高等学校化学I/脂肪族化合物/油脂

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アルコールとエーテル アルデヒドとケトン カルボン酸とエステル 油脂とセッケン
脂肪族化合物 官能基 アルコール エーテル アルデヒド ケトン カルボン酸 エステル 油脂 セッケン

予備知識[編集]

カルボン酸の分類
分類 名称 化学式 融点(℃) 備考
飽和
モノカルボン酸
ギ酸 HCOOH 8 アリの体内で発見された
酢酸 CH3COOH 17 食酢の主成分
プロピオン酸 CH3CH2COOH ー21 乳製品によく含まれる
酪酸(らくさん) CH3CH2CH2COOH ー5 バターの成分
パルミチン酸 C15H31COOH 63 油脂に含まれる
ステアリン酸 C17H35COOH ー5 油脂に含まれる
不飽和
モノカルボン酸
メタクリル酸 CH2=C(CH3)COOH 16 合成樹脂の原料
オレイン酸 C17H33COOH 13 C,C間の二重結合が1個
リノール酸 C17H31COOH ー5 C,C間の二重結合が2個
リノレン酸 C17H29COOH ー11 C,C間の二重結合が3個
飽和
ジカルボン酸
シュウ酸 (COOH)2 182℃で
分解
還元性あり。
酸化還元滴定で使用。
カタバミに含まれる。
アジピン酸 アジピン酸 153 ナイロンの原料
不飽和
ジカルボン酸
マレイン酸 マレイン酸 133 幾何異性体。シス形。
フマル酸 フマル酸 300 幾何異性体。トランス型。
ヒドロキシ酸 乳酸
乳酸の不斉炭素原子
17 ヨーグルトなど
乳製品に多い。
酒石酸 酒石酸.. 170 ブドウの果実中にある。


「油脂」の定義は、あまり化学的に厳密ではない。よく用いられる定義は、「油脂は、グリセリン (C3H5)OHと脂肪酸とのエステルである」という定義である。しかし、高級脂肪酸とのエステルに限定する場合もある(啓林社の教科書)。

一般に、パルミチン酸などの脂肪酸を化学式に含むものを、「油脂」という場合が多い。


動植物の体内の「油」や「脂肪」といわれるものには、この組成(グリセリン (C3H5)OHと脂肪酸とのエステル)のものが多いので、(特別あつかいしてか、)「油脂」という用語がある。(※ 検定教科書や大学教科書では、厳密性を重視してか、こういう説明は無い。しかし、こういう背景事情が無いと、なぜ、こういう用語があるのか意味不明だろう。)


英語の fat and oil が、日本語の「油脂」の意味に近い。(実教出版の化学資料集では、fats and oils を油脂の英訳としている。)


ただし、一般に単に「油」 oil とだけ言った場合、かならずしもグリセリンや脂肪酸を含むとは限らないので、気をつける必要がある。



さて、カルボン酸には、パルミチン酸のように脂肪の成分になっているものが多い。

このため、鎖状の炭化水素基と1つのカルボキシル基からなる鎖状モノカルボン酸を脂肪酸という。なお、「油脂」を加水分解すると、脂肪酸とグリセリンが得られる (定義から当然。脂肪酸とグリセリンの化合物を「油脂」というから)(反応式については、詳しくは後の節で後述する)。


さて、脂肪酸のうち、炭素間の結合がすべて単結合のものを飽和脂肪酸という。いっぽう、脂肪酸のうち、二重結合や三重結合を含むものを不飽和脂肪酸という。

脂肪酸の構造中、不飽和化(二重結合や三重結合が多いほど)しているほど、融点は低い。

いっぽう、飽和脂肪酸(つまり単結合ばかりの脂肪酸)は比較的、融点が高い(つまり、融けにくい)。

そのため飽和脂肪酸は、室温で固体のものが多い。


いっぽう、不飽和脂肪酸は、融点が低い。なので不飽和脂肪酸は、室温で液体のものが多い。

また脂肪酸は、分子中の炭素数によっても分類され、炭素の多いものを高級脂肪酸、少ないものを低級脂肪酸という。

天然の油脂を構成する脂肪酸には、炭素数が16〜18の高級脂肪酸のものが多い。


さて、冒頭の表中に「ヒドロキシ酸」とある。分子中にヒドロキシ基 -OH とカルボン基 -COOH の両方をもつカルボン酸のことをヒドロキシ酸という。乳酸やクエン酸、リンゴ酸や酒石酸がヒドロキシ基である。


油脂[編集]

油脂の構造
グリセリン

ごま油や牛脂などの油脂(ゆし、fats and oils)は、脂肪酸とグリセリン (C3H5)OH がエステル結合したものである。

つまり、ごま油も牛脂も、脂肪酸とグリセリン (C3H5)OH がエステル結合したものだという共通性がある。


なお天然の油脂を構成する脂肪酸には、パルミチン酸やステアリン酸のような高級脂肪酸が多い。

油脂のうち、室温で固体の油脂を脂肪(しぼう、fat)といい、液体の油脂を脂肪油(fatty oil)という。

脂肪は飽和脂肪酸により構成されているものが多く (飽和脂肪酸は融点が低いので)、いっぽう脂肪油は不飽和脂肪酸により構成されているものが多い。


油脂を構成する脂肪酸は様々であるが、天然に存在する脂肪酸は常に分子中の炭素の個数が偶数個となっている。飽和脂肪酸は直線状の分子となっているが、不飽和度が高くなるほど分子は折れ曲がった形状となる。以下に、油脂を構成する主な脂肪酸の例を示す。

  飽和脂肪酸 不飽和脂肪酸
名称 ステアリン酸 オレイン酸 リノール酸
示性式 C17H35COOH C17H33COOH C17H31COOH
分子模型 ステアリン酸分子模型 オレイン酸分子模型 リノール酸分子模型
硬化油の例 - マーガリン

不飽和脂肪酸の炭素間二重結合では、『アルケン』と同様に付加反応が起こる。油脂を構成する不飽和脂肪酸に、ニッケル Ni を触媒として用いて水素を付加させると、融点が高くなるため、常温では固体の油脂へと変化する。このようにして脂肪油から生じた固体の油脂を硬化油(こうかゆ、hardened oil)という。植物油をもととする硬化油はマーガリンなどに用いられる。硬化により飽和脂肪酸とすることには、長期間の保存の間に空気中の酸素が不飽和結合に付加して酸化されることを防ぐ役割もある。


油脂のけん化[編集]

油脂に水酸化ナトリウムを加えて加熱すると、油脂はけん化されて、高級脂肪酸のナトリウム塩(セッケン)とグリセリンになる。 洗い物などでもちいる石鹸(せっけん)とは、このような高級脂肪酸のナトリウム塩である。

セッケンの反応式.svg

さて、油脂1分子に、エステル結合が3つある。よって油脂1molのけん化には、水酸化ナトリウム3molが必要になる。

セッケンは弱酸と強塩基の塩であるが、水中ではセッケンは一部が加水分解し、弱塩基性を示す。

R-COONa + H2O → R-COOH + Na+ + OH-

セッケンの炭化水素基部分(図中 R- の部分)は疎水性である。セッケンのカルボキシル基COONaの部分は親水性である。

ミセル

水中では、多数のセッケンの疎水基の部分どうしが集まり、親水基を外側にして集まる構造のコロイド粒子のミセル(micelle)になる。

セッケン分子のように、分子中に親水基と疎水基を合わせ持つ物質を界面活性剤(かいめん かっせいざい)という。

セッケン水に油を加えると、セッケンの疎水部分が油を向いて、多数のセッケン分子が油を取り囲むので、油の小滴が水中に分散する。このような現象を乳化(にゅうか、emulsification)という。そして、セッケンのように、乳化をおこさせる物質を乳化剤(にゅうかざい)という。

セッケンの洗浄作用の理由は、主に、この乳化作用によって、油を落とすことによる。

セッケンは水の表面張力を低下させる。


なお、マヨネーズに含まれる、卵黄のレシチンも、乳化剤である。

硬水との関係[編集]

セッケンがカルシウムイオンCa+やマグネシウムイオンMg+などの溶けた硬水と混じると、水に溶けにくい塩 (R-COO)2Ca などが生じるので、セッケンの泡立ちが悪くなる。

合成洗剤[編集]

高等学校化学I/脂肪族化合物/セッケン を参照せよ。