高等学校化学I/芳香族化合物/アニリンとアゾ化合物

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』
移動先: 案内検索
芳香族化合物 ベンゼン 芳香族炭化水素 フェノール類 芳香族カルボン酸 アニリンとアゾ化合物

芳香族アミン[編集]

アンモニア NH3 の水素基を炭化水素基で置換した化合物をアミン(amine)といい、その置換で置かれた炭化水素基が芳香族炭化水素基の場合を芳香族アミン(aliphateic amine)といい、つまりベンゼン環をもつアミンが芳香族アミンであり、具体例としては後述するアニリンが芳香族アミンである。

一般に芳香族アミンは弱塩基性であり、また、アンモニアに化学的性質が似ている。

アニリン[編集]

アニリンはベンゼンの水素原子1つをアミノ基で置換した物質である。アニリンは無色油状の液体で(沸点185℃)、水に溶けにくい。アニリンを水と混ぜると、分離して下に沈む。アミノ基は弱塩基性を示すため、塩酸と反応するとアニリン塩酸塩 C6H5NH5Cl を生じて、水に溶けるようになる。

アニリン塩酸塩の合成式

アニリン塩酸塩に、水酸化ナトリウムのような強塩基の水溶液を加えると、油状のアニリンが遊離する。

アニリン溶液は、さらし粉の水溶液を加えると、酸化されて赤紫色になる。この呈色反応はアニリンの検出反応として重要である。

また、アニリンを硫酸酸性二クロム酸カリウム水溶液で酸化すると黒色物質を生じる。これはアニリンブラック(aniline black)と呼ばれ、黒色染料や黒色顔料として用いられる。

  • 製法

アニリンの製法は、実験室ではニトロベンゼンから合成される。ニトロベンゼンにスズと塩酸を加えて加熱すると、還元され、アニリン塩酸塩を生じる。この水溶液に水酸化ナトリウム水溶液のような強塩基を加えて、アニリンを遊離させる。アニリンは水に溶けず分離するため、ジエチルエーテルを加えてアニリンをエーテルに溶かし抽出する。エーテル層と水層の2層に分離するため、エーテル層のみを取り出してエーテルを蒸発させると、アニリンが得られる。

アニリンの合成

アセトアニリド[編集]

アニリンに無水酢酸を作用させると、アミノ基がアセチル化され、アセトアニリド C6H5NHCOCH3 を生じる。アセトアニリドは無色無臭(白色)の固体であり、解熱鎮痛剤の原料となる。

アセトアニリドの合成式

この反応では、アミノ基とカルボキシル基との間で分子間脱水した結合-NH-CO-を生じている。この結合はアミド結合と呼ばれ、タンパク質やアミノ酸を構成する結合としても重要である。

アゾ化合物[編集]

アニリンに希塩酸を加えてアニリン塩酸塩とし、これを氷水につけて冷却しながら亜硝酸ナトリウム水溶液をすこしずつ反応させると、塩化ベンゼンジアゾニウム C6H5N2Cl を生じる。-N+≡Nを含む化合物ジアゾニウム化合物と呼び、このようにジアゾニウム塩を生じる反応をジアゾ化(diazotization)と呼ぶ。

塩化ベンゼンジアゾニウムの合成式

塩化ベンゼンジアゾニウムは非常に不安定な物質であり、常温ではフェノールと窒素に分解してしまう。そのため、低温に冷却して反応を進行させる必要がある。

塩化ベンゼンジアゾニウム水溶液にナトリウムフェノキシド水溶液を加えると、p-ヒドロキシアゾベンゼン(p-フェニルアゾフェノール)を生じて橙赤色(とうせきしょく)を呈する。このようにジアゾニウム塩と他の芳香族化合物からアゾ化合物を生成する反応をジアゾカップリング(diazo coupling)と呼ぶ。

Pヒドロキシアゾベンゼンの合成式

分子中にアゾ基-N=N-を持つ物質をアゾ化合物(azo compound)と呼ぶ。アゾ化合物は様々な色をもち、染料として用いられるものもある。

アゾ化合物にはこの他メチルオレンジやメチルレッドなど、pH指示薬として用いられているものも存在する。