高等学校商業 経済活動と法/動産の売買

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所有権の移転の時期[編集]

動産の売買契約について、引き渡された物についての所有権の移動した時期は、その物がじっさいに引き渡された時に移動すると考えるのが有力な説である。(※ 参考文献: 有斐閣『民法入門』川井健、第7版、105ページ)検定教科書も、この有力説に従っている。つまり、検定教科書でも、所有権の移動時期は、その物がじっさいに引き渡された時期に移動すると考えている。

なお、民法178条に「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。」とある。 つまり、動産では、引渡しの行為が、第三者に対する所有権移転を裁判などで対抗する際の要件(対抗要件)になる。(民178)

不動産の場合とは違い、動産の売買などでは、登記などの制度が無いのが普通。


引き渡し[編集]

民法では、売り主の手元から、買い主の手元に、じっさいに物が移動する事を、引き渡し(ひきわたし)という。(民182)

(※ 編集者への注意。検定教科書での表記は「引渡し」ではなく「引き渡し」です。)

引き渡しの場合、代理人などを使ってない場合なら、引き渡される前までは、その物を占有者と所有者が同一人物(売り主)であろう。引き渡された直後は、その物の占有者と所有者が、やはり同一人物(買い主)であろう。

つまり、売買の前後で、

占有の状態: 買い主 → 売り主

と占有が移転している。


このように、民法の「引き渡し」も、日常用語の「引き渡し」とほぼ似た意味であるが、民法では、さらに、売買などでの引き渡しのさいの所有権の移転についての関心がある。

なお、冒頭の「引き渡し」の説明(「売り主の手元から、買い主の手元に、じっさいに物が移動する事」)とは食い違うが、じっさいには買い主の手元に物が移動しない場合でも、契約時の取り決めなどによって、法律的に所有権が買い主の手元に移転したと見なされれば、そのような動産の所有権の移転のことも含めて「引き渡し」という場合もある。

なお、「引き渡し」の説明において、じっさいに当事者双方の手元から手元へと物理的に移動する場合の「引き渡し」である場合、これを「現実の引き渡し」という。(※ 範囲外)(※ 参考文献: 有斐閣『基本民法I 総則・物権総論』、大村敦志)

簡易の引渡し[編集]

買い主に、その物をすでに貸してある場合、その物を借り主がそのまま買う場合、わざわざ売り主に返さずとも、そのまま引き渡したと、あつかって良い。 これを簡易の引き渡しという。(民182(2) )


簡易の引き渡しの場合、代理人などを使ってない場合なら、引き渡される前までは、 買い主 = 借り主 = 占有者 の状態、つまり、その物の買い主が、その物の占有者である。

簡易の引き渡しでは、このような、すでに買い主が占有している状態を、いちいち売り主に戻さず、そのまま、その物を占有している状態の買い主に所有権を移動するという事であろう。

つまり、占有の状態は売買の前後で、

占有の状態: 売り主 → 売り主

と、そのままである。

占有改定[編集]

買い主が買った物を直後に売り主に貸して貸しつづける場合、買い主の手元の物が一度も来なくても、売り主が買い主のために占有するという意思表示をすれば、所有権が買い主のもとに移転したと見なさされる。これを占有改定という。(民183)

占有改定では、売買のあとも、売り主が物を占有しつづけ、所有権だけは買い主に移動している。買い主は、たとえ一度も占有したことがなくても、買ったとみなされ、買い主に所有権が移転している。

民法での「引き渡し」によって所有権が移転するという原則とのツジツマをあわせるため、占有改定では「引き渡し」が済んだと見なされる。(※参考文献: 検定教科書ほか多数。有斐閣『民法 総則・物権』山野目章夫、138ページ。)

そして、「引き渡し」が所有権をめぐる裁判などでの第三者への対抗要件になってるので、つまり、「占有改定」も裁判での対抗要件として見なせる。(※ 参考文献: 有斐閣『民法入門』、川井健、106ページ.)

指図による占有移転[編集]

「指図による占有移転」とは例えば、第三者の倉庫に預けてあるような物を売買する場合などである。

売った物が、第三者(売り主でもなく買い主でもない第三者)に預けられている場合、売り主が預かり主に対して「今後は買い主のために与れ」と要求し、買い主も預かり主が預かることを承諾すると、これによって、所有権が売り主から買い主に移転したと見なされる。これを「指図による占有移転」という。

民法での「引き渡し」によって所有権が移転するという原則とのツジツマをあわせるため、「指図による占有移転」では「引き渡し」が済んだと見なされる。


そして、「引き渡し」が所有権をめぐる裁判などでの第三者(ここでは一般に倉庫主とは別)への対抗要件になってるので、つまり、「指図による占有移転」も対抗要件として見なせる。

動産の即時取得[編集]

所有者AがBに預けていた物(動産)を、Bが勝手にCに売ってしまった場合、もしその動産が市場などで日常的に売買される物であり、登記で所有権を公示する手段が無い種類の動産であれば、経済活動を円滑にさせるために、このような場合は買い主Cが保護される。(民192) そして、買い主Cは、買った物を所有権を即時に取得できる。このことを、「動産の即時取得」あるいは「善意取得」という。

また、この場合、AはCに返還請求できない。

勝手に売られてしまった被害者Aは、Bに損害賠償するしかない。しかし、裁判所がBへの損害賠償を受理するかどうかは、どうやら不明のようである。(※ 実教出版の検定教科書でも、AはBに「損害賠償を請求するほかない」と言及してる。だが、その損害賠償請求による裁判で、裁判所がBに損害賠償を命じるかどうかは、実教出版の教科書からは不明である。)


※ どうやら、そもそも民法自体が、即時取得の件での被害者AからBへの損害賠償の訴訟の判決のあり方については、言及してないようである。法学書を調べても、民法の専門書を数冊ほど調べたかぎり、まったく言及されてない。民法192条やその前後の条文を読んでも、言及されてない。なので、もし、即時取得での、もともとの所有者Aの権利への配慮のなさに文句があるなら、検定教科書や法学書に文句を言うのでなく、そういう民法をつくった国会議員に文句を言うべきだろう。

ただし、動産が盗品または遺失物である場合には、民法では、真実の所有者(さきほどの例では、Aに相当)を保護するため、2年間は占有者に対して返還請求できる。(民193、民194)