高校受験ガイド/私立志望の最低限の注意事項

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

私立高校の出願とネットと合格後[編集]

出願[編集]

私立高校に出願する場合、2020年代の現代では、インターネットでしか出願できない場合もあります。

家庭にネット環境が無い場合、余裕をもって事前にネット環境を整えましょう。

なお、決してネットだけでは出願は終わらず、ネット手続きの上で、郵送で、調査書など関係書類の一式を送る必要があります。このため、決して中学校に相談なく勝手に出願することはできません(中学に相談なしだと、調査書が無いので)。

一般に、推薦入試でなくとも、一般入試でも調査書を要求します。なお、受験書類の郵送は、書留(かきとめ)である必要があります。

おそらく教員が願書の書類を転記する事務作業が面倒なのでしょう。ともかく、私立高校の受験生の家庭はネット出願をする必要があります。


公立高校(余談)

逆に、公立高校などでは、郵送しか原則的には認めてない、といった高校もあります。中学側で同高校を受験する他生徒とまとめて出願、といった形式を原則とする高校もあります。おそらく、この際、中学側から高校にインターネットで生徒データが転送されていると思われます。

私立高校の受験料の振込み

私立受験の場合、受験料(検定料ともいう)の振込については、コンビニ振込みかクレジットカードか一部のスマホ電子マネーしか認めてない高校も多くあります。つまり、メガバンクですら一般の銀行振り込みを認めてない高校も多くあります(住友銀行とか三菱UFJ銀行とか みずほ銀行すら認めてない場合もある)。郵便局(ゆうちょ銀行)でも受験料を振り込みできない、ということを意味します。

なお、銀行振り込み自体は後日の入学金や学費などの振込で必要になります。

もはや、コンビニATMの無かった2000年以前とは、違います。

また、高校窓口での受験料納付を認めてない私立高校も多くあります。もし高校で納付の受付けを認めてしまうと、高校側の事務が大変です。

受験票の印刷[編集]

また、受験票の印刷は、自分で行うことになります。家にプリンタが無くてもコンビニなどで印刷できますが、もしかしたらスマホおよび専用アプリが必要かもしれません。

受験票は、1枚あれば受験可能ですが、念のため、紛失(ふんしつ)や汚損(おそん)などのアクシデントを想定して、2~3枚ほど印刷しておくと安全でしょう。(20世紀生まれの親世代の常識(受験票が高校から郵送されてきた時代)とは違い、令和では受験票は2枚以上あっても構わない。なお、大学受験も同様、受験票は多めでも構わない。)

何らかのネット手続きでスマホ専用アプリが必要な場合があるので、ガラホだのガダスマだのといった機能制限ケータイでは上手く手続きできない場合が考えられます。なので、普通にフル機能のスマホを持っておくのが無難です。家庭に一人はスマホを持っておくようにすることになるかと思います。


写真は、写真屋で撮影したもらった画像データを使うのが無難でしょう。電子出願のサイトの説明図でも、学生がカメラマンに撮影してもらっています[1]

無背景とか焦点のよくあった写真を家庭で用意するのは困難ですし、ライティングなどを家庭で行うのも難しいでしょう。

私立高校の合格後[編集]

私立高校受験の場合、合格発表から入学金の締め切りまでの期間が数日程度と短い場合が多いので、あらかじめ合格発表後の流れを知っておく必要と、お金を十分に用意しておく必要があります。


web合格発表

私立高校の合格発表も、多くはweb上での発表で、一般に高校ホームページでの発表です。後日、速達で合格通知が送られてくる高校もありますが(送らない高校もある)、先にwebで合格発表があります。

なお、合格通知を送る高校の場合は、後述する合格者登校日などの証明書として合格通知を使う場合があるので、たとえweb発表で合格が分かっても、合格通知を捨てないでください。


短い入学手続き期間の場合もある

有名大の付属校などの人気校は、合格発表から入学金までの手続きの期間がとても短い場合もあり(たった2~3日の場合もあります)、そのため合格通知よりも先に入学金などを納付しなければいけない場合もあるので、あらかじめ準備しておきましょう。

また、付属高に限らず、一般の私立進学校でも単願の合格者も同様、手続きの期間が短く、期間がたった2~3日の場合があります。


一度納入されたお金は、たとえ手続きミスであっても返還されません。たとえば、合格してないのに間違えて納入しても、返還されないのを覚悟すべきです。

さすがに私学の学費100万円以上を2~3日で納入させるのは残酷なので、30万円くらいの入学金だけだったりしますが、とにかく、入学金を合格発表後の数日中に銀行で振り込めるようにする必要があります。なお、入学後の4~5月などに残りの70万円以上を払う必要があります。


合格者登校日

なお、単願で合格した場合、普通は2月ごろの入学金締め切りの数日後に登校日(保護者同伴)があり、これを合格者登校日と言います。その登校日で、制服を採寸したりします。単願推薦入試合格者などと一緒の登校日かもしれません(高校にも寄る)。

もし制服採寸のお金が事前の入学金に含まれていない高校の場合、採寸日から数日のうちに銀行振込する必要があります。これもスケジュールがかなり厳しいので、あらかじめ準備しておいてください。

また、私立高校によっては、合格者登校日に無断で欠席すると、合格が取り消される場合もあります。

なので、合格者登校日の日にちは、他校の併願を入れられません。

受験日の早い1月ごろ受験をしている有名校の合格者登校日は、他の一般の私立高校の受験シーズンの2月に重なっていたりもしますので、注意してください。


合格者登校日の日程などの連絡は、高校によっては、中学経由で知らされる場合もあります。なので、きちんと中学の授業にも出席し続けてください。


合格者登校日が何度かある場合、一度目の登校日で「春休みの課題」を渡されて、二度目の登校日で課題提出、なんていう場合もあります。

※ 『春休みの課題』については、『高校受験ガイド/高校合格後に向けて』で説明する。

合格者登校日のうちに3教科のテスト(国数英のテスト)があることも、私立進学校あるあるです。

新学期でなく登校日のうちにさっさと新クラス紹介とかある程度は進めておくという、私学運営の方法もあります。新学期は始業式などの最低限の挨拶と、クラスでの自己紹介が終わったら、さっさと授業を始めるのが私立進学校あるあるです。

いろいろ終わったら、公立も私立も、合格者登校日の最後は部活の見学とかが定番です。


春休みの課題

また、合格者登校日のときに、宿題などが課される場合があります。たとえば4月の入学までに高校レベルの英単語の動詞の過去形と過去分詞などを覚えさせられる宿題があるかもしれません。なので、合格しても遊べません。春休み中にテストがあったりします。

なお、余談ですが、公立高校でも、たとえば埼玉県立の進学校である浦和(うらわ)高校では(公立入試の合格発表後の)春休みに数学Iの予習があります[2]

「春休みの課題」というのが、ある程度以上の進学校では存在します[3]。進学校に進学するというのは、そういう意味ですので、覚悟しときましょう。

数学IAの教科書の冒頭は、中学で習った因数分解(2次式)の発展系で、3次式の因数分解ですが、そういうのは独学で可能なはずですので(※wiki注: 塾でも志望校合格者向けによく春休み中に3次式の因数分解など講義されます)、「春休みの課題」に出されたりします[4]

進学校でない場合、課題の内容が、中学の復習です。復習用の問題集があり(「ブリッジ数学」とか「高校国語へのステップ-高校国語のための準備と練習」など)、それを春休み中の宿題に出されたりします。なお、「ブリッジ数学」や「高校〇〇へのステップ」などは学校専売品なので、生徒・保護者などの一般消費者は買えないです。


進学校での春休みの課題の典型例は、

3次式までの因数分解、および2変数2次式の因数分解(※ 2次式のほうは高校受験の難関校の範囲)。
英単語などの書き取り暗記。

であり、これは小テストが春休み中または4月に行われるのが私学の進学校では典型です。

これとは別に、春休みから

課題図書の読書感想文。

があるのも典型です。読書感想文は進学校でなくともあります。

読書感想文のほうは、提出日が4月の始業式よりも何週間かあとになる場合もありますが、(なぜなら文字数や難度によっては読むのに時間が掛かる事もありうるので)、ともかく読書感想文も宿題の典型例です。

進学校だと、上記のうち2つ以上の、春休み中の宿題とテストが出る場合もあります(たとえば 英単語+読書感想文 の宿題)。


さて、私学の話に戻ります。保護者連絡先なども、最初の登校日の際に確認されるでしょう。あらかじめ、合格通知とともに送られてくる書類などに連絡先や家族構成などを書いておく事になるかと思います。


なお、合格者登校日の際、1年の芸術科目の履修科目なども決めることになるかもしれません。なぜなら、学校で購入する教材に関わってくるからです。その他、選択科目が1年次にある場合も同様でしょう。


1回目の1~2月の合格者登校日とは別に、3月ごろ、2回目の合格者登校日がある場合もあります。

3月の登校日では、宿題の点検のための小テストとか、健康診断とか、年度明けの4月の学業を円滑に始められるための準備をする場合もあります。

高校によっては、3月の登校日のほうは「新入生オリエンテーション」とか別の名称で言い分けている場合もあります。要するに、オリエンテーションも登校日ですので、登校しましょう。


なお、公立高校でも、3月に合格者登校日があります。


病気の既往症(きおうしょう)なども(たとえば、結核(けっかく)、喘息(ぜんそく)、ネフローゼ症候群とか)、このあたりの時期に、高校に報告することになります。


高校から渡される「入学のしおり」に、検定教科書・参考書以外に、必要ならば購入しておいてほしい教材(たとえば英和辞典の買い替え)などが書かれている場合があります。該当者は、辞書などを買い替えることになります。

高校によっては「入学のしおり」という呼び名ではなく、「合格者の手引」とか「入学の手引」などの呼び名の場合もあります。


入学金以外の学費の振込

振込み口座が高校によって規定されている場合もあります。たとえば郵便局に限定とか。高校側から配布される「入学のしおり」とかに口座が書いてある場合もあります。

なお、PTA会費とか卒業後の同窓会費とか、最初から学費に組み込まれているのが私立あるあるです。いちいち徴収(ちょうしゅう)の手間が面倒なので。

年齢と高校受験[編集]

私立高校の受験には年齢制限がある場合も[編集]

私立高校の受験には、年齢制限がある場合があります。

とくに私立の進学校や大学付属校などの場合、浪人(高校受験浪人)は、その私立高校の受験を、高校側から認められない場合が私立では多いです。

私立校の進学校や大学付属校でも、たまに、年齢制限で16歳・17歳くらいまでの猶予が与えられてる場合があるのは、病気や天変地異などの特別な理由で進級・進学が遅れてしまう人がいるので、そういう特別な事情のある人のための特例措置です。

単なる浪人生は、こういった特例の条件には当てはまらないので、浪人生は私立の進学校・付属校への受験が認められないか、たとえ受験が認められたとしても高校浪人は面接試験での印象が良くないでしょう。


公立高校では高校受験の年齢制限はありませんが、将来の就職で、新卒時の年齢が高いと不利になる場合が多いです。

なので、もし第一志望の高校に落ちても、浪人はせずに、さっさと合格した高校に進学するのが良いでしょう。

私立志望の場合[編集]

英検の加点など[編集]

大学受験の一般入試は、基本的に試験の得点だけで合否が決まります。(あるいは、英検2級以上とかで加点とか。数検や漢検も同様。)

しかし、私立高校の入試は、一般入試であっても、試験の得点と英検3級・淳2級やTOEICハイスコアなどの加点も、加味される場合があります。

ただし、現代では、これは事前に、中学側の教師などに保有資格を報告しておいて調査書のさいに一緒に保有資格も証明してもらうとか、個別相談会に英検の合格証(コピー不可)を持っていくとか[5]、出願時に英検の証明書のコピーを同封するとか、とにかく事前に資格などを高校に証明する必要があります。どのような手続きかをするかは高校によるので、募集要項や春ごろの説明会などで事前に確認してください。

とりあえず、中学担任には、保有資格・検定をすべて報告するのが良いでしょう。また、検定の合格証は、大切に保管する必要があります。高校によっては、検定の合格証が加点措置に必要な場合があるからです。なので合格証はケースなどに入れて保管しましょう。もしケースが無いなら、文房具屋で購入しましょう。

個別相談会が11月や12月など入試シーズンの前にあるのは、そういう意味も兼ねています。


個別相談会とは[編集]

「個別相談会」は、自己アピールの場でもある高校もあります。英検などの加点を個別相談会で行っている高校もあり、また、そのほかの自己アピールを見ている高校もあります[6]

ただし、高校によっては、出願の際の郵送で英検の証明書のコピーを送る場合もあります。相談会での資格の加点措置は行ってない場合もあります。高校によりけりなので、募集要項で確認してください。

受験日[編集]

一般に、私立高校の入試日は、公立よりも早いです。

高校入試では私立高校などで試験日が早い高校もあり(12月や1月上旬など)、公立中学ではまだ習ってない問題でも出題されます。なので、遅くとも3年の夏の、過去問を解き始めるころからは、予習をしはじめないといけません[7]


そもそも高校入試までの時間なのですが、公立高校入試ですら、入試までは1年間(12か月)はありません。公立高校の入試については、一般に2月下旬にあるので、3年に進級した4月から入試までは公立入試まで9か月ちょっとです。

さらに、私立は多くの高校では公立よりも早く、冬休み明けの2月上旬に入試の場合は入試まで9か月、場合によっては冬休み前の12月に入試なら7か月、しか時間のない私立高校もあります。

なので、私立と公立の時間の差は、半月~2.5か月ていどの差です。

この上、さらに、英語・数学などでは高校1年ていどの範囲が偏差値60台以上の私立高校の入試では出てきます。

よって、私立志望者は、少なくとも半月~2.5か月ほど早く、国数英の3教科だけでも中学範囲を終わらせなければいけません。

時期的には、12月になるまでに、とりあえず一般的なレベルの偏差値50程度の国数英の高校入試対策は終わらせる必要があります。

だから推薦狙いの人以外、私立志望の人は、中学側に何を言われようが、先取り学習をして2~3か月、先に終わらせる必要があります。


高校受験では一般入試でも試験以外も見られる[編集]

極端に欠席日数などが多いと、高校受験では面接の際、そう言ったことを高校側の面接官に質問されます。

中学側から送られてくる書類などをもとに、そう言った情報を高校側は把握できます。

なので、そう言った事も面接などの加点・減点の事項に入るのです。


べつに中学側から送られてくる書類だけに限りません。


ほか、親族が卒業生・在校生だと、加点という高校・大学も普通にあります。普通に募集要項などで公言されています。


このように、試験以外も見られる一方、配点の比率が部外者には分からないので、いろいろなウワサ話が生まれます。

たとえば「確約」(かくやく)だと言った私立高校受験システムの、うわさ話があります。確約とは、一般入試なのに、事前に合格が決まっている、というウワサです。

しかし、そもそも推薦入試というシステムがありますので、普通の私立高校なら中学からの「推薦をもらってね」となるでしょうか。いちいち、「確約」という不明なシステムを利用する必要はありません。

あるいは、地元の業者テストやその他の模試などの公開テストで高得点を取ると加点される、と言ったウワサ話もあります。このことを「確約」と言っている人もいます。しかし、仮にそれがあったとしても、せいぜい英検とか漢検とかの加点と同程度でしょう。当然ですが、業者テストでどんなに成績が良かろうが、実際の一般入試での成績が悪ければ落ちます。

参考文献[編集]

書籍[編集]

  • 佐藤優 編著『埼玉県立浦和高校論文集』、K&Kプレス、2019年12月15日 第1刷 発行
  • 葉一(はいち) 著『自宅学習の教科書』、2021年3月16日 8刷発行

脚注[編集]

  1. ^ 顔写真登録ガイド
  2. ^ 佐藤優 編著『埼玉県立浦和高校論文集』、K&Kプレス、2019年12月15日 第1刷 発行、P290
  3. ^ 佐藤優 編著『埼玉県立浦和高校論文集』、K&Kプレス、2019年12月15日 第1刷 発行、P290
  4. ^ 塩浜進学教室 著『高校時代の思い出25 進学校は始業式から授業あり』、2023年12月10日ごろ 2023年12月11日に閲覧.
  5. ^ 西村創『私立高校の個別相談の服装や持ち物は?併願優遇を手に入れる方法』2023年08月12日
  6. ^ 西村創『私立高校の個別相談の服装や持ち物は?併願優遇を手に入れる方法』2023年08月12日
  7. ^ 葉一(はいち) 著『自宅学習の教科書』、2021年3月16日 8刷発行、P.92