高等学校工業 機械設計/その他

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※ 実教出版の検定教科書に、『設計の要点』という単元があるので、その内容をこのページの一部に記載します。
ついでに、就職後に使いそうな知識を、いろいろと書きます。

設計と生産の流れの概要[編集]

まず、図面を書く工程と、実際に工作装置などの装置をつかって製造する工程とは、別の工程である。


一般的には、先に図面を書き、あとから製造をする。

つまり、

図面→製造

の順番である。

工業用語で「生産」というのは、文脈にもよるが、工作機械などによる製造工程およびその周辺の工程のことを「生産」と言い表す場合も多い。(※ 実教出版の検定教科書もそういう用語の使い方である。)

※ 工業系学校の卒業生は、就職活動で工業系に就職志望するなら、「生産」または「設計」を希望職として選ぶことになるが、実際には高卒が「生産」、大卒が「設計」という婉曲表現である。しかし現在の日本では、大卒でも高卒と同じ生産現場に回されることも多いので、就活用語の「生産」「設計」はあまり厳密な用法ではない。


図面を書く際も、その前の段階で、客先や上司などからの、製品の満たすべき性能などの要求事項がある。


工学教育では、このような要求事項のことを「仕様書」という。(※ 実教出版の『機械設計2』検定教科書もそういう用語の使い方である。)


分野によっては「仕様書」の言葉の意味が違うので、他分野の人と話す場合には、気をつけること。(※ たとえば建築分野の『仕様書』はなんだか規格書みたい用法だし(「企画書」ではないので混同しないように)、IT業界の『仕様書』はなんだか設計図みたいな用法である。)


設計図をもとにして、工作機械などによる部品加工の作業者に依頼するための「製作図」というものを書く場合がある。(※ 検定教科書がそう言っている。)

実際には、設計図の図面のうち、工作機械などを使って製造する必要のある部品の図面をコピーして、ホチキスなどで1まとめのファイルとして合わせて、工作機械の作業者に渡したりする。(※ 会社によって工程が違うので、参考までに。)


とはいえ、企業によっては、設計図とは別途、「製作図」を作成し、製作図には製造上の注意事項の書き加える場合もあるので(※ 検定教科書がそう言っている。)、設計図とは別に製作図を書くと検定教科書が言ってるのも、それなりに合理的な理由がある。


ともかく、

仕様書 → 設計図 → 製作図

のような順序が一般的である。(※ 検定教科書もそう言っている。)


さて、設計を英語で design (デザイン)という。

また、製品の美観のための概観や色彩などの意匠設計も英語で design (デザイン)という。(検定教科書に「意匠設計(design)」という用語あり。)


日本語ではデザインというと、美観・美術的な用法ばかりだが、しかし英語ではそうではないので注意せよ。

なので、英語の図面でデザイナーといっても、芸術家ではなく、設計者のことである。



さて、機械は多くの部品からなるが、なるべき既製品を使うべきである。(※ 検定教科書がそう言っている。)

要するに、いちいち自社で特注品を作るな、という事である。

(マンガとかアニメのロボットSFモノだと、特注品は高性能だったりするが、実際は違う。)


専門メーカーの販売する既製品の部品のほうが、(多額の開発費を掛けて開発されていることもあり、)精度もよく、安価な割に高性能である。(※ 検定教科書がそう言っている。ただしカッコ内「多額の開発費を~」はwikibooksによる追記。)


CADとかCAMとか[編集]

製図をする際、現代の製造業では、コンピュータ上で図面を書くのが一般的になっている。

このようなシステムのことを、CAD(キャド)という。 Computer Aided Design の略である。

要するに、製造業では製図ソフトのことを「キャド」(CAD)と呼んでいる。

なお、似た用語で「CAM」(キャム)があるが、これは工作機械をパソコンなどと連動させるシステムのことである。CAMとCADは別物である。
検定教科書では、シミュエーターとしてCAMを紹介しているが(教科書冒頭の口絵などに記載)、しかしシミュレーションだけでなく実際にNC工作機械にプログラム命令を送って加工させる事も可能である。
また、「CAE」(通称「キャエ」)は、応力解析ソフトのことである。CAEとCADは別物である。
「応力解析」とは

「応力解析」とは、要するに強度計算のこと。大学レベルの複雑な応力理論の方程式の数値近似解なども求められたりするので、応力解析などと呼んでいる。数学用語で、微分積分や微分方程式などの理論、およびそれを発展させた理論のことを「解析」(かいせき、英: analysis)と呼んでいる。


科学的な根拠は無いが、ニュアンス的に「強度計算」というと、工業高校で習うような初等的な計算である意味合いが強く感じられやすいのだろう。

そのため、下記に記述するような「有限要素法」などの高度な解析手法は、「応力解析」という用語で区別しているのだろう。


「有限要素法」という用語

高校では習わない用語だが、物理計算の数値解析の手法で「有限要素法」という、応力計算や流体計算などの連続体計算で役立つ解析方法がある。(※ 検定教科書でCAEで「要素」うんぬん記述があるのだが、教科書の著者が「有限要素法」を念頭にしていると思われる。)

一般的なプロ用のCAEを使えば、有限要素法による計算も可能である。

もし有限要素法について調べたければ、一般的な大学レベルの材料力学や流体力学の本に書いてある。だが、そんなのを知らなくても、「有限要素法」も結局は微分方程式を差分近似で計算するという基本的な手法であり、第二次大戦後によく知られている伝統的な数値解析の方法の一種にすぎない。ただし、高校でならう常微分ではなくて、大学でならう偏微分(へんびぶん)ではあるが。しかもベクトルの微分方程式。



さて、製図ソフトであるCADには、

製図法にのっとった2次元的な図を描く 2次元CAD と、

いっぽう、

3D-CGのように立体的に設計できる3次元CAD

とがある。


3次元キャドだと、部品の干渉チェックが自動的に出来たりなどとシミュレーションの機能もそなわっており、高性能ではある。(※ 検定教科書で言ってるキャドの干渉チェックうんぬんは、実際は3次元キャド限定の機能。)


※ このように3次元キャドは高性能ではあるが、しかし価格がかなり高い。
相場では、2次元キャドが数十万円で買えるのに、3次元キャドは数百万円ごえが普通である。(ただし2005年ごろの相場なので、現代では細かな値段は変わってる可能性もある。)ともかく、3次元キャドは高い。
あと、3次元キャドは、まだ規格があまり整理されていない。学校(工業高校や工業系の大学)で習う図面の規格も、主に2次元用のものである。


さて、3次元キャドでは、物体データを立体として内部処理する必要がある。そういう立体モデル方式(「ソリッドモデル」という)で内部処理していない方式だと、重量を求めたりなどの物理計算ができない。

工業用でない(ゲーム業界やアニメ業界などの用途の)3D-CGソフトなどだと、立体モデルではなく面モデルで処理しているものもある。


面モデル方式(「サーフェスモデル」という)は、中身が空洞であるが、ひきかえに長所として処理速度が速いので、ゲーム用途やアニメ産業用途などではサーフェスモデルにも利点はある。しかし工業用途としては、サーフェスモデルは、やや不便である。


なお、針金で線をつないだように表す方式は「ワイヤーフレーム」方式という。描画速度だけなら、ワイヤーモデルなた情報量が少ないので、ワイヤーモデルも描画が素早い。


こういった3Dデータの内部処理のしかたのモデル方式の種類のことを、幾何モデル(きかモデル、geometric model)という。 つまり、幾何モデルには、つぎの3種類がある。

ワイヤーフレームモデル、
サーフェスモデル、
ソリッドモデル、

の3種が幾何モデルである。


3次元キャドは高性能だが、実際には3次元キャドだけで設計するのではなく、設計上の注釈や設計意図などを書き加えるために二次元キャドを併用することもある。(※ 検定教科書がそう言っている。)


※ 取引先の中小零細企業が、高価な3次元キャドを保有して無い場合もあるので、製作図は2次元キャドで書くのが一般的。

※ 検定教科書でも、理由は述べてないが、製作図は2次元キャドで書くのが一般的だと検定教科書で言っている。

3次元キャドは、干渉チェックの機能もあるので、部品が多いなどの複雑な製品の、組立て図などで用いられる場合がある。(※ 検定教科書もそう言っている。)


要するに、

2次元キャドは製作図に向いている。
3次元キャドは組立て図に向いている。


なお、組立て工程のことを英語で「アセンブリ」という。

※ パソコンのアセンブラ言語とは無関係なので、混同しないように。


さて、世間のビジネス評論では紙を使わない仕事が褒められているが、いまのところキャドソフトには、プリンタやプロッタなどの印刷出力装置への出力機能がついている。


2次元キャドで書き上げた図面は、ハードディスク(社内サーバーのハードディスク)などに保存した上で、印刷出力して紙でも保管するのが一般的である。(※ 検定教科書でも、印刷について、若干、ふれている。2次元キャドに限定していないが、製造業の慣習として、通常、2次元キャドによって作成した図面データの保管方法である。)


※ ↓ここから範囲外[編集]

Icon tools.png このページ (高等学校工業 機械設計/その他) では、高等学校工業 機械設計/その他について説明します。なお、独自研究や中立性を欠いた文章を含んでいる場合があります。独自研究の中には多くの場で共有されている意見もあれば、少数の意見もありますのでご注意ください。


そもそも知能労働の現場での作成工程は[編集]

まず完成予想図を渡す[編集]

学生は企業社会を知らないと思うので説明しますが、製造業にかぎらずIT業界なども含む技術系の業界で、設計から生産までの流れがどういう工程で行われているか、説明します。


まず、なにかの設計図では、具体的な生産方法は指示しません。たとえば、どう組み立てるかとかは一切、そういう事については『設計図』では指示しません。

よほど特殊な組み立て技術が必要な製品の場合でも、『設計図』とは別途、『組み立てマニュアル』みたい書類を作ったりして、書類を区別します。


※ 一般に技術系の企業では、特注品や一品モノなどの作業指示の際、完成予想図を渡して「この通りに作っておいてください」みたいな指示で作業指示を出す。けっして、「完成予想図」以外に、いちいち他の書類として「作業指示書」とかがあるワケではないのが普通。
デジタルデータのコピーでなく、たとえば自動車の生産のように物理的に生産ラインで大量生産する製品ではないかぎり、いちいち生産ラインの図面や末端作業員のための作業マニュアル(作業手順書)などは用意しないのが普通だといわれているのが、製造業などでの慣習(ただしトヨタとかホンダとかが生産ノウハウを非公開にしているので、あくまで伝聞であり真相は不明)。


ともかく、なにかの設計図は通常、その製品の完成図である必要があります。製造業で「図面」と呼ばれているものは、こういった具体的な完成予想図のことです。


そして、その完成図はいくつもの部品から成り立っているのが普通なので、完成品をいくつかモジュールごとに分解した部品図をいくつも作成して、それぞれの作成担当の作業者に渡します。

こうすることで、分業もしやすくなり、一石二鳥です。


基本としては、完成図だけを作業員が見ても、あいまいさの無い状態で完成品の満たすべき具体的な条件が分かるようにしなければなりません。


社用印[編集]

一般の技術系・職人系の企業では、現場への作業指示としての設計図(完成予想図)には、スタンプなどで「最新版」などの印字の業務用ハンコを押したりして区別したり、

   ------------------
   |    最新版       |
   |                |
   |-----------------|


さらに誰がその決定稿のスタンプを押したのかが分かるように、業務用の日付印ハンコで、

   ------------------
   |    山田 太郎    |
   | 2019年08月15日 |
   |-----------------|

のように、名前と年月日が明確に分かるように業務用ハンコを押したりするのが、技術系企業では、よくあります。


たとえばアニメ業界でも、よく、古いアニメのキャラクターデザインの設定イラスト表などに業務用ハンコで「決定稿」とか押してあるでしょう(アニメショップとかでも、一部のアニメでは、消費者むけに設定イラスト集などもアニメグッズとして販売している。最近はアニメ業界ではデジタル化をしたので、「決定稿」スタンプは押さない場合もあるようだ)。

ああいうのと同じで、一般企業で図面とかを管理するとき、そういうふうに業務用ハンコの印字で区別したりします。


さらに一般の技術系企業でも、検討中のほうの予想図には、ハンコで「検討」とか「未定」とかのスタンプを押して区別したりすると、より安全です。「検」だけだと「検証済み」などと誤解される恐れもあるので「検討」と最後まで書くのが安全でしょう。また、正式な図面には「最新版」印字や「旧版」印字など版の状態が分かるスタンプを押します。

※ よくネットのビジネス素人のビジネス評論では、こういう企業での「決定」ハンコみたいなモノの存在も知らずに使い方も知らずに、「山田」とか「田中」とかの人名の認印みたいなのだけを想定して「ハンコは不要」とかいうバカの一つ覚えの評論を言うだけの人が多いですが(そして、そのような人が残念ながら外資系IT企業の日本法人という名の実質的な日本代理店にもチラホラといたりしますが)、(マンガ業界とかはどうか知りませんが、)難しい製品を扱っている企業とか精密な製品を製造する企業では、人名の認印のほかにも、「決定」「検討」とかの印字の業務用のハンコが存在している事を把握しておきましょう。


※ 「客先公開用」みたいに、公開してもイイ資料の場合には、そういうハンコも押されます。そういう公開許可の指定が無いかぎりは、原則的には外部公開の厳禁である企業秘密の事項なので、いちいちハンコ(「極秘」印字みたいなの)は押しません。ですが、いちおう「外部非公開」とか「内部閲覧用」とか「秘密」とか「極秘」みたいなハンコは、ある程度の規模の大きい一般企業にも本当に存在しています。外部公開用と似たような内容の書類、いちぶ内容の重複する書類でも、外部非公開の詳細な書類とかも存在する場合がありえるから、区別のため、そういう非公開の指定をする印字もあります。


さて、製造業でも、ときどき図面に設計ミスが見つかりますので、そういうのは加工の作業者が、設計者に報告・連絡・相談をするのです。

このため、誰に連絡すればいいか分かるように、製造業では、設計した企業と、設計者の名前を図面に書くのが普通です。ただし、ソフトウェア業界ではどうしてるかは不明です。


原案と詳細予想図と検図

さて、一般にビジネスでは、もし発注者と受注者の両企業とも技術系・職人系の企業である場合には、なにかの仕様の完成予想図は、けっして1部署だけが1度で書くとは限らず、

完成予想図の原案としての大まかな予想図をある部署Aが作成し、
さらに詳細の完成予想図を別部署Bが作成、

といったように、段階的・階層的に別々の人たちで書き分けたりする手法も、一般企業どうしでは、よくあります。


こうすることで、要求事項などが明確に伝わってるかの確認も出来るので、一石二鳥です。

外部の企業に発注する場合、最終的に作業する下請け側の企業の設計者に、詳細の完成予想図を書かせることもあります。こうすることで相手先企業である下請け企業に明確に要求事項が伝わってるかどうかの確認も兼ねられるので、一石二鳥というワケです。

このように下請けに完成予想図を外注で発注した場合、図面の検証は、発注側のつまり親会社の人が、検図(けんず)をします。「検図」(けんず)とは、図面などを検証することで、製造業などの技術系業界での専門用語です。

しかし、こうして親会社によって検図された完成予想図ですら、これはあくまで、当面のあいだの予想図でしかなく、さらに必要に応じて修正が加わります。


さて、一般に技術系の企業では、完成予想図の書類を管理する場合は、もし現場での作業中に不具合が見つかったら、どんどんと更新します。

この更新の際に、もし発注先が客先企業であれば、客先との相談の上、更新後の内容を決めます。


作業者には、更新の無いようの決定後に、(書類が分厚い場合などもあるので、)該当のページだけを印刷して渡したりします。現場側は、当面はホチキスなどで、更新後のページを完成予想図の一覧バインダーとかに留めたりするワケです。(まだまだ今後の更新も多々あるかもしれないので、当面のあいだは、予想図の書類全体の再発行はしないでおき、修正ページだけを渡したりすることが一般企業では多い。)


旧版の管理

なお一般企業では、この完成予想図の修正のための更新の際、けっして、まちがえて古い版の書類を最新版と混同しないようにするための工夫として、なるべく、旧版の書類にはスタンプで『旧版』などの印字を押したりした上で保管することで、区別したりします。旧版のファイル保管しておかないと、もし版不明のファイルが見つかった場合に、それが最新版なのか旧版なのかの判別がやや困難になります。旧版の保管があれば、それと版不明の書類とを照らし合わせることにより、版の特定が可能になるからです。

さらに、最新版のほうは、印字『最新版』を押したファイルをプリントアウトして、『設計図書』(せっけい としょ)ファイルなどで管理します。

さて、旧版も昔は「最新版」(当時)だったワケですが、そういう古い自称「最新版」があるとマギラワしいので、古い自称「最新版」は赤線でヨコ二重線を引いて、それが無効になった事を明記します。さらに、「旧版」のハンコを、古いほうの図面の自称「最新版」印字の近くの位置に押します。

こういうふうに図面の管理をするので、図面の隅(右下か左下)に、業務用スタンプを2個ぶん押せるくらいのスキマが事前に必要です。(いちおう、スタンプは赤色なので、スキマが無くても、黒文字の上からスタンプを押しても、とりあえず区別は可能。)


修正箇所が多い場合などに旧版の保管が困難ですが、しかし、そうでないかぎりは、なるべく旧版の書類もしばらくは保管するように、一般の大企業では、しています。

完成予想図を受け取ったら[編集]

製造業の場合、現場作業担当の下請け企業や下請け部署などが完成予想図を受け取ったら、まず、はたして本当に、その完成予想図どおりに作成が可能かどうか、大まかに確かめます。


そして、もし情報不足のため、作成が現時点での予想図のままでは作成不可能になってしまう点が見つかれば、設計者に確認しに行きます。

また、技術的な理由で、設計図どおりの要求が不可能な場合があるので、そういう場合には、設計が不可能な理由とともに、再設計を依頼します。

また、最初に発見できなくても、実際に現場で加工作業をしていく時点で、問題点が見つかってゆく場合もあります。


製造業にかぎらず、たとえば住宅リフォーム工事などでも、住宅構造は家ごとにバラバラなので、よく、実際に現場作業者が工事を初めて見ると、思わぬ問題点が見つかる事があるので、そういう問題点が見つかったら、家主および工事企業の親会社などにも連絡したりする光景も、読者には見たことある人もいるかもしれません。


社会人によくある仕事術です。


おそらく、製造業にかぎらず、きっとIT業界などでも同じような仕組みでしょう。

書類どうしの関係[編集]

部品図では、同じ製品でのほかの部品図の説明は不要ですし、むしろ管理の手間を増やすので避けるべきです。

なぜかというと、もし部品図どうしで意図的に重複させて他の部品図の内容を引用すると、もしその参照された側の予想図Aで設計内容の変更が起きたときに、参照する側の予想図Bにも設計変更が必要になってしまいます。

なので、完成予想図の部品図では、説明のための記述の重複は不要です。

製造業でも、ひとつの末端部品の図面では、他の図面はなるべく引用しないようにします。製造業の『図面』で他図面を参照するのは、せいぜい、組み立て方法を指示する『組立図』(くみたてず)の場合と、後述する『フロー図』の場合くらいです。


さて、アナログ電子機器の設計の業界では、よく、組立図とは別途に、電気信号のフロー図を書きます。どこの通信ケーブルに、どういう種類のデータが流れるとか、そういうのを指定するワケです。しかし、デジタル機器の場合は、普通、外部とのやり取りは一本の通信ケーブルで、あらゆる種類のデータを取り扱うのが通常です。

製造業では、なにかの電子機器を製造する際、実はフロー図を描かなくても、一応は製品を完成できてしまいます。たとえば、たとえば途上国の組み立て工場など(もしや日本もそうかもしれませんが)、そういう状況でしょう。アメリカ製スマホの中国組み立て工場の作業員が、スマホの内部プログラムのフローを知ってるワケがないですね。

しかし、組立て工場ならともかく、設計を行う企業では、フロー図を描かないのは、好ましくないです。



設計図書ファイルとその目次[編集]

どんな業界でも、技術系の業界なら、設計のために必要な書類(『設計図書』(せっけいとしょ)といいます)を、管理します。


製造業における、(ある製品の)『設計図書』の書類の構成は、前から順に、おおむね

表紙
目次
部品表(購入部品表、内部調達部品表)
資料(部品カタログなど)
図面(組立て図、フロー図、部品図)
その他の参考資料

などです。

まず、部品を購入するなどして調達しないことには組立てできないので、部品表は最初のほうに書きます。

何か特殊な部品を購入する場合などは、それらのカタログなどの該当ページを資料などの項目に入れます。

そのカタログの該当ページに、購入する部品以外の他部品の情報も書かれているなら、文房具の色マーカーなどで、購入する部品の情報について-線を引き、購入する部品だけを目立たせます。


このように、設計に必要な書類が、バラバラにならないように、ひとつのファイルに、まとめて入れます。(コンピュータを使うなら、そういうファイル(ディレクトリ)に入れて、さらに目次をつけて管理します。


もし、設計図書ファイルに目次を作るとき、ページ数は不要です。単に、番号とタイトル名だけで十分です。

1 部品表
2 資料
3 図面

などのように、なります。なぜなら、あとの編集によってページが変動する可能性が高いからです。


一般に、企業で業務用の報告書を作る場合も、ページ数は不要です。



部品表を作るとき、たとえばその部品表が3ページにわたるなら、

1枚目には題名「部品表 1/3」
2枚目には題名「部品表 2/3」
3枚目には題名「部品表 3/3」

のように、題名を数えます。

分子の数字は、現在のページ数です。分母の数字は、その書類が合計で何ページあるかです。


こう命名することで、もし目次のどれかが紛失しても、紛失したことの確認が容易です。


なお、完成予想図など個別の書類には、「1/20」のような合計ページ番号(例では「20」)はつけないのが普通です。

なぜなら、予想図の枚数が今後の不具合修正などで増える可能性があるのが普通だからです。


前提として、1枚の部品表には、10個とか20個のような数えやすい個数までの部品を掲載すべきです。けっして17個みたいな数えにくい個数を掲載すべきではないのです。


なお、もし追加部品が必要になった場合、最後の部品表の末尾に追加部品の情報を追加していきます。


さて、事務用品メーカーから、実際に業務用ファイルが販売されていますので(事務用品メーカーのキングジム とかアクスルとかの販売しているアレ。パイプホルダーを通すヤツ)、そういう業務用ファイルに、その製品の設計関連の書類をひとまとめにします。


技術系企業では、そうやって、まとめられた設計関連の書類のことを『設計図書』(せっけい としょ)と言います。主に土木工事で使われる用語ですが、じつは製造業でも『設計図書』という用語は使われています(ただし製造業では企業が非公開にしている)。

設計図書の中には、何種類も書類があるので、目次の書類が必要です。しかしページ数は変動するので、設計図書の目次では、ページ指定の必要は無いです(そもそも不可能)。

どんな書類が、その設計図書に含まれているハズなのか、必ず明記した目次を作成し、設計図書ファイルの目次に入れましょう。


もし設計図書ファイルをパソコンでも管理する場合、表紙や目次が冒頭に来るようにするには

001_『○○』表紙
002_『○○』目次
003_『○○』部品表
004_『○○』資料
005_『○○』図面
006_『○○』その他の参考資料

みたいにファイル名の冒頭を番号で管理すると、確実にそのファイル内の先頭に目次が来ます。


目次さえあれば、もし書類の一部を紛失などが疑われる場合に、確認が容易になります。

また、設計図書の書類の一部をコピーして配布するなどする場合もあるので、そういった配布書類との混同を防ぐためにも、目次が必要です。


その他. 営業関係の書類は別部署

『契約書』は、設計図書に含めないのが一般的です。

『契約書』は、管理部署が違います。

契約書を保管など管理するのは「営業」部などの部署・課です。

いっぽう、設計図書を保管など管理するのは、「設計」部門などの技術系の部署・課です。


その他2. 書かないだろう書類

一般企業では、日報や週報などの報告書とは、設計図書は別書類です。

ただし、そもそも日報を書かない企業も多くあります。製造業では、いちいち日報も週報も書かないのが普通です。


警察や自衛隊など公安関係では、日報も書くようですが。w:自衛隊日報問題

しかし、土木建築では、作業日報をまとめることもあるようです。


もし日報や週報を書く場合には、設計図書ファイルには、日報は含めないようにします。日報や週報の保管には、別ファイルを作りましょう。


「完成図書」

土建業界では、こういう、完成品に関するデータ一覧の「台帳」などの書類を『完成図書』(かんせい としょ)といって、『設計図書』とは区別しています。ですが、製造業ではそこまで区別していないので、予備知識として用語を聞いたことあるくらいで良いでしょう。

そもそも、製造業と土建とで『設計図書』の用語の意味すらも微妙に違います。


※ 本来、こういった『設計図書』とか、(『完成図書』の)『台帳』とか、そういうのの管理手法は大学の工学部などで教えられるべきだろうが、なんと、大学の科目『土木施行』の市販の大学教科書には、まったく『設計図書』などの意味と使いかたなどの説明は書かれてない。社会人の土木エンジニアむけの専門性の高い実務書で、ようやく教えられている。本wikiで参考文献として参照している文献も、社会人の土木エンジニアむけの実務書である。また、機械工場などでも普通に『設計図書』などの用語が使われているにもかかわらず、図面の流れの話題などは、まったく機械工学の『生産管理』の大学教科書には書かれていない。


書類の履歴の管理[編集]

企業で、何らかの手順書を書くとき、履歴を残すのが普通です。

このため、こういった仕事の書類には、著者や、著作・改訂の日時(「改訂日: 2018年8月30日」)や改訂者(「改訂者: 山田太郎」)などの履歴(りれき)も記載する必要もあります。

ID 年月日 作業者 編集内容の要約
001 第1版 2018年7月10日 鈴木花子 著者
002 第2版 2018年8月30 山田太郎 改訂

のようになります。(企業では、こういうページのパソコンでの文書管理は、エクセルなどの表形式データになってるのが普通。)


ただし、機械図面の履歴の管理については、違います。上記のようなエクセル表は、あくまで手順書などの履歴の管理の方法です。

機械図面の履歴は、製図の記法に従って行います。なので、機械図面の履歴についてはエクセルでは管理しません。




システム的な装置の図面を書くとき[編集]

システム的な図面を書くとき、最低限必要な部品図や組立図の図面そのもののほかに、そのシステムの仕組みが分かる図面を書いてください。

書かない会社もありますが、そういう会社は技術力の低い会社、または今後は技術力の低下する運命なので、相手をしないでください。


たとえば電気電子回路で考えてみましょう。


たとえば、電子機器についての図面で、回路素子部品が10000万個以上ある回路の図面で、抵抗やコンデンサやコイル、オペアンプやチップなどの配置位置だけを説明した図面だけがあったとしましょう。


まったくどこにも「ここら辺の部品は、電源モジュールです。」とか「そこは温度計測モジュールです。」とか「あそこは流量計測モジュールです。」とか「こちらは(流量計測ではなく)流量調整モジュールです。」の説明も無く、

単に「抵抗Aはここに配置してください。抵抗Bはそこに配置してください。抵抗Cはあそこに配置し(以下略)」とかの場所の指示しかない配置図しか無かったとしたら、どう思いますか?

そんな配置図面しか無い会社、勤めたくないですよね?

なぜ困るのかと言うと、もし最初の設計者が引退したり転職したりすると、今後は設計の(機能追加などのための改修などの)更新が不可能になるからです。


機能追加などをするには前提として、どの部品がどんな機能をしているかの説明図が必要だからです。もちろん、数千個や数万個すべての部品の機能をひとつひとつ説明は不可能ですし非効率ですが、せめて十数個くらいにはモジュール分割して説明するモジュール説明図を作ってください。


たしかに、説明ぬきの配置図も必要です。

また、回路によっては、製造の際に電源モジュールとか温度計測モジュールとかを同時に製造しなければならない可能性もありますので、全モジュール配置の一体化した配置図も必要な場合もあります。

実際の製造の段階では、説明はあいまいさの原因になるので邪魔で不要ですので、配置図では説明しないのは合理的です。


ですが、だからといって、モジュールそれぞれを説明した図面が無いのはダメです。


では、どうやってモジュール位置の説明図を作るのでしょうか?

クロック入力付きRSフリップフロップ(NOR型)

まず、組立て図とは別に、モジュール位置のおおよその説明のための図面を作ります。用語が無いと不便なので、とりあえず「モジュール配置説明図面」と言いましょう。


右図のように、機能ごとに破線などで囲みます。

たとえば電源モジュールなら、その電源モジュールの場所だけを破線で囲み、その破線の上にタブ欄をつけて「電源モジュール」と書きます。


同様に温度計測モジュールについても同じモジュール配置図面の中で、温度計測モジュールだけを破線で囲み、タブをつけて「温度計測モジュール」と書きます。

以降も同様に、モジュール配置の説明図面の流量計測モジュールを破線で囲み、タブをつけて「流量調整モジュール」のようにします。


こうして、全モジュールを説明します。

だいたい、人間が数えられる程度の数に、モジュールの合計数を減らしてください。(合計で、せいぜい十数個ていどまで。)


フリップフロップをフロー図で表現した例

ひとつのモジュールの中に何百個や何千個も部品がある場合には、同様に、あらたな部品図面によって、モジュール分割して説明していきます。

いまば、モジュールの部品図のようなものです。


こうして、モジュールをどんどん分割していき、そして最終的に、常識的に同業者の中堅エンジニアていどなら図面を読めば分かる程度の詳しさになるまで、説明を分割していきます。


そして右図のフリップフロップのフロー例ように、すべての部品および端子・入出力口が、なんらかのモジュールに所属するようにモジュール分割していきます。

もし別々のモジュールの破線どうしが近すぎると見づらいし別モジュールとの混同の恐れがあるので、右図のように適度に距離をあけてください。


このモジュール名称を考えるときに重要な点として、最終的な機能をモジュール名につけることです。けっして、形状や多い部品名をモジュール名にすべきではない、という事です。

たとえば「クロック同期部」と命名されていますが、設計に慣れてない人だと、ここの命名を「AND部」とか「AND演算部」とかにしてしまいがちです。

しかし、AND素子が多いことくらい、見れば学生レベルでも分かるので、「AND演算部」みたいな命名は不要です。


なんのためにAND演算素子を追加しているのかというと、その理由は「クロック信号がOFFの場合は、けっして入力信号を伝達しない」という目的であるので、そういった目的が分かるようなモジュール名にしなければいけない、というワケです。

なので、たとえば「クロック同期部」とか「クロックフィルター部」とか、なんかそんな感じの名前になるハズです。


こう(「クロック同期部」のように)機能が分かるように命名することで、たとえば、もし将来的に設計変更が必要になったときの、大きなヒントになります。

いっぽう、もし「AND演算部」みたいな命名をしても、将来の設計変更の事態には、あまり、(名前が)役には立たない結果になってしまいます。;


同様に、「記憶保持部」も、形状は「たすき掛け」(ラッチ構造)であり、フィードバック配線がありますが、だからといって、けっしてモジュール名称を「ラッチ部」とか「ファードバック部」とかには、しないでおくべきです。


なんのために、たすき掛けみたいにしたりフィードバックているかというと、記憶を保持するのが目的なので、「記憶保持部」とか「記憶○○部」みたいな感じの名前にすべきです。


一般企業では、下記の「フロー図 モジュール解説」書類は省略されますが、できれば、さらに、別の書類で

RSラッチ フロー図 モジュール解説対象図面:『RSラッチ フロー図』

クロック同期部 : 機能はフィルターである。もしクロック信号に同期してない状態では、入力信号をモジュール出力には伝えないようにするためのフィルター。
記憶保持部: 記憶を保持するためのモジュール。
以上。

あるいは

RSラッチ フロー図 モジュール解説
対象図面 RSラッチ フロー図
ID モジュール名 機能の概要
(※ 主に対応する要求事項)
備考       
001 クロック同期部 機能は信号フィルターである。
もしクロック信号に同期してない状態では、
入力信号をモジュール出力には
伝えないようにするためのフィルター。
002 記憶保持部 記憶を保持するためのモジュール。
以上.


のように解説書類を作っておけばもう、万全です。


そもそも工業における「設計」というのは本来、

なにか顧客などからの要求事項があり、

そのあとにその要求事項を解決するためのモジュール構造を考えていき、

そして、自社の都合の範囲内で、そのモジュール構造に適した部品を配置していくわけです。


なので、どういった要求を解決するためのモジュールであるのかを、モジュール名やモジュール解説から読み取れるように、

命名したり、解説書類を作成する必要があります。


なので、上述の表のように、おそらくですが、要求事項の対応の解説欄と、その他の技術的な留意事項(たとえば部品選定のさいの注意事項など)の「備考」欄とは、区別すべきでしょう。


残念ながら日本でも上述のようなフロー図や解説書類などの管理が出来てない会社が日本の大企業にもあると言われていますが、だとしたら悪い手本なので、マネしないでください。

例として、米国のi-phoneなどの設計をしているアップル・コンピュータが、日本の部品メーカーに要求事項で「このコンデンサはもっと小さくできないか?」と日中韓のメーカーにそれぞれ別々に質問したら、韓国メーカーや中国メーカーからは「これこれの技術的理由があって、出来ないです。」と具体的な説明が返ってくるのに、日本だけ「わからない。」という返答が返ってくる、という報道もされているという風説もあります。


さて、電機電子の図面だけでなく、流体機器などを設計する際も、配管の本数が何十本や何百本あるいはそれ以上と管の本数の多い場合には、そういう図面を作ってください。(組立図や部品図とは別に、追加でそういうモジュール説明図面みたいなのを作ります。)

何百本も配管のある装置では、どこのユニットが何をしているかとか、そういう図面が無いと困ります。


流体機器メーカーの言っている「フロー図」とは、そういうモジュール説明図面の事です。

けっして、情報科学で言うフローチャートのことではないので、勘違いしないでください。


重要な点は、製品の製造のための部品図や組立図といった作業指示のための図面とは別に、「フロー図」のような参考のための図が、マトモな技術力の企業では存在していることです。

社会の底辺の職業には、フロー図のような参考図を見る機会が無いので、まったく学校ではフロー図などは教育されていない状況ですが、しかし企業では、フロー図などの参考図は設計図書(せっけい としょ)に存在しています。

けっして「フロー図」だの「モジュール」だのと言った単語の意味を暗記することではなく、(フロー図などの)参考図が設計図書に含まれるべき事を理解してください。

品質管理の書類[編集]

品質記録台帳[編集]

品質検査の記録は、これは設計図書とは別に、『品質記録台帳』などのような名称のファイルで保管する。

品質記録台帳については、企業ごとに大きく書式が違うので、本wikiでは説明を省略する。

職場によっては「品質管理台帳」あるいは「品質台帳」とも言うかもしれない。

手順書[編集]

なお、品質検査での検査の手法については、事前に書類として手順書(てじゅんしょ)を作成して、検査の具体的な手法とその手順を明文化しておく必要がある。

この手順書は、台帳とは別の書類である。

(ただし、細かな作業手順を公表する必要は無い。

しかし、おおむね、どのような原理の検査をしているかについては、事前に依頼者に公表しておく。なぜなら検査方法にも、さまざまな科学的手法があるからである。(たとえば硬さ試験でも、シャルピー試験だのロックウェル私権だの何種類もの硬さ試験の科学的手法があるのを習っているだろう。その程度の原理が公表する。) )


生産方法の作業手順書とは別に、検査方法の作業手順書も整備しておく。


※ ネットには馬鹿も多く、「いまどきの若いもんは、マニュアルが無ければなにもできない」とか、底辺サラリーマンが公務員や小学校教員などを誹謗して「マニュアル主義」とか言ったりするが、しかし、製造業の場合、マトモな品質管理ではマニュアル(手順書のこと)を作って検査を行うので、ネットの馬鹿を鵜吞みにしてはならない。製造業だけでなく、土木建築の業界でも同様に、品質検査は原則的に手順書(てじゅんしょ)にもとづいて行う[1]


研究開発などはマニュアルでは行えないでしょう。しかし検査業務は、研究開発ではないのです。

なので、もし検査員が勤務先の仕事として、検査業務そのものに関する研究などを行う仕事を会社から要求された場合には、追加の予算や人員などのヒト・モノ・カネを別途、会社に要求しましょう。

また、なのかの検査中には、けっして研究的な未知の実験をしないようにしましょう。


マニュアル類の作り方[編集]

多重防護[編集]

作業マニュアルや検査マニュアルなどは、どうやって作るべきなのでしょうか。

どんな種類のマニュアルを作る場合にも、ポイントとして、安全対策を二重三重にする必要があります。これを、(製造業にかぎらず)一般に「多重防護」(たじゅう ぼうご)と言います。

2011年の原発事故に関する安全管理のあり方の議論でも、「多重防護」という用語があったので、ソレと同じような意味です。


たとえば、工作機械を使って出た切りくずを加工台から床に落とすとき、「小型ホウキを使って切りくずを落とせ」と言うマニュアルがありますよね。

ではなぜ、ホウキを使わなければいけないのでしょうか?

よく、「切りくずを、口で息を吹いて落としてはいけない。」といいますよね。

息で吹いてはいけない理由は、切りくずが飛び散ったりして目に入ったりすると危ないからです。


では、もし保護ゴーグルをしていれば、息で吹いてもイイのでしょうか?

もちろん、たとい保護ゴーグルをしていても、切りくずを息で吹いてはいけないですね。


そう、このように、たとい保護ゴーグルをしていても、「切りくずを床に落とすときは、かならず小型ホウキを静かに床に落とす」のを徹底するのが多重防護の例です。


なぜ、こういう多重防護の考え方でマニュアルを作るべきなのでしょうか?


理由は特に製造業では明示されてないですが、常識的に考えると、きっと下記のような理由でしょう。

まず、多重防護の考えで作られたマニュアルは、いろんな職場に応用できるので、作成するマニュアルの個数が減ります。

たとえば、いちいち「保護ゴーグルのある職場の場合」と「保護ゴーグルの無い職場の場合」のように、マニュアル作成時にいちいち場合わけをする必要が無くなり、手作業の旋盤の場合ならどんな職場の場合でも統一的に「切りくずを床に落とすときは、かならず小型ホウキを静かに床に落とす」と説明するだけで、説明が済みます。


また、複雑な作業になると、マニュアルは、のちに修正や追加などの改訂などが必要になります。そういった改訂のさいにも、改訂者が、いちいち場合わけをしなくて済むので、管理をしやすくなります。


多重防護の考えをしていれば、自社グループのほかの工場などのマニュアルを作るさいにも、既存のマニュアルをほぼ既存のままで流用しやすくなりますので、他工場用のマニュアル作成時の編集作業の手間が減ります。


このように、多重防護の考えでマニュアルを作っておけば、いい事づくめ です。



さて、世間では、どういうワケか、多重防護の手法を嫌う、なんかアタマのヘンな人が時々います。

たとえば、友人などのグループで、お出かけをするとき、たとえば交通費が電車賃で往復で最低900円、したい買い物の予定金額が10000くらいだったら、

最低でも持っていくべき必要な金額は 10900円ですが、しかし普通の感覚の人なら、「まあ、念のため○○円は余分にもっていこう」とか思って、

たとえば最低でも 15000円くらいは用意しておきますよね(できれば2万円以上は用意するでしょう)。


ところが世間には、なぜか好んでギリギリの10900円しか用意したがらない、残念な人がいるのです。


しかも、こういう感覚の人にかぎって、「自分は合理的である」、「自分はお金の計算が得意だ」とか、なんかヘンな自惚れた(うぬぼれた)勘違いをしることが、よくあります。

どうやら、対策すべき優先順位の考えかたが、なんかヘンな人のようです。

「けっして、もし手持ちの金額が少なくて、待ち合わせ相手や周囲の人に迷惑をかけてしまうことのないように、大目に金をもっていこう」という配慮をするよりも、「自分は算数が得意なんだ! そうアピールしよう!」という芸人みたいな自己アピールを頼んでもいないのにアピールしたがる発想が脳内で優先しているという、なんかアタマのなかの物事の優先順位のヘンな人が、残念ながら大人でも、ときどきいるのです。


待ち合わせをする場合などでも、たとえば午後10時00分に待ち合わせなら、普通は最低でも9時30分には現地にもう到着するようにしてから、現地で30分くらいヒマ潰しをするものです。

ところがアタマのオカシな人は、なぜか9時50分くらいに現地到着しようとします。ひどい場合は、9時55分に到着したがります。


年功序列の日本企業では、こういう感覚のオカシイ人がたとい上司でも、なかなかクビになりません。(あるいは、もし他の用事で忙しいなら、あらかじめそう連絡しておくか、あるいは、可能なら予定日を変えてもらう等するのが常識)

もし就職先が、そういう感覚のオカシな上司のいる会社なら、さっさと退職届を出して、逃げ出しましょう。


残念ながら日本では、作業マニュアルなどを作る場合にも、コスト削減やら形式的な作業スピード上昇のために、ひとつでもミスをしたら事故につながるようなギリギリの作業標準を作るような、ヘンな会社のヘンな自称・『技術者』もいます。

そういう企業でも、そこそこ大企業だったりもします。


残念な人の曲解ですが『トヨタ生産方式』やら『かんばん方式』というのを三流の技術者(あまり「技術者」と呼びたくないですが)は何か曲解して、ギリギリの安全(多重防護でない、しいていうなら「一重防護」)の作業マニュアルなどを作ろうとする人も、残念ながら、そこそこ大きい企業でも、いたりします。


もしかしたら、その業界じたいが腐っている場合もありますので、よく観察して、もし業界じたいが腐っていたら、異業種に転職しましょう。


職業差別で悪いけど、2011年の原発事故でさんざん「多重防護」と言われたのに、それでも頑な(かたくな)に「一重防護」を貫こうとする業界はもう、もう、その業界じたいの思考が腐っています。

日本は民主主義国なので、このような人にも起業の自由があるし、その残念な社長の下でダンピング的に働きたがる労働者にも、残念ながら、そういった自由があるのです。


マニュアルの規定の理由を残す[編集]

上述でも述べましたが、マニュアルは、改訂などが定期的に必要です。

その際、前のマニュアルのどの部分を残して、どの部分を変えるかの参考資料になりそうな、別の書類が必要です。

なので、「ここでこういうふうに作業する理由は、○○○な理由のため。」といった資料を残しておきましょう。(残念ながら、これが出来てない会社も多いですが。)

もし、工業高校レベルを超える専門的な知識が「理由」の場合なら、たとい、一般的な大学生~専門学校生むけの専門書を読めば理由が分かる常識的な理由の場合でも、どういった書名の専門書なのかくらい、明示しておきましょう。なんという書名で、なんという著者で、なんという出版社か、くらいは最低限、理由資料には書いておきましょう。


なぜなら、後輩や部下などが、必ずしも自分と同じ学歴・経歴とは、かぎらないからです。

さすがに中学校レベルのことは理由の解説資料に書く必要は無いでしょう。


フローチャートも作る[編集]

また、こういう、理由の解説資料とマニュアル本体を照合しやすいようにするためもあり、マニュアル本体の側にも文章だけでなく、さらにフローチャートで作業手順を示しましょう。

製造業や土木など工業系にかぎらず、一般に仕事として作業手順書を書く場合は、フローチャートを併記するのが望ましい[2]とされています。


電気回路とかのフロー図ではなく、情報科学とかで習うようなフローチャートです。

あの、フローチャートでも、作業手順や検査手順を明示します。


必要な手順説明として、文章による作業手順と、フローチャートによる説明との2種類の説明が、両方とも必要です。


フローチャートがあると、読み手の誤解の恐れもなくなります。

また、フローチャートと本文とで、相互検証できます。

また、こういった相互検証できるという長所そのものも、多重防護に一役かってます。

マスター検査機器と非マスター検査機器[編集]

なお、企業において、品質検査の機器は、大企業でも、一般的な精度の検査機器と、数個だけ高精度の「マスター○○」と言われる検査機器がある。

たとえば、ゲージ検査だったら、その会社の「マスターゲージ」というのが通常の製造業なら、所有している。

ゲージ以外の測定機器でも慣習的に「マスターゲージ」という場合もある[3]

つまり会社では、けっして、すべての検査機器がトップクラスの精度なのではない。


検査機器そのものの異常の無いことも、なんらかの方法で定期的に検査する必要があるので、なので、一般の検査機器を、社内のマスター機器で検査するのである。

マスター機器は、普段は使わずに、保管用の丈夫な箱に入れて暗所にマスター機器を保管しておく必要がある。

現場で普段使うのは、非マスターの機器である。非マスターの機器はよく使うので、しだいに劣化していく可能性がある。


そして、そのマスターの検査機器は、定期的に、検査機器を製造している専門企業などに発注をして、マスターの検査をしてもらうのが、通常の方法である。

ただし、これは大企業などの場合であるので、中小零細企業は当てはまらないかもしれない。


また、会社の測定機器は、マスター測定器も非マスター測定器も、すべて社内の専用の台帳(『計測器管理台帳』[4]のような名称の台帳)に登録しておく必要がある[5]

校正方法も、作業手順書などの標準書を作って、校正方法を明確化しなければいけない[6]

測定器の管理者・管理部庶も明確化しなければならない[7]


機械工業の業界に無い規格書[編集]

土木建築の業界には、業界全体の、さまざまな作業における具体的的方法のガイドラインがあり、土建業界では「共通仕様書」と言われており、建築学会などの学会や公的機関が発行している作業の際の準拠すべき規格書が(土建業界には)あります。

しかし、機械工業の業界には、そのような機械業界全体のガイドラインは無い状態です。(ただし、機械工業の中の個別の業界には、業界団体の発行するガイドラインの存在する場合もある)

機械工業にもJISの規格書は存在しますが、JIS規格書では原則的に、作業方法の指示などは書かれないのが普通です。JIS規格書は主に、用語の定義などを明言することによって(文字だけ載せ爪いにかぎらず、場合によってはグラフや数表などもJIS規格書に記載することにより)、技術者どうしの情報交換のさいの解釈にあいまいさを無くすための手助けをする規格書がJIS規格書です。

そういう事情もあってか、ともかくJIS規格書では、少なくとも機械分野では、作業方法のガイドライン的な説明はまず、無い状態です。

  1. ^ 『わかりやすい土木施行管理の実務』、オーム社、速水洋志、平成29年5月20日 第1版 第2刷 発行、200ページ
  2. ^ 高橋慈子『ロジカル・ライティングがよ~くわかる本』、秀和システム、2009年7月25日第1版 第1刷、78ページ
  3. ^ 澤田善次郎 監修、名古屋QS研究会 編 『実践 現場の管理と改善講座 01 作業標準 第2版』、日本規格協会、2012年12月14日 第2版 第1刷発行、91ページ
  4. ^ 澤田善次郎『実践 現場の管理と改善講座 09 試験・計測器管理 第2版』2012年4月25日 第2版 第1刷発行、46ページ
  5. ^ 澤田善次郎『実践 現場の管理と改善講座 01 作業標準 第2版』2012年12月14日 第2版 第1刷発行、91ページ
  6. ^ 澤田善次郎『実践 現場の管理と改善講座 01 作業標準 第2版』2012年12月14日 第2版 第1刷発行、91ページ
  7. ^ 澤田善次郎『実践 現場の管理と改善講座 01 作業標準 第2版』2012年12月14日 第2版 第1刷発行、91