高等学校商業 経済活動と法/家族と法

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戸籍[編集]

戸籍(こせき)には、誰と誰が親子であるか、誰と誰が夫婦であるか、などの情報が載せられている。

子は結婚すると、親の戸籍から抜け、新たに子の夫婦の戸籍がつくられる。

つまり、戸籍には、ある家族の夫婦と、その夫婦の未婚の子についての氏名などが書かれている。

※ このため、ひとつの家族の戸籍に書かれている夫婦は、かならず最大で1組までのはずである。また、ひとつの家族の戸籍に書かれている世代は、2世代までであり、祖父母や孫は書かれないことになる。

戸籍には本籍の欄に、たとえば「神奈川県◯◯市□□△△3丁目13番地7」のように場所が書いてあるが、この「本籍」欄に書かれた場所とじっさいに住んでる場所(いわゆる)とは、かならずしも一致しない。

住所は、住民登録などで登録する。

※ 「戸籍」(こせき)と「国籍」(こくせき)は、それぞれ別の制度である。混同しないように。「国籍」とは、たとえば「日本国籍」とか「中華人民国籍」とか「アメリカ合衆国籍」とか「韓国籍」とか、ああいうのである。


親族[編集]

民法では、親族(しんぞく)とは、六親等内の血族(つまり、親子、兄弟姉妹、祖父母、孫、叔父、叔母、甥(おい)、姪(めい)、従兄弟(いとこ))および、配偶者、三親等内の姻族(いんぞく)のことである。(民725)

自然血族と法定血族[編集]

親族のうち、養子と養親は、「法定親族」という。

いっぽう、血縁のある親族(つまり、親子、兄弟姉妹、祖父母、孫、叔父、叔母、甥(おい)、姪(めい)、従兄弟(いとこ))のことは、「自然血族」という。

直系親族と傍系親族[編集]

親子や祖父母、孫などを、直系親族という、つまり、家系図を書いた時に、真上や真下に位置するような関係の親族のことを直系親族という。

いっぽう、兄弟姉妹、いとこ、おじ、おば、などのことを、傍系親族という。つまり、家系図で、横やななめに位置する関係のような親族のことを傍系親族という。

姻族[編集]

ある夫婦にて、夫から見た場合の、妻と、妻の親族は、姻族(いんぞく)という。

同様に、妻か見た場合、夫と、夫の親族も、姻族である。

配偶者と、配偶者の血族のことを、姻族という。

親権と後見[編集]

未成年者である子は、その父母の親権に服する。(民818の1)ただし、子が養子(ようし)であるときは、養親の親権に服する。(民818の2)(※「養子」については、後述する。知らなければ、後回しにしてよい。)親権者は、子の養育に関する権利と義務を有する。(民824)

※ 「親権」の内容には、権利だけでなく、義務もある。文字に親「権」とあるからといって、権利だけではない。
※ 「親権」は、未成年者 の子に対する権利と義務であり、けっして、成年 の子に対する権利と義務ではない。

親権者は、子の利益のために子の監護および教育をする権利を有し、義務を負う。(民820) もし親権者である親が子の養育の義務を果たさずに、子を遺棄または虐待などをした場合、家庭裁判所での審判により(原告については、子や親族、検察官などが提訴して、その審判の原告となる)、審判の結果によっては、親が親権を喪失する場合がある。(民834)(※ 虐待などへの親権剥奪については高校範囲外。)

父母の婚姻中は、父母が共同して親権を行う。(民818の3) 父母が離婚するとき、父母のどちらか一方を親権者として定める。(民819の1)そもそも協議離婚(きょうぎ りこん)の離婚届を役所に提出する際に、子の親権が父母のどちらかになるかを定めなければ、役所に離婚届が受理されない。(民765の1、および、民819) 父母の一方が死亡した場合、父母のうち生存している側が単独で親権を行う。子が未成年なのに親権者がいないとき、後見人を選ぶことになり、未成年後見が開始される。(民838の1)

親権者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表し(民824)、法定代理人とされる。ただし、その子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意を得なければならない。


夫婦の法律関係[編集]

婚姻[編集]

ある男女が婚姻届けを役所に提出して夫婦になることを婚姻(こんいん)という。 日本では、ある男女が夫婦であると法律的に認められるには、婚姻届けを役所に出さなければならない。(民739の1)

たとい結婚式をあげても、婚姻届けを出してなければ、法律的には、正式な夫婦とは認められない。

婚姻届を出してないが、社会生活上は夫婦として生活している、ある男女1組のことは、内縁(ないえん)の夫婦という。

内縁の夫婦でも、ある程度は、法律的に正式な夫婦に準じて、行政的にも取り扱われる。

しかし、内縁の夫婦には、相続権が無い。たとえば、もし内縁の夫婦の夫が死んでも、その内縁の妻には相続権が無い。

  • 婚姻の要件
・婚姻適齢 : 男は18歳以上、女は16歳以上であること。(削除された民731) ※ 民法改正により2022年から男女とも満18歳以上であること(2022年施行)、という要件に変わる。
・重婚の禁止 : 一夫一妻であること。(民732)
・再婚禁止期間 : 女性は、離婚後、一定の期間(100日間)は婚姻できない。つまり、前の婚姻の終わりから、100日間が経過しないと、婚姻できない。この女性の再婚を規制する100日間の期間のことを一般に再婚禁止期間という。(民733) (※ かつて再婚禁止期間は6か月であった。だが2015年12月16日、最高裁が再婚禁止期間を短縮しなさいと判例を出した。そして2016年、再婚禁止期間の短縮等のために民法の一部を改正する法律が提出され、再婚禁止期間が100日間になった。Wikibooks『民法第733条』などを参照せよ。)
・近親婚の禁止 : 直系血族との結婚は禁止。三親等以内の姻族との結婚も禁止。

かつて未成年者の婚姻には、父母の同意が必要であったが(削除された民737)、民法改正により、この削除は削除される(2022年施行)。 いっぽう、かつて、未成年者が結婚すると、その親には親権が無くなる。(これ(親に親権が無くなること)を成年擬制(せいねん ぎせい)という。)という制度があったが、2022年からの民法改正により、この成年擬制の制度は削除された。(新制度では婚姻の時点で、すでに成年(18歳以上)なので。)


なお、成年擬制は、あくまで親権にだけ適用されるのであり、けっして、未成年者の飲酒や喫煙が認められるわけではない。


※ この婚姻の要件は、日本国内に居住していて日本国籍を持った日本国民どうしの男女の婚姻の場合である。たとえばイスラム圏などでは、一夫多妻の国もある。また、国によっては、婚姻可能な年齢が違う場合もある。(たとえば、「10歳以上」などのように、日本よりも若くても婚姻できる要件の国も、世界各国の中には、あるだろう。) そのような外国の国籍をもつ外国人が、旅行や留学や海外出張として日本に滞在している期間での婚姻、あるいは外国人と日本人との婚姻についての解説は、高度に専門的かつ難解な話題になる。このような国際結婚のような事例については、この科目の範囲外であり、高校レベルを大きく超えるため、本科目では、国際結婚などの説明は以降、省略する。

※ つまり、本ページで説明される「家族」とは、特にことわりがきのないかぎり、「婚姻」といえば日本国民どうしの夫婦の婚姻とするし、また「養子」も、養子縁組の前から養子も養親も既に日本国籍をもつとする。このように、もとから日本国民ばかりの家族の場合について、説明している。

(※ 範囲外:) なお、日本では、重婚は刑法違反でもある。(刑法184)つまり、重婚は犯罪でもある。

婚約[編集]

将来の婚姻を約束することを婚約という。

婚約をしあった男女の一方が、婚約を破棄したとき、破棄された側は、慰謝料や損害賠償などを請求できる。(婚約破棄は、いわば債務不履行のようなものだと見なされ、よって慰謝料や損害賠償の対象となる。)

また、婚約指輪や「結納」(ゆいのう)などは返還する義務がある。(婚約が不成立になった場合、もらった婚約指輪や「結納」などは不当利得のようなものと見なされ、よって返還義務を負う。)

婚姻の効力[編集]

婚姻をしている夫婦は、夫または妻の氏を称しなければならない。(民750) (※ 「氏」(し)とは、たとえば「山田」とか「鈴木」とか、ああいうの。「太郎」とか「花子」のことは、「名」(めい)という。)

政治的な議論にて、当事者夫婦の希望に応じて別々の姓をもちいるべきとの「夫婦別姓」の議論があるが、しかし、今のところ、夫婦別姓は日本の法律では認められていない。

また、夫婦は原則的に同居の義務がある。(民752) しかし、夫の転勤などによる単身赴任(たんしんふにん)などは、さしつかえない。

婚姻前に、夫婦のそれぞれが別々に持っていた財産についての婚姻後のあつかいは、特別に契約をしてないかぎり、法律の定める法廷財産制が適用される。そして、法廷財産制により、婚姻前に持っていた財産については、婚姻後も、それぞれ夫婦別々の財産である。つまり、夫が婚姻前に所有していた財産は、婚姻後も、夫の財産である。同様に、妻が婚姻前に所有していた財産も、婚姻後も、妻の財産である。これを別産制という。

婚姻前から有していた財産と、婚姻中に自己の名で得た財産は、特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産)となる。 ただし、夫婦どちらの財産か明らかでない財産については、夫婦の共有財産と推定される。(民法762の2)

また、夫婦は、その資産、収入その他の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する義務がある。(民760)

夫婦には、日常生活を協力しあう義務がある。また、日常の買い物などの債務は、夫婦は連帯責任を負う。(民761)正確には、夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をして債務が生じた場合について、他の一方は連帯責任を負う。(民761)ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。(民761)

また、民法には定められていないが、判例などにより、夫婦は、浮気をしない、つまり、夫婦以外の男女と肉体関係を持たない、などの貞操(ていそう)の義務をおたがいに負う。(参考文献: 川井健『民法入門』、有斐閣、第7版、430ページ) (高校の範囲外。)(大決大正15年7月20日刑集5巻318号)

離婚[編集]

婚姻が解消されるのは、夫婦の一方の死亡、または離婚によって、解消される。この節では、おもに離婚について言及する。

離婚をする方法については、夫婦の協議によって離婚する協議離婚(民763)、その他、不貞(ふてい)行為などの離婚原因があった場合に裁判を起こして離婚するという裁判離婚(民770)、また、裁判所に調停してもらって離婚する調停離婚、審判離婚、の4種類がある。

※ 裁判所の合意もなく一方的に離婚して配偶者を家から追い出す「追い出し離婚」は違法であり、日本では出来無い。離婚するには、夫婦どうしの協議、または裁判所での裁判をしたり、調停してもらう必要がある。

配偶者の一方が強度の精神病にかかり回復の見込みが無い場合、有責ではないが、裁判離婚などによって離婚できる。(民770)このように、離婚には相手の有責を必要としない。

親子の法律関係[編集]

民法などでいう「親子」とは、父母と、そのあいだの子のことである。

親子には、血縁関係にもとづく実親子関係と、いっぽう、養子と養親の関係のような養親子関係がある。

実子[編集]

夫婦である男女のあいだに生まれた子のことを嫡出子(ちゃくしゅつし)という。 夫婦以外である男女のあいだに生まれた子のことを非嫡出子といい、たとえば婚姻してない男女のあいだの子の場合や、あるいは婚姻相手以外の異性との子の場合(婚外子)である。

嫡出子であっても非嫡出子であっても、どちらとも、血縁のある子なので、これをまとめて実子という。

法律により、妻が婚姻中に懐妊(かいにん)した子は、夫の子である、と一応は推定される。(民772)このこと(妻が婚姻中に懐妊(かいにん)した子は、夫の子である、と一応は推定すること)を嫡出の推定という。

嫡出でない子については、父がその子を、自分(=父)の子であると認知(にんち)することで、その父と子のあいだに親子関係が成立する。(民779)

母の認知は、分娩の事実から分かるので、行政などの実務上、母の認知の必要ないとされている。 認知は、戸籍の届出によって行う。(民781) 父が認知しない場合、子は、裁判による認知の訴えを起こすことができる。(強制認知、民787)しかし、この強制認知の訴えは父の生存中および死後3年までしか起こせない。(民787但)

子が認知してもらうと、その法律的な効果は、認知してもらった子の出生のときにさかのぼって効果を発揮するが、しかし第三者に対しては、効果を及ぼせないのが原則である。このため、もし既に父が死亡しており遺産分割がすんでいれば、あらたに認知された子は自分の相続分の価額の支払いを請求できるだけである(民910)、として法律は権利を調整している。

養子[編集]

養子とは、その子は実子ではなく他人の子であるが、しかし自分は親代わりとなって、その子をもらいうける、という関係での子のことである。

そして、養子をもらった人、つまり親代わりの人物のことが、養親である。

養子には2種類あり、「普通養子」と「特別養子」という種類がある。

特別養子[編集]

「特別養子」とは、子と実の父母とは、まるで縁を切るような場合の、養子縁組の制度である。

どういう場合に特別養子が使われるかというと、たとえば実親に何らかの問題行為(育児放棄や児童虐待など)がある場合や、なんらかの理由で実親が子を監護するのが著しく困難な場合[1]、または状況にない場合[要出典]などに、子と実親との関係を断ち切るのが適切であると判断され、特別養子の制度が用いられる場合がある。そのため、戸籍などを調べても、特別養子の実親については、子本人以外には、簡単には調べられないようになっている。

特別養子縁組を行うには、養親となる者が、家庭裁判所に審判を申し出る。

そして、特別養子になった子と実親との親族関係は終了する。特別養子では、子と養親との間のみに親子関係が生じる。

特別養子になれる子は、原則として15歳未満とされている。(民817の5)

普通養子[編集]

普通養子の縁組(えんぐみ)[編集]

普通養子縁組により、未成年者を養子にするには、家庭裁判所の許可が必要である。ただし、自己の孫や配偶者の連れ子などを養子にする場合、裁判所の許可は不要である。(※ このような規定がある理由の推測: 孫や連れ子などは人数が限られており、養子縁組を乱発するなどの濫用の危険が少ない。また、すでに子が親族・血族・姻族などの近縁的な関係であるので、養子縁組によって改めて子の福祉が害されるような危険も少ないだろう、という判断だろう。)

夫婦が未成年者を普通養子にする場合、夫婦共同でしなければならない。(民795)

普通養子になっても、実親との親族関係は終了しない。

(※ 範囲外: )相続については、普通養子は、養親が死ねば、養親との親族関係にもとづき、普通養子も実子と同様に相続の対象になる。また、実親が死ねば、実子との親族関係にもとづき、相続の対象になる。

(※ 範囲外: )普通養子縁組での養親に、すでに実子がいる場合、実子と養子とは兄弟姉妹の関係になる。

離縁[編集]

普通養子は、婚姻における離婚のように、普通養子縁組も離縁することができ、原則として当事者(養子・養親)の協議によって離縁する協議離縁が原則である。(民811)

協議離縁が不調に終わった場合、家庭裁判所に訴えることができ、裁判所に離縁が認められれば、離縁できる。(民814)(なお、このような家庭裁判所による養子縁組離縁のことを「審判離縁」または「裁判離縁」などという。)

離縁が成立すると、養子だった子は、養親だった人物との親族関係が終了する。また、養子だった子の氏については、離縁すれば、縁組前の氏に戻るのが原則である。(民816の1) (※ 高校範囲外→)しかし、すでに長期間のあいだ縁組後の氏を使用するなどしていて、氏をもどすことが経済的理由などで不利益になる等の事情の場合もあるので、よって民法では、7年以上の養子縁組をしていた場合には離縁の日から3ヵ月以内に届出をすることにより、縁組中に使用していた氏を使いつづけられる、(民816の2)という内容の規定を定めている。

相続[編集]

親に借金のある場合の対策[編集]

(※ 高校の普通科では、一般には習わない。しかし、『経済活動と法』の範囲内。)

もし親が死んだら、子は財産を相続するのが原則であるが、このとき、もし親に借金が多いと、原則的には子供は借金も相続することになってしまう。民法で、そう定められている。日本の相続制度は、このような「単純承認」(たんじゅん しょうにん)という制度になっている。


貯金よりも借金が多い場合に相続を断るには、死亡後から3ヶ月以内までに家庭裁判所に申請しなければならない。そのとき「限定承認」(げんてい しょうにん)または「相続放棄」(そうぞく ほうき)を家庭裁判所に申請します。

「限定承認」とは、分かりやすく言うと、もし、親の貯金や資産と、親の借金を差し引きして、もし借金のほうが多ければ、相続しない、という選択です。より正確には、相続される債権と債務とを比べて、債権から債務を差し引くことで弁済し、もしも債務超過の場合には,はじめから相続人でなかった、とする制度である。

限定承認をするには、相続人全員の賛成が必要になり、家庭裁判所に申し出る必要がある。

「相続放棄」とは、単に、親に債務(借金など)があろうが無かろうが、親から何も相続しない、という選択です。

限定承認か相続放棄をしないと、たとえ貯金よりも借金が多くても、相続しないといけなくなりますので、借金ごと相続してしまいます\。

例えば、もし親が会社経営をしている場合などで、会社の業績が悪い場合には、多額の借金を抱えてる場合がありうるので、注意が必要です。

なお、限定承認をするには相続人全員の賛成が必要になるので、実質的には限定承認が困難である場合もありうる。なので、親の債務(借金など)が多いかもしれない場合には、相続放棄をするのが安全だろう。

※ 相続の仕組みなどを知らないのが普通なので、ついつい限定承認などの手続きをためらってしまいがちですが、早めに申請しないと大変なことになる場合があります。
※ そもそも単純承認を原則にした民法自体に欠陥がある気もしますが、現実として日本の民法の相続の制度は、親の財産が借金の場合でも単純に相続する「単純承認」を原則とした制度になってるのが実情です。もしアナタが死亡した親の借金を相続させられてしまい、誰かを恨むなら、有権者と政治家を恨みましょう。このような、民法の欠陥を放置してきた人とは、有権者自身です。民法の議論を怠り、憲法論議ばかりをしてきた、無能な有権者たちの自己責任でしょう。有権者が選挙権を持ってるとは、そういう事です。法律の欠陥は、有権者の愚かさの表れでもあります。

つまり、相続の開始から3ヵ月以内に限定承認または相続法規をしないと、単純承認をしたと見なされる。これを法定単純承認という。

遺言(いごん)[編集]

法律的に遺言書で指定した場合に法的な効力をもつ事項とは、遺言者の財産の処分、子の認知、未成年後見人や後見監督人の指定、などの事柄、など、ごく一部の事項に限られる。


相続で有効となる遺言書の方式には、公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類がある。(民967〜970)遺言書を発見した場合、公正証書遺言を除き、自筆証書遺言および秘密証書遺言の場合には家庭裁判所で検認をしてもらわなけばれならない。(民1004の1)

遺言書の書式が間違ってたりすると無効になってしまうので、なるべく公正証書遺言で遺言を作成するのが安全だろう。公正証書遺言は、公証人が公正証書によって作成する遺言であり、厳格な手続きが定められている。 公正証書遺言の作成とは、公証人が遺言者の遺言についての口頭発言を聞いて直接確認し(この口頭伝達のさい、証人2名の立ち会いが必要である)、そして公証人が遺言書を筆記して作成するという方式である。


自筆証書遺言[編集]

自筆証書遺言は、遺言者が、遺言の全文、日付および氏名を自書し、これに印を押すことが必要である。(民968) これらの要件を満たさないと、その自筆証書遺言は無効になる。

自筆証書遺言からは遺言者の筆跡が分からねばならない、という要件があるため、したがって、もし自筆証書遺言をワープロソフトで作成したら、(筆跡が分からないので)無効である。また、他人に口述筆記させても、自筆証書遺言は無効である。

(範囲外: )DVDなどで発言を録音録画した場合でも、筆跡が分かるという要件を満たさないため、自筆証書遺言としては無効である。

秘密証書遺言[編集]

秘密証書遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。

・ 遺言者が、その証書に署名し押印すること。
・ 遺言者が、その証書を封じて証書に用いた印鑑で封印すること。
・ さらに、遺言者が、この封印された証書を、公証人1人および証人2人以上の前に提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述すること。

(※ 民法970をもとに、高校生用に要点を整理。もし読者が条文そのものを確認したければ『民法第970条』を参照せよ。)

範囲外[編集]

(※ 主な参考文献: 有斐閣『民法VI 親族・相続』、前田陽一ほか、第3版、)
(※ 主な参考文献: 有斐閣『民法入門』、川井健、第7版、)
  • 遺言能力

遺言は、15歳以上から可能である。(民961) 遺言は、15歳以上から、単独で可能である。

たとい遺言者が、未成年や成年被後見人などの行為能力制限者であっても、遺言を残す時点で15歳以上であれば、遺言を残せる。(民962)

民法では遺言者の自由意思を尊重するため、遺言は、15歳以上なら誰であっても、単独で遺言が可能なのである。


  • 共同遺言の禁止

ひとつの証書で2人の遺言者が遺言を残す「共同遺言」は禁止されている。(民975)共同遺言の法的効力は無効である。

もし共同遺言を法的に認めてしまうと、遺言者の自由意思が、片一方の遺言者によって干渉されてしまい、自由意思が損なわれる。このような懸念もあり、共同遺言は禁止されている。

夫婦共同で遺言書を残すことも、共同遺言であり、無効になってしまいかねない。なので、夫婦共同で1つの遺言書には、遺言してはならない。


  • 遺言の撤回

遺言者の生存中なら、遺言は何度でも撤回できる。(民1022) 遺言者の自由意思を尊重するため、生存中なら遺言は何度でも撤回できる。


  • 複数の遺言書が存在するとき

遺言が複数個、存在するときは、死亡時点にもっとも近い遺言書が適用されるのが原則である。この理由は、死亡時点にもっとも近い遺言が、遺言者の最終意思として、尊重される。


  • 普通方式と特別方式

遺言の方式には、「普通方式」と「特別方式」とがある。前述した公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言は、普通方式である。遺言は原則として普通方式で行う事になっている。

しかし、伝染病で隔離されてる人物は、一般の公証人などに面会する事もできないだろうし、普通方式の遺言は困難である。また、船舶の遭難者も、普通方式の遺言が困難である。

よって、特別方式の遺言として、伝染病隔離者の遺言(民977)、在船者の遺言(民978)、船舶遭難者の遺言(民979)、などが定められている。

とはいえ、これら特別方式にも、厳格な手続きや要式が定められており、それを急に習得するのは無理だろう。だから、もし自分が高齢になったりしたら、なるべく普段から遺言を準備しておくのが安全だろう。

また、特別方式遺言は、遺言から一定の日数以内に、証人などによって家庭裁判所に遺言書を届け出る必要があり、そして裁判所によって、その遺言書が遺言者の意思である事を認められる必要がある。

なお、普通方式の遺言が出来るようになってから6か月以上が経つと、特別方式の遺言の効力は消滅する。(民976)

  1. ^ 厚生労働省『特別養子縁組制度について』 2021年6月17日に閲覧して確認