量子化学/分子軌道

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※ 大学レベルの量子力学そのもののウィキブックス教科書を読む場合については、大学物理『量子力学』を参照せよ。

分子軌道[編集]

高等学校化学Ⅱ/不確定性原理と化学結合 を参照せよ。

簡単にいうと、「s軌道」とか「p軌道」とかは、シュレーディンガー方程式を解いた結果を図示したものである。

大学化学の教科書を読んでると、冒頭のほうで「sp混成軌道」とかの例外的な事態がさっそく出て来る。


しかし、シュレーディンガーの方程式の結果は、いろんな事をうまく説明できる(とされている)ので、「sp混成軌道」とかの例外的な事態が出てきても、シュレーディンガーの方程式にのっとって、「s軌道」とか「p軌道」とかの概念を化学では使う。

大学では「sp混成軌道」とかがテストに出るので、鵜呑みにして覚えざるを得ない。

鵜呑みにするのはイヤなので、自分なりに根拠を考えてみた。

「sp混成軌道」とか例外的な軌道が出てきても、「s軌道」とかの概念を使う根拠[編集]

※ たぶん、こうなんじゃないですかね? (「間違ってる」と思ったら、上書き編集してください)


ボーアの楕円軌道[編集]

高校の物理で、陽子のまわりを公転する電子軌道のモデルで、電子軌道が円軌道の場合の、電子の運動エネルギーや位置エネルギーや物質波の波長などを求める計算をしたと思う(大学入試などにも、よく出て来る、あの計算である)。

では、「楕円軌道の場合は、どうなるの?」という疑問がわいてくるだろう。

実際に、電子軌道が楕円軌道かどうかは ともかく(そもそも円軌道かどうかすら不明だが)、ボーアやゾンマーフェルトなどは、楕円軌道のような場合も計算した。

そして、それが、当時の物理学の流行になった。

まず、高校の円軌道の場合をおさらいするが、電子軌道は量子数(n)を1つ持っていた。

さて、楕円軌道とした場合の計算結果によると、電子軌道は、自由度のある量子数を2種類持つことになった。本書では、この2つの自由度のある量子数を、それぞれ n と k で表すとしよう。ボーアらの解析によると、nとkの両方とも、整数である。


電子が円軌道にしろ、楕円軌道にしろ、一般の荷電粒子は加速度運動をすると電放放射をして、(運動)エネルギーを失ってしまい、当時の物理学では、ボーアの理論の深刻な矛盾点と考えられていた。(ボーアら自身は、「そもそも原子や電子の大きさの世界では、加速度運動による電磁放射のような現象は当てはまらないので、問題ではない。」などと考えていたようだが、しかし当時の物理学者に、その説は受け入れられなかった。現代でも、受け入れられていない。)

その後、シュレーディンガーが、円軌道や楕円軌道のような軌道運動を仮定しない、電子は根源的に波とするモデルの方程式を出した。

そして、当時の物理学会では、電磁放射のパラドックスの解決として、そもそも軌道運動を前提としないシュレーディンガーの理論が、ボーアの理論の矛盾点を解決するものとして、当時の物理学会で持てはやされ、物理学者プランクなどの研究にもとづく現代物理の量子力学の一部として、シュレーディンガー方程式が普及していった。

現代の日本の大学の「量子化学」の授業や教科書でも、この「シュレーディンガー方程式が、ボーア理論の矛盾を解決するものである」という教義のもと、教育が展開されている。


そもそも「s軌道」や「p軌道」は方程式解でしかない[編集]

周囲を固定した膜の振動の例。2次元の振動の例である。
2次元の振動の例では、理論上はこのような振動も可能である。

シュレーディンガー方程式の解として得られる「s軌道」とか「p軌道」や「d軌道」とかは、シュレーディンガー方程式を解いたとき、そういう解があるというだけの、数学的な結果にすぎない。

s軌道やp軌道以外に電子軌道がある、ということを、物理法則はとくに否定していない(と思う)。

もっというと、そもそもシュレーディンガー方程式だけで電子の軌道がすべて求まるのかどうかも、そもそも不明である。

単に、シュレーディンガー方程式で水素原子の電子軌道を求めた結果、「s軌道」や「p軌道」や「d軌道」などの解が出て来ても、単に「少なくとも、シュレーディンガー方程式には、そういう解がある」という事が分かったにすぎない。

で、(水素原子ではなく、)じっさいの化合物の電子軌道では、「sp混成軌道」などが必要になった、というだけの事。

もっというと、「そもそも原子の電子軌道の時点で、本来なら『混成軌道』が必要なんじゃないか?」という疑問が湧いてきたが、しかし今のところ、寡聞(かぶん)にして、そういう研究は聞かない。


考えてみれば、膜の振動の方程式だって、実際に起きる振動は、特定モードの振動ではなく、複数のモードの混合した振動である。

ならば、シュレーディンガー方程式にもとづく電子の波動でも、実際の電子の波動の分布は、けっして「s軌道」や「p軌道」といった特定のモードの波動ではなく、複数のモードの混合した波動だろう、と考えるのも、ツジツマがあるかもしれない。

とすると、つまり、そもそも、「水素の電子軌道はs軌道である」などという概念はマチガイである。もはや水素の時点から混成をしているのだ。(つまり、量子化学の教科書にある通説は、マチガイである。)

しかし、その間違った通説が学校のテストに出て来るので、学校のテストでは、炭素や酸素あたりのp軌道から「混成軌道」を導入するようにしよう。


また、シュレーディンガー方程式は、(複素数などの手法を使うものの)単なるエネルギー方程式(ポテンシャル方程式)のようなものにすぎない事も、分かる。

単一のモードで考えた場合に、ポテンシャル的に高確率的に電子の分布の存在しうる領域が、シュレーディンガー方程式の解として表示されるにすぎない。

しかし、そもそも、実際の波動は単一のモードではない。

では、「なぜ、解として、『s軌道』や『p軌道』などという、単一モードのみという非現実的な解が場合が出て来たのか?」というと、計算途中に変数分離法という手法を行ったことにより、単一のモードの場合の波動しか求められないから、であろう。


「シュレーディンガー方程式は、単なるエネルギー条件の方程式」と考えると、複素数を共役して2乗をする理由もよく分かる。力学などで運動速度を2乗したり、あるいは振動を仮に複素数で表記しても振動エネルギーでは位置の複素数を共役2乗するるのと同じような理由にすぎないだろう。


そもそも、シュレーディンガー方程式の水素原子模型の解が精度よく説明できた対象は、電子殻(K殻やL殻やM殻など)の中にある価電子の個数である。

K殻の最大価電子数がなんで2個なのかを、古典物理は説明できないが、しかしシュレーディンガー方程式は説明できた。というだけのことに過ぎない。

それがいつのまにか、世界の物理学では、なるべくシュレーディンガー方程式をもちいて電子軌道を予想すべきだ、というふうに曲解されている。

価電子の個数を合理的にシュレーディンガー方程式が説明できるのも、シュレーディンガー方程式がエネルギー方程式だと考えればよい。


そもそも、1次元のバネの振動だって、「運動エネルギー」「位置エネルギー」などと方程式上では分割するが、実際に起きる振動では、運動エネルギーと位置エネルギーは相互作用しており、けっして独立に運動エネルギーと位置エネルギーは存在していない。そして、運動エネルギーと位置エネルギーの合計は一定値である。


シュレーディンガー方程式の「s軌道」「p軌道」とやらも同じで、実際の電子軌道では「s」的軌道と「p」的軌道とが混在するが、方程式上では、電子殻L殻では「s軌道」相当の電子2個と「p軌道」相当の電子6個との合計が、L殻の価電子数8個になる。


そもそもシュレーディンガー方程式が正しい法則なのか?[編集]

上記のハナシで思いついたが、もっというと、「そもそもシュレーディンガー方程式が欠陥品なんじゃないの? 化合物の軌道すら、まんぞくに求められてないじゃん」という疑問も湧いてきたが、しかし、シュレーディンガー方程式は便利なので使われてるんだろう。

たとえば力学における「質点」という、大きさがなくて質量のある物体なんて、現実には存在しない。だが、質点の考えは計算に便利なので、高校力学でも使われる。


シュレーディンガー方程式も同様で、便利なので使われてるのだろう。


結局、シュレーディンガー方程式では、現実の電子軌道すべては説明できていない、不完全な方程式なのである。

その不完全な方程式を基準にして考えると、ある種の化合物中の電子軌道が「混成」軌道に見える、というだけである。


かといって、じゃあ、「電子軌道の完全な方程式を出してみろよ」と言われても、人類はまだ未発見である。

そんなメンドウな事をしなくても、さいわい、シュレーディンガー方程式の解である「s軌道」や「p軌道」を組み合わせた「sp混成軌道」とかが、じっさいの電子軌道をそれなりに説明できてるので、人類はそれで満足しているのだろう。


たぶん、電子軌道を求めるための完璧な微分方程式は非線形方程式か何かの、とても解くのが困難な(未発見の)非線形 微分方程式で、シュレーディンガー方程式はその線形近似式か何かなんだろう。


しかし、このように疑わしいシュレーディンガー方程式ではあるが、このシュレーディンガー方程式をもとに考えられた「ディラックの方程式」(特殊相対性理論とシュレーディンガー方程式を組み合わせた方程式が、ディラック方程式である)が、陽電子の存在を予測しており、実際に陽電子が霧箱などによる観測で実験的に確認されたことから、実験結果ともよくあう。


シュレーディンガー方程式そのものは、分子の結合軌道すらロクに説明できてないくせに、シュレーディンガー方程式をもとにしたディラック方程式では陽電子を説明できるという、状況である。

なので、シュレーディンガー方程式も、なにがしらの正しい要素も、含んでいるのだろう。


「s軌道」とか「p軌道」とかは、そもそも水素原子の電子軌道だ[編集]

学生向けの一般的な量子力学の教科書で紹介される、シュレーディンガー方程式の解の「s軌道」とか「p軌道」は、そもそも(化合物の電子の軌道ではなく)水素原子のような簡単な場合における電子の軌道をもとめようとした解にすぎない。


普通の水素原子では、電子は1個なので(電子殻のK殻に相当する)s軌道までしか電子は入らないが、じつは「p軌道」も水素原子の電子の軌道の解として考えられたわけである。

で、もともと水素原子用に考えられたp軌道が、炭素Cとか酸素Oとかの電子の軌道として使用できたので、単に炭素とか酸素とかの電子軌道を考えるさいに「p軌道」の概念を流用してるだけである。


大学化学の教科書を読むと、酸素や炭素あたりのアソコらへんで、「p軌道」が出てくるので、てっきり酸素とかの電子軌道を説明するためにp軌道が考え出されたように見えるが、そうではないのである。

p軌道もまたs軌道と同じく、水素原子についてのシュレーディンガー方程式の解なのである。


だから、もし化合物中の電子の軌道で「sp混成軌道」とか出てきても、それは単に、水素用の電子軌道の考えを基準にして考えると(s軌道とかp軌道とかを基準にして考えると)、ある種の化合物の電子軌道はsやpの「混成」である、という事にすぎない。


磁力の原因は「d軌道」とされる[編集]

一般的な磁石の磁力(市販の磁石のように、常温でも磁力をもつような実用的な磁石とする)の原因は、電子の(シュレーディンガー方程式の解でも出て来る)d軌道とされる。

このd軌道を取る原子が、Fe、Ni、Co、である。

アルニコ磁石などの化合物磁石も、これらの原子を含んでいる。アルニコ磁石は、アルミニウムとニッケルとコバルトを原料にして、構成されている。

フェライト磁石は原料として酸化鉄FeOやFe2O3 などを焼き固めている。フェライト磁石も、鉄Feを原料にしている。(酸化鉄でない導体金属としての鉄Feだと、外部から磁力を加えることで、磁力が消失してしまったり、あるいは反転してしまったりする。このように(酸化鉄でない)金属鉄Feでは保磁力が弱い。なので、金属鉄は磁石として実用にならない。)


要するに実験事実は、単に、FeまたはNiまたはCoを含む元素を含まないと、強磁性をもつ磁石は作れない。


元素の分類.png

ある原子(ネオジウムNdなど)が、原子単体では磁力を持たない原子でも、しかし、他の強磁性原子(Feなど)と結合することにより、磁力を増強させる原子もある。

このような、化学結合による磁力増強の起きる理由として、「電子のスピンが原因だろう、」というのが定説になっている。

ネオジウム磁石やサマリウム磁石が、そのような磁石である。

ネオジウム磁石はネオジウム(Nd)と鉄(Fe)を含んでいる。サマリウム磁石はサマリウム(Sm)とコバルト(Co)を含んでいる。(なお、ネオジウムNdとサマリウムSmはランタノイドである。)

ネオジム磁石とサマリウム磁石での磁力増強の原因としてf軌道が考えられており、ネオジウムの電子殻のf軌道や、サマリウムの電子殻のf軌道が原因だ、というのが定説である。

実験事実は、単に、「ある原子(ネオジウムなど)が、原子単体では磁力を持たない原子でも、しかし、他の強磁性原子と結合することにより、磁力を増強させる原子もある」というだけの事にすぎない。また、ネオジウム磁石はサマリウム磁石は、保磁力も高い。

重要な実験事実として、化学結合によって磁力が増強する場合もあるという事は、つまり、「ある状態の電子殻により、磁力が増強される事がある」という事であり、もっと極論を言えば「電子は磁力を強める場合もある」という事でもある。


  • 反強磁性

マンガンMnは、原子そのものはd軌道を持つが、しかし、現実には強磁性体ではない。要するに、Mnは、いわゆる「磁石」ではない。

これは、Mnのスピンが互い違いに打ち消しあっているためだと思われており、このような機構を反強磁性という。(「反磁性」とは違うので、混同しないように注意。)

ともかく、実験事実は、単に「マンガンの単体は、強磁性体ではない」というだけの事である。

クロムCrやNiOなども、反強磁性体である、と考えられている。Niは強磁性体なのに、NiOが強磁性を持たない、という事実は興味深い。

実際にCrO2は強磁性を持っており、かつて磁気記録用テープの磁性材料として用いられていた事もあった。

周期表を見ると分かるが、MnやCrは、Fe,Ni,Coの近くにある。

なお、クロムは、鉄・クロム・コバルト(Fe-Cr-Co)磁石で用いられている。

  • ホイスラー合金

「ホイスラー合金」というのがあり、遷移金属元素Xと遷移金属元素Zを用いて化学式X2 Mn Zで表される、マンガン系の合金がある。(「遷移金属」とは、高校で習うように、周期表で第3族元素から第11族元素のあいだにある金属元素。具体例をあげると、銅とか鉄とかのような金属。この節では、単に「アルカリ金属やアルカリ土類金属ではない」とでも思ってればいい。) なお、ホイスラー合金は規則的な結晶をもつ合金である。このように、規則的な結晶をもつ合金のことを規則合金という。つまり、ホイスラー合金は規則合金でもある。

さて、このホイスラー合金のうち、銅Cuを母材としてマンガンMnとアルミニウムAlを加えた合金Cu2MnALは、それぞれの元素単体では磁性をもたないにもかかわらず、適切な熱処理をすることで、この合金は強磁性をもつ。銅もマンガンもアルミも強磁性ではないのに、銅のマンガンとアルミの合金が強磁性を持つ、という事実も興味深い。熱処理によって、強磁性であるか否かの性質が違うというのも、興味ぶかい。

なお、マンガン以外の金属を母材に拡張する理論もあるが、本書では省略する。歴史的には、マンガン系を理論の中心として、ホイスラー合金の理論は発達した。


ともかく、このように磁性には、化学結合や結晶構造などが深く関わっている。(※ 化学結合の原因である電子スピンを、磁性の原因とする学説が主流で定説になっているのも、こういう背景があるからだろう。)

ホイスラー合金はマンガンを含んでいる。よって、反強磁性の理論である「本来、マンガンは強磁性を持っているが、通常のマンガンでは打ち消しあっている。しかし、適切な化学結合をさせることで、打ち消しをなくし、マンガン本来の強磁性を発現させる事ができる」という発想も、妥当だろう。

  • マンガンアルミ磁石

これを発展させたようなもので、「マンガンアルミ磁石」というのがある(1960年代に、フィリップス社などが実用化。日本では1970年代に松下電器などが実用化した)。

文献によっては、マンガンアルミ磁石はコバルトを微量に含んでいる、と記述するものもある。


  • 鉄と銅の合金

鉄 Fe は強磁性体である。銅 Cu は反磁性体である。鉄と銅の合金の磁性はどうなるか?

文献(日刊工業新聞社『金属材料基礎工学』、井形直弘 編著、1996年11月5日 初版第2冊)によると、鉄をわずか0.04%混ぜただけで銅合金は常磁性になると報告されている。

常磁性体と反磁性体[編集]

磁気てんびん (原理図)

強磁性体でない物質が、常磁性かそれとも反磁性であるかは、磁気てんびん をもちいて測定できる。


  • 希ガスと周辺の元素

ヘリウム、ネオンなど希ガスはすべて、反磁性体である。

(希ガスのことも一因となってかどうかは知らないが)、強磁性や常磁性には、価電子が磁力を打ち消しあってないことが条件である、・・・と考えられているようだ。(よく科学書では「強磁性と常磁性には、不対電子による電子スピンが必要」みたいな言い方をする。)

なお、フッ素分子も窒素分子も反磁性体である。

なので、べつに、フッ素は原子番号9であるが、べつに原子番号が奇数だからって、強磁性や常磁性にはならない。勘違いしないように。

  • 酸素と周辺の元素

さて、酸素分子は常磁性体である。

周期表ではC,N,O,Fと並んでるが、このなかで分子が常磁性体になる元素は酸素Oだけである。(炭素Cも反磁性体。)

このうち、2個の原子からなる分子をつくるのは、N,O,Fである。

常磁性であるか反磁性であるかに、その分子が2原子かどうかは、無関係なようだ。

  • 錯体

[Co(NH3)6]3+ は反磁性であることが知られている。

[CoF6]3- は常磁性であることが知られている。

このように、コバルトの錯体どうしでも、分子が違えば、磁性が違ってくる。

化学者ポーリングは、このコバルト錯体の磁性の違いの理由を、電子スピンの打ち消しあいの有無と考えた。

ポーリングによると [CoF6]3- は、電子スピンが打ち消しあっておらず、そのため常磁性が生じる、と説明している。

ポーリングによると [Co(NH3)6]3+ は、電子スピンが打ち消しあうため、反磁性が生じる、と説明している。

  • 酸素の電子スピン

酸素は常磁性であるので、化学者たちの考えでは、酸素分子は電子スピンが打ち消しあっていない、・・・と考えられている。

なお、高校で習う、結合してない価電子を黒丸の点で書き表わす表記では、酸素分子の電子スピンが打ち消しあってないという様子をうまく表現できないので、大学では、別の記法を用いることも多い。



ゼーマン効果[編集]

ゼーマン効果の模式図。磁場がない場合は縮退している軌道エネルギー(左)が、磁場がかかることで分裂する(右)。

「ゼーマン効果」という、ナトリウムの「D線」と言われるスペクトル線が、磁気をかけると3つに分裂する現象がある。

ゼーマン効果じたいは、1896年に発見されており、量子力学の発見(1920年ごろ)よりも古い。

また、ゼーマン効果は、シュレーディンガー方程式の結果から得られる、「主量子数」 n と「方位量子数」 l と「磁気量子数」 mlの概念を使うと、うまく説明できる。

そして、この「主量子数」 n と「方位量子数」 l と「磁気量子数」 mlなどの概念で、「s軌道」とか「p軌道」とかも説明できる。・・・とされている。

そもそもゼーマン効果が発見されたのは、量子力学よりも、ずっと前である。

しかも、このゼーマン効果には、ナトリウム以外の他の原子のスペクトルに磁気をおよぼした場合では例外もあり、その例外の事例が「異常ゼーマン効果」などとも言われている。


パウリの当てずっぽう[編集]

量子力学や量子化学の本を見ると、s軌道などの電子軌道の説明で、「ひとつの軌道には、スピンの異なる電子が、それぞれ一つしか入らない」などと言われ、人類最初にそう提案した物理学者パウリの名前をとって、「パウリの排他原理」とも言われる。

しかし、電子のスピンが実験的に確認されたとされる時期は、じつは、パウリが排他原理を提案した1925年から後の、何十年もあとの、1963年の出来事である。(※ 参考文献: 原島鮮『初等量子力学』、裳華房、)(参考文献によると、電子を磁場でとらえて、らせん運動させる方法で、物理学者Craneが電子のスピンを測定したとされる。)ディラック方程式が発見されたのが1928年なので、1925年当時のパウリによるスピンの予想には、方程式的な根拠なんてなく、確実に当てずっぽうであろう。

1922年にシュテルン=ゲルラッハの実験で、銀の原子のスピン(※ 不均一な磁場のもと、銀の蒸気からなる単原子線が、上下の二極に分裂する実験結果) は実験的に確認されていたが、しかし、電子のスピンはまだ実験では確認されてなかった。

要するに、パウリは、1925年の時点では、単に推測を言っただけである。パウリの提案以前から、初等的な化学などで、とっくの昔から、電子が2つで電子対になることが知られていた(読者が高校時代に高校化学の入門で習ったのと同様に)。

単にパウリは、当時、他の物理学者たちの間で電子「スピン」の理論が流行していたので、しぶしぶパウリはスピンを認めざるをえず、その電子「スピン」とやらの性質について、初等化学の電子対や孤立電子などの用語を、「スピン」という新語で言い換えただけである。(パウリは当時、スピンの理論を認めるのに、あまり乗り気でなかったと言われる。また、湯川秀樹の「中間子」理論にも、パウリはあまり乗り気出なかったといわれる。)


それが、結果的には、ディラックの方程式には矛盾しなかっただけのことにすぎない。


物理学の研究・論文は、けっこう仮説が多い。なのに、1925年以降の物理学の学術書や教科書には、あたかも完璧な事実かのごとく、電子のスピンにもとづく電子軌道の説明が書かれていたりして、要するに、戦前から世界各国で、ロクでもない当てずっぽうの物理学教育が行われていたのであろう。