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薬理学/抗リウマチ薬

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

抗リウマチ薬

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免疫抑制薬

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メトトレキサートは、葉酸に似た構造を持つ[1][2]。葉酸に拮抗する。メトトレキサートはリウマチに有効。


レフルノミドは、代謝物がリウマチに有効性をもつプロドラッグである。 レフルノミド代謝物が、ピリミジン合成阻害により細胞増殖抑制をする。

効果発現が2週間~1ヶ月以内と比較的に早く、副作用は少ないが、間質性肺炎には禁忌[3]


タクロリムスは、臓器移植の用量の約半分(1.5~)3mg/日)で抗リウマチ効果が得られる。

※ 副作用の記述が、市販教科書ごとに、それぞれ違うので、さらなる専門書で確認のこと。


免疫調節薬

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金チオリンゴ酸ナトリウム

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確定的な機序は不明だが、-SH基との高い親和性により、種々の酵素を阻害していると考えられる。

重大な副作用に、間質性肺炎がある[4][5]

頻度の高い副作用に、皮膚粘膜症状があり、具体的には、掻痒感、紅斑、剥奪性皮膚炎などがある[6][7]


SH基製剤

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D-ペニシラミンブシラミンなどの「SH基製剤」がある。

D-ペニシラミンはペニシリンの加水分解によって得られる代謝物ペニシラミンのD型であり、分子内にSH基を有する。

L型は毒性が強いので[8]、D型が治療薬として使われる。

分子内にSH基があるので、「SH基製剤」と総称される。機序の詳細は不明[9]

また、D-ペニシラミンは重金属をつかまえるキレート薬でもあり、鉛、水銀[10]などの重金属中毒の治療にも使われる[11][12]

強皮症の皮膚硬化の治療にも用いられる[13][14]


サラゾスルファピリジン

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サラゾスルファピリジン(SASP[15][16])はサルファ薬の一種であり[17]、スルファピリジンと5-アミノサリチル酸のアゾ化合物であり[18][19]、潰瘍性大腸炎の治療薬としても用いられるが、RA(※ 関節リウマチの略称)に対しても有効である。

スルファピリジンと5-アミノサリチル酸の免疫調節機能は弱いため、サラゾスルファピリジン自身が活性物となり免疫調節機能を持っていると考えられている[20][21]

効果発現が1~2ヶ月とより速やかであり[22][23]、特に早期~中等症のRAに有効性が高い[24][25][26]

効果の強さは金製剤やD-ペニシラミンと同等とされるが、副作用は少ないとされる[27][28]

作用機序としては、

(1) 抗炎症作用(アデノシンの産生、プロスタグランジンの分解と合成の抑制)、
(2) 細胞性免疫系への作用(T細胞およびマクロファージからのサイトカイン(IL-1, IL-2, IL-6 )産生の抑制)、
(3) 葉酸吸収・代謝阻害
(4) 滑膜細胞活性化や炎症性細胞浸潤の抑制、
(5) 好中球の活性酸素産生の抑制、
(6) 腸内細菌叢に対する二次的な効果、

が挙げられる[29][30]


生物学的製剤

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モノクローナル抗体などが生物学的製剤である。

インフリキシマブ

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インフリキシマブは、マウス・ヒトキメラ型抗ヒトTNF-αモノクローナル抗体である[31]

RA以外にもクローン病、ベーチェット病にも有効[32][33]

MTX(メトトレキサート)との併用が、中和抗体(抗インフリキシマブ抗体[34])を抑えるために必須である[35][36]

インフリキシマブと(後述の)エタネルセプトはともに、腫瘍壊死因子 TNF-αを標的にしている。TNFとは tumor necrosis factor [37]のこと。

エタネルセプト

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エタネルセプトは、TNF-α、TNF-βを特異的に抑制するヒト型リコンビナント可溶性 TNF 受容体-Fc 融合蛋白で、RAに伴う関節炎を速やかに抑制して症状を改善させ、骨破壊の進行を抑制する[38][39]


トシリズマブ

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トシリズマブは抗IL-6受容体抗体であり[40]、IL-6受容体と結合することで破骨細胞(の活性化)を抑制するので[41]、IL-6産生腫瘍であるキャッスルマン病に用いられるが、RAでの有効性も確立している[42][43]


アバタセプト

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アバタセプトの構造は、完全ヒト型のCTLA4(細胞傷害性T細胞)と免疫グロブリンの一部[44]との融合タンパク質である[45][46]

抗原提示細胞上のCD80/86に結合することで、(T細胞上のCD28 と 抗原提示細胞のCD80/CF86 との結合を阻害することで[47][48] 、)T細胞の活性化を抑止する[49][50][51][52]


脚注

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  1. ^ 『標準薬理学』、P477
  2. ^ 『パートナー薬理学』、P383
  3. ^ 『パートナー薬理学』、P384
  4. ^ 『標準薬理学』、P598
  5. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P251
  6. ^ 『パートナー薬理学』、P384
  7. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P251
  8. ^ 『標準薬理学』、P598
  9. ^ 『パートナー薬理学』、P384
  10. ^ 『パートナー薬理学』、P384
  11. ^ 『パートナー薬理学』、P251
  12. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P251
  13. ^ 『標準薬理学』、P598
  14. ^ 『NEW薬理学』、P466
  15. ^ 『標準薬理学』、P598
  16. ^ 『NEW薬理学』、P466
  17. ^ 『パートナー薬理学』、P385
  18. ^ 『NEW薬理学』、P466
  19. ^ 『標準薬理学』、P598
  20. ^ 『標準薬理学』、P598
  21. ^ 『NEW薬理学』、P466
  22. ^ 『標準薬理学』、P598
  23. ^ 『NEW薬理学』、P466
  24. ^ 『標準薬理学』、P598
  25. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P252
  26. ^ 『NEW薬理学』、P466
  27. ^ 『標準薬理学』、P598
  28. ^ 『NEW薬理学』、P466
  29. ^ 『標準薬理学』、P598
  30. ^ 『NEW薬理学』、P466
  31. ^ 『標準薬理学』、P598
  32. ^ 『標準薬理学』、P598
  33. ^ 『NEW薬理学』、P467
  34. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P252
  35. ^ 『NEW薬理学』、P467
  36. ^ 『パートナー薬理学』、P385
  37. ^ 『パートナー薬理学』、P403
  38. ^ 『標準薬理学』、P599
  39. ^ 『NEW薬理学』、P467
  40. ^ 『パートナー薬理学』、P386
  41. ^ 『パートナー薬理学』、P386
  42. ^ 『標準薬理学』、P599
  43. ^ 『NEW薬理学』、P467
  44. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P253
  45. ^ 『標準薬理学』、P599
  46. ^ 『NEW薬理学』、P467
  47. ^ 『NEW薬理学』、P467
  48. ^ パートナーW薬理学』、P387
  49. ^ 『NEW薬理学』、P467
  50. ^ パートナー薬理学』、P387
  51. ^ 『はじめの一歩の薬理学』、P253
  52. ^ 『標準薬理学』、P599