軍事入門/軍隊のなりたち
本章では軍事組織論として各軍種の概要と各軍の作戦の内容に触れ、以後の学習の導入とする。
軍隊の基本
[編集]軍隊(英:Armed forces)は戦争において武力を行使することを目的とした武装組織であり、主に陸軍、海軍、空軍で編制される。この軍事組織にはいくつかの原則がある。まず組織がピラミッド型で上下関係が明確になっていることである。つまりどんなに膨大な兵士も軍隊においては最終的には一人の指揮官によって指導されているのだ。また各級の指揮官の意思決定においては原則として合議制を採らない。これは戦場における部隊の行動を速やかかつ効果的に採るために他ならない。また軍隊では軍法会議という独自の司法機関が存在する。これは戦場では通常の法律が適用することが出来ず、また通常の司法機関では扱わない戦時国際法をも扱われるからである。
陸軍の構成と作戦
[編集]陸軍(英:Army)は主に陸地において行動する地上部隊から成る軍事組織である。陸軍の第一の任務は地上の重要な地域を占領して陸上権を獲得することにある。人間は陸生であるため、人間を支配するためにはその居住地を支配しなければならない。
陸軍は陸上で活動するために歩兵部隊や砲兵部隊、戦車部隊、航空部隊などがある。歩兵部隊は携帯可能な武器を装備して徒歩で移動する兵士から成る部隊であり、砲兵部隊は車両などで輸送する火砲を装備した部隊である。戦車部隊は戦車を装備した部隊、航空部隊は地上部隊を支援するためのヘリコプターや輸送機といった航空機を装備した部隊である。またこのような戦闘部隊ばかりでなく、戦闘を支援する部隊として兵站部隊がある。この部隊は戦闘部隊が行動するために必要な軍需品を補給して輸送する部隊である。これら部隊は平時には駐屯地に駐留し、戦時には駐屯地を根拠地として行動する。
陸上作戦は陸軍部隊による陸上における作戦行動であり、地形地勢の影響が大きく、部隊が広範囲に配置され、後方支援の重要性が大きく、精神的な要素が戦闘力を左右するなどの特徴がある。これら陸上作戦は戦争においてだけでなく、戦争以外でも非戦闘員の護送、人道支援活動、対反乱作戦、対麻薬作戦、水陸両用作戦などの作戦もある。
海軍の構成と作戦
[編集]海軍(英:Navy)は主に水域で行動する艦艇から成る軍事組織である。海軍の第一の任務は海の支配を獲得することにある。海の支配は制海権と呼ばれ、制海権がある海域では自由に自国商船も航行することができる。
海軍部隊は概ね複数の軍艦から構成される。その艦艇の種類としては航空母艦や巡洋艦、潜水艦、揚陸艦などがある。航空母艦は航空機の格納庫と滑走路を備えた艦艇であり、航空機が離着陸することが出来る。巡洋艦は外洋を航行して火砲などの武装を持つ比較的に大型の艦艇である。潜水艦は潜水して航行し魚雷などの武装を持つ艦艇である。揚陸艦は車両の格納庫を備えた艦艇であり、そのまま上陸することが出来る。これ以外にも駆逐艦や魚雷艇、給油艦、掃海艇、フリゲートなどがある。海軍はこれら艦艇を以って艦隊を編制する。これら部隊は港湾に配備される。
海上作戦は海軍部隊による海洋における作戦行動であり、これは海象や天気の影響があり、戦闘は即決戦となりやすい。またその戦闘も対水上戦闘だけでなく、対地戦闘、対空戦闘、対潜戦闘、水陸両用作戦などの局面がある。さらに戦争での作戦だけでなく、護衛作戦や災害救助、測量支援、軍事交流、物資輸送、臨検などの作戦行動もある。
空軍の構成と作戦
[編集]空軍(英:Air force)は主に空域で行動する航空機から成る軍事組織である。空軍の第一の任務は空における軍事的な優勢を確保することである。空の軍事的な優勢は航空優勢と呼ばれ、航空優勢がある空域では空軍力を自由に運用して地上・海上部隊を支援することもでき、また空中から偵察をすることもできる。
空軍部隊は複数の航空機から編制される。航空機もその目的から敵機を空中戦で撃墜するための戦闘機、地上目標を攻撃する攻撃機、広域レーダーを装備した早期警戒機などがある。またこれ以外にも偵察機や輸送機、空中給油機などがある。これら航空機から飛行隊を編制して運用する。これら部隊は基地に配備されて空中警戒管制機や地上管制の指揮を受けて行動することになる。
航空作戦は空軍部隊による空域における作戦行動であり、これは天気の影響、兵器性能の優劣が戦果を左右し、戦闘は決戦となりやすい。また戦争での航空作戦としては対航空、近接航空支援、航空阻止などの作戦がある。また戦争以外でも航空作戦は航空輸送や地域防空などの作戦がある。
演習問題
[編集]- 軍隊では厳格な階級組織が採られている理由を説明せよ。
- 陸軍力が普遍的には海軍・空軍力よりも軍事的に重要性が高いという立場に立って、その理由を説明せよ。またその立場に反論する立場になって陸軍力の弱点についても反論を述べよ。
- 海軍力が長期的には陸軍・空軍力よりも軍事的に重要性が高いという立場にたって、その理由を説明せよ。またその立場に反論する立場になって海軍力の弱点についても反論を述べよ。
- 空軍力が現代的には陸軍・海軍力よりも軍事的に重要性が高いという立場に立って、その理由を説明せよ。またその立場に反論する立場になって空軍力の弱点についても反論を述べよ。
- 陸海空軍の差異がそれぞれどのようなものかについて述べ、これらを統一的・統合的に運用する場合どのような問題が生じると考えられるか述べよ。