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高校化学 アルカリ金属

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金属と水の反応モデル

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以降の無機化学の単元において、金属と水溶液との反応を考える上では、以下のようなモデルを用いる。※実測はされていない

ある金属元素Mが水中にある。このとき、周りの水と反応することにより金属の表面が水酸化物M(OX)xで覆われる。(皮膜形成)

この水酸化物M(OX)xが水に可溶ならば、水酸化物皮膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し、水と反応して水酸化物M(OH)xが生成する。そしてまた水酸化物被膜が全て水に溶けて金属の表面が露出し・・・と反応を繰り返し、最終的には金属が全て水酸化物となって水に溶ける。

水に難溶ならば、水酸化物皮膜が生成した時点で反応が止まり、その金属は水と反応しない。

なお、イオン化傾向がMg以下の金属の水酸化物は水に難溶である。


単体

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リチウムの保存.
リチウムは密度が灯油よりも軽いため、リチウムは灯油に浮く。
切断したカリウム

水素を除く1族元素のリチウム Li, ナトリウム Na, カリウム K, ルビジウム Rb, セシウム Cs, フランシウム Fr のことをアルカリ金属という。

アルカリ金属の単体は、いずれも銀白色の固体である。融点が低くやわらかい金属で、カッターで簡単に切断することができる。

アルカリ金属の原子は価電子を1個もち、1価の陽イオンになりやすい。

このため、アルカリ金属の原子は酸化されやすいので、天然には単体の状態では存在せず、塩として存在する。

単体を得るには、化合物の融解塩電解を行う。加熱して融解させた化合物に炭素電極を入れ、電気分解を行うと、陰極側に金属の単体が析出する。

X+ + e- → X↓ (XはLi、Na、Kなど)

アルカリ金属は反応性が高く、イオン化傾向が大きいので還元性も高い。アルカリ金属は常温で空気中の酸素や水、塩素と簡単に反応する。特に水とは、アルカリ金属は常温で水と反応して水素を発生しながら激しく反応し、反応後の溶液は強塩基性の水溶液になる。

4X + O2 → 2X2O
2X + 2H2O → 2XOH + H2↑ (XはLi、Na、Kなど)
2X + Cl2 → 2XCl

そのため、アルカリ金属の単体を保存する際には、空気中の酸素や水との反応をふせぐために石油中(灯油)に保存する。リチウムは石油よりも軽いため、石油に浮く。また、単体は素手で触れず、必ずピンセットなどを用いて扱う。

アルカリ金属の単体の性質
元素名 元素記号 融点(℃) 沸点(℃) 密度(g/cm3 炎色反応
リチウム Li 180 1347 0.53
ナトリウム Na 98 883 0.97
カリウム K 64 774 0.86 赤紫
ルビジウム Rb 39 688 1.53
セシウム Cs 28 678 1.87

イオンは炎色反応を示し、白金線にイオン水溶液をつけガスバーナーの炎に入れると、リチウムイオンでは赤色に、ナトリウムイオンでは黄色に、カリウムでは赤紫色にそれぞれ炎が色づく。

リチウムの炎色反応 ナトリウムの炎色反応 カリウムの炎色反応
Li Na K

アルカリ金属の化合物

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アルカリ金属は様々な化合物を作る。この章ではアルカリ金属の中でも、特にナトリウムの化合物について学ぶ。

水酸化物

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アルカリ金属の単体が水と反応すると水酸化物となる。たとえばリチウムは水酸化リチウム(LiOH)に、ナトリウムは水酸化ナトリウム(NaOH)に、カリウムは水酸化カリウム(KOH)になる。

水酸化ナトリウムの工業的な製法については、塩化ナトリウム NaCl 水溶液の電気分解によって製造される。

常温では白色の固体であり、水によく溶けて、いずれの水溶液も強塩基性を示す。このため皮膚を冒す性質があり、取り扱いに注意する。

水酸化ナトリウム

水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの固体は吸湿性があり、空気中に放置すると水蒸気を吸収してその水に溶けてしまう。この現象を潮解(ちょうかい、deliquescenece)という。

水溶液も吸湿性があるため、長時間放置すると溶液の濃度が変化する。したがって精密さを要する実験では、直前に水溶液を調整するようにするとともに、中和滴定などにより正確な濃度を測る必要がある。

また水酸化ナトリウムは水分を吸収するだけでなく、空気中の二酸化炭素も吸収して、炭酸塩の炭酸ナトリウム(Na2CO3)を生じる。

2NaOH + CO2 → Na2CO3 + H2O

この性質から、二酸化炭素の吸収剤として用いられることがある。

水酸化ナトリウムの産業上の用途は、製紙業でのパルプの製造、石油の精製、繊維の製造、セッケンの製造、などで用いられている。 水酸化ナトリウムは苛性ソーダとも呼ばれる。

炭酸塩・炭酸水素塩

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炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)と炭酸ナトリウム(Na2CO3)は共に白色の粉末である。工業的にはアンモニアソーダ法により製造される。

アンモニアソーダ法(ソルベー法)

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アンモニアソーダ法は炭酸ナトリウムの工業的製法である。

  1. 塩化ナトリウムの飽和水溶液にアンモニアと二酸化炭素を通す。
  2. 炭酸水素ナトリウムを加熱する。
アンモニアソーダ法の反応経路図

反応で生じた生成物は次のように再利用できる。

  1. 炭酸カルシウムを加熱して酸化カルシウムと二酸化炭素を得る。
  2. 1.で得た酸化カルシウムに水をくわえ、水酸化カルシウムとする。
  3. 2.で得た水酸化カルシウムを1.で得た塩化アンモニウムと反応させ、塩化カルシウムとアンモニアを得る。このアンモニアは回収して1.の反応で再利用する。

アンモニアソーダ法は全体としては、 という反応式で表される。

原料がCaCO3(石灰岩、秩父などで大量に採れる)とNaCl(食塩、買えなくても海水から作れる)とNH3(アンモニア、ハーバー・ボッシュ法で大量生産できる)のみと非常に安価なので、アンモニアソーダ法は「安く大量生産を目指す」工業的製法としては最も理想形に近いと言われている。


炭酸ナトリウム

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炭酸水素ナトリウムは、熱分解して炭酸ナトリウム(sodium carbonate)となる。炭酸ナトリウムは白色の粉末で、水に溶け、水溶液は塩基性を示す。

炭酸ナトリウムは加熱しても、分解しない。

炭酸ナトリウムは弱酸と強塩基の塩であり、水に溶けると加水分解して塩基性を示す。

Na2CO3 → 2Na+ + CO32-
CO32- + H2O ⇄ HCO3- + OH-

炭酸ナトリウム水溶液を冷却すると十水和物 Na2CO3・10H2O の無色透明の結晶が得られる。この Na2CO3・10H2O の結晶は空気中に放置すると水和水の大部分を失って、白色粉末の一水和物 Na2CO3・H2O となる。この現象は風解(ふうかい、efflorescence)と呼ばれる。


炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムは、ともに強酸と反応して二酸化炭素を生じる。(弱酸遊離反応)

Na2CO3 + 2H2SO4 → Na2SO4 + H2O + CO2

炭酸ナトリウムは、ガラスや石鹸の製造などに用いられる。※


※ガラスの原料は二酸化珪素SiO2であるが、これを珪酸ナトリウムNa2SiO3にする反応において、水酸化ナトリウムよりも炭酸ナトリウムの方がよく用いられる。という反応とという反応を比べた時、左の反応は反応性が高いものの、生成されたH2Oが反応の系内に残るので逆反応が起こり、平衡状態となって反応が見かけ上止まってしまう。それに対し、右の反応は生成されたCO2が反応の系外に脱出するので、ルシャトリエの原理により平衡が正反応の向きに偏って反応がより一層進行する。そのため、通常は炭酸ナトリウムが用いられる。


炭酸水素ナトリウム

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炭酸水素ナトリウム NaHCO3 は白色粉末で、水に少し溶け、水溶液は加水分解により弱塩基性を示す。炭酸水素ナトリウムは重曹(じゅうそう)ともいう。(重曹は「重炭酸曹達」の略である。「重炭酸」は「炭酸水素」の別名であり、「曹達(ソーダ)」はナトリウムの和名である。)


炭酸水素ナトリウムを熱すると、分解して二酸化炭素を発生する。

2NaH2CO3 → Na2CO3 + H2O + CO2

(上記の反応は、ソルベー法での炭酸水素ナトリウムの分解反応と同じ。)

炭酸水素ナトリウムの用途は、発泡剤やベーキングパウダー(ふくらし粉)、入浴剤の発泡剤成分、などとして用いられている。

また、強酸で、二酸化炭素を発生する。

NaHCO3 + HCl → NaCl + H2O + CO2


塩化物

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塩化ナトリウムの結晶

水酸化ナトリウムに塩酸を加えると、中和反応を起こし塩化ナトリウム(NaCl)を生じる。

NaOH + HCl → NaCl + H2O

塩化ナトリウムは天然では岩塩に豊富に含まれており、食塩の主成分としても有名である。工業的には海水を濃縮することにより得られる。

塩化ナトリウムを融解塩電解すると単体のナトリウムが得られる。

2NaCl → 2Na↓ + Cl2

塩化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極から塩素が発生し、陰極から水素が発生する。このとき陰極側では水の電気分解反応が起こっており、水酸化物イオンが生じている。

2H2O → H2 + 2OH-

溶液中にはナトリウムイオンが残るため、陰極付近では水酸化ナトリウムの水溶液が得られる。この原理は工業的な水酸化ナトリウムおよび塩素・水素の製造法として応用されており、陽イオン交換膜を用いることからイオン交換膜法と呼ばれる。