高等学校政治経済/経済/物価の動き
物価指数[編集]
物価のうち、企業間で取引きされる卸売の段階での物価を企業物価という。一方、一般の最終消費者が商品を購入するときの物価を消費者物価という。
企業物価指数は、企業間で良く取引される商品についてウェイトをつける計算方法により算出する。
消費者物価指数も同様に、消費が大きい商品に関してウェイトをつける。
数値としては、基準年を 100とする。
物価の変動とその機作[編集]
インフレ[編集]
物価の持続的な上昇はインフレーション(inflation)、である。
インフレの原因は一般的に、ある商品を買いたい人の多さに対して(つまり、需要に対して)、商品不足である(つまり供給不足)。
この議論はまず3つのパラメータがある。物価と需要と供給。
そしてこの3つに関して、それぞれ二つの視点がある。
まず物価に関して、需要と供給の2視点がある。まず需要面。物価が高いと欲しがる人は少なくなり、低いと需要が増える。供給面では、物価が高いと売りたい人は多くなるし、低いと供給は減る。
次に需要。これは売り手と買い手、供給側と需要側の 2視点がある。需要が大きいと売り手は値を高くして吹っ掛けてくるが、需要がないとみると値を下げるだろう。買い手は需要が大きいときは何としても手に入れたいから高い値で買う、しかし需要がないとみると足元を見て、値切ってくるだろう。
次に供給。これも供給側と需要側の 2視点がある上結果は上と同様 2視点で同じ。売り手は商品が多量にあると捌きたいから値を安くつけるだろう。商品が少ない場合は売り惜しみして値を上げる。買い手は供給が多いとやはり何かと値切ってくるし、少ないとどうしても手に入れたいから、多少高い値でも購入するだろう。
ですから簡単に大雑把に示すと、インフレが起きやすいのは、
- 需要 > 供給
と、なりますよね。
- 需給関係と生産コスト
需要の増加によって、需要が供給より大きくなって発生するインフレーションをディマンド・プル・インフレ(demandーpull inflation)という。
いっぽう、供給側の生産コストの上昇によって起きるインフレーションをコストプッシュ・インフレ(costーpush inflation)という。
- 通貨価値
インフレになると物価が高くなる。インフレの原因が何であれ、これは通貨の価値が下がったという事だろう。ある財の価格が上がる、額面が多くなる、常識的には財の方が一定の価値を持つのだから、通貨の価値が低くなったのだ。
- 貯金と借金
インフレで貨幣の価値が下がるわけだから、貯金の価値も下がる。
借金をしていても返済額は額面として以前の契約のままで、貨幣価値は下がっているわけだから、返済価値は減っていると見做せるだろう。
つまり、インフレによって借金は、借り手に有利で貸し手に不利に動いたとみていいだろう。
またインフレが起きると、一般的に名目の利子率が上がる。
ここで借金の借り手には不利になるが、特別な物価変動に応じた契約がない場合はインフレ以前に借金をした人物は、利子率がその時点より低くかつ利子の分の貨幣の価値は低くなっていると見れる。
デフレ[編集]
いっぽう、持続的な物価の下落はデフレーション(deflation)。デフレの原因は、一般的に、供給が余ってることである。
つまり供給量が多いのに需要は少ない。店としては売れないから値を下げる。
値を下げると需要は増えるだろう。しかし前項目の一般論から、供給は減る方向に向かうと考えられる。
- 需要 < 供給
需要不足、供給過多がデフレの状況だろう。
物価と景気との関係[編集]
インフレと景気との関係[編集]
先ほどの節の説明のとおり、市場での商品不足は、インフレを引き起こしやすい。 一方、商品不足なら、もし商品を販売すれば、ほぼ確実に売れるだろうから、好景気を引き起こしやすい。
よって、このように商品不足の場合、インフレと好景気が連動する場合もある。
しかし例外もあるだろう。たとえば、インフレの原因が、たとえば国家財政における財政不安・財政危機などによって通貨の信用が暴落した場合や、あるいは戦争・大災害などにより工業地帯などが破壊されて商品不足などが起きた場合などには、消費者は将来不安のために生活必需品以外の消費を控える可能性もあるので、かならずしもインフレだからといって好景気になるとは限らない。
なお、不況とインフレ(物価高)が同時に進行する現象をスタグフレーション(stagflation)という。(停滞(スタグネーション)とインフレーションをあわせた用語)
1973年の石油危機は、「狂乱物価」(きょうらん ぶっか)と呼ばれる物価上昇(インフレ)をもたらし、スタグフレーションをもたらした。 (※ 第一学習社の検定教科書『高等学校 政治・経済』が、石油危機をスタグフレーションと認定している。)
なお、この1973年の石油危機のとき、トイレットペーパーが品薄になるというウワサが流れ、スーパーなどの日用品売場にトイレットペーパーを買い求める消費者が殺到した。
さて、インフレになると、場合によっては、金銭をもっていても価値が下がっていくので、貯金をするよりも、物を買って、物資として資産をたくわえようという意識が働く結果、消費が活発になり景気が良くなる場合もある。
デフレと景気との関係[編集]
一方、商品が欲しくない、つまり需要不足( 需要 < 供給)なら、デフレが起きやすいのであった。
消費者がある商品が欲しくないってことは、その商品を扱ってる販売店や生産者からすれば、販売や生産を扱ってる商品が売れないので、その商品の販売会社・生産メーカーなどは倒産しかねないってことである。もし、多くの会社が潰れれば、不況になってしまう。
こういうデフレの場合、デフレと不景気が連動する場合もある。もちろん、例外もあるだろう。
ある会社がつぶれても、その会社の競争相手の別会社にとっては好都合かもしれない。あるいは技術改善によって価格の減少が起きる場合もある。
さて、インフレと不況が同時進行することを「スタグフレーション」と呼ぶのであった。
一方、不況とデフレが同時の場合を考えよう。
まず、なんらかの不況または景気不安によって、生産者・販売者らが生き残りのためのコスト・ダウンをして、デフレになったとしよう。
すると、そのコスト・ダウンによって、競合他社も値下げさぜるを得ず、さらに価格競争が起きる。すると、さらに、最初に値下げした業者も、競合他社に対抗するため、またまた値下げする。すると、どんどん販売価格が下がる。
そして、販売価格が少ないので、せっかく商品を売っても、利潤が少ない。この結果、デフレによって所得が、名目だけでなく実質的にも低下したことになる。
そして、労働者の所得が低下すれば、当然、消費に使える金銭が減るので、消費が不活発になり、さらに不況になるだろう。
このように、なんらかの原因で、不況とデフレが同時進行することをデフレ・スパイラルという。(「スパイラル」とは、「らせん」という意味。「スパイラル」という単語自体には、その循環が、良い循環か、わるい循環かの、決まりはない。つまり、「デフレ・スパイラル」とは、けっして文字通りの単なる「デフレの循環」意味ではなく、「デフレが不況を深刻化させる」という価値判断を「デフレ・スパイラル」という単語は含んでいる。)
このデフレ・スパイラルが悪循環となって、景気を低迷させ続けかねない、というのが、近年の定説である。(検定教科書でも、そういう立場である。)
平成の「長期デフレ」はやや疑問視されている |
「デフレ・スパイラル」の検定教科書で説明しているような意味は、本当はウソかもしれず、単に2002年の「総合デフレ対策」のための政府見解なだけでしかないかもしれない。
実際、内閣府の統計で西暦2000年を基準とした内閣府の消費者物価指数の統計を見ると、1992年以降から2010年まで100%±2%の程度を推移しつづけているのが実態である[1]。 こういう分析は別にwikiのオリジナルではなく、たとえば大学1年レベルの普通の経済学の教科書でも(たとえば有斐閣(ゆうひかく)アルマの経済学シリーズ)、統計などをもとに、そもそも平成の日本経済が言われてるほどデフレでないことは普通に周知されている。(物価の基準を西暦何年に取るかによって物価指数の値は変わってしまうので一概には「デフレでないとは」言えない。) 内閣府のサイトを信用するなら昭和の好況だといわれた1980年代(物価は80~95%)よりも、むしろ平成の100%台のほうが物価は高い。
つまり、仮に平成の不況の原因が物価だとしても、それは「ディス・インフレによる不況」にすぎず、けっしてデフレ不況ではない。 その他、ITメディアの経済記事でも似た分析があり、引用すると下記のように、
と分析している。 そして2013年になれば、日本は自民党の安部政権でインフレ誘導をし始めたので、もう2013年以降からの日本の不況はデフレとはあまり関係ない。
このように、「デフレ・スパイラル」はあまり現実の長期統計を説明できていない。
しかしそれは、けっしてその研究当時の平成が長期デフレであったことの証拠にはならない。 たとえば明治時代の日本では文明開化によって欧米の考古学を導入したので古代日本の研究が進んだが、しかし明治時代は縄文時代ではない。犯罪心理学の研究者は犯罪者ではないし、推理小説の作家も犯罪者ではない。そもそも、江戸時代に国学者の本居宣長(もとおり のりなが)は平安時代の文学を研究したが、しかし江戸時代は平安時代でもない。 なのに、なぜ平成の経済学者がデフレ研究をすると、それだけで「平成時代はデフレ」という証拠として採用するのか、意味不明な思考回路である。
たしかに1997年から見れば、デフレ傾向ではある。1997年から2002年まで、物価指数は減少を続けているし、97年の拓銀の破綻や98年の長銀の破綻で日本経済は不況ムードになった。 リーマンショック後の2009年の民主党政権の誕生時、民主党政府は日本経済が「デフレ」状況にあると宣言した。 当時、一部のマスコミ報道では、あたかも対立政党の自民党は日本経済がデフレであることをかたくなに認めなかったように一部では報道されたが、しかしそれは上述の2002年の「総合デフレ対策」を考えれば分かるように、まちがった報道であろう。 また、内閣府の統計を見ると、(リーマンショック後の時期である)2008年と2009年は物価指数が100%以上である(つまり、基準年よりもインフレ)。 |
「デフレ・スパイラル」の本当の理解には数学が必要 |
そもそも本来、経済学的には「デフレ・スパイラル」という言葉じたいには、不況か好況かは関係なく(どちらでもいい)、現在のデフレによって未来のデフレの程度が強化される現象のことが「デフレ・スパイラル」の本来の意味である可能性すらある。(※ 参考文献: 『小室直樹の経済原論』、初版は1998年11月、)。ただし、『小室直樹の経済原論』が出た当時、日本が不況だったので、小室はその原因をデフレに求めているが。
なお、日本だけでなく米国でも、インフレ・スパイラル inflationary spiral と言う用語がスタグフレーションなどの議論で使われるツイッター Paul Krugman@paulkrugman の引用先の経済学者ブラッドフォード・デロング(カリフォルニア大学バークレー校教授)のツイート発言 。なお出典のひとつのクルーグマンは2008年のノーベル経済学者。どうもインフレ・スパイラルを無視してデフレ・スパイラルを語る論法は、日本でしか通用しないガラパゴスな経済認識のようだ。
というような現象がよくあり、こういうのを小室は「インフレ・スパイラル」の一例とした。 デフレ・スパイラルは、上述のようなインフレ・スパイラルを逆にしたものにすぎない。
を見ても、物価の変動と賃金の変動のどちらが先かが不明である。このため、物価と賃金のどちらが原因なのか、どちらが結果なのか、不明である。 つまり、物価と賃金のように相互作用するものは、「→」のような矢印を使って論理関係を記述するのが困難である。
数学的には不正確な推論だが、 小室は、たとえば経済学の公式で
という昔からよく使われる公式を例に、下記のように説明している。 この公式は単なる一次方程式であるのにかかわらず、この数式を見るだけで、なんと国民所得と消費の関係について、仮に投資Iを一定値だとすれば、 数学的には「消費が1上がると、それから国民所得も1上がる」または「国民所得が1上がると消費が1上がる」の片方でしかないが、しかしこれを小室は拡張して、数値的には不正確だが、スパイラル「消費が上がると国民所得も上がり、それによってまた消費も上がる」ことのモデルとした。 数学的にはまったく不正確な計算だが、しかし実際の20世紀のケインズ政策的な公共投資がこれと似たような考え方で行われてきたので(ただし消費Cではなく投資Iが駆動源だが)、まったくのデタラメな推論とは言えないし、歴史的にはニューディール政策など多くのケインズ的な政策に実例すらある。(※ どうしても数学的な厳密性にこだわるなら、記号をイコール「=」ではなく別の記号に変えるなどの工夫が必要かもしれない。ただし、小室はそのような工夫はしてない。本ページでも説明の単純化のため、小室と同様の一次方程式の記法で表現する事とする。)
小室の著作では紹介されていないが、経済学では下記の式が昔から知られている。 すでに経済学者サムエルソンが、所得Yと消費Cを数列の方程式にして、計算を行っている。 サムエルソンなどにより、式 ただし、
が提唱されている。これは数列の連立方程式である。計算は頑張れば高校レベルでも計算可能だが(数列の式なので)、高校生には時間の節約のため計算の説明は省略する(詳しくはwikipedia『w:乗数・加速度モデル』を参照)。これをサムエルソンの「乗数・加速度モデル」という。 小室はおそらくサムエルソンの式を参考にしたのだろう。しかし、スパイラルの説明では、小室はサムエルソンの式を紹介していない。
を使い、近似的な記法とみなした推論が必要だが、単純な方程式を使うことで、なんと相互関係も記述できてしまうとした[5]。(※ ただし、数値の具体的な算出には役立たない。)
「Y=C+I」という式だけで、
というスパイラルを表せたことになる[6]としている。
とでもなるだろう(だと仮定する。実際はもっと複雑だが)。 すると、これは一次方程式だから、上述の議論と同様に、スパイラルが起きることになる。 小室は物価と賃金のあいだにもスパイラルがあるとして、それを「物価・賃金スパイラル」と呼んでいる[7]。
物価の上昇と(インフレ)、国民所得の上昇がおおむね連動していた。つまり
というスパイラルである。 なので、つまりデフレが起きれば、インフレの場合の逆の結果が起きるだろうという予想が、(バブル崩壊後の1990年代では)自然であろう。 すると、つまりバブル崩壊後の経済予想として、
という予想が自然である。これがデフレ・スパイラルの一例である。
なお、小室は経済学はフィードバックを伴うから実験できないと述べているが[8]、しかし、それは間違いだろう。なぜなら、たとえば工業高校の電気系学科で習うフィードバック回路など、普通に実験ができるので、この理由は間違いだろう。 小室は述べていないが、量子力学では実験そのものが原理的に誤差を引きおこす現象が知られているが(「不確定性原理」)、しかし量子力学のそれはフィードバックとは呼ばずに普通は「擾乱」(じょうらん)などと言う。ただし量子力学の擾乱は、原子や電子などの微細なもの(物理学におけるミクロ)に対する現象であるから、マクロ経済のようなマクロ解析に量子論の「擾乱」を当てはめるのも間違いだろう。 どちらにせよ、小室の「フィードバック」を原因とする説明は間違いであろう。 さて、話題をスパイラルに戻すと、ともかく、デフレ・スパイラルの対義語として「インフレ・スパイラル」という用語も1990年代の過去に小室の書籍などで提唱されており、このインフレ・スパイラルによって、1989年の不動産バブル崩壊までの物価上昇を説明する言説なども1990年代には あった。たとえば、
とか
のような現象を「インフレ・スパイラル」と呼んでいたわけだ。 なお、小室の書籍では、バブルの物価高については、地価ではなく一般的に「価格」という表現を用いて、
と表現している[9]。 デフレ・スパイラルの本来の意味は、上記の土地と不動産屋の例の逆のような現象が起きるだろうという予想であり、つまり、
というような予想が、本来の「デフレ・スパイラル」の意味であった。
なので、検定教科書などにある「デフレ・スパイラル」の意味は、経済数学などでは、あまり意味も無い。 サムエルソンの「乗数・加速度モデル」と、小室の著作にかかれた「インフレ・スパイラル」と「デフレ・スパイラル」の関係を知っていれば、つまりデフレ・スパイラル論は、インフレなどの研究に活用された「乗数・加速度モデル」の手法および成果を近似的に用いてデフレを研究・制御・記述などをしようという手法であろう。
世間の大衆は、1990年代当時の経済学者の書いた本など読まないので「デフレ・スパイラル」の本来の意味など確認しようともしないので、意味が修正されずに、現在まで続いている。 日本のセンター試験や大学入試などに出てくるような経済史の暗記などは、本来の経済学とは全くの別物である。本来の経済学は、微分積分などを使って、経済を数式で表すことにより、政策などのために、投資額や予算などの具体的な金額を算出するための理論体系が経済学である。 |
デフレと貯金[編集]
さて、デフレになると、商品が安く買えるので、貯金のある人にとっては有利である。(なお、インフレは、貯金の価値を減らすのであった。このように、インフレとデフレは、貯金の価値に対して、逆に作用する。)
さて、貯金のない人にとっては、これからオカネを稼がないといけないが、デフレになると、せっかくオカネを稼ぐために働いても、すでに貯金のある人と同じ金額を貯めるまでに、より長い期間が必要である。
たとえば、かりに、日本のサラリーマン平均年収1000万円のインフレ時代があったとして、その後、デフレによって、平均年収100万円になったとしよう。(じっさいには、このような急激なデフレは起きないのが普通。あくまで、わかりやすくする目的のため、急激な例で説明している。)
この条件の場合、むかしは、1000万円を1年で稼げたことになる。しかし、デフレ後だと10年間、働き続けないといけない。
デフレが起きても、けっして、それまでの貯金が消失するわけではない。なので、年収1000万円時代の人の貯金が消えるわけではない。
このように、貯金の無い人にとって、デフレは不利である。(なお、インフレなら、貯金のない人には有利なのである。)
(※ 範囲外:)ケインズ経済学の元ネタでもある経済学者ケインズは、緩やかなインフレを、金利生活者にとっての「安楽死」と表現した[10]。結局、インフレでもデフレでも、誰かが不利益をこうむる(少なくとも一時的には)。2010年以降、インフレを求める意見は市井(しせい)に多いが、しかしケインズ経済学を根拠にインフレ誘導政策を要求するなら、それは「安楽死」である自覚ぐらいはもってもらいたいものである。さて、ケインズ自身は高齢者社会保障にはあまり関心は無かっただろうが、じつは年金受給者は「金利生活者」のようなものでもある[11]。あるいは、仮に年金自身は物価に対して中立的だと仮定しても(つまり、年金を「金利」とみなすべきではないとしても)、それでも一般的に高齢者は若者に比べて貯蓄が多いの実際であり、なのでよく経済評論ではインフレは高齢者に不利だとも言われる。いちおう、日本の年金は「マクロ経済スライド」といって、インフレの場合は年金給付額もそのぶん多くなるのだが、その負担は若者に行っているわけである。ともかく、誰も負担しない物価政策など、ありえない。ケインズ風に言うなら、どの政策でも誰かを「安楽死」させるわけだ。
日本の近年の景気[編集]
1973年の第一次石油危機にインフレになり、また1979年の第二次石油危機のときもインフレになり、1980年代後半から80年代末ごろまでインフレになっただ。しかし、1990年頃のバブル崩壊後からは、ずっとデフレ傾向が続いている。
2016年の現在、日本では、デフレが不況を深刻化・長期化させる原因だろうと考えられており、そのため政府は、財政政策などによって、物価上昇率2%ていどの、ゆるやかな物価上昇率のインフレを目指してると思われている。(※ 清水書院の検定教科書『高等学校 新政治・経済』など、いくつかの教科書出版社の検定教科書に、そういう見解がある。)
このように、政策によって、望ましいインフレ率を実現しようということをインフレ・ターゲットという。
日本では、デフレからの脱却という意味でインフレ・ターゲットという意味が使われるが、一方、発展途上国では、急激なインフレによる経済不安のため、インフレ率を抑えようという意味でも、「インフレ・ターゲット」という単語が用いられる。
ハイパー・インフレとクリーピング・インフレ[編集]
第二次大戦前のドイツで起きたような急激なインフレのように、短期間で物価が大幅に上昇する急激なインフレをハイパー・インフレ(hyper inflation)という。
いっぽう、年率数パーセントていどの持続的なインフレをクリーピング・インフレ(creeping inflation)という。クリーピングとは、「しのびよる」という意味。
※ 範囲外: 貨幣錯覚[編集]
物価政策による景気刺激策は、国民の経済への「勘違い」を利用しています。
ケインズ経済学に「貨幣錯覚」という概念があります。これは、多くの消費者は、実質値ではなく名目値で判断するという、経済学の経験則です。
20世紀の第二次世界大戦後の時代、欧米の多くの国で、工業化などによる物価の上昇にもかかわらず、土木公共事業などによってり仕事を強制的につくる事で、景気を刺激して向上させる事により(いわゆる「ケインズ政策」 )、結果的に、物価上昇と景気上昇とを20世紀後半は連動させてきた。
そのため21世紀の現代にも、物価と景気を混同する勘違いをしている者が、どこの国にも一定の割合でいる。
しかし、このように物価上昇と景気を連動させるような経済政策の欠陥として、
- ・ 物価が再現なく上がりつづける危険性。
- ・ 土木公共事業のための歳出(さいしゅつ)や、業者などへの補助金などにより、国の財政の借金が増えてしまう。
という問題点がある。
なお、「工業化」などによる発展という理念が、土木公共事業などの公共投資を正当化するための口実であった。そして、工業化による経済発展による税収増加が、公共投資したぶんの金額を回収するための手段でもあった。
なので、もし、その国が、工業化のための公共投資を行ったのに、政府が期待したほどには税収が増えなかった場合に、もはや公共事業などの景気刺激策を政府が続けるのが困難になり、不景気に陥りかねない。
それでも景気刺激などのための公共事業や補助金政策などを減らさずに景気刺激策を続けようとする場合、政府は、その景気刺激策のための資金をあつめる必要があり、税金を増やすか、国債を追加発行する必要がある。
- ^ 長期経済統計 物価 - 内閣府
- ^ 本当に日本は「デフレ」なのか、「物価」から見る日本の「実質的経済」の実力 「ファクト」から考える中小製造業の生きる道(5)(3/4 ページ)2021年07月12日 11時00分 公開, 小川真由/小川製作所,MONOist
- ^ 教養番組「知の回廊」20 「日本経済のゆくえ」 中央大学
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P330
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P363
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P365
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P369
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P362
- ^ 小室直樹、『小室直樹の経済原論』(復刊本)、東洋経済新報社、2015年6月11日発行(原著は1997年の刊行)、P384
- ^ 『第5章 ケインズの経済学』 P48 2022年4月6日に確認.
- ^ コトバンク『世界大百科事典 第2版「金利生活者」の解説』 2022年4月6日に確認.