薬理学/中枢興奮薬

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中枢興奮薬[編集]

キサンチン誘導体[編集]

キサンチン骨格にメチル基がいくつかついた化合物のうち、中枢興奮作用や血管弛緩作用がいくつかある。 カフェインのほか、テオフィリン、テオブロミンなどが、中枢興奮作用や血管弛緩作用をもつ。

キサンチンにメチル骨格のついたものををメチルキサンチン[1]ともいうので、 メチルキサンチンには中枢興奮作用や血管弛緩作用がいくつかあるともいえる[2]

※ メチルキサンチンは、キサンチン誘導体(Xanthines)ともいう[3]
ただし、本wikiでは、キサンチン誘導体と言う表現だけでは、それがメチル化されてることが分からないので、「キサンチン誘導体」という表記は採用しなかった。「メチルキサンチン誘導体」[4]という表現もあるが、英語 Xanthines に対応していない。

天然に存在するメチルキサンチンとしてカフェインがある[5]。 カフェインはお茶の葉のほか、ココアやチョコレートの原料であるカカオの種子や、コーヒーの豆にも含まれている[6]。なので飲料としては、緑茶、紅茶、ココア(飲料)に含有成分としてカフェインが含まれている[7]


天然でないものも含めれば、カフェインのほか、テオフィリンテオブロミンなどの、キサンチン メチル誘導体が、そのような中枢興奮作用、血管弛緩作用をもつ、とも言える。

カフェインなど幾つかのメチルキサンチンは、ホスホジエステラーゼ阻害(PDE阻害)の作用をもつ[8][9]


このホスホジエステラーゼ阻害の作用により、メチルキサンチンは気管支弛緩の作用をもつ[10][11]

※ 『NEW薬理学』は中枢興奮作用もホスホジエステラーゼ阻害を原因としているが、『標準薬理学』ではその説には言及せず慎重論。

なお新説として、近年、アデノシン受容体の遮断作用もある事が分かった事から、PDE阻害ではなくアデノシン受容体阻害など別の機構によって気管支弛緩の作用が表れているという新説もある[12][13]


臨床では、気管支弛緩の作用のため、気管支喘息の長期管理のための基本薬としても用いられる[14]

また、吸入ステロイドがなんらかの理由で適さない患者の場合、メチルキサンチンが長期管理の基本治療薬である[15]

カフェイン、テオフィリン、テオブロミンの作用には類似性があるが、作用強度が異なる[16]

なお、平滑筋は弛緩させるが、骨格筋は収縮・活動増大させる。

中枢興奮作用から当然であるが、麻酔薬には拮抗する[17]と考えられている。

メチルキサンチンの各論[編集]

カフェイン[編集]

中枢神経系の作用としては、カフェイン飲料は、眠気をさまし、覚醒させる。

また、カフェインにも気管支弛緩作用および平滑筋の弛緩があり、骨格筋の活動増大作用もある[18]

血管以外の平滑筋を弛緩させる[19]

気管支の弛緩の原因は、主に平滑筋の弛緩によるものである[20]と考えられている。

そして、骨格筋の活動増大作用が、呼吸筋の活動増大として作用するので、呼吸量も増大する[21][22]

喘息の治療薬としては、気管支弛緩に加えて、呼吸量の増大も作用するので、呼吸を促進する方向に向かうので治療薬として都合がよい[23]

未熟児や早産児の呼吸困難にもカフェインは使われる[24][25]


利尿作用がある[26][27]。腎臓に作用して、利尿が行われている[28][29]


そのほか、中枢刺激作用や筋肉への作用などにより、疲労感が減退する[30][31]

副作用

副作用としては、まずは覚醒作用から当然の副作用として、不眠の副作用がある[32][33]

そのほか、用量が多いと、知覚過敏などの感覚障害、振戦、などの副作用がある。

大量投与する痙攣の副作用があり[34][35]、動物実験では痙攣で死亡する事もわかっている[36]

テオフィリン[編集]

心臓など循環系に対しては、カフェインよりもテオフィリンは作用が強く、より心機能が亢進する。

呼吸器作用薬[編集]

ジモルホラミン[編集]

ジモルホラミンには、呼吸中枢を刺激する作用があり、呼吸促進をする。麻酔薬や睡眠薬の中毒によって呼吸麻痺に陥った場合に[37]、呼吸を回復させる目的でジモルホラミンが投与される。

ジモルホラミンは安全係数[38](治療係数[39])が大きいので、麻酔中毒、睡眠薬中毒の治療によく使用される。


ドキサプラムは、末梢性化学受容器(頚動脈小体[40])を介して間接的に呼吸中枢を刺激し、呼吸を促進する。

また、ジモルホラミンやドキサプラムには覚醒作用もある[41][42]

なので、麻酔からの覚醒遅延の場合の覚醒に使用される[43]

ジモルホラミンとドキサプラムの作用機序の詳細は不明である[44]


麻薬中毒による呼吸困難の回復

なお、麻薬中毒による呼吸困難などからの治療には、ナロキソンレバロルファンが用いられる。

ナロキソンとレバロルファンはいずれも、構造がモルヒネと類似している[45]。このような構造のため、拮抗作用があるので、麻薬による呼吸困難の治療に有効である。

また、モルヒネの作用機序は20世紀前半では不明であったが、ナロキソンなどモルヒネ拮抗薬の作用がヒントになり、しだいにモルヒネの作用機序は解明されてきた。

モルヒネは、エンケファリン受容体およびオピオイド受容体に作用する。

ナロキソンは、オピオイド受容体(詳細には、そのうちのμ(MOP)受容体[46])に親和的に拮抗する(つまりモルヒネ拮抗薬[47]、遮断薬)。

レバロルファンは、オピオイド受容体の部分刺激薬である[48]

その他の中枢興奮薬[編集]

※ 覚せい剤については、『薬理学/アドレナリン関係の薬物#中枢興奮薬』で説明済み。
※ ADHD治療薬については、『薬理学/アドレナリン関係の薬物#中枢興奮薬』で説明済み。

脚注[編集]

  1. ^ 『NEW薬理学』、P308
  2. ^ 『NEW薬理学』、P308
  3. ^ 『NEW薬理学』、P308
  4. ^ 『標準薬理学』、P527
  5. ^ 『NEW薬理学』、P308
  6. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  7. ^ 『標準薬理学』、P528
  8. ^ 『NEW薬理学』、P309
  9. ^ 『標準薬理学』、P528
  10. ^ 『NEW薬理学』、P309
  11. ^ 『標準薬理学』、P528
  12. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P185
  13. ^ 『標準薬理学』、P528
  14. ^ 『標準薬理学』、P528
  15. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P185
  16. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  17. ^ 『NEW薬理学』、P309
  18. ^ 『シンプル薬理学』、P186
  19. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  20. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  21. ^ 『シンプル薬理学』、P186
  22. ^ 『NEW薬理学』、P309
  23. ^ 『シンプル薬理学』、P186
  24. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  25. ^ 『シンプル薬理学』、P186
  26. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  27. ^ 『NEW薬理学』、P309
  28. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  29. ^ 『NEW薬理学』、P309
  30. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  31. ^ 『NEW薬理学』、P309
  32. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  33. ^ 『NEW薬理学』、P309
  34. ^ 『パートナー薬理学』、P159
  35. ^ 『NEW薬理学』、P309
  36. ^ 『NEW薬理学』、P309
  37. ^ 『NEW薬理学』、P477
  38. ^ 『NEW薬理学』、P477
  39. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P179
  40. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P179
  41. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P179
  42. ^ 『パートナー薬理学』、P293
  43. ^ 『パートナー薬理学』、P293
  44. ^ 『標準薬理学』、P531
  45. ^ 『パートナー薬理学』、P293
  46. ^ 『NEW薬理学』、P477
  47. ^ 『標準薬理学』、P198
  48. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P179