高等学校数学C > 確率分布
1から15までの番号札があり、その15枚の札から任意に1枚を選ぶ。
このとき、2の倍数を選ぶという事象をA、3の倍数を選ぶという事象をBとすると、
,
,
となる。
このとき、選び出された札が2の倍数であるとわかったとして、それが3の倍数である確率
を考える。
は、2の倍数である札7枚の中から、6の倍数である札2枚を選ぶ確率であるから
事象Aが起こったとして、そのときに事象Bの起こる確率を、Aが起こったときのBの条件つき確率といい、
で表す。

この式の右辺の分母、分子をそれぞれ
で割ると

ある観光バスの乗客のうち、60%が女性で、42%が50歳以上の女性である。女性の中から任意に1人を選び出したとき、その人が50歳以上である確率を求めよ。
「女性である」事象をA、「50歳以上である」事象をBとする。

よって、求める確率は

の分母を払うと、次のようになる。
乗法定理
|
のとき

|
5本のくじの中に3本の当たりくじがある。a、b2人が、引いたくじをもとに戻さないで、a、bの順に1本ずつくじを引くとき、2人とも当たる確率を求めよ。
aが当たるという事象をA、bが当たるという事象をBとすると、求める確率は
である。
aが当たったとき、残り4本のくじの中に当たりくじが2本あるから

よって、2人とも当たる確率は

1個のさいころを投げるとき、偶数の目が出る事象をA、3の倍数の目が出る事象をB、4以上の目が出る事象をCとすると、
A={2,4,6} , B={3,6} , C={4,5,6}
このとき
,
より、
が成り立つ。つまり、事象Aが起こることは事象Bが起こることに影響を与えていない。
また、
,
より、
が成り立つ。つまり、事象Aが起こることは事象Cが起こることに影響を与えている。
2つの事象A , Bについて、事象Aの起こることが事象Bの起こることに影響を与えないとき、AとBは独立であるという。また、AとBが独立でないとき、AとBは従属であるという。
事象AとBが独立であるとき、
である。乗法定理を用いると、事象の独立について、次のことが成り立つ。
事象の独立
|
事象AとBが独立である 
|
トランプのハートのカードが1組13枚ある。
(1)初めにAが1枚引き、そのカードをもとに戻さないで、次にBが1枚引く場合、A、Bがともに絵札を引く確率を求めよ。
(2)初めにAが1枚引き、そのカードをもとに戻して、次にBが1枚引く場合、A、Bがともに絵札を引く確率を求めよ。
Aが絵札を引くという事象をA、Bが絵札を引くという事象をBとする。
(1) AとBがともに絵札を引くという事象は
で表される。
Aが絵札を引く確率は 
Aが絵札を引いたあと、12枚のカードの中に絵札が2枚残っているから、Bが絵札を引く確率
は、 
よって 
(2) Aが引いたカードは、もとに戻すから、2つの事象A、Bは互いに独立である。
したがって確率は
1枚の硬貨を2回続けて投げる試行において、表の出る回数をXで表す。Xのとりうる値は、0 , 1 , 2 である。
それぞれが起こる確率は
となる確率は 
となる確率は 
となる確率は 
この結果を表にすると、次のようになる。
 | 0 | 1 | 2 | 計 |
確率 |  |  |  |  |
一般に、Xが有限個の値
をとる変数で、
となる確率
が与えられて、

を満たすとき、Xを確率変数という。
このとき
と
の対応は下の表のようになる。
 |  |  |  |  | 計 |
 |  |  |  |  |  |
この対応関係をXの確率分布という。
となる確率を
と書く。
確率変数Xの確率分布が次の表で与えられているとする。
確率分布の表
 |  |  |  |  | 計 |
 |  |  |  |  |  |
このとき、

を確率変数Xの平均または期待値といい、
で表す。
確率変数の平均
|

|
確率分布が上の表(確率分布の表)で与えられている確率変数Xの平均

をmとする。このとき、
は1つの確率変数となり、その確率分布は下の表のようになる。
 |  |  |  |  | 計 |
 |  | |  |  |  |
がとるn個の値

のそれぞれは、Xとmとのへだたりの程度を表す。
確率変数
の平均

を、確率変数の分散といい、
で表す。
また、
をXの標準偏差といい、
で表す。
確率変数の分散と標準偏差
|


|
分散
を表す式は次のように変形できる。

ここで、
であるから

さらに、
であるから、次の等式が成り立つ。
確率変数の分散
|

|
1個のさいころを投げるとき、出る目の数をXとする。確率変数Xの平均、分散、標準偏差を求めよ。
Xの確率分布は、下の表で与えられる。
 | | |  | | | | 計 |
 | | |  | | | |  |
Xの平均は

また、
の平均は

よってXの分散は

Xの標準偏差は

確率変数Xの確率分布が次の表で与えられているとする。
 |  |  |  |  | 計 |
 |  |  |  |  |  |
a,bが定数のとき、Xの1次式
でYを定めると、Yも確率変数になる。Yのとる値は
であり、Yの確率分布は次の表のようになる。
 |  |  |  |  | 計 |
 |  |  |  |  |  |
Xに対して上のようなYを考えることを、確率変数の変換という。
確率変数の変換
によって、その平均、分散、標準偏差がどのように変わるだろうか。
Yの期待値については

また、Yの分散については

であるから

Yの標準偏差は

1個のさいころを投げるとき、出る目の数をXとする。確率変数
の平均、分散、標準偏差を求めよ。
上の問題より、

Yの平均は

Yの分散は

Yの標準偏差は

A,B2人がそれぞれ1個のさいころを投げる。Aは、さいころの目が3の倍数ならば0、3の倍数でなければ1と記録する。Bは、さいころの目が1ならば1、偶数の目ならば2、1以外の奇数の目ならば3と記録する。
A,Bの記録する数をそれぞれX,Yとすると、XとYは確率変数で、
かつ
となる確率は次のようになる。
 | 1 | 2 | 3 |  |
 |  |  |  |  |
 | 
|  |  |  |
 | 
|  |  | |
このとき、
も確率変数で、Zの確率分布は次のようになる。
 |  |  |  | | 計 |
 |  |  |  |  |  |
よって、Zの平均は

一方


であるから

したがって、
が成り立っている。
確率変数の和の平均
|
確率変数X,Yについて

|
確率変数Xのとる任意の値aと確率変数Yのとる任意の値bについて、
かつ
である確率が
に等しいとき、確率変数XとYは互いに独立であるという。
上の例において確率変数XとYは互いに独立である。この確率変数X,Yについて、
を考えると、Uも確率変数で、Uの確率分布は次のようになる。
 |  |  |  | | 計 |
 |  |  |  |  |  |
よって、Uの平均は

一方、
であるから

したがって、
が成り立っている。
独立な確率変数の積の平均
|
確率変数XとYが互いに独立ならば

|
2つの確率変数X,Yの和の分散についても、次のことが成り立つ。
独立な確率変数の和の分散
|
確率変数XとYが互いに独立ならば

|
大小2個のさいころを同時に投げるとき、それぞれのさいころの出る目をX,Yとする。出る目の和
の平均、出る目の積
の平均、出る目の和
の分散を求めよ。
XとYは互いに独立である。今までの例より

したがって



1個のさいころを3回投げるとき、1の目の出る回数をXとすると

である。確率変数Xの確率分布は次のようになる。
 |  |  |  | | 計 |
 |  |  |  |  |  |
一般に、1回の試行で事象Aの起こる確率がpであるとき、この試行をn回行う反復試行において、Aの起こる回数をXとすると、確率変数Xの確率分布は次のようになる。ただし、
である。
 |  |  |  |  |  |  | 計 |
 | | |  |  |  |  |  |
この表の確率は、二項定理の展開式

の右辺の各項を順に並べたものである。この確率分布を二項分布といい、
で表す。ただし、
とする。
上の例は、
である。
1枚の硬貨を6回投げるとき、表が出る回数をXとすると、Xは二項分布
に従う。
二項分布
に従う確率変数Xの平均・分散・標準偏差を求めよう。ただし、
とする。
Xの平均は

また、
の平均は

よって、Xの分散は

Xの標準偏差は

一般に、二項分布に従う確率変数について、次のことが成り立つ。
白玉7個と黒玉3個が入っている袋から、もとに戻しながら、玉を100回取り出す。白玉の出る回数Xの平均、分散、標準偏差を求めよ。
Xは二項分布
に従う。
Xの平均は

Xの分散は

Xの標準偏差は
