軍事入門/リーダーシップ入門

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本章では統率論について触れ、以後の学習の導入とする。

リーダーシップの基本[編集]

軍隊の指揮官は部隊の団結を左右する。指揮官として重要なことは、部下を人格として尊重して思いやり、かつ困難な状況において指導力を発揮して部隊を奮い立たせ、部隊と苦楽を共にすることにある。

軍隊は人間で構成されている。そのために多数の人間を指導する指揮官は心理的・感情的・非合理的な問題に直面する。つまり指揮官は指揮を行う場合には、部下が心理的に自ら望んで積極的、自主的に行動させるための技術や才能であるリーダーシップ(Leadership 統率)が必要である。このリーダーシップは人格、知識、行動から構成されるものである。人格の部分で特に必要な要素は誠実、勇敢、高潔、尊厳、没我、自制心、冷酷さなどである。また知識面では部隊の知識、装備の知識、状況の知識、問題解決知能、戦術などである。さらに行動は人格と知識を発揮することで思考を効果的に行動に移して戦果を実際に得ることであり、影響を及ぼす、積極的に動く、教化する、に行為を分類できる。リーダーシップは精神的な才能との関係が強く、訓練や教育でのみ養われるものではない。

歴史の事例[編集]

リーダーシップが軍事史で大きな結果をもたらしたことは事例がいくらでもある。その多くは統率力あふれる指揮官の下で部隊が一致団結し、兵士たちが強い連帯感で絆を育んで無力感を排し、兵士一人ひとりが毅然として己の任務を遂行することに表れる。

1972年7月19日早朝、オマーンの南部ドーハ県にある港町ミルバートでは戦闘が起こった。約250名のアドゥー反乱軍が当時ミルバート近郊に駐留していた英国特殊空挺部隊約9名に対して攻撃を開始した。英国軍部隊を指揮したマイク・キーリー大尉はこの困難な状況においても部隊を適切に指揮統率した。キーリー大尉は戦闘が始まるとすぐに事前に準備した防御陣地に部下を配し、自らも防御陣地の一角に移動して部隊を指揮した。即座にキーリー大尉は迫撃砲、機関銃、火砲の射撃を指示して、さらに友軍に空爆を要請した。そして弾薬庫を守ることを念頭に置きながら、多方面から突撃してくるアドゥー反乱軍の兵士たちを的確に殺傷することができた。このときにキーリー大尉は部下や装備の配置を完全に把握し、通信を的確に行って外部の援軍に応援を冷静に要請し、同時に部下の安全に細心の注意を払っていた。そして援軍が到着するまでキーリー隊はミルバートを守ることに成功したのだった。このときのキーリー大尉の勇敢かつ理性的な統率は非常に高く評価され、これ軍人としてのリーダーシップの模範とされている。

演習問題[編集]

  1. リーダーシップという概念を定義せよ。
  2. あなたが知っている優れたリーダーを挙げ、その者が持つ統率者にふさわしい資質が何かを説明せよ。