高等学校化学II/金属と合金
鉄(てつ)と鋼(はがね)のちがい[編集]
純度の高い鉄(てつ)の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
構造材などに使われる「ステンレス」や「スチール」などは、鉄を母材としてクロムなどをふくんだ合金であり、けっして鉄の単体ではない。
「鋼」(はがね、こう)とは、鉄(てつ)を母材とした合金のことである。
鉄の製法[編集]
鉄鉱石からの鉄の精錬では、赤鉄鉱 Fe2O3 や磁鉄鉱 Fe3O4 などの鉄鉱石を溶鉱炉でとかし、コークスなどの炭素を加えて発生する一酸化炭素 CO で還元して、鉄をつくる。
- Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2
また、不純物をとりのぞくため石灰石 CaCO3 を加える。石灰石によりシリカSiO2やアルミナAl2O3などの脈石(岩石を構成する成分のこと。)が分離される。 このようにして高炉で得られた鉄を銑鉄(せんてつ、pig iron)という。
なお、高炉の内側には、耐火性のレンガが内貼り(うちばり)してある。このレンガによって、高炉は、溶けた熱の高温に耐えられるようになっている。
石灰石は、鉱石中のケイ酸塩と反応しスラグ CaSiO3 を形成し、スラグは比重が銑鉄より軽いため、スラグは銑鉄に浮かぶので、これを溶鉱炉から分離する。スラグはセメントの原料になるので、スラグは廃棄せず分離して回収する。
また、炭素や石灰石などの添加は、融点を下げる役割も有る。凝固点降下と同じ原理である。一般に混合物は融点が下がる。
銑鉄は還元に用いた炭素Cを多く含み、炭素を質量比4%以上ほど含んでいる鉄である。このように鉄中の炭素が多いと、粘りが無くなり、衝撃などに対して脆く(もろく)、硬いが割れやすくなる。 このような鉄は、割れやすいが混合物のため融点が低く、また流動性も良いため鋳造(ちゅうぞう)に用いられる。そのため、このように炭素含有量の多い鉄は 鋳鉄(ちゅうてつ) と呼ばれる。
しかし鋳鉄は割れやすいため、建築材などには不便である。 丈夫な鉄を得るには銑鉄の炭素量を適量に減らす必要があり、転炉で酸素を加えて燃焼させて取り除く。転炉には、酸素吹き込み転炉などを用いる。この酸素吹き込みの酸化熱が、鉄を溶かし続ける熱源に使える。
炭素含有量を減らして炭素Cを0.02%~2%ほど含む鉄を鉄を鋼(こう、steel)という。
建築材などの構造材に用いられるのは、このようにして、じゅうぶんな硬さと強さをもたせた鋼(こう)である。
鉄鉱石の還元反応は以下の反応である。
溶鉱炉内では段階的に還元し、
と還元していく。
- [450℃]
- [800℃]
- [1200℃]
添加物のため融点は下がり、およそ1400℃で融解し、溶鉱炉の底に溶けた鉄がたまる。 なお、1200℃での反応の式について、温度が高くなりすぎると、逆方向に反応が進んでしまいCO2によるFeの酸化が起きるので、1200℃程度を保つ必要がある。
鉄の化学的性質として、鉄の単体および銑鉄や鋳鉄は、湿った空気中で酸化されやすく、さびやすい。 さびを防ぐため、合金として、鋼にクロム Cr やニッケル Ni などを混ぜた合金がステンレス鋼(ステンレスこう)である。このステンレス鋼は化学的な耐食性が高く、さびにくいため、建築材や台所部材として用いられる。
鉄の化学的性質[編集]
純度の高い鉄(てつ)の単体は、灰白色であり、比較的やわらかい。
鉄には酸化数+2または酸化数+3の化合物がある。
鉄の酸化物には、黒色の酸化鉄(II) FeO 、赤褐色の酸化鉄(III)Fe2O3 、黒色の四酸化三鉄 Fe3O4 などがある。
鉄は、湿った空気中で酸化されやすい、よって鉄は、さびやすい。 鉄の赤さびは、 酸化鉄(III)Fe2O3 である。
鉄は希硫酸にくわえると、水素を発生して溶け、淡緑色の溶液になる。この水溶液を蒸発させて濃縮すると、硫酸鉄(II)七水和物FeSO4・7H2Oが得られる。
いっぽう、濃硝酸では、不動態となり、鉄の表面に皮膜ができて、それ以上は反応が進行しない。
鉄(II)イオン水溶液の性質[編集]
硫酸鉄(II) FeSO4 などが、鉄(II)イオン Fe2+ をふくむ溶液である。
鉄(II)イオン Fe2+ をふくむ溶液に、水酸化ナトリウムなどの塩基を加えると、緑白色の水酸化鉄(II) Fe(OH)2 が沈殿する。
- Fe2+ + 2OH- → Fe(OH)2 ↓
なお、この水酸化鉄は空気中で酸化され、赤褐色の水酸化鉄(III) Fe2O3 に変化する。
- 4Fe(OH)2 + O2+ + 2H2O → 4Fe(OH)3
- ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)6] との反応
また、鉄(II)イオン Fe2+ をふくむ溶液に、ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)6] の水溶液をくわえると、濃青色の沈殿が生じる。このときの濃青色の沈殿は、「ターンブル ブルー」(「ターンブル青」ともいう、Turnbull's blue)と呼ばれる。
鉄(III)イオン水溶液の性質[編集]
鉄に塩酸をくわえると、黄褐色の塩化鉄(II) FeCl2 の水溶液になる。さらに、この塩化鉄(II)溶液に、塩素を通じて酸化すると塩化鉄(III) FeCl3 の溶液になる。
この塩化鉄(III)の水溶液が、鉄(III)イオン Fe3+ をふくんでいる。なお、塩化鉄(III) FeCl3 の水溶液を蒸発させて濃縮すると、塩化鉄・六水和物 FeCl3・6H2O の結晶が得られる。
さて、塩化鉄の水溶液に、塩基をくわえると、赤褐色の水酸化鉄(III) Fe(OH)3 の沈殿が生じる。
- Fe3+ + 3OH- → Fe(OH)3 ↓
- ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)6] との反応
また、鉄(III)イオン Fe3+ をふくむ溶液に、ヘキサシアニド鉄カリウム K[Fe(CH)6] の水溶液をくわえると、「紺青」(こんじょう)と呼ばれる濃青色の沈殿が生じる。
- チオシアン酸カリウムKSCNとの反応
Fe3+ をふくむ溶液に、チオシアン酸カリウム KSCN をふくむ溶液をくわえると、血赤色の沈殿を生じる。
強磁性体[編集]
- (※ 高校の範囲内。チャート式化学の参考書で記述を確認)
鉄 Fe 、ニッケル Ni 、コバルト Co は、単体で磁性を帯びることができる金属である。
いっぽう、銅やアルミニウムは、磁化されない。
鉄、ニッケル、コバルトのように、磁石になることができる物質を強磁性体(きょう じせいたい)という。
銅の特徴として、銅は電気の伝導性がよく、また熱の伝導性も良い。なお、一般に純金属の熱伝導性と電気伝導性は比例する。このため、金属中の電子(自由電子)が、その金属内で熱を伝える作用があるという説が、定説である。
銅[編集]
銅は天然にも単体として鉱石が産出されることがあるが、多くの場合は黄銅鉱CuFeS2などのように化合物として産出する。
性質[編集]
銅の単体の外観は、赤色の光沢をもつ。
また、銅は電気伝導性が大きい。このため、電線などの電気材料にも銅が用いられる。
銅はイオン化傾向が水より小さいため、酸には侵されにくいが、硝酸など酸化力の強い酸には侵される。酸化作用の強い酸には、硝酸のほか、熱濃硫酸がある。
銅は、しめった空気中で、緑色の さび である緑青(ろくしょう)を生じる。
銅の精錬[編集]
銅の精錬には、まず、黄銅鉱など銅鉱石を溶鉱炉で溶かす。溶鉱炉にはコークスCおよびケイ砂SiO2を加える。
- (おぼえなくて良いかも)
硫化銅Cu2Sは「かわ」とよばれる。この硫化銅は炉の下層に沈む。FeSiO3 は上層に分離する。溶鉱で発生したFeSiO33は「からみ」という。なおFeSiO3 の式をFeOSiO2と書く場合もある。
この硫化銅を転炉で空気を吹き込むと、銅が遊離する。
こうして転炉で作った銅を粗銅(そどう)という。粗銅の純度は98.5%程度である。
粗銅の純度を上げる目的で金属のイオン化傾向を利用した電気精錬が行われる。粗銅を陽極にして、純銅板を陰極にして硫酸銅CuSO4水溶液中で電気分解すると、陰極に純度が高い銅(99.97%程度)が析出する。一般に、こうして電気精錬で得られた純度99.99%程度の銅を、「純銅」(じゅんどう)と見なしており、検定教科書でも、そう見なしている。 なお、このように電気精錬で得た銅を、電気銅ともいう。 この電気銅が、現在(西暦2013年に記事を執筆)、用いられている銅材料の原料である。
なお、電気精錬の際に、銅中に銀Agや金Auなどの不純物が混ざっていると、電気精錬の際に、銀や金はイオン化傾向が銅よりも低いのでイオン化せず、金や銀が陽極の下に沈殿する。この沈殿を陽極泥(ようきょくでい)という。
- 参考(※ 範囲外なので、覚えなくて良い。)
電気銅には、まだ水素や硫黄などの不純物が含まれており、それらの不純物を取り除くため電気銅のあとにも精錬は続く。
特に、銅への水素の混入は、水素脆性(すいそぜいせい)という金属材料が脆くなる原因になるので、取り除かなければならない。
銅の合金[編集]
- (※ 高校の範囲内)
亜鉛との合金である黄銅、スズとの合金である青銅、ニッケルとの合金である白銅など、銅は合金としても、よく用いられる。
なお、一般に、金属は合金化によって硬さを増し、そのぶん展性・延性などは減る。
銅の合金も同様に、単体よりも硬いが、展性・延性などは減っている。
※ くわしくは、合金に関する節で、説明する。
銅の化学的性質[編集]
銅の化合物[編集]
- 酸化銅
銅を空気中で加熱すると、1000℃以下では黒色の酸化銅(II) CuO を生じ、1000℃以上では赤色の酸化銅(I) Cu2O を生じる。
- 硫酸銅
銅が熱濃硫酸に溶解した溶液から、硫酸銅の溶液が得られる。
この溶液から、結晶を析出させると、青色の硫酸銅の結晶が得られる。
硫酸銅の結晶の硫酸銅(II)五水和物 CuSO4・5H2O は、青色の結晶である。
硫酸銅(II)五水和物を熱すると、水和水を失って、無水物の硫酸銅 CuSO4 になり、白色の粉末になる。
この硫酸銅の粉末は、水を吸収すると、青色の水和物に戻る。なので、水の検出のさい、硫酸銅が活用されることがある。
銅イオンの反応[編集]
- 硫酸銅の水溶液
硫酸銅水溶液に、水酸化ナトリウムまたは少量のアンモニア水を加えると、青白色の水酸化銅 Cu(OH)2 の沈殿が生じる。
- Cu2+ + 2OH- → Cu(OH)2
この水酸化銅の沈殿に、アンモニア水を過剰に加えると、沈殿が溶けて、深青色のテトラアンミン銅(II)イオン [Cu(NH3)4]2+ の水溶液になる。
- Cu(OH)2 + 4NH3 → [Cu(NH3)4]2+ + 2OH-
- 水酸化銅の沈殿の水溶液
水酸化銅(II)の沈殿をふくむ水溶液を加熱すると、黒色の酸化銅(II) CuO に変化する。
- Cu(OH)2 → CuO + H2O
- 硫化水素との反応
銅イオンをふくむ溶液に硫化水素を通じると、黒色の硫化銅(II) CuS が沈殿する。
- Cu2+ + S2- → CuS
アルミニウム[編集]
アルミニウムの精錬は、鉱石のボーキサイトからアルミナAl2O3を抽出する工程と、アルミナAl2O3から電解してアルミニウムを得る工程からなる。
バイヤー法[編集]
アルミニウムの天然の鉱石はボーキサイト(bauxite)といい、ボーキサイトの化学式はAl2O3・nH2Oである。ボーキサイトに濃い水酸化ナトリウム溶液NaOHを加えてアルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)4]が得られる。正確にはテトラヒドロキソアルミン酸ナトリウムという。
アルミン酸ナトリウム2Na[Al(OH)_4]の溶液を冷却し、加水分解がおこると水酸化アルミニウムAl(OH)3 の沈殿が析出する。
生じたAl(OH)3 を分離して、このAl(OH)3を1200℃に加熱して酸化アルミニウムAl2O3にする。 これらのボーキサイトからアルミナまでの工程をバイヤー法という。
Al2O3 はアルミナという。アルミナは融点が高く、約2000℃の融点なので、融点を次の融解塩電解という処理で下げる。
アルミナの融解塩電解[編集]
まず、氷晶石を加える。すると融点が下がる。これを電解してアルミニウムにする。 この氷晶石を用いたアルミナの融解の方法をホール・エルー法という。
※ 化学1でも電気分解を紹介してるので、読者は必要に応じ参照されたい。
工程は以下のとおり。 アルミナAl2O3(融点 2072 °C)に氷晶石Na3 AlF6(融点 1012℃)を、割合が氷晶石9.5重量%ほどになるまで少しずつ加える。氷晶石はアルミナにとって不純物であり、不純物との混合によって溶融温度が下がり、融点が約970℃になる。 溶融したアルミナを電気分解によって、精錬する。
また、このように添加物を加えて融点を下げ、溶融させて電解する方法を融解塩電解または溶融塩電解という。
溶融塩電解による精錬は、アルミニウムの他に、酸化マグネシウムMgOからマグネシウムMgを精錬する場合や、酸化チタンTiO2からチタンTiを精錬する場合に用いられる。
ちなみにアルミナAl2O3 はセラミック材料として様々な優れた性質を持っている。 酸化マグネシウム(マグネシアという)や酸化チタンもセラミックス材料として優れた性質を持っている。
アルミニウムやマグネシウムなどのように酸化物からの精錬に手間が掛かる材料は、裏を返せば、アルミナやマグネシアのように酸化物はセラミックスとして安定した性質を持っているということでもある。
合金[編集]
2種類以上の金属を溶融して混合したあとに凝固させるなどした金属材料のことを合金(ごうきん、alloy)という。合金には、もとのそれぞれの金属には性質をもつものもある。
一般に合金では(硬さについて)、もとの それぞれの金属単体よりも 硬さが増す。ここでいう「硬い」とは「やわらかくない」「変形しづらい」というような意味であり、かならずしも割れにくいとは限らないので注意。
(※ チャート式で昔から記述あり)また一般に合金の電気抵抗は、もとの金属よりも合金の電気抵抗が上がる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、という説明が定説である。
主要な合金の例を示す。
- ステンレス鋼
- 組成:
- Fe =70%, Cr=20%, Ni=10% の程度。
特徴: 鉄にクロムとニッケルなどを混ぜたもの。
- ジュラルミン
- 組成: Al,Cu,Mg,Mn
軽くて強度が大きいので航空機材料や自動車材料などに用いられる。
- 黄銅
組成 Cu=60%~70%, Zn=10%~40%
銅 Cu と亜鉛 Zn の合金。 ちなみに銅Cuが60%程度で亜鉛Znが40%程度の黄銅を六四黄銅(ろくよんおうどう)という。 銅Cuが70%程度で、亜鉛Znが30%程度の黄銅を七四黄銅(ななよんおうどう)という。
特徴: 合金化により硬くなり、強度が高まる。色は黄色い。音楽用語の「ブラスバンド」の「ブラス」とは黄銅(brass)のことである。 黄銅を真鍮(しんちゅう)ともいう。
- 青銅
組成
- Cu Sn
銅 Cuとスズ(錫)Snの合金。亜鉛などの第三元素を加えた場合も青銅と呼ぶ場合がある。第三元素を添加せず、銅とスズのみを主成分とする青銅を、すず青銅という。 青銅はブロンズ(bronze)ともいう。
特徴: 合金化により硬くなり、強度が高まる。鏡として用いられる場合もある。(青銅鏡)
- 白銅
Cu=80%,Ni=20%の程度 銅ニッケル合金のことを白銅(はくどう)という。 組成中のNi割り合いの増加とともに、色が銅の赤色からニッケルの白色に変わっていく。
特徴: 腐食しづらく耐食性が良い。日本国の貨幣の50円硬貨や100円硬貨の材料は、白銅である。(本文は西暦2013年に執筆。)
- 洋銀
組成 Cuを母材に,Ni=5%~30%,Zn=5%~30%の程度。
洋銀は銅とニッケルと亜鉛の合金。ニッケルシルバともいう。
- はんだ
組成 Pb,Sn
特徴: 融点が低い。 鉛はんだともいう。 鉛は人体に有害である。鉛はんだも同様に有害である。 かつては、鉛はんだは電気回路部品の接合などに用いられたが、最近では、安全や国際規制(たとえばROHS規制など。「ローズきせい」と読む)のため、なるべく電気回路接合は鉛Pbを用いない代替材料を用いる。 電気回路接合用で鉛を用いない代替材料を「鉛フリーはんだ」という。
- ニクロム
組成 Ni=60%~80%の程度 ,Cr=20% 程度 材料がニッケルとクロムだからニクロムという。
特徴: 電気抵抗が大きい。電気抵抗材料に用いられる「ニクロム線」とは、この材料である。
ニクロム合金に限らず、一般に、合金は、もとの純金属よりも電気抵抗が大きくなる。その仕組みの説明として、合金元素によって結晶配列が乱れるから、という説明が定説である。
ここで取り上げた例の他にも、かなり多くの合金がある。
その他の合金[編集]
水素吸蔵合金[編集]
ランタン-ニッケル合金やチタン-鉄合金などは、常温で合金結晶間に水素を吸蔵する性質をもち、加熱などによって水素を掃き出す性質の合金が知られている。 自己の体積の1000倍以上もの水素を吸蔵できる合金もある。
ランタン-ニッケル合金を母材にした、ニッケル水素電池が実用化されており、ハイブリッド自動車で実用化している。今後の水素自動車や燃料電池自動車などの燃料タンクとしても期待され、開発が進められている。
このほか、チタン鉄合金系もある。
形状記憶合金[編集]
チタンとニッケルの合金では、高温で成形したときの形状の記憶を保ち、常温で変形させても、加熱することで元の形に戻るものがある。 このような合金を形状記憶合金(けいじょうきおく ごうきん、shape memory alloy)という。
眼鏡フレームなどに利用されている。
超伝導合金[編集]
- (※ 実教の化学基礎、東京書籍の専門化学、チャート式などで紹介)
ある種類の物質は、きわめて低温(たとえば絶対零度のちかく)で、電気抵抗がゼロになる。実用化されてる超伝導合金の代表例として、スズとニオブの合金がある。
応用としては、強い電磁石を作る際に、よく超伝導合金が利用されることがある。医療用MRI(磁力を応用して、人体の断層写真を撮影できる装置)などに、超伝導合金が利用されているという。また、研究開発中だがリニアモーターカーにも、すでに超伝導合金が応用されているという。
- (※ このほか、チャート式には『マイスナー効果』などの紹介がある。)
スズ-ニオブ系のほかにも、いくつもの超伝導合金が知られている。
- (※ 工業高校『工業材料』の教科書にあったので補足しておくと、)じつは超伝導には、単位時間内に流せる電流の大きさに(材質ごとに)限界があり、その限度を超える大きさの電流を流すと、その材質の状態は常伝導にもどる。いったん常伝導にもどっても、電流を下げて超伝導温度まで冷却すれば、また材質は超伝導に戻る。
- なので、もし勘違いして冷却しないと、つまり、(勘違い → )「超伝導だから抵抗熱が無いので、熱が発生しないだろうから、冷却は不要だろう」(×、間違い)と思い込んで冷却しないと、もしも常伝導になった際に抵抗熱が発生するので、回路の焼損など大惨事になりかねない。結局、超伝導でも冷却が必要である。
- 上述のMRIなどの応用の装置に超伝導材料を使えば、経済的には超伝導時のあいだだけは抵抗熱が無くなるので冷却コストを下げられる可能性はあるが、しかし、けっして冷却コストがゼロにはならないので(電流が限度を超えて超伝導でなくなった場合に冷却が必要)、気をつけよう。
※ ほかにも「第二種超伝導」とか工業高校『工業材料』の教科書に書いてあったが、しかし、普通科には不要な知識だろう。
アモルファス合金[編集]
- (※ 東京書籍とチャート式で紹介。)
アモルファス合金とは、結晶構造をもたずに非晶質(ひしょうしつ)の合金である
おおまかな製法は、高温状態で柔くなった金属を急冷すると、原子が通常の結晶構造での位置に配置される前に、冷却によって金属全体が固化してしまい、通常の位置に原子が配置されない。 そのため、急冷した金属・合金のいくつかは結晶構造をもたず、通常の金属とは違った特性をもつ。
磁力的な性質が、異なっている場合が多い。このように、結晶をもたない金属を、アモルファス金属(amorphous metal)といい、そのような、結晶をもたない合金をアモルファス合金という。
応用は、すでに磁気記録用ヘッドとして、(コバルトなどを含む)アモルファス合金が応用されている。
(※ 範囲外:) アモルファス合金と高周波電流 |
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また、鉄系のアモルファス合金が、耐腐食性の必要な環境で用いられる場合もあるという。
短所として、高温での加工をしようとすると結晶化してしまうので、原理的に高温での加工ができないという、短所がある。
耐腐食性が高まっている場合もあり、そのような性質の必要な環境にも応用されているという。
- (※ アモルファス合金は、名前は『〜〜合金』だが、生成時の熱処理のテクノロジーでもあるので、他の出版社の教科書には記述が無いのだろう。)
- (※ なお、ノーベル賞になった準結晶(じゅんけっしょう)は、これとは別の合金。教科書にも、まだ記述は無い。)
いろいろな金属[編集]
タングステン[編集]
タングステン W は融点がきわめて高く(融点3400℃)、耐熱性が大きいので、電球のフィラメントなどに用いられる。 金属では、タングステンが、もっとも融点が高い。
また、炭化タングステン WC は、かなり硬い。
白金[編集]
白金 Pt は、銀白色の固体で、化学的な安定性が高い。
かつて、メートル原器の材質として用いられていた。
触媒としても、用いられている。