高等学校化学I/脂肪族化合物/セッケン

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アルコールとエーテル アルデヒドとケトン カルボン酸とエステル 油脂とセッケン
脂肪族化合物 官能基 アルコール エーテル アルデヒド ケトン カルボン酸 エステル 油脂 セッケン

セッケン[編集]

油脂は脂肪酸とグリセリンのエステルであった。したがって、油脂に水酸化ナトリウム水溶液を加え加熱するとけん化して、高級脂肪酸のナトリウム塩を生じる。この高級脂肪酸の塩をセッケンという。脂肪酸は弱酸であり、水酸化ナトリウムは強塩基であるから、これらの塩であるセッケンの水溶液は弱塩基性を示す。

セッケンの反応式.svg

セッケン分子は、水に溶けにくく油となじみやすい疎水性の炭化水素基と、水に溶けやすい親水性のイオン基からなる。

セッケン分子の構造
ミセル

このセッケン分子は疎水部を内側に、親水部を外側に向けて寄り集まった状態で集まって粒子(ミセル)を形成し、水に溶けている。水溶液中に油が存在すると、セッケン分子が油の周囲を取り囲み、疎水部は油となじみ、親水部は外側へ向いて、微粒子を形成し水溶液中へ分散し、水溶液は白濁する。この現象を乳化という。

乳化作用

この乳化作用により、油汚れを洗浄することができる。

また、セッケンのように、水と油の界面に配列する物質を界面活性剤(かいめんかっせいざい)あるいは乳化剤(にゅうかざい)という。

食品でも、マヨネーズの油と水をくっつける、卵黄のレシチンも乳化剤である。

なお、一般に、水と油の界面に配列する物質が、食べられない物質の場合に「界面活性剤」という場合が多い。いっぽう、食品などからつくった場合などで、食べられる場合には「乳化剤」という場合が多い。明確には決まっていない(検定教科書でも、とくに決められてはいない)。

界面活性剤の分類[編集]

陽イオン界面活性剤には、洗浄力は無く、柔軟剤などとして使われる。陽イオン界面活性剤による洗剤は、逆性セッケンとも言われる。

界面活性剤の分類
分類 構造 特徴 用途
陰イオン性
界面活性剤
硫酸アルキルナトリウム.svg 親水基が
陰イオン
台所用洗剤
シャンプー
洗濯用洗剤
陽イオン性
界面活性剤
アルキルトリメチルアンモニウム塩化物.svg 親水基が
陽イオン
柔軟剤
リンス
殺菌剤
両性
界面活性剤
Nアルキルベタイン.svg 親水基に
陰イオンと陽イオンの
両方をもつ
食器用洗剤
柔軟剤
リンス
シャンプー
非イオン
界面活性剤
ポリオキシエチレンアルキルエーテル
CH3-CH2-CH2-・・・-CH2-O(CH2CH2O)nH
親水基が電離しない 衣料用洗剤
乳化剤

セッケンは、陰イオン性界面活性剤である。

両性界面活性剤は、酸性溶液中では陽イオンになり、塩基性溶液中では陰イオンになる。

合成洗剤[編集]

しかし、セッケン分子はカルシウムイオンやマグネシウムイオンと反応して水に溶けにくい塩を生じる。そのため、イオンを多く含む硬水や海水中では洗浄力が落ちる。

このようなセッケンの短所を改良したアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム R-C6H4-SO3-Na+(略称:ABS)やアルキル酸ナトリウム R-SO3-Na+ (略称:AS)は、高級アルコールや石油などから人工的に合成される。

これらアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムやアルキル酸ナトリウムを合成洗剤(ごうせい せんざい、synthetic detergent)という。

  • ASの製法

ASの製法は、高級アルコールの1-ドデカノール C12H25-OH に濃硫酸 H2SO4 を作用させるとスルホン化されることで硫酸水素ドデシル C12H25-SO3H ができ、この硫酸水素ドデシルを水酸化ナトリウムで中和することで硫酸ドデシルナトリウム C12H25-SO3Na が得られる。


硫酸ドデシルナトリウムの合成式 :C12H25-OH → C12H25-SO3H → C12H25-SO3Na

  • ABSの製法

炭化水素基が結合したベンゼン(アルキルベンゼン)を濃硫酸とスルホン化すると、アルキルベンゼンスルホン酸が得られる。このアルキルベンゼンスルホン酸を水酸化ナトリウムで中和することでアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが得られる。

アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの合成式

合成洗剤の性質[編集]

セッケン水溶液は弱塩基性である。いっぽう、合成洗剤は強酸と強塩基の塩であるため、加水分解せず、よってアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの水溶液は中性である。また、合成洗剤は、硬水中でも持ち手も、不溶性の沈殿を作りにくい。

合成洗剤の分子は、疎水部と親水部からなり、乳化作用により油汚れを洗浄することができる。

洗濯用洗剤のビルダー[編集]

合成洗剤には、その洗剤としての働きを助けるため、界面活性剤以外にも、さまざまな成分が入っている。

ひとくちの合成洗剤といっても、台所用洗剤や洗濯用洗剤など、いろいろとあり、その種類によって、組成などの違う。

洗濯用洗剤では、合成洗剤の添加剤をビルダー(builder)という。


たとえば、洗浄力を落とすカルシウムイオンやマグネシウムイオンを取り除くため(合成洗剤はセッケンとは違い、これらのイオンがある硬水でも洗浄力を持つが、それでも、これらのイオンが無い軟水のほうが良い洗浄効果をもつ)、ゼオライト(アルミノケイ酸ナトリウム)などが入ってる。

なお、かつてリン酸塩がこれらのイオンを除くための添加剤として用いられていたが、排水が河川などの富栄養化をまねき水質汚染の原因となるため、現在はあまり用いられてない。日本では、1980年ごろから、合成洗剤での水の軟水化のための添加剤がリン酸塩からゼオライトに切り換えられた。

そのほか、タンパク質汚れを落とすための分解酵素プロテアーぜや、油汚れを落とすための脂肪分解酵素リパーぜなど、酵素が添加されていたりする。

また、一般にアルカリ性のほうが汚れが落ちやすいので、炭酸ナトリウムが添加剤として加えられる。なお、台所洗剤やシャンプーでは、アルカリが身体を痛めるため、このようなアルカリ性の物質は加えられない。