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解剖学/背部の筋

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

背部の筋は脊柱を基幹としていくつもの筋が重層的に存在しており、起始および停止の個体差が大きく人体の様々な筋群の中でも理解の難しい筋群である。1つ1つの立体的な把握を心がけて欲しい。


後頭下筋群

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後頭部から後頸部にかけては4種類の筋が存在する。

  • 大後頭直筋Rectus capitis posterior major:第2頸椎の棘突起から起始し後頭骨の下項線中央3分の1の領域に停止する。
  • 小後頭直筋Rectus capitis posterior minor:第1頸椎の後結節から起始し後頭骨の下項線内側3分の1の領域に停止する。
  • 上頭斜筋Obliquus capitis superior:第1頸椎の横突起から起始し後頭骨の下項線中央3分の1の領域に停止する。
  • 下頭斜筋Obliquus capitis inferior:第2頸椎の棘突起から起始し第1頸椎の横突起に停止する。

これらの筋はそれぞれ左右に2つずつ存在しは両側が収縮することで頭部の後屈に働き、片側のみが収縮することで頭部の回旋に働く。またC1の後枝により支配を受ける。

固有背筋

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固有背筋の筋群は大きく分けて浅層、中間層、深層の3つに分類される。全て脊髄神経後枝の支配であることに注意したい。

浅層

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浅層には上・下後鋸筋と頭・頸板状筋の計4種類の筋が存在する。

  • 上後鋸筋Serratus posterior superior:第7頸椎~第3胸椎の棘突起から起始し第2~4肋骨上縁に停止する。
  • 下後鋸筋Serratus posterior inferior:第11胸椎~第2腰椎の棘突起から起始し第9~12肋骨下縁に停止する。
  • 頭板状筋Splenius capitis:第4頸椎~第3胸椎の棘突起から起始し後頭骨の乳様突起および上項線の外側端近辺に停止する。
  • 頸板状筋Splenius cervicis:第3~6胸椎の棘突起から第1~2頸椎の横突起に停止する。

上・下後鋸筋はそれぞれ肋骨の引き上げと引き下げに働く。頭・頸板状筋が両側が収縮することで頸部の後屈に働き、片側が収縮することで頭部の偏屈に働く。

中間層

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中間層には大きく分けて腸肋筋、最長筋、棘筋の3種が存在する。腸肋筋はその筋腹の存在する部位により頸長肋筋、胸腸肋筋、腰腸肋筋と分かれ、最長筋も同様に頭最長筋、頸最長筋、胸最長筋と分かれる。棘筋は頸棘筋と胸棘筋に分かれる。

  • 腸肋筋Iliocostalis:中間層の筋群のうち最も外側に存在し腸骨稜付近の筋膜から起始する。肋骨各部から筋束が起始しては合流し、分岐しては停止している。最も上方の頸長肋筋は第4~6頸椎横突起に停止する。
  • 最長筋Longissimus:腸肋筋の内側に存在し腸肋骨同様に腸骨稜付近の筋膜から起始する。第1~6腰椎から起こる筋束と合流し各肋骨や横突起に停止する筋束と分岐しつつ最上部の頭最長筋は乳様突起に停止する。
  • 棘筋Spinalis:第11胸椎~第2腰椎の棘突起から起始し2つ以上高位の棘突起に停止する。

それぞれの支配神経は腸肋筋がC8~L1後枝の外側枝、最長筋がC1~L5後枝の外側枝であり棘筋の支配神経は棘筋の存在する脊髄の後枝である。

深層

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深層には横突棘筋と呼ばれる筋群と深分節筋と呼ばれる筋群が存在する。横突棘筋は回旋筋、多裂筋、半棘筋に分かれる。また深分節筋は棘間筋、突間筋、肋骨挙筋に分かれる。

  • 横突棘筋transversospinales
    • 回旋筋rotators:横突起から起始し、1~2つ高位の棘突起に停止する短い筋である。
    • 多裂筋multifidus:第5頸椎以下の横突起および仙骨から起始し3~4つ高位の棘突起に停止する中間程度の長さの筋である。
    • 半棘筋semispinalis:第4頸椎~第12胸椎から起始し5つ以上上位の棘突起に停止する。