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高等学校古文/動詞

出典: フリー教科書『ウィキブックス(Wikibooks)』

四段活用

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四段活用は現代語における「五段活用」である。古典語の「飽く」、「乗る」という動詞は次のように活用する。 ア段・イ段・ウ段・エ段の四つの段にわたって活用する動詞を四段活用という。

動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
飽く 飽(あ)
乗る 乗(の)

※「飽く」・「足る」は現代語では上一段活用だが、古語では四段活用である。

現代語の五段活用の動詞の大部分が古典語における四段活用であるが、「死ぬ」(ナ行変格活用)「有り」(ラ行変格活用)「蹴る」(下一段活用)といったように例外がある。

ナ行変格活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
死ぬ 死(し) ぬる ぬれ

ナ変動詞は「死」「()ぬ(去ぬ)」の二語のみである。※「()ぬ」は下二段活用。

ラ行変格活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
有り

ラ変動詞は「有り」「()り」「(はべ)り」「(いま)そかり(在すがり、在しがり)」の四語のみである。※「()る」は上一段活用。

また、指示の副詞「かく」「さ」「しか」に「あり」がついた複合動詞「かくあり(かかり)」「さあり(さり)」「しかり」もラ変型活用である。

下一段活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
蹴る 蹴(け) ける ける けれ けよ

下一段活用は「蹴る」のみである。

現代語においても、「蹴散らす」「蹴飛ばす」「蹴落とす」など、下一段活用であった痕跡が残る。

下ニ段活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
見ゆ 見(み) ゆる ゆれ えよ

※「見る」は上一段活用である。また、「見ゆ」の「ゆ」は奈良時代まで用いられた受身・可能・自発の助動詞であり、本来は『「見る」の語幹「見」+下二段活用の助動詞「ゆ」』という形である。

()()()」は語幹と語尾の区別がない。

ア行は「得」、ワ行は「植う・()う(餓う)・()う」のみが下二段活用である。

下二段活用の動詞としては、「()ぐ」「受く」「逃ぐ」「捨つ」「()づ」「述ぶ」「混ず」などがある。(下二段活用の動詞は、現代語では全て下一段活用である。)

上一段活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
着る 着(き) きる きる きれ きよ

カ行は「着る」、ナ行は「似る・煮る」、ハ行は「()る(乾る)」、マ行は「見る」、ヤ行は「射る・鋳る」、ワ行は「居る・()る」が上一段活用である。「贔屓に魅入(ヒイキニミヰ)る」と覚えよう。

他に、「後ろ見る」「顧みる」「試みる」「(ひき)ゐる」「用ゐる」なども上一段動詞であるが、入試で聞かれることは多くない。

上ニ段活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
恨む 恨(うら) むる むれ みよ

※「恨む」は江戸時代には四段活用に変化し、現代語では五段活用である。

ヤ行は「()ゆ・()ゆ・(むく)ゆ」のみが上二段活用である。


上二段活用の動詞としては、「起く」「過ぐ」「()ふ」「()つ」「()ぶ」「()る」などがある。(現代語の上一段活用の動詞は、古語では大部分が上二段活用となる。)


カ行変格活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
来(く) くる くれ こ(こよ)

※命令形は、平安時代以前は「こ」、鎌倉時代以降は「こよ」の用例が多い。

カ変動詞は「来」のみである。

なお、「来ぬ」は「こぬ」と読めば「来ない」、「きぬ」と読めば「来た」という意味になる。(「ぬ」は助動詞で、それぞれ打消し「ず」の連体形、完了「ぬ」の終止形である。)


サ行変格活用

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動詞 語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
為(す) する すれ せよ

サ変動詞は「為」「(おは)す」の二語のみである。ともに平仮名で書かれることが多い。

現代語と同様に、「為」は複合動詞を作りやすい。

  • 名詞:恋す、心す、(あるじ)す etc.
  • 用言:(むな)しうす、(さや)にす etc.
  • 漢語:案ず、御覧(ごらん)

※複合の結果濁音がついても、サ変動詞と呼ぶ。

補助動詞

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動詞本来の意味を失って、助動詞のように補助的に意味を添えるだけの動詞を補助動詞という。補助動詞を助動詞とする説もあるが、本来の動詞(本動詞)としての用法も存在するためここでは動詞の一部として扱う。

例えば、「()もありなむ(確かにそうである)」を品詞分解すると副詞「()(そう)」+副助詞「も」+ラ変動詞「あり」+完了の助動詞「ぬ」+推量の助動詞「む」であるが、この「あり」には「存在する」という「あり」本来の意味は含まれておらず、「〜の状態である」と述べるのみとなっている。この場合、「あり」は補助動詞である。他にも、「〜してみる」の「みる」も「見る」の本来の意味が含まれていないので補助動詞である。

また、「いと尊くてならびおはします」の「おはす」は、「有る・居る・行く・来る」という本来の意味が含まれておらず、「並んでいらっしゃる」という尊敬を表す。このように、本動詞に尊敬の意味を付加する敬語としての補助動詞も存在する。

補助動詞として用いられる語の例を以下に記す。

有り、座す、座します、居り、()す、(たま)ふ、(たてまつ)る、(まう)す、聞こゆ、侍り、(さぶら)ふ、(まゐ)らす

これらのうち、「有り」「居り」以外の語は敬語としての補助動詞の用法を持つ。


※参考

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古語活用表に、古語動詞の活用表とやや詳しい説明があります(2022/5時点)。