軍事学概論/軍事政策
軍事政策とは軍事力の運用に関する政策であり、侵略と防衛に大別される。また敵もその勢力基盤が自国の内部にある内敵、外部にある外敵がある。
侵略政策
[編集]侵略とは敵に対して武力を以て先制して侵入、攻撃、占領などの攻勢作戦を実行する軍事政策であり、直接侵略と間接侵略に分類される。直接侵略とは外敵に対して軍事力を直接行使して侵略することであり、運用性が高い。間接侵略とは敵国内にいる反政府勢力などの内敵を利用する目的で指導、援助などをして間接的に外敵を攻撃する方式の侵略であり、秘匿性が高い。直接侵略と間接侵略は併用が可能である。
防衛政策
[編集]防衛とは敵の侵略を破砕するための防御、逆襲などの防勢作戦を実行する軍事政策であり、単独防衛と集団防衛に大別される。単独防衛は外敵の侵略に対して自国の軍事力のみで拒否する軍事政策である。集団防衛とは外敵の侵略に対して外国の軍事力と共同して拒否する軍事政策である。また防衛の方式は防衛線の位置などからも分類される場合がある。
軍事地理学
[編集]古代から地形は軍事力の運用に多大な影響を与えてきた。軍事的な観点から地理を観察する場合、より巨視的である地政学的な視点とより微視的である軍事地理学的な視点があり、軍事政策の実施過程に大きく影響する。
軍事地理学的に地形を観察した場合、単純な地形及び地勢だけでなく、天候、気象、水系、植生、建築物など多様な要素から構成されていることが分かる。特に陸上作戦において地形が作戦行動に与える影響は大きい。陸地は平地と山岳地に大別され、山岳地はその起伏の程度によって陸上交通の障害となる。また植生によっては平地であっても兵力の移動または交戦上で障害となりうる。ただし、地形は工事などによって戦力化することも可能であり、地形の利用が戦闘行動において非常に重要になる。また海上作戦においても地形、天候、海象は部隊行動に影響を与えるものであり、特に斉一の運動や射撃において波浪などの海象条件が悪ければその効率が低下する。ただし陸上作戦と比較して地形の戦力化の要素は小さい。航空作戦は地形の影響を最も受けにくいが、大きく気象や天候の影響を受け、さらに部隊と基地が離隔する距離が燃料補給などの技術的な問題から制約されることになる。
軍事法の概観
[編集]軍事法とは軍事組織や軍事力の運用等に関する法である。軍事法は憲法、法律、軍事行政命令に大別される。また軍隊の作戦行動に関する命令の権能は法制上は軍事行政命令の下位に位置づけられるが、通常は最高行政権を併せ持つ国家元首または行政首長が有することとなる。これはかつては統帥権とも呼ばれたものであり、軍隊の最高指揮官を定める。軍隊最高司令官はイギリスでは国王であり、また中国では中央軍事委員会主席、日本では内閣総理大臣、アメリカでは大統領であるなど、国の歴史や政治文化を反映して主体も権限の内実も多種多様である。また軍事法はその適用に関連して戦時と平時をしばしば区別する。このためには平時から戦時に行こうする基準が設けられる。戦時においては国家安全保障の達成のために平時には認められない例外措置や権能などについて定めている。
軍事組織概説
[編集]国防機構としての軍事組織はまず憲法あるいは軍事法の規定に基づいて編制が整えられている。軍事組織は意思決定権および発令権を持つ主任機関、主任機関の決定や発令を補助する補助機関、主任機関の意思決定に基づいて行動する執行機関に理論上では大別することができる。実際には軍事組織は軍事行政機関である内閣府や国防省、軍事教育機関である教育部隊、軍事司法機関である軍法会議、軍事計画機関である幕僚会議や参謀本部、実働部隊である各地域の統合部隊や師団等によって構成されている。ただし戦時においてのみ大本営のような戦争計画機関が臨時に設置されることもある。さらに軍事組織では戦時において運用する予備戦力を確保するために予備役制度を準備する。これは現役を退いだ兵員以外にも予備役に志願した兵員からも構成され、定期的な教育訓練を受けて維持され、戦時には後方支援業務や兵員補充として運用される。
兵役制度概説
[編集]兵役とは国家が国民に軍事上の目的から課す軍事負担の一種である。軍事負担は不作為義務負担や労役負担などの人的負担と所有権の制限負担や収容負担等の物的負担に大別され、その中で兵役は代表的な人的な軍事負担である。兵役について定めた兵役制度は大別して兵役を国民の義務とする徴兵制と、志願者のみが兵役を担う志願制があり、徴兵制においても選択徴兵制などを採用している国もある。徴兵制は徴兵によって兵員を確保する兵役制度であり、これには国民全体に負担を課す一般兵役義務と服役の命令がなければ実際には入営しない服役待機義務のどちらかが採られる。また徴兵制でも実際には学歴や職業などの条件によって負担減や免除がありうる。志願制では志願者の募集によって兵員を確保する兵役制度である。