無限積分 を関数 のラプラス変換といいます。
ラプラス変換は という記号で表される事も多いですが、変換元の関数を明示したい場合には や などという記号で表す場合もあります。ラプラス変換の変数はsである事に注意してください。xに関する定積分で定義されるのですから、xは(変換後の関数の)変数ではありません。
指数位の関数
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ラプラス変換は無限区間の広義積分ですので、極限が収束するときにしか使うことができません。どのような関数に対して収束するのかという十分条件として、指数位の関数という関数のクラスを定義しておきます。
定義 関数が不等式 (Mは正の定数)を満たすとき、は指数位であるという。
関数が指数位ならば、が成り立ちます。を満たすsに対して優関数の積分は収束しますので、解析学基礎/広義積分#優関数の原理により、ラプラス変換も収束します。
またこの不等式から、が指数位でならば、はさみうちの原理よりであることもわかります。
のとき、
のとき、
のとき、
この第2項を更に部分積分すると、
が得られます。これを に関して解けば が得られます。
同様の計算を行う事によりも得られます。
が成り立ちます。これを上述の正弦と余弦のラプラス変換に用いれば、のとき、
が成立する事が分かります。
以下関数が何回でも微分可能(すなわち級である)と仮定しておきます。
部分積分の公式を使うことで、導関数のラプラス変換の公式は導出されます。
関数の微分のラプラス変換は
という風に導出できます。
結果だけを改めて書くと、
です。
もちろん(これに限らず数学の学習全般に言えることですが)、公式を理解し使いこなすためには、このような一般的な証明をすることと、具体的な(2次関数や3次関数あるいは三角関数や指数関数などの)初等関数を例として実際にラプラス変換の計算をしてみることで実際に上記の公式が成り立つことを確認することと、両方をやってみることが大切です。以降、この本ではわざわざこのような注意はしませんが、言われなくても必ずこのような学習をしましょう。
高階導関数のラプラス変換も、この公式を繰り返し適用することで得られます。たとえば、
です。先ほどと同様に結果だけを改めて書くと
です。以下同様の事を繰り返せばn階導関数のラプラス変換の公式
が導出できます。(証明は数学的帰納法によります。)
多項式 のラプラス変換を考えます。
ラプラス変換は明らかに線型性を持ちますので、です。
したがって、に対してが求まれば、のラプラス変換も求まることになります。
を定義通りに計算するならば部分積分をm回繰り返すことになりますが、次のように簡単に計算することもできます。
とすると、
が得られます。よって、です。
ところで、上述の導関数のラプラス変換の公式を適用すると
となります。ゆえに
が成り立ちます。
- 7. 独立変数が掛かった関数のラプラス変換
ここでは関数 のラプラス変換が変数で微分可能であると仮定します。この関数のラプラス変換を
と書くとき、この式の両辺を変数で微分すると、解析学基礎/関数列の極限#微分と広義積分の順序交換の定理3.5より
が成り立ちます。従ってより
が得られます。
- 8. 独立変数の冪が掛かった関数のラプラス変換
上の7.で得られた公式を関数に適用すると
が成り立つことがわかります。以下同様の議論を繰り返す事により
が導かれます。
ラプラス変換は単射です。すなわち、異なる関数のラプラス変換が一致することはありません。したがって、次を満たすような写像が存在することがわかります。
このを逆ラプラス変換と呼びます。逆ラプラス変換も積分を用いた式で書くことができますが、ここでは割愛します。上記の定義式のみで十分な応用例を、次節で見てみます。
ラプラス変換を用いて、微分方程式を解いてみましょう。例として下の問題を考えます。
- ,
この微分方程式の左辺のラプラス変換は線型性により
なので、両辺にラプラス変換を施すと
が成り立ちます。ここで右辺を高校で学んだように部分分数分解をすると、
となります。この両辺に逆ラプラス変換を施せば第2節で述べたラプラス変換の公式より
が得られます。(ここで逆ラプラス変換にも線型性が成り立つ事を用いました。)斯くして初期値問題の解
が導かれた事になります。