聖書ヘブライ語入門/自立人称代名詞/説明/人称代名詞の意味
8.3.2 人称代名詞の意味
一人称単数は「話し手」、二人称単数は「話し相手」を指す。 一人称複数は話し手を含むグループで、日本語のワレワレ、私タチと同じく、 話し相手を含むこと(創世記138 等)も、含まぬこと(創世記1913等)もある。話し手を含まず話し相手を含むグループを指す二人称複数とともに、その指示対象となる人々がすべてその場に居合わせているとは限らないが、誰がそのグループに含まれるかは、聞き手に分かっているのが普通である。
三人称代名詞は、前後の文脈に現れる名詞その他の形で述べられている人物や事象―例えば文4 では、前に יַהְוֶה と呼ばれている対象―を指し、性・数は原則として名詞のそれと一致する。人や物をゆびさして人称代名詞で表すことはない。
このようなことから、人称代名詞は文法的には定として扱われるのが原則である。
文5 は表面的には、4.1 の例文4 の יַהְוֶה と הָאֱלהִׁים との間に代名詞 הוּא が割って入った形である。三人称代名詞はこのように、特に定名詞句だけから成る名詞文において、二つの名詞句をつなぐ役目を果たしているように見えることから、西欧の文法家の中にはこの場合の הוּא は copula 《繋辞》であると言う人もいる。しかし代名詞を後に置いて יַהְוֶה הָאֱלֹהִים הוּא とすることも可能である。このような文では、主題となる対象を表す名詞(この文では יַהְוֶה )を文の先頭に据え、その主題について改めて後続の節(この文では הוּא הָאֱלֹהִים または הָאֱלֹהִים הוּא )が述べているのである。代名詞は主題となった名詞を受けているのであるから、性・数はその名詞のそれと、当然一致する。
私がイスラエルの王だ。 | אֲנִי הוּא מֶלֶךְ יִשְׂרָאֵל |
のように、一、二人称の自立代名詞を主題化前置することもできる。