高等学校工業 機械工作 各種の工作法

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主な工作法[編集]

鋳造[編集]

高温に加熱して溶解させた金属は流動するようになるから、これを中空の鋳型に流しこんで製品を作ることが出来る。このような、作ろうとする製品と同じ形状の空洞部に、溶かしこんだ金属を注ぎ込んだあと、冷えるのを待って、目的の形状に固まるのを待つ工作法を鋳造(ちゅうぞう、英: casting)という。また鋳造してできた製品を鋳物(いもの、casting )という。 中空部を持ち、溶融金属が注ぎ込まれる型を鋳型(いがた、mold)という。 鋳造用に溶かされた金属を、(ゆ、molten metal)と呼ぶ。 鋳型の材質には、普通は、砂で型を作る砂型(すながた、sand mold)が使われる事が多い。この砂は、けい砂を主成分とし、粘土などを結合剤として混合された鋳物砂(いものすな、molding sand)である。 なお、鋳型には金型が使われる場合もある。 砂が使われることが多い理由は、繰り返して使うことができ、耐熱性もあり、取り扱いも簡単なのが主な理由である。 鋳型の空洞部を作るには、木材などで原型(げんけい、pattern)を用いる。(模型ともいう) このような木材の原型を木型(きがた、wood pattern)という。

模型の種類[編集]

現型(solid pattern)には、次の単体型と割り型との2種類がある。

  • 単体型

鋳物とほぼ同じ形状(後述する縮み代などのため、若干、鋳物と形が変わる。)を、分割しないで全体が一体になった模型でつくる型。

  • 割り型(split pattern)

全体を二つ、または二つ以上に分割して作った模型 割り型の結合および位置合わせ用に、ダボとダボ穴がある。


鋳物の形状に対称性があって、かつ形が単純で、型が砂型の場合、制作の手間を抑えるため、引き型やかき型で型を作る場合がある。製作数は少ない場合に向く。  

  • ひき型(回し型)

砂型で、軸対象な鋳物を作る際、引き板を回転させて、砂型を作る。

  • かき型

管状のような、軸方向に変化の無い断面を持つ砂型を作る際、板状の模型をスライドさせて砂をかきとって,砂型を作る。


中子と外型[編集]

中子(なかご、core)とは、鋳物に穴などの中空な部分を持たせたいときに用いる砂型である。中空部に相当する砂型を作って、これを外側の全体の鋳型である主型(おもがた、master mold)という。外型ともいう。外型を作る際に、空洞部の所定の位置に中子を組み込むための窪みが必要である。外型の形状を木型で型をとる場合、この窪みに相当する木型の突起部分を幅木(はばき、core print)という。 中子を用いるか決める際の注意事項として、中子による中空の鋳物では、薄肉の鋳物は避けなければいけない。仕上がり精度などの理由による。

原型の製作での留意事項[編集]

縮みしろ[編集]

(縮み代)。鋳込んだ湯(molten metal)は、冷却および凝固に伴い収縮するので、原型はそれを見込んで、あらかじめ寸法を大きく作る。 鋳鉄の場合、原型の寸法1000mmあたり、縮み代は8mm ~ 10mmである。 鋳造用の主な金属の縮み代をまとめると、おおよそ以下のとおり。(文献により縮み代の数値は、若干、変化する。)

  

  • 鋳鉄 : 1000mmに付き8~10mm
  • 鋳鋼 : 1000mmに付き16~20mm
  • 黄銅 : 1000mmに付き14mm
  • Al合金 : 1000mmに付き12mm

縮みしろの計算の手間を省くための物差しとして、あらかじめ鋳造計算用に目盛間隔の伸びた物差しである鋳物尺、伸び尺がある。鋳型の材質、寸法、場所などによって違った伸び尺を用いる。  

仕上げしろ[編集]

(machining allowance)、削りしろ。 仕上げしろとは、鋳物を機械加工して仕上げるための寸法で、模型を大きめに作る。 鋳物の表面(黒皮)は粗く、寸法も不正確な場合がある。そのため精密な寸法および表面にするために、表面を削り取る必要がある。なので、加工分を見込んで模型を大きめに作る。 鋳鉄の場合は仕上げしろは、ふつうは3mm~5mmである。大きい鋳造品の場合は 5mm~10mmになることもある。      

抜け勾配[編集]

(あるいは、抜き勾配)(taper) 模型を鋳型から抜き出しやすくするために、模型を抜き取る方向に広げた勾配をつける。これを向け勾配という。JIS規格に勾配を2/100~5/100と定められている。

面取り[編集]

(rounding)、および、すみ肉。 鋳物に角ばった部分があると、亀裂が生じやすい。なので丸みをつける。


鋳型の構造[編集]

  • 湯だまり(ゆだまり)

湯が注ぎ込まれる部分。鋳型への湯の経路は、湯だまりから湯口(ゆぐち)、湯道(ゆみち)、せきを通って、鋳型に達する。受け口ともいう。 スラグが内部に入らないようにするために鋳物本体の空洞部から距離を離して上に設けている。

  • 湯口(ゆぐち)

湯だまりからの湯を湯道に導き、鋳型に注ぎ込むための通路。

  • 押し湯

鋳物の冷却・凝固による収縮によって、そのままでは鋳型の内部に空洞部ができるので、湯を補給するために押し湯が設けられる。

  • 上がり(揚がり、あがり)

湯が空洞部を満たしてることを見て確認するために設ける、鋳物部分から上方向への穴である。また、他の目的として、ガス抜き穴を兼ね、鋳型内の空気を追い出したり、スラグなどの不純物や酸化物を鋳型の外に出すために設ける。

  • ガス抜き穴

鋳型内部にあった空気ガスを鋳型外部に逃がすために設ける、鋳物部分から上方向への穴である。


鋳型の種類[編集]

  • 生砂型

砂粒に粘結剤と水分を加えて混練した鋳物砂をもちいる。この砂粒は、石英を主成分とする、けい砂である。天然の砂粒はケイ素を主成分とすることが多いので、このようなケイ素を主成分とした砂を生砂という。粘結剤には粘土とかベントナイトbentoniteを用いる。「生砂型」は、「生型」とか「砂型」とも言われる場合がある。鋳物砂の粘結剤が天然由来の粘土の場合、この鋳物砂を「山砂」ということがある。土木用語でいう「山砂」と、鋳造用語の「山砂」は、定義が異なるので注意。

  • 金型

金属で作った鋳型のことである。 砂型よりも製品の肌触りがよく出来る

  • ベントナイト

なお、ベントナイトbentoniteとは岩石名で、主成分としてモンモリロナイトmontmorilloniteやバイデライトbeidelliteを主成分とする粘土の総称であり、火山灰や溶岩が風化して粘土状になったときにできる。ベントナイトを膨潤土とも呼ぶ。

  • CO2 プロセス(CO2 precess)、炭酸ガス法

無機質 自硬性 鋳型の一種。 原料として

  • けい砂、
  • 濃い珪酸ナトリウム水溶液 Na2 O・n SiO2(水ガラス、珪酸ソーダ)

などを混錬する。 造型後に、CO2 ガスを吹き込むことで、以下の反応が起こり硬化する。

Na2O・nSiO2 + CO2 →Na2CO3(炭酸ナトリウム、炭酸ソーダ) + nSiO2

反応後にアルカリ性の炭酸ナトリウムを生じるのでケイ砂が再利用できない。 後述するフラン樹脂を利用した方法が、砂の再利用が可能であり、CO2 プロセスは減っている。


  • フラン樹脂型

フラン樹脂は、フルフラール(furfural)(C5H4O2。芳香族アルデヒドの一種。示性式は(C4H3O)CHO 。)からや、またはフルフリルアルコール(Furfuryl alcohol)(C5H6O2。構造式C4H3O-CH2-OH)から作られる樹脂の総称。フラン (furan)とは、4個の炭素原子と1個の酸素原子から構成される5員環の複素環式化合物C4 H4Oである。 原料として・ けい砂、フラン樹脂などを混錬する。これは常温で硬化する、また加熱すれば速やかに硬化する。

  • 熱硬化性鋳型

例として後述するシェルモールド法のように、熱硬化性樹脂を混ぜた砂で、鋳型を作る方法。

  • コールドボックス法

コールドボックス法(cold box)は、ウレタン樹脂を混ぜた鋳物砂で作った砂型にアミン系ガス(トリエチルアミンなど)を通気して鋳型を瞬時に硬化させる方法。 硬化速度は速い。

  • ジョルトスクイーズ造型機(jolt squeeze molding machine)

溶解炉[編集]

溶解炉には、コークスの燃焼熱を用いるキュポラcupola furnace、るつぼ炉、アーク熱を用いるアーク炉arc furnace、地金に誘導電流を流し抵抗熱で溶かす誘導電気炉などがある。


キュポラ[編集]
  • 構造

キュポラは、地金とともに入れたコークスの燃焼熱で地金を溶かし鋳物を得る溶解炉である。 たいていの構造は、鈑等を円筒形に加工した構造物が縦型に設置され、その内壁には耐熱れんがや耐火モルタルで内貼り(lining)している。下部には空気を送るための羽口がある。炉内にコークスを積み(ベッドコークス )、その上に地金とコークスを装入する。

  • キュポラの操作方法

地金の溶解方法は、炉の底の薪やコークスに着火し、その上に初込めコークスを投入する。羽口(はぐち)から送風機で空気を送って火を強める。 初込めコークスが全体的に燃え始めてから、挿入口から地金と石灰石を入れ、ついで追い込みコークスを入れる。 くわえた石灰石の役目は、不純物の酸化鉄や砂、灰分に流動性を与える溶剤(flux)である。

るつぼ炉[編集]

るつぼに入れた地金をその外部から重油、都市ガスなどの燃焼熱で熔解する

アーク炉[編集]

arc furnace 。 アーク放電時に強い熱(アーク熱)と光が放出される。アーク炉ではアーク熱を利用して材料を溶解する。エルー式電気アーク炉が有名である。電極は消耗するので、必要に応じて繰り出す。アーク炉は電弧炉ともいう。


誘導電気炉[編集]

induction furnace。 一次コイルに高周波電流を流すことで,誘導電流を地金に生じさせ地金を抵抗熱などで溶解させる。誘導電流による熱のメカニズムには鉄損や銅損、ジュール熱やヒステリシス損など様々あるが、それの解説は機械工作の目的とは離れるので、本書では電気磁気学的な考察には立ち入らないとする。 電源周波数には50Hzまたは60Hzぼ商用電源を用いる低周波誘導電気炉と、500Hz~10000Hzの電源周波数を用いる高周波誘導電気炉がある。


特殊鋳造法[編集]

ロストワックス法[編集]

Lost wax casting(インベストメント法Investment casting)。 まず鋳造する製品と同じ形状の原型を、ワックスwax(ろう)などの融点の低い材料で製作する。次に原型の周囲を耐火性の鋳型材料で焼き固める。耐火性の鋳型材料には、例えば、けい砂にエチルシリケート水溶液を混ぜたものを使う。このとき原型のワックスは熱で溶けるので、そしてワックスを流出させる。こうして鋳型が完成する。


シェルモールド法[編集]

shell mold process 。 けい砂に熱硬化性樹脂のフェノール樹脂や尿素系樹脂などのプラスチックを混ぜた型砂を、加熱した金型にかけて硬化させ、鋳型の硬化に利用している。型砂にはフェノール樹脂を5%くらい混ぜた砂をレジンサンドとして用いる。または、けい砂の表面を熱硬化性樹脂で被覆したレジンコーテッドサンドを用いる。このレジンサンドを、あらかじめ加熱した金型にふりかけてレジンサンドが硬化しシェルとなる。これを砂で周辺を固めて鋳型とする。 シェルモールド造型機によって作られる。

利点は

  • 通常の砂型を使用した鋳物と比較して、寸法精度が高い。
  • 機械製造のため、大量生産に適している。
  • 未使用の鋳型は、水分を含まないため長期保存が可能。

欠点は

  • 鋳造時には粘結剤が加熱され臭気を発する。
  • 鋳物砂を再利用が原則として不可能。


ダイカスト[編集]

(Die Casting)。 まず精度の高い金型(ダイス)を作り、金型に溶融した金属を、加圧注入装置を用いて高圧で注入し、凝固させる方法。 鋳造にはダイカスト機(Die Casting machine)を用いる。 金型を用いるので、砂などの混入がなく、高い寸法精度の鋳肌の優れた鋳物を、一工程で得られる。大量生産する場合に用いる事が多い。 金型を使うので、融点の高い鋳物には適さない。ダイカスト法で使用する金型は、鋳造したダイカストを取り出せるように少なくとも2つの部分よりなっている。 金型には型抜き方向にテーパーが必要である。 ダイカストはダイキャストとも言われる。

欠点

  • 空気の巻き込みや不充填

ダイカストでは鋳造時に溶湯を高速・高圧で金型に圧入するため、金型内の空気や離型剤を製品に巻込みやすい。 その結果、不良として製品内部への空気の巻き込みや不充填などが起こりやすい。このため、強度が必要な製品には適さない。

  • 鋳物が一体にならない不具合

砂型に比べ金型は熱伝導率が高いため、溶湯の冷却(凝固)速度が高く、温度差から溶湯が溶け合わないことがあり,、いわゆる湯境(ゆざかい、cold shut)が発生しやすい。なので大型品や肉厚品などへの適用が難しい。


低圧鋳造法[編集]

低圧鋳造法(low pressure casting)は、密閉された、るつぼ内に、圧縮空気(差圧は1気圧以下)などを吹き込み、浴湯を押し上げて金型に注ぎ込むようにした方法である。金型の注湯には、金型下部の給湯管(ストーク、導管)を通じて、溶湯が低速かつ低圧で注入される。


高圧鋳造[編集]

High Pressure Die Casting


遠心鋳造法[編集]

遠心鋳造(Centrifugal casting)あるいは遠心鋳造法(Centrifugal casting process)は、鋳型を軸周りに回転させながら、鋳型に溶湯を注入し、溶湯に作用する遠心力によって内壁に押しつけることを利用した鋳造法。パイプやピストンリングなどの中空の鋳物を作る場合に用いられる。

遠心鋳造の特長は、

  • 中子を用いずに中空の鋳物が生産でき る。
  • 湯口や押湯を必要としないで済みやすく、歩留りが向上する。
  • 遠心分離の原理で、不純物は分離しやすく内面に浮上しやすい。そのため、内部に不純物や気孔などが少なくなるので、強度が良くなる。

欠点は、

  • 溶湯の合金の種類によっては、遠心力で偏析されることがある。
  • 厚肉品では困難。 一因として、外周部と内周部にかかる遠心力が異なるため。


金型鋳造法[編集]
Vプロセス法[編集]

減圧鋳造法(Vacuum Sealed Moulding Process)のこと。砂型の材料となる砂を、密閉して減圧すると、砂粒子が結合し粘結剤がなくても結合することを利用したもの。


フルモールド鋳造法[編集]

フルモールド鋳造法(Full mold casting )とは発泡ポリスチレンで作った模型を、鋳型に埋め込み、造形後、発泡ポリスチレン模型を型抜きせず残したまま、溶湯を注入し鋳物を製造する方法。 注入された溶湯の温度で樹脂は燃焼してガス化するので模型部に浴湯が充填する。 ガスや燃えかすが不良の原因になるので、ガス抜きなどが必要になる。

用語集[編集]

  1. 鋳造法 - 金属を溶かして型に流し込み、冷やして成形する方法。
  2. 砂型 - 砂を型枠に詰めて作る鋳型。
  3. 金型 - 金属で作られた鋳型。
  4. コークス - 石炭を加熱して得られる炭素質物質。
  5. 鉄鋳物 - 鋳造法で作られる鉄の製品。
  6. アルミニウム鋳物 - 鋳造法で作られるアルミニウムの製品。
  7. スラグ - 鉄や鋼の製造過程で出る不純物や廃棄物。
  8. 冷却水 - 鋳造時に金属を冷やすために使われる水。
  9. 浸漬 - 鋳造品を加工する前に、水中に浸して急冷すること。
  10. 線引き - 鋳造品の表面に溶接のための線を引く作業。
  11. 切断 - 鋳造品を切り分ける作業。
  12. チルドレン - 鋳造品の外形に沿って、金属の冷却速度を調整するために設置される部材。
  13. 熱処理 - 鋳造品を加工する前に熱を加え、硬さや耐久性を調整すること。
  14. メッキ - 鋳造品の表面に金属を蒸着させること。
  15. フィン - 鋳造品の表面に複数の凹凸をつけ、熱伝導面積を増やす。
  16. ライニング - 鋳造物内部に耐火物を貼り付け、耐火性や酸化防止性を高めること。
  17. テンパリング - 鋳造物を高温で加熱してから急冷し、硬度を調整すること。
  18. 溶解 - 金属を加熱して液体化すること。
  19. 熔解 - 金属の混合物を解体し、成分を分離すること。
  20. スカム - 溶解時に表面に浮かび上がる不純物質。
  21. ガス射出法 - 金属を高圧ガスで射出して成形する方法。
  22. ロストワックス法 - 精密な金型を作り、それを元にワックスの型を作って鋳造する方法。
  23. 圧延 - 鋳造した製品を圧力をかけて整形すること。
  24. 鍛造 - 熱した金属を打ち出して成形すること。
  25. 突水法 - 鋳造品を冷却水に入れて一気に冷やすことで、硬度を高める方法。
  26. 細分鋳造 - 鋳造を細かく分け、高精度な製品を作る方法。
  27. サンドブラスト - 砂を高速で吹き付け、表面を磨くこと。
  28. ハンマー鍛造 - 手作業で熱した金属を叩きながら成形する方法。
  29. 真空鋳造 - 無酸素環境の中で鋳造する方法。
  30. ナノ鋳造 - ナノテクノロジーを使って微小な精度で鋳造する方法。
  31. 自由成形鋳造 - CADソフトで設計した金型を使って自由な形状の製品を作る方法。

溶接[編集]

溶接( Welding )とは、複数の金属を加熱し、溶かして一体化させる加工方法です。溶接は鋳物、鍛造、接着技術と並ぶ、金属加工の基本技術の一つです。溶接の技術が進化するにつれ、自動化・高速化、多様な材料の溶接・接合が可能となり、自動車産業から航空宇宙産業、原子力発電所など、多岐に渡る分野で活躍しています。

本章では、溶接の基本原理や用語、種類、材料の溶接方法などについて解説します。加えて、溶接における安全管理やトラブルの対処方法についても取り上げます。溶接を行う際には、加工材料や環境に応じた適切な技術を選択し、安全に作業を行うことが重要です。

塑性加工[編集]

塑性加工( Plastic working )とは、加工対象物の塑性変形を利用することで形状を変える加工方法の一つです。この方法は、金属をはじめとする多くの材料に広く用いられ、様々な製品を生産する上で欠かせない技術の一つです。

塑性加工には、圧延、引張り、曲げ、打ち抜き、鍛造などの方法があり、それぞれ異なる加工原理と工程があります。本章では、これらの加工方法について詳しく解説し、描画や実験を通じて、その工法の理解を深めることを目的としています。

また、本章では、塑性加工において欠かせない材料の選択や加工工具の設計など、加工に必要な要素についても触れます。これらの知識を身につけることで、より効率的な塑性加工を行うことができます。

切削[編集]

切削( Cutting )とは、加工物に対して工具を回転させたり前進させたりすることによって加工する手法です。この手法によって、機械加工において必要な形状や寸法を正確に作り出すことができます。切削に必要な要素としては、適切な刃先形状と刃先材料の選定、適正な回転数と送り速度の設定、適切な冷却・潤滑の導入などが挙げられます。本章では、各種の切削工具やその適正な使用方法について解説を行います。また、工作作業において欠かせない切削加工について、基本的な規則や注意点についても説明します。

用語集[編集]

  1. 切削速度(Cutting speed):切削工具の回転速度と被削材との接触面(切削速度)の速度のこと。
  2. 送り速度(Feed rate):工作物が工具から加工される速度のこと。
  3. 深さ(Depth of cut):被削材から削り取る量。
  4. チップ(Chip):切削加工時に発生する金属くず。
  5. フライス盤(Milling machine):切削加工を行う機械。
  6. レーザーカッター(Laser cutter):レーザーを用いて素材を切断する加工機。
  7. CNC工作機械(CNC Machine):デジタル信号などを用いて、高精度な自動加工を行う機械。
  8. ボーリング(Boring):既存の穴を広げる加工。
  9. ターニング(Turning):旋盤を用いて棒状の素材を回転させ、切削する加工。
  10. スクリューマッハイニング(Screw Machining):自動旋盤を用いた高速かつ効率的な加工方法。

研削[編集]

研削( Grinding )とは、工作物の表面を研磨する工作法の一つです。この工程を行うことによって、工作物の形状の精度や表面の仕上げを向上させることができます。また、研削によって材料の強度を向上させることができたり、摩擦抵抗を減少させることができるといった効果もあります。

研削は、砥石と呼ばれる専用の工具を用いて行われます。砥石は、様々な種類の材料や形状があり、研削する工作物に合わせて適切な砥石を選択する必要があります。また、研削には、適切な加工条件や冷却液の使用が必要です。

この章では、研削についての基礎知識や、砥石の選び方、加工条件や冷却液の使用方法などについて解説していきます。実際に研削を行い、工作物の表面を高精度かつ美しく仕上げる技術を身に付けましょう。

用語集[編集]

  1. 研削:回転する砥石を用いて、物体を削り取る加工方法。
  2. 砥石:砥料を合着剤に練り込んで成形し、焼成してできた研削用の工具。
  3. 粒度:砥粒の大きさを示す指標。番号が小さいほど細かい砥粒で、削り取り精度が高い。
  4. 砥粒:砥石の成分で、物体を削り取るための鋭利な粒子。
  5. 良好度:研削加工で表面の粗さを示す指標。表面が均一であるほど良好度が高い。
  6. 直線研削:平面研削とも言い、平面状の物体を削るための研削加工方法。
  7. 円筒研削:円筒状の物体を削るための研削加工方法。
  8. 内径研削:内径に砥石をあてて削る加工方法。
  9. 外径研削:外径に砥石をあてて削る加工方法。
  10. センターレス研削:中心をとらずに物体を削る加工方法。
  11. スルーフィード研削:物体を研削しながら進める加工方法。
  12. プランジ研削:物体を一定量研削し、進める加工方法。
  13. 仕上げ研削:良好度を高めるため、最後に行う研削作業。
  14. ドレス:砥石表面の砥粒を整える作業。
  15. トラバース:砥石を物体に対して直角方向に進める作業。
  16. フィードレート:砥石を物体に対して進める速度のこと。
  17. グラインダー:研削機の一種で、砥石を回転させることで物体を削る。
  18. サーフェスグラインダー:平面研削に特化したグラインダー。
  19. センターレスグラインダー:センターレス研削に特化したグラインダー。
  20. 内面研削盤:内径研削に特化した研削機。
  21. ウエストン式研削盤:円筒研削に特化した研削機。
  22. 研削液:研削時に使用する冷却・潤滑剤。
  23. 液温管理:研削液の温度を管理し、研削時の品質を保つこと。
  24. 漏れやす:研削液の滲み出しやすい性質を持つこと。
  25. 形状安定性:砥石が削り取る物体の形状に応じて変形しない性質。
  26. 砥石の磨耗:使用によって研削能力が低下する現象。
  27. 面荒れ:砥石表面が粗くなって削り取りが甘くなる現象。
  28. 砥石交換タイミング:研削能力が落ちた砥石を交換する時期。
  29. 積層砥石:複数の砥粒・合着剤を重ね合わせて作った砥石で、高い削り取り能力を持つ。
  30. 一体砥石:砥粒と合着剤が一体となって作られた砥石で、安定した研削能力を持つ。
  31. ダイヤモンド砥石:ダイヤモンドを砥粒に用いた、高硬度で高精度・高品質の砥石。
  32. セラミックス砥石:セラミックスを砥料に用いた、高耐久性を持つ砥石。

特殊な工作法鋳造[編集]

放電加工[編集]

放電加工( electric discharge machining )とは、金属加工技術の一つであり、電気放電を利用して金属を加工する方法です。放電加工には、ワイヤーカット放電加工、電極放電加工、穴あけ放電加工などがあり、それぞれの特性に応じた加工が可能です。

この技術は、精密な金属加工に欠かせないものであり、自動車や航空機、医療機器などの分野で広く活用されています。

本章では、放電加工の基本的な原理や種類、さらには応用例について詳しく解説していきます。加工技術に興味のある方や、専門的な知識を身につけたい方にとって、有用な参考書となることでしょう。

用語集[編集]

  1. 放電加工(electric discharge machining)- 電気放電を利用して、金属を削り取る加工技術。
  2. 放電電極(electrode)- 放電加工で用いられる導電性の棒や板。
  3. 作業材料(workpiece)- 放電加工で加工される、金属の材料。
  4. 電解液(dielectric)- 放電加工の過程で、放電を制御するための導電液。
  5. 放電部(spark gap)- 電極と材料の間にある間隔。
  6. ジャンプ機能(jump function)- 放電電極を素早く移動させる機能。
  7. 開始加工位置(start position)- 作業材料の加工開始位置。
  8. 終了加工位置(end position)- 作業材料の加工終了位置。
  9. ステッピングモーター(stepping motor)- 電気的信号をもとに、正確な位置決めを行うモーター。
  10. ワークタンク(work tank)- 電解液を満たすタンク。
  11. ジェネレータ(generator)- 放電加工のための電源装置。
  12. 入力電圧(input voltage)- ジェネレータに入力される電圧。
  13. 放電の電力(discharge power)- 放電によって放出されるエネルギー。
  14. 熱力学的効率(thermodynamic efficiency)- 放電加工におけるエネルギー変換の効率。
  15. アーク形成(arc formation)- 放電加工の過程で、放電によって焼けた一部が、アークとして残る現象。
  16. 溶融層(melted layer)- 放電によって作業材料から溶けた部分。
  17. 放電されるエネルギー(discharge energy)- 放電に利用される電力の量。
  18. 材料特性(material properties)- 放電加工対象の材料の特性。
  19. 誘電率(dielectric constant)- 電解液の導電度を示す物理学的定数。
  20. 表面仕上げ(surface finish)- サビや傷を取り除き、滑らかにする加工のこと。
  21. 異方性(anisotropy)- 同じ材料でも、物理的特性が方向によって異なる現象。
  22. 放電パルス(discharge pulse)- 電極に流れる放電の電気パルス。
  23. 放電領域(discharge area)- 放電する領域。
  24. ワークテーブル(worktable)- 作業材料を支えるテーブル。
  25. 放電測定器(discharge monitor)- 放電に関する電気的パラメータをモニターする器。
  26. 露出量(exposure)- 作業材料表面における放電加工の深さ。
  27. エッジ効果(edge effect)- 材料のエッジ部分で生じる放電の現象。
  28. 絶縁材料(insulator)- 電気を通さない素材。
  29. 散熱機構(cooling mechanism)- 放電加工で発生する熱を逃がすための機構。
  30. 放電加工機(EDM machine)- 放電加工を行うための機械。
  31. 精度(accuracy)- 加工された作業材料の寸法精度。
  32. 加工時間(processing time)- 作業材料を加工するために必要な時間。

電解加工[編集]

電解加工( Electrochemical Machining )は、金属加工の一つであり、電気化学的腐食法とも呼ばれます。この技術では、導電性の金属を電解液中に浸して、電極として電流を流すことで、精密な形状を持つ微細な穴あけや切削加工を行うことができます。

電解加工は、他の金属加工法では難しい高硬度材料の加工が可能であり、また、加工後の表面粗度も非常に滑らかであるため、精密部品の製造に広く利用されています。

本章では、電解加工の基本原理や具体的な加工方法について解説し、読者の皆様にとって有益な知識を提供することを目的としています。

用語集[編集]

  1. 電解加工 (Electrochemical Machining): 電気化学的作用を利用して金属を加工する方法。
  2. 電極 (Electrode): 電解加工において電力を供給するために使用される導体。
  3. 陽極 (Anode): 電解加工において溶解性のある金属部品を含む作業ピースに接続される極。
  4. 陰極 (Cathode): 電解加工において電極として使用される金属部品。
  5. 電解液 (Electrolyte): 電解加工に使用される導電性の高い液体または溶液。
  6. 電容 (Capacitance): 電解加工における陽極と陰極の間に形成される電気的な容量。
  7. 電気化学反応 (Electrochemical Reaction): イオン化合物と他のイオンまたは電子との化学反応。
  8. パルス電圧 (Pulse Voltage): インパルス電源を使用して、短い時間内に高い電圧を生成する方法。
  9. パルス幅 (Pulse Width): パルス電圧が生成される時間の長さ。
  10. パルス間隔 (Pulse Interval): 連続したパルスの間隔。
  11. パルス時間比 (Pulse Duration Ratio): パルス幅とパルス間隔の比率。
  12. 電極寿命 (Electrode Life): 電解加工において使用される電極の寿命。
  13. 精度 (Accuracy): 電解加工で加工される形状の正確さ。
  14. 粗さ (Roughness): 電解加工で加工された表面の不均一性。
  15. オーバーカット (Overcut): 電解加工で加工された表面の削り過ぎ。
  16. アンダーカット (Undercut): 電解加工で加工された表面の削り足りなさ。
  17. 加工時間 (Machining Time): 電解加工のために必要な時間。
  18. 除去率 (Removal Rate): 電解加工で取り除かれる金属の量。
  19. 密度 (Density): 電解加工によって得られる部品の密度。
  20. 活性化 (Activation): 電解加工によって活性化された金属表面の化学的特性。
  21. 切削力 (Cutting Force): 電解加工によって発生する切削力。
  22. 選択性 (Selectivity): 電解加工において、特定の部位にのみ作用する能力。
  23. 余剰成形 (Overforming): 電解加工によって精密成形されたときに生じる部品の余剰量。
  24. 窒化 (Nitridation): 電解加工によって形成される窒化物の層。
  25. クロムめっき (Chrome Plating): 電解加工によって形成されるクロムめっきの層。
  26. 耐食性 (Corrosion Resistance): 電解加工によって形成される部品の耐食性。
  27. 金属結晶の相 (Metallic Crystal Phase): 電解加工によって生成される金属部品の結晶構造の相。
  28. 電位降下 (Voltage Drop): 電解加工において、電解液中のイオンの移動による電力損失。
  29. 電荷密度 (Charge Density): 電解加工において、一定面積あたりに供給される電荷の量。
  30. 電解加工装置 (Electrochemical Machining Equipment): 電解加工に使用される設備や機器。
  31. ワイヤ電解加工 (Wire Electrochemical Machining): 金属ワイヤを使用して、部分的に電気化学的反応を起こすことで金属を切削する方法。
  32. ミクロ加工 (Micro-Machining): 微小部品や構造を加工するための電解加工。

参考文献[編集]

  1. 日本機械学会編、『機械実用便覧』改訂第6版、丸善株式会社、2006年。
  2. 嵯峨常生・中西佑二編 、『機械工作1』、実教出版、平成25年(西暦2013年)。文部科学省検定済教科書。
  3. 嵯峨常生・中西佑二編 、『機械工作2』、実教出版、平成25年(西暦2013年)。文部科学省検定済教科書。
  4. 大西久治、『機械工作要論』第3版、理工学社、2005年。
  5. ウィキペディア記事「フルフラール」 。参考時のリビジョンは2013年5月1日 (水) 11:22。


1.『機械実用便覧』は用語の確認や機械学会での見解の確認に使用した。2.『機械工作1』および3.『機械工作2』は高校での教育範囲の確認および、文部省の見解の確認に使用した。5.フルフラールは、鋳造鋳型用樹脂でのフラン樹脂の物性確認などに使用した。