聖書ヘブライ語入門/自立人称代名詞/説明/自立人称代名詞の形
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8.3.1 自立人称代名詞の形
文1~8 の各文に一つずつ、8.2 には掲げられていない新しい単語がある。これはすべて人称代名詞で、いずれも各文の主部に該当する。ヘブライ語の人称代名詞には自立型(その前後に発音の切れ目を置くことができ、単語に該当する)と接尾型(常にその前の部分と続けて発音され、単語の一部をなす)とがある。次に自立型を表示する。
単数 | 複数 | |
---|---|---|
一人称 | אָנֹכִי, אֲנִי | אֲנַ֫חְנוּ |
二人称男性 | אַתָּה | אַתֶּם |
二人称女性 | אַתְּ | אַתֵּ֫נָה, אַתֵּן |
三人称男性 | הוּא | הֵ֫מָּה, הֵם |
三人称女性 | הִיא | הֵ֫נׇּה |
自立人称代名詞は、名詞文の主部に立つことができる。
「一人称単数」には、'ānōḵī, anī の二つの形がある。前者から -ōḵ- を引けば後者になので、 日本語のワタクシ―ワタシからの類推で、 אֲנִי は אָנֹכִי の短くなったもので、 אָנֹכִי に比べて「くだけた」表現だ、と思われるかもしれないが、そうではない。 文法的・意味的な差異は認められないのである。ただ、聖書では אֲנִי の方が אָנֹכִי より二倍強も多く用いられ、後者は レビ記、エゼキエル書 には皆無に近く、一般に後期の文書では殆ど אֲנִי ばかり現れる。聖書は千年以上にわたって書かれた文書集であるから、こういう所にその言語的年輪が見られるわけである。
英語やギリシア語などと比べて目立つ点は、三人称だけでなく二人称にも男・女の性別があることであろう。複数形で表されるべき対象が男・女両性から成るときには、男性形をとる。(6.3 参照)。実際には、二人称女性複数の אַתֵּ֫נָה は 4 例、 אַתֵּן はわずか 1 例にすぎない。( אַתֶּם は 282 例 ― Mandelkern のヘブライ語 Konkordanz 《語句索引》に拠る)。