軍事入門/兵器の仕組み

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本章では兵器学の内容にふれ、以後の学習の参考とする。

火器と弾道の原理[編集]

火器とは射撃を実施するための武器の一種である。

それぞれの発射の原理は概ね同一である。一端のみが開放された筒の中に銃弾と火薬を挿入し、火薬を燃焼させてそのガス圧で銃弾を高速で筒の外へ押し出す。これがあらゆる銃器の基本的な原理である。現代の火器では火薬と弾丸を装填する以前にまとめておくために火薬と弾丸を薬莢にまとめてこれを実包とし、射撃を終えた後に残る空の薬莢だけを銃器から排出する機構が一般的に採用されている。射撃の際には火器の中の薬室に実包を装填し、そこで火薬を急速に燃焼させて瞬間的に高圧ガスを得て、この圧力で銃弾を発射し、銃弾は銃身の中で銃腔で回転運動をかけて弾道を安定化させる。発射用の火薬は燃焼する速度と得られるガス圧をコントロールする為に粒の形状や薬剤の配合が工夫されており、衝撃波によって破壊を伴う「爆発」とは次元の異なる物である事に注意が必要である。

射撃された弾丸は小銃の場合、毎秒約800メートルの初速、約450メートル地点では毎秒約500メートルの弾丸速度で飛翔する。弾道は基本的に初速は高速であるために直線的であるが、目標が長距離である場合は弾道が空気抵抗などによってある程度の落下角度を持って飛翔する。さらに射撃の際の衝撃で銃身がやや上に跳ね上がるため、しばしば照準はやや下方に修正されなければならない。

弾丸が命中すれば目標物を貫徹し、またはその組織を破壊する効果を発揮する。この効果は目標物との距離によって変化する。

爆薬と爆破の原理[編集]

爆薬とは熱や衝撃によって急激な燃焼という化学反応を示す爆発物である。これは低性能爆薬と高性能爆薬に大別できる。

低性能爆薬は起爆させると燃焼してガスが膨張する爆薬であり、推進・発射薬で使用される。有名な低性能爆薬には黒色火薬がある。これは導火線の芯としても使用されており、起爆すると時間をかけて燃焼する。一方で高性能爆薬とは起爆と同時にガス化し、それに伴う絶大な衝撃力で目標物を破壊することができる爆薬である。ただし低性能爆薬と違って起爆させるには火をつけるのではなく、小規模の爆発が必要である。有名な高性能爆薬としてはプラスチック爆弾が挙げられる。これは形を自由に変形することが可能である。また板状のTNT爆薬も高性能爆薬であり、世界中で使用されている爆薬の一つである。

小銃の構造[編集]

旧ソ連製のAK-47という突撃銃

小銃は現代の歩兵の主要な武器である。これは比較的に長い銃身を備えて右手で銃把、左手で被筒部の後端を握って構える。

現代の小銃はその多くが自動的に射撃時に次の実包が装填される構造になった自動小銃となっており、さらに発射の方式を単発と連発に切り替えることが出来る突撃銃でもある。この自動装填は射撃時に生じるガス圧で弾丸を飛翔させると同時にそのガス圧を利用して遊底という部品を後方へ動かし、その動作で薬室を覆ったスライドを後部に押して露出した薬室に残った薬莢を外部へ排出する。そしてバネの力で元の位置に戻ろうとする遊底の動作によってスライドで薬室を閉鎖しながら次弾を装填する機構になっている。

小銃に装填できる弾丸数及び弾丸の種類は銃によって異なるが、世界的に有名なソ連製のAK-47という自動小銃では口径が7.62ミリの銃弾を30発装弾できる。

また米国製M16という銃では5.56ミリの銃弾を20発または30発装弾することが出来る。また格闘を想定してこのような突撃銃の先端には銃剣が装着することが出来るように設計されており、歩兵が敵と肉薄した格闘戦を行う場合に打撃や刺突の武器としても利用できるようになっている。

手榴弾の構造[編集]

ベトナム戦争で用いられたMk-2という手榴弾。

手榴弾は現代の歩兵の装備の一種であり、投擲することが出来る小型の爆弾である。手榴弾は通常の爆風や破片で敵を殺傷する手榴弾と、発煙や催涙、焼夷効果がある特殊な手榴弾に大別される。

通常の手榴弾には高性能爆薬が詰まっており、使う場合は手榴弾に付いている安全ピンを外して投擲するとハンドルがはずれ、撃針が撃発信管を打つ。すると4秒から5秒で手榴弾は爆発する。

これは遮蔽物に位置する敵を殺傷するために使用される武器であり、複雑な地形であればあるほどに活用できる機会も多くなる。例えば市街戦において建築物内の部屋に潜んでいると思われる場合、手榴弾を投げ込んで室内を爆破してから突入すると敵に待ち伏せされる危険を犯さずにすむ。

火砲の構造[編集]

米陸軍のM224という口径60mmの迫撃砲。

火砲とは歩兵部隊などの行動を支援するために遠距離からでも弾丸を射撃して敵を殺傷・征圧することが出来る比較的大きな火器である。このような支援射撃が可能な火器があれば地上部隊の火力は大いに高まり、作戦能力を向上させることができる。ここでは火砲の一種である迫撃砲を取り上げる。

迫撃砲は火砲の中でも比較的近距離である100メートルから3000メートルまでの射程を持つ火砲であり、間接照準射撃に用いる。ただし迫撃砲にも重迫撃砲など種類があり、性能も同一ではない。

迫撃砲は砲弾を射出する砲身、目標に照準するための照準具、砲身の前部を支える二脚、砲身の後部から射撃の衝撃を抑える床板、砲身の角度を左右に調整する左右ハンドル、砲身の角度を上下に調整する高低ハンドルから成る。また迫撃砲弾は炸薬に点火する信管、炸薬を充填した弾体、射程を延ばすための増強装薬、弾道を安定化する尾翼、発射薬に点火する撃発雷管から成る。

発射された迫撃砲弾は曲線の弾道を描いて敵の図上で炸裂し、60ミリの砲弾であれば20メートル半径の範囲を殺傷する。大口径の火砲は後部から弾薬を装填する後装式であるが、迫撃砲は比較的小型であるため砲口から装弾する前装式のものが多い。発射する場合、目標の位置と距離を算出し、気候や天気、地勢を考慮して弾道を微調整する。射撃を開始すれば弾着の状況や観測員や友軍の通信によって弾道を再び調整し、射撃を行う。

NBC兵器の原理[編集]

1945年8月に日本に対して使用された核兵器は絶大な威力で広島と長崎の二都市を壊滅した

NBC兵器とは核兵器、生物兵器、化学兵器であり、これらは通常兵器とは異なる殺傷原理を用いている。どれも通常兵器にはない殺傷・無力化効果が得られる兵器であり、その規模も通常兵器にない大規模なものもある。そのために現在ではこれらの兵器の多くは国際法などによって規制されているが、兵器が使用される可能性は残されている限り、これら兵器の効果と対策についての知識は必要である。

核兵器は原子核の核分裂や核融合の連鎖反応によって生じる原子力エネルギーを利用した兵器であり、通常兵器にはない巨大な爆破効果が得られる。例えば1945年に日本の広島に投下されたリトルボーイという原子爆弾は、TNT火薬に換算して15キロトンのTNT火薬ほどのエネルギーで広島を爆風と熱線で焼き払い、さらに放射性物質を撒き散らした。核兵器の放射線はともかく、爆風や熱線に対する対策としては避難所などに退避する手段がある。ただしこの方法では適切な警報が必要となる。

生物兵器は病原微生物などを用いて敵を殺害・無力化する兵器であり、細菌やウイルスは感染して効果が拡大していく。生物兵器の特徴は使用してから効果が表れるまで時間差があること、また細菌の感染力を活用すると小規模な分量で多数の敵を殺傷・無力化することが可能になりうるということ、製造が核兵器と比べて容易であること、などである。化学兵器は敵を殺傷・無力化することを目的とした化学物質を散布する兵器であり、毒ガスや窒息性ガスを砲弾などで散布する。これらBC兵器の対策としては防護服を着用することがある。完全に身体を外界と遮断することによって汚染地域でも行動することが出来るようになる。しかし防護服を着用した常態での戦闘行動には別に特別な訓練を受ける必要がある。

演習問題[編集]

  1. 銃の自動装填の機構について説明せよ。
  2. 小銃の整備不良によって薬室が完全に密閉されていない場合に考えられる銃の機能不全について述べよ。
  3. 敵の重迫撃砲を発見してこれを直ちに機能不能にしたい場合、どのような方法が考えられるかを述べよ。
  4. 核兵器が使用される恐れがある場合にはどのような装備や準備が必要か述べよ。
  5. 生物化学兵器への対策に必要な装備や準備を述べよ。