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高校化学 セラミックス

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
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ガラス、セメント、陶磁器などのように、無機物質に加熱処理などしたものを、セラミックスという。

また、このようなセラミック製品を製造する産業を、セラミック産業または窯業(ようぎょう)という。 窯は「かま」の事である。

原材料にケイ酸塩化合物を用いることが多いことから、ケイ酸塩工業ともいう。

共通する性質

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セラミックスには多くの種類があるが、多くのセラミックス材料に共通する性質として、

・ 力をくわえても変形しづらい。延性・展性は無い
・ 絶縁体である
・ 耐熱性に優れる。しかし、急激な温度変化に対しては弱い
・ 錆びない
がある。
なお、硬いという長所は、加工が難しいという短所でもある。

セメント

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水を加えると硬化するものをセメントという。建築材料として用いられるポルトランドセメントは、石灰石、粘土(SiO2, Al2O3など)、酸化鉄Fe2O3などを粉砕して混合したのち、1500 ℃で加熱したものに、少量の石膏(CaSO4・2H2O)を加えて粉砕したものである。製造のとき、石灰石が高熱で処理され、酸化カルシウム CaO になる。

砂利、砂、水をセメントで固めたものをコンクリートという。また、セメントに砂を混ぜたものは、モルタルという。

コンクリートで作られた消波ブロック

セメントやコンクリートには、カルシウム Ca が含まれている。 石膏は、硬化を遅らせて調節するために添加されている。

コンクリートは圧縮の力には強いが、引っ張りの力には弱いので、引っ張りに強い鉄筋を入れた鉄筋コンクリート(reinforced concrete, RC)として用いる。

コンクリートは、材料中の水酸化カルシウム Ca(OH)2 により、塩基性を示す。また、この塩基性により、内部の鉄筋が酸から保護される。空気中の酸性物質などにより、コンクリートはしだいに中性に中和されていき、そのため強度がしだいに低下していく。また、鉄筋を保護していたコンクリートが劣化すると、内部の鉄筋も酸に腐食されやすくなる。

ガラス

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ガラスはケイ酸塩を主成分として、ナトリウム Na、カリウム Kなどを含んでいる。

ステンドグラスには金属酸化物で着色されたガラスが使用されている。

ガラスの結晶構造は不規則であり、一定の融点を持たない。高温にすると、やわらかくなり水あめのように軟らかくなる。冷えると固まる。

ガラスの結晶のように、不規則なまま硬化している結晶構造を、アモルファス(非晶質)という。

ガラスは無色透明であるが、金属酸化物を加えることで着色することができる。

ほぼ二酸化ケイ素だけで出来ている高純度のガラスを、石英ガラスといい、紫外線の透過性が高く、また耐熱性も高いので、光学機器や耐熱ガラスや光ファイバーなどに利用されている。

しかし、石英ガラスは耐熱性が高すぎるため融点が高く、製造時の溶融加工が容易でないので、一般のガラス製品には添加物をくわえて融点を下げたソーダ石灰ガラスなどが用いられている。

窓ガラスなどに用いられる一般のガラスは、ソーダ石灰ガラスであり、SiO2のほか、Na2OとCaOを主成分としている。

このソーダ石灰ガラスの製法は、けい砂(主成分 SiO2)に、炭酸ナトリウム(Na2CO3)や石灰石を添加して作る。

ホウケイ酸ガラスの実験器具

ガラスを高温に熱していったとき、ガラスが軟らかくなり始める軟化点または軟化温度という。ソーダ石灰ガラスの軟化点は630 ℃だが、石英ガラスの軟化点は1650 ℃である。

理科実験などで用いるビーカーやフラスコなど、理科学器具に用いられるガラスの材質には、ホウケイ酸ガラスが用いられている。 ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂(主成分 B2O3)とケイ砂からなるガラスである。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、そのため耐熱性も高く、耐食性も高いことから、理科実験器具用のガラスとして用いられている。

酸化鉛 PbO を含んだ鉛ガラスは密度が大きく、また、X線など放射線の吸収能も大きいため、放射線遮蔽窓として用いられる。 また、鉛ガラスは屈折率が大きいため、光学レンズとしても用いられる。

陶磁器

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粘土や砂、岩石の粉などを焼き固めて、陶磁器がつくられる。

清の磁器

陶器は約1000℃で焼き固めてて作られる。磁器は700~900℃で素焼き(釉薬をかけずに焼く)したのち、釉薬を塗り、1100℃~1500℃で本焼きをする。磁器は硬く、白色で吸水性がない。叩くと金属音を発する。

伊万里の磁器(色絵獅子鳳凰文有蓋大壺(いろえししほうおうもんゆうがいたいこ ) 東京国立博物館蔵)

また、土器は600℃から900℃で素焼きした陶磁器である。

縄文時代の土器

焼き固めとは、高温にすることで、粒子の表面が部分的に融け、そのあと冷ましていくことで、粒子どうしが接着する。

これらの焼き物の表面には、焼く前に、石英などの粉末からなる釉薬(ゆうやく)(うわぐすり)が表面に塗られる。焼く時に、釉薬が融け、ガラスになる。表面がガラスで保護されることで、吸水性がなくなる。

アルミナ

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Al2O3は硬くて丈夫なので、さまざまな材料に用いられる。

研磨剤にも、アルミナは用いられている。

  • 電気工業への応用

アルミナは絶縁性も高く、そのためICチップなどの絶縁材にも用いられる[1]。 アルミナは熱伝導性も比較的よく、そのため電気回路で生じたジュール熱を外部に放散しやすいので、温度上昇による誤動作を防ぎやすい。

  • 医療への応用

また、医療用の人工骨などにアルミナ材料の人工骨を用いてても、拒否反応などを起こさず、生体適合性が良い。なお、自然には人体にアルミナは接着しないので、ボルトなどで人工的に人工骨を既存の骨に固定する必要がる。

ニューセラミックス

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  • 酸化ジルコニウム

酸化ジルコニウム ZrO2 およびそれに添加物を加えた材料では、結晶中に自然に生じた欠陥が、まるでシリコン半導体でいう導電性を高めるための添加物と似た役割を生じて、酸化ジルコニウム中の欠陥が酸化ジルコニウムの導電性に影響を与える。その結果、酸化ジルコニウムは、空気中の酸素濃度により導電性が変わる。このため、酸化ジルコニウムは酸素センサとして用いられる。

  • 酸化チタン

酸化チタン TiO2 は、光が当たると、有機物を分解する。この有機物の分解作用のため、光の当たった酸化チタンは、殺菌や消臭などの効果をもつ。酸化チタンそのものは減らずに残り続けるので、触媒的に働くことから、このような光のあたった酸化チタンによる分解作用が、光触媒と呼ばれる。

この分解のエネルギー源は、酸化チタンが紫外線を吸収し、そのエネルギーによって酸化チタンの酸化力が高まり、そして有機物を分解する。

さて太陽電池としても、酸化チタンは利用されている。酸化チタンそのものは紫外線しか吸収しないため効率が低いため、色素を添加して、色素に可視光を吸収をさせて、そのエネルギーを酸化チタンが利用できるように工夫した太陽電池が開発されており、色素増感型太陽電池と言われている。


また、色素と光によってエネルギーを得る仕組みが、植物の光合成の仕組みに似ていることから、生物学的にも興味を持たれている。

この他、酸化チタンは白色であり、人体に無害なので、化粧などの白色顔料としても用いられている。

このほか、超親水性という性質があり、水に濡れても水滴にならず、水が全体に広がるので、自動車のフロントガラスなどの添加剤に応用されている。

  • 酸化スズ SnO2

酸化スズ SnO2 では、表面に酸素を吸着する性質がある。そして、プロパンガスや一酸化炭素などにさらされると、吸着された酸素が燃焼して、もとの酸化スズに戻る。この吸着と酸素の離脱のさい、導電性が変わるため、プロパンガスなど可燃性ガス濃度を測るセンサーとして用いられる。

  • セラミック製コンデンサー

そもそもコンデンサーには、電気を通さない性質が求められる。つまりコンデンサーの材料は、絶縁物質であるべきである。そもそも、コンデンサーは、誘電分極(ゆうでん ぶんきょく)を利用した素子だから。もし、金属のように電気を通してしまうと、そもそもコンデンサーとしての役割を持たない。

セラミックは電気を通さないため、コンデンサーとして適切であり、じっさいにコンデンサーとしてセラミック材料は利用されている。

なお、セラミックは、絶縁材料としても、活用される。

コンデンサー材料としては、チタン酸バリウム BaTiO3 などがある。

  • 圧電性セラミックス

チタン酸ジルコン酸鉛 PbTiO3 や チタン酸バリウム BaTiO3 などに圧力をくわえると、電圧が発生する。これを利用して、圧力センサーなどに用いる。なお、チタン酸バリウムは、コンデンサー材料としても用いられている。このように、圧電の仕組みと、コンデンサーの誘電分極の仕組みとは、関連性がある。

なお、このような圧電性の材料に交流電圧をくわえると、振動をすることから、音波や振動の発生源としても用いられる。さらに、振動の共振周波数(その物体が振動しやすい周波数)が、その振動体に加えられた圧力や荷重などの外部の力によって変化することから、圧力センサーなどにも圧電材料が応用されている。

  • 生体セラミックス

ハイドロキシアパタイトは、骨の主成分でもある。そのため、ハイドロキシアパタイトでつくった人工骨は、もともとの骨に接着しやすく、拒否反応なども起こりにくいので、医療用の人工骨などに利用される。なお、拒否反応などが無く、生体に接着しやすい性質を、生体親和性という。

  • 炭化チタンTiC、炭化ホウ素B4C

炭化物のセラミックスの中には、硬度がかなり高く、また適度に靭性もあり、丈夫なものがある。このため、炭化チタン TiC などは切削工具などに用いられる。炭化ケイ素や窒化ケイ素なども、耐熱性が高い。

自動車エンジンやガスタービンなどに、これらの耐熱セラミックスが用いられる。

半導体およびセラミックの温度-電気特性

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半導体や、いくつかのセラミックスには、温度の上昇にともなって、電気抵抗が下がるものがある。

なお、金属では、温度が上がると、電気抵抗が上がる。

半導体やセラミックスの、このような、温度上昇にともなって電気抵抗が下がる特性が実用化されており、電子機器での温度変化時の電圧など出力の安定化のための部品に利用したり、あるいは温度センサなどに利用されたりしている。

  1. ^ 『セラミック材料』、工業高校教科書、文部科学省