/計量ベクトル空間

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

このページでは、2、3次元の数ベクトルの長さや内積を拡張し、一般の線型空間のベクトルについても、長さ(ノルム)や内積を定義する。

2、3次元の数ベクトルの場合は、高等学校数学B ベクトルを参照のこと。

数ベクトルのノルム・内積

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ノルム

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ベクトルには大きさも定義される。ふつうそれはで表され、

と定義される。これをaのノルム (norm)と言う。

演習

次のベクトルのノルムを求めよ

内積

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ここでは実ベクトルの場合に関して述べる。

ab内積 (inner product)という。

特に2,3次元空間ベクトルabとの内積は、abのなす角をθとすると、

と表される。逆に、一般のn次元実ベクトルのなす角という概念を、この関係式によって定義することができる。

内積については、次の性質が成り立つ。いずれも証明は易しい。

  • (a,a)=||a||2
  • abが直交する⇔(a,b)=0[1]
  • c(a,b)=(ca,b)=(a,cb)
  • (a,b+c)=(a,b)+(a,c)
  • (a+b,c)=(a,c)+(b,c)
  • (a,b)=(b,a)
  • ||a||+||b||≧||a+b||(三角不等式)
  • |(a,b)|≦||a||||b||(シュワルツの不等式)
  1. ^ なす角について上で述べたのと同様に、これは二次元・三次元の実ベクトルについては「性質」である。逆に、それ以外のベクトルではこれは直交の「定義」である。

演習

空間ベクトル

とのなす角がであり、かつ

とのなす角がであるようなノルムが1のベクトルを求めよ。

注)そのようなベクトルはただひとつではない。

上の線型空間でのノルム・内積

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次に、上で書いたような数ベクトルのノルム・内積の概念をさらに拡張しよう。

定義

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または上の線型空間とする。(以下、 は一般の体ではなく、実数体 または複素数体 を指すことにする )

に対して、 の元をかえすような演算が次の(Ⅰ)(Ⅳ)の性質をみたすとき、内積という。

(Ⅰ)
(Ⅱ)
の複素共役)
(Ⅲ)
(Ⅳ)
が成り立つのは、 のときに限る。

また、

で定義される量をxノルムという。

このように、内積が定義された線型空間を計量ベクトル空間計量線型空間)という。

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1. のとき、

とすれば、これは内積になっている。

2. のとき、

とすれば、これは内積になっている。(Trについては行列概論を参照)

3.{上連続な関数} ,上連続な関数のとき、

とすれば、これは内積になっている。

三角不等式・シュワルツの不等式

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ここで定義した内積・ノルムに関しても数ベクトルの場合と同様に三角不等式・シュワルツの不等式が成り立つ。

定理  に対して、次の(1),(2)の不等式が成り立つ。

(1)(シュワルツの不等式)

等号が成り立つのは、と書ける場合のみ。

(2)

等号が成り立つのは、実数 を用いて、 と書ける場合のみ。

(証明)(1) とすると

ここで、 とおけば、

両辺を  で割り、正の平方根をとれば、

  となる。

等号が成り立つのは、 すなわち、 となるときだから、 と書ける。

逆にこれが成り立つとき、不等号は等号になる□

(2)

したがって、正の平方根をとれば  となる。

1つ目の等号は が非負の実数となるときに成り立ち、2つ目の等号は  と書けるとき成り立つ。この2つの条件から、実数 を用いて、 と書けるときのみ等号が成立する□

基底の直交化

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正規直交系

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計量ベクトル空間のベクトルが互いに直交し、ノルムが1であるとき、つまり、であるとき、ベクトル正規直交系(orthonormal system)であるという。ONSとも表される。

正規直交基底

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計量ベクトル空間の正規直交系が、であるとき、は、正規直交基底(orthonormal basis)または、完全正規直交系(complete orthonormal system)であるという。CONSとも表される。

グラム・シュミットの直交化法

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グラム・シュミットの直交化法のイメージ

計量ベクトル空間の線形独立なベクトルを使って正規直交系を作ることができる。

とすると、は互いに直行するベクトルとなる。

とすると、は正規直交系となる。

これをグラム・シュミットの直交化法(Gram–Schmidt orthonormalization)という。

種々の特徴的な変換

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随伴変換

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ユニタリ変換と直交変換

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エルミート変換と対称変換

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