高等学校政治経済/経済/社会保障
社会保障の歩み
[編集]1601年 | 英 | エリザベス救貧法制定 |
1874年 | 日 | 恤救規則制定 |
1883年 | 独 | 疾病保険法制定 |
1911年 | 英 | 国民保険法制定 |
1922年 | 日 | 健康保険法制定 |
1929年 | (世界恐慌) | |
1935年 | 米 | 社会保障法制定 |
1942年 | 英 | ベバリッジ報告 |
1952年 | 国連 | ILO、フィラデルフィア宣言 |
世界の社会保障の公的扶助の起源は、1601年のエリザベス救貧法だと言われている。
1883年にドイツで世界でさいしょの社会保険制度がビスマルクによって創設されたが、この政策は社会主義者鎮圧法と同時につくられた政策だったため、この政策は「アメとムチ」と呼ばれた。
アメリカではニューディール政策の一貫として、失業保険と老齢遺族年金などを含む社会保障法が制定された。このニューディール政策の法律で、「社会保障」 social security という言葉がはじめて用いられた。
イギリスでは1942年にべバリッジ報告(Beveridge Report)が出され、この報告は、政府が国民の最低限度の生活(ナショナル=ミニマム、natinal minimum)を保障するように提言し、労働党内閣が「ゆりかごから墓場まで」をスローガンにして、国の責任による社会保障制度が整備された。
1944年に国連の国際労働機関(ILO)がフィラデルフィア宣言を発表し、社会保障の最低基準を示した。
各国の社会保障
[編集]世界の社会保障を分類すると、大きく分けて、イギリスを含む北欧型、ドイツ・フランスなどの大陸型、アメリカ型の3通りになる。
北欧型は、「公助」とも言われ、税を財源に、保険料は均一で、大きな社会保障をするのが特徴である。
アメリカ型は「自助」とも言われ、最低限の公的介入のみをするのが特徴である。 かつてアメリカは公的な全年齢対象の医療保険がなく(老齢医療保険は存在していた)、社会保障は年金と失業保険が中心だった。しかし2010年、オバマ大統領の医療保健改革法の成立により、アメリカは国民皆保険になった。
大陸型は、「共助」とも言われ、大まかなイメージを言えば公助と自助との中間であり、所得に応じた保険料負担と、その負担額に応じた(年金などの)給付をするのが特徴である。
北欧型の社会保障は、いわゆる「大きな政府」の考え方。一方、アメリカは、いわゆる「小さな政府」の考え方。
- ※ 公助、自助、共助の出典は第一学習社の「公共」教科書。
日本
[編集]日本の社会保障
[編集]1874年 | 日 | 恤救規則制定 |
1922年 | 日 | 健康保険法制定 |
1929年 | (世界恐慌) | |
1938年 | 日 | 国民健康保険法制定 |
1946年 | 日 | 生活保護法制定 |
1947年 | 日 | 失業保険法、労働者災害補償保険法 |
1947年 | 日 | 生活保護法全面改定 |
1958年 | 日 | 国民健康保険法全面改定、国民皆保険 |
1959年 | 日 | 国民年金法制定 |
1971年 | 日 | 児童手当法制定 |
1973年 | 日 | 年金の物価スライド制導入 |
1974年 | 日 | 雇用保険法制定 |
1982年 | 日 | 老人保健法 |
1997年 | 日 | 介護保険法制定(実施は2000年から) |
2000年 | 日 | 公的介護保険制度の開始 |
2008年 | 日 | 後期高齢者医療制度の開始 |
日本では1958年の国民保険法の改正により、1961年にすべての国民が医療保険に加入する国民皆保険が実現した。
同様に、1959年の国民年金法の改正で、1961年に日本は国民皆年金になった。
1986年から、国民年金が全国民共通の基礎年金となり、その上に民間企業の被用者はさらに厚生年金を、公務員はさらに共済年金に加入するという制度になった。
一方、自営業者は国民年金しか給付されない。
現在の日本の社会保険には、医療保険・年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険の5つがある。
医療保険は、仕事以外での病気やケガに保険料が給付される制度。1961年から日本では、国民すべてが医療保険に入っている「国民皆保険」である。
雇用保険は、解雇によって失業したときに、給付を受けられる。
労災保険は、仕事が原因でケガや病気になったとき(このようなケガ・病気を「労働災害」といい、「労災」と略す)、給付を受けられる。 労災保険は、事業主のみが負担する。
日本の年金制度
[編集]年金の種類
[編集]20歳以上60歳未満のすべての日本国民は「国民年金」に加入する。学生(大学生など)であっても、20歳以上なら、国民年金に加入する。
その上で、会社員は上乗せとして厚生年金に加入し、また、公務員は上乗せとして共済年金に加入する。つまり会社員なら、国民年金と厚生年金の2つに加入することになる。なお、自営業者は、厚生年金や共済年金には加入できず、国民年金のみの加入となる。
また、公務員なら、国民年金と共済年金の2つに加入することになる。
厚生年金と共済年金による給付額は、国民年金の給付額に上乗せされて給付される。
厚生年金と共済年金の保険料は、所得に応じて、負担料が違い、また、負担料が高いほど給費額も高くなるので、「報酬比例」と言われる。
一方、国民年金は、「基礎年金」とも言われる。
年金の負担の方法
[編集]日本の年金負担のありかたは、現在の負担者が、現在の高齢者の年金額を負担するという賦課方式(ふか ほうしき)にもとづいた、「修正賦課方式」である。
修正「賦課方式」というものの、実際には、若い世代が、高齢者の年金を払っている。実質的に、日本では、自分の将来の年金を負担するという積立方式(つみたて ほうしき)ではない(※ 中学高校の検定教科書でも、日本の年金制度は実質的に賦課方式であるという見解である)。
日本の年金は賦課方式なので、少子高齢化になると若者の負担が増える。
日本の医療保険
[編集]医療保険でも、国民健康保険や、公務員のみの共済組合、など業種別などによって分かれており、複雑である。
老人医療
[編集]1973年に、いったん、70歳以上の老人の医療費が無料化したが、医療費が急増して国の財政が悪化した。
このため見直され、1983年から、老人は医療費を一部、負担することになった。
2008年には、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度がスタートした。
なお、日本で1973年は「福祉元年」と言われた(※ センター試験で過去に出題)。当時の内閣(田中角栄)が、「福祉元年」をスローガンに掲げた。
老人介護
[編集]「公的介護保険制度」は、高齢者を対象にした介護保険の制度である。
1997年に介護保険法が制定されて、2000年から公的介護保険制度がスタートした。 公的介護保険制度には、40歳以上の日本国民が保険料を払う。
要介護と市町村に認定された人が、原則として利用料は1割負担で、利用できる(※ 第一学習社の教科書に記述あり)(※ センター試験で過去に出題)。 運営は市町村が行っている(※ 「現代社会」科目の教科書に記述あり)(※ センター試験で過去に出題)。
生活保護
[編集]生活保護の費用は、全額、公費でまかなわれる(※ センター試験で過去に出題)。 生活保護は、1946年制定の生活保護法にもとづいて行われ、生活・教育・住宅・医療・出産・生業(せいぎょう)・葬祭(そうさい)・介護(かいご)の8つの扶助(ふじょ)がある。
生活保護は、社会保障制度のうちの公的扶助(こうてき ふじょ)に分類される。
なお、1950年に生活保護法が全面改定されている。
児童手当
[編集]1971年に児童手当法が制定された。
2010年に民主党の鳩山由紀夫内閣で「子ども手当」になったが、財源の目ぼしが付かなかったことなどから、その後、2012年から制度を変更した新しい「児童手当」に変わり、「子ども手当」は廃止された。
2012年からの新しい児童手当では、所得制限が付いている。
福祉六法
[編集]児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び(および)寡婦(かふ)福祉法、生活保護法の6つをまとめて福祉六法という。
日本の社会保障
[編集]日本の社会保障は、社会保険・公的扶助(こうてき ふじょ)・社会福祉・公衆衛生の4つにもとづいている(※ 過去にセンター試験に出題)。
社会保障の「公衆衛生」とは、保健所などの、感染症や食中毒の予防と治療の活動と、上下水道の整備、および、国民の生活習慣病予防などの健康増進対策のための活動。
日本の年金についての問題
[編集]会社員が加入する厚生年金は、不況による企業の倒産などで、財政が悪化している。
また、自営業者や無職などが対象の国民年金は、年金制度への不信などから、未加入者が増えており、悪化している。
2007年ごろ、公的年金の行政上の記録漏れが見つかった。
国民年金と、それ以外の厚生年金・共済年金とのあいだに、給付額の格差があり、問題になっている。
ノーマライゼーションとバリアフリー
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点字ブロックの例
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スペースの広いトイレの例
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多目的トイレの入り口の表示の例
高齢者や障害者を施設などに隔離(かくり)せず、たとえ障害者や高齢者でも、なるべく自宅で普通に生活できるようにすることこそが社会福祉の目指すべき方向性である、という考え方のことをノーマライゼーション(normalization)という。
また、ノーマライゼーションのための手段として、歩道などを車いすの身体障害者でも移動しやすいように整備をしたりする必要がある。
たとえば、道に大きな段差があると、その場所は車いすの人が通行できない。同様に公共機関の入り口に大きな段差があると、その施設には車いすの人が入れなくなる。
一般に建物の床は、平地よりも、やや高い場所にあるのが普通なので、スロープ(なだらかな斜面)などが無いと、車いすの人は、その建物の入り口には入れなくなる。なので、公共施設などの入り口には、スロープなどがあるのが一般である。
このように、公道や公共施設などの整備をして、障害者が使えない施設をなくすことをバリア フリー(Barrier free)という。
言葉の「バリア」の意味は、物をさえぎるバリアーのことで、入り口の段差が車いすの障害者にとっては、障害者を遠ざけるバリアーになっている、という意味である。
説明のために車いすの利用者に例えたが、べつに車いす利用者だけに限らず、ノーマライゼーションやバリアフリーは取り組まれている。
- ユニバーサル デザイン
- (※「政治経済」では扱ってない。「現代社会」で扱っている。)
製品を設計する際に、利用者に障害者なども含み、身体に不自由のある人でも使えるように設計することをユニバーサルデザイン(universal design)という。べつに、利用対象を障害者に限定していない。